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昨日の夢は今日の希望であり、明日の現実である。
───ロバート・H・ゴダード
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爆音と、銃声がけたたましく耳朶を打つ。
状況は一言で形容できた。『絶望』、と。
戦力差は明白。ここから逆転できたなら、それは正しく奇跡だ。
しかし、そんな状況下でも、彼は笑っていた。
どこまでも、不遜に。不敵に。自信に満ちた笑みで。
そもそもが、絶望的な道程だった。
ある日、何の伏線もなく全人類は石となり、文明は滅び去った。
3700年という旧世紀を遥かに超える圧倒的な時間は、多くの意味を消失させた。
それでもなお、目覚めたその日より。
彼の心に絶望の二文字は存在しなかった。
諦観も、停滞も、彼と彼の仲間たちにとっては無縁の代物だった。
3700年という月日すら、人類が持つ未来への大いなる希望と前進の意思を奪い去る事は出来なかったのだ。
その旅路の果てに死が差し迫ったとしても。
それすらも、彼の魂から希望の二文字を奪う事は不可能だ。
何故なら、彼は信じていたから。
中途で誰が斃れようと、必ず自分の仲間は、自分達が信じた科学は。
為すべきことを成し遂げ、全てを救うのだと。
汲んでも汲みつかせぬ果てなき欲望と、仲間への無限の信頼だけが彼の胸にはあった。
だから。
───途中で誰が倒れようと、最後に勝つのは俺達だ。
全てを石にし、全てを救う。未来の科学、Dr.STONEで───
どんな困難も、彼から、彼らから明日の光は奪えない。
絶望の海を踏破して、彼らは、進み続ける。
前人未到の明日へ。果てなき新天地へ。
………あぁ、ならば。
ボクが彼にこうして呼ばれた事も、必然だったのかもしれない。
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───聖杯戦争本選前、東京湾付近の臨海公園───
陽は落ち、肌寒さを感じるその浜辺に二人の少年はいた。
ティーンエイジャー程の少年に、それよりも更に幼い少年が一人。
並び立つ二人の視線は、目前の海に浮かぶ一隻の艦に注がれていた。
「やるな…ライダー。欲しいぜ、これは!」
最初に呟いたのは、金髪と意志の強そうな瞳が印象的なマスターの方だった。
総額数千万はくだらない服に袖を通し、クックと含み笑いを漏らす。
その視線は、目の前に聳える巨艦を言外に讃えていた。
「……艦を褒められるのは悪い気はしないかな。
フライカジキの様に目が効くマスターなのは好印象だよ、龍水」
その傍らに立つライダーと呼ばれた少年は、余り感情を出さない声でそう返した。
幼く華奢な体を高貴な雰囲気の漂う軍服で包み、端正な顔立ちと蒼の髪先が特徴的な少年だった。
「フゥン。この近辺ならばお前の能力を十全に発揮できるか?」
「うん、問題ない。海神としての権能がフルに発揮できるここなら…
僕の艦は神話の英雄にだって遅れは取らない。
そこは、明確に君がマスターだったアドバンテージかな」
腕を組み、尊大な態度で尋ねるライダーに龍水と呼ばれた少年。
彼の慇懃無礼なコミュニケーションにも特段気にする様子は無く、ライダーは問いに対する返事を返した。
ライダーは自らのマスターが、自分が最もパフォーマンスを発揮できる陣地を用意したのを理解していたからだ。
前提として、この浜辺は魔力補給源として運用できる霊地というわけではない。
しかし、この主従にとってこの海辺は下手な霊地よりも余程価値のある代物であった。
海の主神たるポセイドン、その一子であるライダーの権能により、水辺で彼の魔力が尽きることは無く、あらゆる判定で有利となる。
その事を伝えるや否や、瞬く間にライダーの主である少年は東京二十三区に位置する海辺の土地を抑えていった。
元々彼に与えられた役割(ロール)…海運業の覇者たる七海財閥の御曹司という立場も後押しして、今ではほぼ全ての海の近辺は彼の管理下だ。
本選開始前にここまで状況を作り上げたのは、英霊たるライダーをして舌を巻く手腕だった。
即断即決にして即座に欲しいと思った物を手に入れる手際と行動力は常人では測れないだろう。
そして、それを支えているのが。
「マスターである以上、お前の力が最大限発揮できるように手を回すのは当然だ。
何せ俺は───世界一の欲しがり屋だからな」
ひとえに、
七海龍水というマスターの尽きぬ欲望だろう。
まったく、飢えたフカの様に貪欲なマスターと引いた物だと、ライダーは思った。
けれど、その思考の中には不快感など混じってしなかったが。
そのまま淡々とした様子で、ライダーは龍水に尋ねる。
「ねぇ、マスター」
「何だ、ライダー?」
「マスターはこの聖杯戦争に何を欲するか、聞いてもいいかい?」
我ながらおかしな問いだと、心中で思う。
普通ならば、この地に招かれて欲するものなど聖杯以外にあり得ない。
けれど。
ライダーにはある種の不思議な確信があった。
我が主の目指す終着点はきっと、聖杯ではない。
己の主は、そんな当然の欲望からは超克した欲望(ねがい)を抱いている。
そして、その予感は正鵠を射ていた。
「全て、だ」
「全て?」
星が輝く夜空に五指を広げて。
明瞭足る声で『七海龍水』は己の従僕へと告げる。
「あぁ…全て、だ。魔術という未知の資源、テクノロジー。
聖杯戦争という儀式の発生条件、マスターとサーヴァントの選出条件、
願望器として完成に至るプロセス、その全てを数値化し、解析する。
それらを成し遂げるための情報…知識が、俺は欲しい!」
五指を握り締めて。
静謐な夜空に浮かぶ月をその手に握りしめながら。
揺るがぬ決意と共に、少年は高らかに叫んだ。
「………それは、聖杯を目指すのとは違うの?」
「違う、ただ発生した聖杯を使うだけでは本当に手に入れたとは言えん。
構造を理解し、性能を検証し、未知を既知へと変えて漸く手に入れたと言える
欲するのは再現性だ。ライダー。俺は…聖杯戦争という魔法〈ファンタジー〉を、科学へと変える」
そう。
過酷な生存競争を強いる聖杯という特大の未知を、科学の光で照らし。
不可能の闇を祓い。神話を日常に変えていく。
それこそが、龍水という男が抱く特大の欲望だった。
「……マスター、君は」
英霊たるライダーも、流石に言葉を失う。
マスターが語る願いの終着点の意味するところは。
紛れもない奇跡を、制御可能な既知の事象へと堕とす、という事なのだから。
聖杯の力によって現界を果したライダーだからこそ考えてしまう。
確かに、聖杯戦争という儀式の果てに聖杯は顕現する。
儀式として成立している以上、そこには確かに法則性がある。
そして、聖杯戦争はあらゆる並行世界で行われてきた。故に、再現性もあるだろう。
だからと言って、魔術師でもない只人の主にそんな真似が可能なのか。
可能だとしても、一体何百年の時を必要とするのか。
気の遠くなるような…有史から現代に至るまでの時間を掛けても不足かもしれない。
そして、それだけの時間を掛けたとしても、可能であるとは限らない。
人が生身で空を飛べぬように、水の中で生きてはいけない様に。
全てが徒労に終わる可能性だって多分にあるだろう。
「フゥン、俺のサーヴァントにしては無粋なことを考えているな、ライダー」
そんなライダーの心境を読んだかのように。
不敵な笑みを浮かべて、龍水は厳然たる態度で宣言する。
「仲間の受け売りだが──科学とは、単なる知識や技術の集積体を指すんじゃない。
未だ解明されていない事象に
ルールを探す。その地道な努力こそ、科学だ」
語る少年の言葉には。
人類の持つ可能性への信頼に。
見果てぬ未来への希望に。
全てを手に入れようとする強欲さに満ちていた。
話だけ聞けば、夢物語の様な内容なのに。
それでも彼が語れば──どうしようもなく、心を惹きつけられてしまう。
無表情を保ちながらも…胸の奥が高揚し、浮かされる様に熱を持つ。
そんなライダーに、龍水は懐からある物を取り出し、目の前に差し出した。
「科学の神髄は未来へと、ただ地道に楔を打ち続ける事だ。
どれだけ果てなく遠くとも…それでも必ずいつか──俺達は奇跡に追いつく」
差し出された掌の中へ納まっていたのは、一つの小型機械だった。
それが何であるかは、ライダーもまた、マスターの記憶を通じて知っていた。
電池切れなのか、光彩を失いながらも確かな存在感。
メビウスの輪の形をした、オーバーテクノロジー。
人類文明の仇であり、救世の英雄たる叡智の石。Dr.STONE。
それを見た瞬間、何もマスターは現実的な視点に立たず語っている訳ではないことを察する。
数千年人体を石化させながらも健全に保つDr.STONEの技術さえあれば。
本当に、彼が奇跡をその手に掴むまでの時間がやってくるかもしれない。
「あぁ」
思えば、マスターは。マスターの仲間たちは、皆そうだった。
3700年という絶望的な時の流れが、多くの意味を奪い去った世界の中で。
ただの一度も諦める事無く、世界を、全人類を救おうとしている。
人類文明を崩壊させた元凶たる破滅の光さえ、誰かを救う礎としようとしている。
「君は……君たちは、そうだったね。マスター」
であるならば。
僕が彼に呼ばれたことは、やはり必然だったのだろう。
ライダーの心中での想いが、確信へと変わる。
同時に何故、本来なら幻霊たる自身が現在の霊基で召喚されたのかも、今得心がいった。
だって、途中参加で、例え最初はやる気も可能だとも思っていなかったとしても。
僕もまた、かつて未来を取り戻そうと戦った、一人の少女を支えた…カルデアのサーヴァントだったのだから。
「俺に手を貸せ、ライダー。俺についてこい。
全てを手に入れるために、この聖杯戦争で俺はまず───お前が欲しい」
はぁ、と。
心中で溜息を吐く。
だって、こんなの反則だ。
餓えたフカの様に忠実で、マッコウクジラよりも豪快。
自分が船長として求める安定性には程遠い。
彼と行く道行きは、きっと航海ではなく冒険となってしまうだろう。
あぁ、でも。どうして。
その誘いを聞いた時…ここまで、胸が高鳴ってしまうのか。
この選択はひょっとしたら間違いなのかもしれない。
それでも…この胸の鼓動だけは、目の前のマスターとの出会いを確かに讃えていた。
「…それが合理的な物であり、道徳のある命令ならば従おう。
非道な作戦は許容しない。無茶な作戦には──…まぁ、時と場合に依るかな」
こほんと息を吐いて、返事を返す。
何だか気恥ずかしくて、もったいぶったモノになってしまったけれど。
本当は、答えなんか最初から決まっているくせに。
「あくまでノーチラスの船長はこの僕、『
キャプテン・ネモ』だ。そこは譲らない。
でも…総司令は君だ。僕のマスター、七海龍水。指揮権は預けるよ」
そう伝えて、初めてマスターに向けてほほ笑む。
主の目指す旅路の果ては、ネモにとって好ましいものだったから。
誰かを犠牲にして得る奇跡よりも、マスターの目指す未来の方が目指す価値がある。
そう、彼は考えていた。
だから、龍水をマスターとして戴く事に、迷いはなく。
「…さて、諸君。これからの航海はより過酷なモノになる。
昼夜を押しての作業も増えるだろう。だが…この航海は必ず成し遂げて見せる」
独りごとのようにそう呟いて、龍水の方に向けていた体を、背後へと向き直る。
すると、ネモの背後にはいつの間にか多くの人影ができていた。
そのどれもが、個体によって差異はあるものの、ネモの姿に酷似していた。
これこそネモの持つ能力、初代マスターにより与えられた権能。
ネモ・シリーズと呼ばれる分身能力だった。
幼い風体ながら整然と彼等彼女等は整列しており、練度の高さが伺えた。
また表情も気合に満ちており、士気は非常に高い。
ノーチラス号は、艦として最高の状態にあると、ネモは確信を以て判断する。
そして、その事実を確認した後、艦長として力強く命令を発した。
「僕からの命令はたった一つだ!あらゆる波濤からマスターを守り抜き…
我々こそ、最高最優のサブマリナーであることを、マスターに証明しろ!」
「「「「「Aye, aye, Captain!!」」」」」
二十人を超える分身たちが、鬨の声の様に了解の号令を発し、大気を震わせる。
容姿は幼いながらも、やはり彼らは一流の船乗りだ。
艦もまた一流。そして、自分が指揮を執るのだ。
こうなれば、何の不安があろうことか。
龍水は腕を組み、その相貌の笑みを深めて歌うように。
ネモの号令に応える様に言葉を奏でた。
「あぁ…これから忙しくなるぞ、ライダー。
聖杯戦争を解き明かし、科学で既知の事象へ変えるだけの全てを手に入れる
何一つ、諦めはしない。欲しい=正義だ!!」
力強く言葉を紡ぎながら、ある事を考える。
自分の仲間である彼奴ならば。
あの龍水が認める一番の科学者ならば、この状況で何と言うだろう。
少し考えて、きっと──『石神千空』ならば、こう言うだろう。
想像したそのままの言葉を、龍水は宣言した。
「───そそるぞ、これは!!」
【クラス】ライダー
【真名】キャプテン・ネモ
【出典】Fate/Grand Order
【性別】男
【属性】混沌・中庸
【パラメーター】筋力:C 耐久:B 敏捷:C 魔力:A 幸運:A 宝具:B
【クラススキル】
騎乗:A+
ライダーのクラススキル。乗り物を乗りこなす能力。「乗り物」という概念に対して発揮されるスキルであるため、生物・非生物を問わない。
【保有スキル】
神性:A
高位の神霊の息子であり本人も神霊であるため、最大級のランクを持つ。
海神の加護:B
父である海神ポセイドンによる加護。
水辺での戦闘時、ライダーの全ステータスにボーナス補正が発生し、常時魔力が急速に回復する。
嵐の航海者:C++
と認識されるものを駆る才能。集団のリーダーとしての能力も必要となるため、軍略、カリスマの効果も兼ね備えた特殊スキル。なお、トリトンは別に船長ではなく、
ネモはその船が高性能だったため、『ボロ船で嵐を踏破した』経験は少なく、他の船長系のサーヴァントよりランクは低い。
ただしフィールドが『水辺』である場合、ネモはその性能がより大きく向上する。ランクに『++』が入っているのはこの特性からである。
不撓不屈:C++
英霊ネモの精神性、信念が形になったもの。同ランクまでの精神干渉を軽減する効果があるが、真価は彼の霊基が深刻なダメージを負ったときである。
その時このスキルはBランク相当の戦闘続行と同じ効果が働き、同時に魔力が宝具を放てる分だけマスターの供給に依らず瞬間的に装てんされる。
旅の導き:C++
かつてアルゴー号を導いたトリトンは英雄たちを導く性質を持ち、それが形となったスキル。
水辺において自己を含めた自軍サーヴァント全員にあらゆる判定でボーナス補正を発生させる。
分割思考:A
ライダーの初代マスターであるアトラス院の麒麟児に召喚されたことによって後天的に座に記録されたスキル。
このスキルによってライダーは分身を生み出すことができ、単騎での潜水艦の運用を可能とする。
基本的に分身を生み出せば生み出すほど個々のスペックは低下していくが、それでも水兵(マリーン)数人までならネモ本体と遜色のないスペックの分身を生み出せる。
【宝具】
『我は征く、大衝角の鸚鵡貝(グレートラム・ノーチラス)』
ランク:A++ 種別:対海宝具 レンジ:2~70 最大捕捉:1
ライダーの愛船である潜水艇「ノーチラス号」そのもの。
あらゆる海を航行し、すべての嵐を越える万能の艦という、人々が夢見たオーバーテクノロジーの結晶。
幻霊と神霊の融合サーヴァントである彼は潜水艦ノーチラス号とも一体となっている。
宝具使用時は潜水艦ノーチラス号を主体とした姿へとかたちを変えて、備わった大衝角を用いて突撃を行う。敵がどれほど巨大な存在(大イカ、巨大戦艦など)でも怯まず、これに衝突・突破する特殊な概念を帯びている。
水のない場所(地上や空中)でも使用可能だが、フィールドが水中、海中であれば命中率が著しく上昇し、威力も向上する珍しい性質を持つ。
また虚数潜航という技術も習得しており、発動中のライダー及びノーチラス号はあらゆる攻撃、干渉を回避可能、水辺以外でのノーチラス号の運用も可能となっている。
ただし、長時間の潜航は魔力面と存在証明の観点から不可能である。
【weapon】
『我は征く、大衝角の鸚鵡貝』に搭載された各種武装。
【人物背景】
かつてシオン・エルトラム・ソカリスと言う魔術師が人理継続保証機関カルデアの召喚方法を真似て一騎だけ召喚できたサーヴァント。
召喚に使用できる聖遺物を持たなかった彼女が本来サーヴァントになり得ない幻霊を掛け合わせて霊基を成立させている非常に特殊なサーヴァントである。
それ故に通常の聖杯戦争では召喚できるはずもないが、マスターとの相性の良さ故か、それともカルデアの人類史を救う旅路で観測可能となったからか、ともかくこの聖杯戦争で召喚されている。
素直で優しく誰からも愛されたトリトンと、信念の人であり行動力の化身だったネモ船長の二つが合わさった結果、その性格はそれぞれのオリジナルからやや逸脱している。
プロ意識が非常に高く、船の安全を犯すと判断した場合はマスターにさえ背く仕事人。船長としての仕事であってもそうでなくとも、任された仕事に対しては精力的に対応する。
【サーヴァントとしての願い】
なし。マスターの航海が終わるその時まで守り抜く。
【マスター】
七海龍水@Dr.STONE
【マスターとしての願い】
聖杯戦争という儀式の解明。聖杯獲得には拘らない。
【能力・技能】
財閥の御曹司という資金力。
船や飛行機、果ては宇宙ロケットまで操る非常に高レベルな操縦能力。
状況分析能力、人物分析や危険察知能力も人並外れて優秀である。
何より世界全ては俺のモノという不屈にして不撓の欲望と自信を有する精神性。
【人物背景】
この世の全てを目指す、見果てぬ夢を抱いたどこまでも強欲な航海者。
強くて優しい、只人の少年。
最終更新:2022年08月16日 17:02