アットウィキロゴ

さとりつ:勉強編

 
ある土曜の夕食後。

「おい、聡ーっ。」ドラムの練習をしていた律が、夕食の片づけをする聡に向かって明るく叫んだ。
「何、姉ちゃん?」食器を洗いながら聡も叫び返す。
「終わったら私の部屋に来い、以上っ。」一方的に伝えると、律は再びエレクトロニックドラムセットを叩き始めた。
「(まったく、何が「私の部屋に来い」だよ(どこかのツンデレじゃあるまいし)・・・・。
今日は当番だったから仕方ないけど、ちょっとくらい手伝えよな・・・・・。)」

「で、何だよ、姉ちゃん?」タオルで両手を拭きつつ、片づけを終えた聡が二階へ上がってきた。
「ゲームしよーぜ。」
「は?」
「ゲームだよゲーム。最近やってないじゃん?」
「また唐突な・・・・・。」
「いいじゃんか。今日は土曜日だし。」
「宿題とか勉強とかしなくて良いのかよ。」
「そんなに勉強ばっかしてたら、身体中脳みそになっぞ?」
「ならないよ。」
「あ、そう。じゃあ、聡は今勉強がしたいんだ。そーかそーか・・・。」
「別にそういうわけでもないけど・・・・、姉ちゃんだって月曜日にテストあんだろ?」
「そりゃあるにはあるけどさー。そんなの日曜日の夜澪ん家で一夜漬けすr・・・・」
「澪姉もそろそろ姉ちゃんのこと見放すぞ。」
「(ピキーン!)・・・・そ、そ、そそそそそんなっ!!!」


「で、なんで一緒に勉強することになるわけ?」
「そのほうがお互い捗るじゃん?」
「余計気が散るような(ブツブツ・・・・)」
「何か言ったかー?」律は横に居る聡の耳を引っ張った。
「言ってない言ってない。っていうか痛いよ姉ちゃん。」
「よおし!まずは数学だ!」
「それじゃ、同じく。」

(・・・・・・・・・)((1)次の二次関数の頂点を求めよ2x^2+6x+1/2=0)
(・・・・・・・・・)((1)次の総和を求めよΣ[k=1, n]{1/(k^2+k)})
(えーと、2x^2+6x+1/2=0だからまず最初の二項を2でくくって・・・・っと。)
(Σ[k=1, n]{1/(k^2+k)}・・・・・・・・・・。・・・・・・・・・・・。ナンジャコリャ!?)
(そうすると2(x^2+3x)になって、これは2(x+3/2)^2-9/2だから・・・・・)
(素直に計算してみるか?うぇーっと、1/2+1/6+1/12・・・・・お?規則性がある?)
(最初の式は2(x+3/2)^2-4=0ってことで、頂点は(-3/2, -4)だな。)
(そうか、これは1/1・2+1/2・3+1/3・4+・・・・・になっているんじゃないか?
 って、そんなの当たり前だあ!k^2+k=k(k+1)だった!)
((2)(1)の二次関数のグラフをx軸方向に+6、y軸方向に-1/2平行移動し、x軸に関して対称移動、
 さらにy=軸に関して対称移動したグラフの式を求めよ)
(うう・・・・・・って言うかこれ本当に収束するのか?まさか∞だったりして・・・・)
(結構面倒だな。うーん、まず平行移動すると2(x-9/2)^2-9/2=0で・・・・・・・)
(いや、そんな単純なはずない。きっと値があるんだ。っていうか上がnじゃないか!
 だったらnの関数になるんじゃないか!)
(これをx軸に関して対称移動すると・・・・・・-2(x-9/2)^2+9/2=0で・・・・・・・・)
(待てよ、n=∞の極限を取ると、1/(k^2+k)はゼロになるんじゃね?とすると・・・・。)
(さらにy軸に関して対称移動すると-2(x+9/2)^2+9/2=0になr・・・・)
「だあっ!もう分かんねぇ!」痺れを切らした律が突然天へ向かって叫んだ。
「うわっ!」突然の発声に心底驚いて飛び上がる聡。「ね、姉ちゃん、やめろよ・・・・・・。
ビックリするだろ・・・・。」
「え?あ、わりぃわりぃ。それより聡、お前調子はどうだ?」
「まあ、いいけど。」
「癪に障る。調子を悪くしろ。」
「んな無茶苦茶な・・・・・。」
「んじゃあ私に教えてくれえぃ!」
「中二が高二の内容分かるわけないよ・・・・、澪姉にでも聞いてみたら?」
「全くこんな問題が何の役に立つって言うんだか・・・・仕方ない、澪でも電話するか。」
「(少しは人の話を・・・・・ってかそれ今提案しただろ(泣)。)」

「ああ、もしもし?澪?ちょっと聞きたいことがあるんだけどさぁ、澪が今度のテストに出るって言ってた
範囲の最初の問題なんだけど。
そうそう、総和のやつ。あれどうすんの?」
電話の向こうで澪は嫌味の一つも言わずに丁寧に教えているようだった。
「何?ブンブンブン?・・・・・蜂が飛ぶ?」
「ぷっ。」これには聡も吹き出してしまった。律も聡をチラリと見て、つられて自身のギャグに軽く笑いながらも、
澪の言葉を反復した。
「ブブンブンスウブンカイ?ああ、部分分数分解か。そう言えば何かそんなこと習ったな・・・・。」
「ふむふむ、1/(k^2+k) でそれをやるのか・・・・。まず1/k(k+1) だよな。うん、それで?は?これがそうなるのか?
何でだ?どうすればそうなるんだよぉ、澪ーっ・・・・・・。」
しばらくの間、熱心に説明をしているらしい澪の話を聞いてから律は電話を切ると、
うなだれるようにテーブルの前に座り込んだ。
「なんでこれが1/k-1/(k+1)になるんだよ?まったく澪のやつ・・・・。」
「澪姉教えてくれなかったの?」
「分かるようには教えてくれなかった。」
「(いや、それは教えてくれたけど姉ちゃんが分からなかっただけじゃ・・・・・・)」
「ああん、もう!これだから勉強ってやつは!」
「ちょっと見せて。」仰向けに転がってしまった律に向かって、聡が言った。
「・・・・・・もしかしてこれって、ただ単に分子にプラスしてマイナスすればいいんじゃないの?」
「さ、聡お前分かったのか?」途端に緊迫した様子の律がガバッと起き上がりながら言った。
「分かんないけど、これほら、1/k(k+1)=(k-k+1)/k(k+1)だろ?」
「うん、まあそうだな。kを足して引いたら同じだよな。」
「そうすると、{(k+1)-k}/k(k+1)=(k+1)/k(k+1)-k/k(k+1)になるだろ?」
「ちょ、ちょっと待った。えーっと・・・・・・・・あ、分けただけか。ふむ。」
「で約分すると、1/k-1/(k+1)なんじゃない?」
「聡、お前天才か?何が凄いって、この私に分かるように説明できたんだぞ?澪にも出来なかったのに。」
「そっちかよ・・・・。僕まだ中二なんだけd・・・・・」
「澪のやつ方程式を解くとか訳の分かんないこと言いやがって・・・・・。」
「ね、姉ちゃん・・・・。じゃ、じゃあこれから僕は一人で勉強するから。それじゃ。」
「え?ちょ、ちょっと、おい聡!」
「あ、それと・・・・」聡は思い出したように振り返った。「続きも頑張ってね、姉ちゃん。」
「・・・・・・あ、ああ。」弟の飛び切りの笑顔を前にしては、笑顔で返すしかなかった律であった。
「お前もな。さっきはありがとな。」



________

「コンコン。なあ、姉ちゃん。やっぱり何か寂しいから一緒に・・・・・」
「・・・・だから分かんないんだって!みーおー、もっと分かりやすく説明してくれよー!聡みたいにさぁ!ああもう、聡を逃がすんじゃなかった!」
聡は無言のまま静かに扉を閉めたとさ。


(完)
 
 
 
最終更新:2010年01月19日 16:09
ツールボックス

下から選んでください:

新しいページを作成する
ヘルプ / FAQ もご覧ください。