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『今』

 
その1

まだ14年間ぽっちしか生きてない僕は、『今』が当たり前に続いていくんだと信じている。


新庄「お姉さんて結構かわいいよなー」

聡の部屋。
テーブルをはさんで向かい合った新庄が言った。

聡「え?なにが?」
新庄「律さんだよ律さん!いいよなぁ聡は。お姉さんがいて」
ほう、と悩ましげに溜め息をつく。
聡「え?なんでさ?」
新庄「だってお前、風呂上がりとかその辺下着姿でウロウロしてたりするんだろ?
下手したら素っ裸……――――くぅ、いいなぁ!」
新庄は顔を赤らめて拳を握り締めている。
聡は「ええっ?」と思わず笑った。
聡「裸って、んなわけないじゃん。ないない!なに言ってんの?」
新庄「え、ない?そういうの」
聡「ないって。っていうか新庄うちの姉ちゃん好きなの?新田さんはどうしたのさ」
新田さんというのは新庄が今気になっているクラスの女子の名前だ。
新庄「ばぁか!それとこれとは別なんだよっ」
聡「よく分かんねーなぁ…」
新庄「聡はまだまだお子様だな」

聡は少しむっとしてテーブルの上のスナック菓子に手を伸ばした。
それを口に入れて考える。

――そうか。
俺から見たら姉ちゃんは姉ちゃんだけど、新庄から見たらちゃんと異性なんだ。

なんか変な感じだ。



その2

漫画やゲームに熱中していたらあっという間に夜になった。

「新庄君、もうそろそろお家の方が心配するんじゃない?」
と言う母の声をきっかけに聡たちは部屋を出る。
ちょうど律と鉢合わせた。

律「おっ、もう帰んのか?」
新庄「はい、遅くまでお邪魔してしまってすみません。騒がしくなかったですか?」
聡(こいつほんと器用だな…)
律「ああ、全然大丈夫。じゃあ気をつけて帰んなよ…――――て、何?」
新庄「いや、お姉さん今日も綺麗っす」
聡「ぶッ!」
思わず吹いた。
律「あはは、ありがと新庄君。お世辞でも嬉しいよ」
そう言いながら律はがしがしと新庄の頭を撫でる。
新庄も笑っている。
聡には到底できないノリだ。
新庄「―――じゃあ失礼します」
律「はい気をつけてー」
聡「……」
律「ん?どうした聡?」
聡「…別にぃ」

少し、面白くない。



その3

夕食の後は、いつものように勉強机に向かう。
聡はノートの上を走らせていた鉛筆を止めると、ベッドを陣取って漫画を読んでいる姉を振り返った。

聡「なあ、姉ちゃん」
律「んー…?」
聡「姉ちゃんて、結婚すんの?」
聡はイスに逆向きに座り直すとイスの背に顎を乗せた。
こちらを向いた律は変な顔をした。
律「なんの話だ?」
聡「いや、姉ちゃん結婚するのかなって…」
律「脈略ないなぁ。しかも結婚って、そんなん遠すぎてまだ考えたことないし」
律は身体を起こしてあぐらをかいた。
律「聡の方が先に結婚するかもしんないぞぉ?」
聡「えーー?俺??………想像できないや。もし俺が先に結婚したら姉ちゃんどうすんの?」
律「んーー…、お邪魔のようだったら出ていくかもなぁ。ま、分かんないけど」
律は軽く身体を左右に揺らしながら言った。
聡「え、じゃあ俺結婚しない」
聡は唇を尖らせた。
律「おいおいおいっ」
聡「だって俺今が一番いいもん。家族もいるし、友達もいるし、学校も楽しいし」
律「聡はまだまだ子供だなぁ」

律はやれやれと笑った。


そうだ。
聡はまだ全然子供だ。
律だって十分子供だが、聡はもっと幼い。

変わらないことを願うのはいけないのだろうか。
十年後なんて想像できない。
例えばこの先に父さんと母さんが離婚したり、
ひょっとして新庄と姉ちゃんが付き合っちゃったりする事もあるのかもしれない。
なんでもありだ。

聡(……やめよ、考えんの)

何かあってもその時の自分が頑張ってくれるだろう。
聡は今が一番大事だ。

変なこと聞いてごめん、と聡は律に謝った。


これもまた、ひとつの変化。


《終わり》
 
 
 
最終更新:2010年01月19日 17:03
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