バイタルサイン

部品構造


  • 大部品: バイタルサイン RD:6 評価値:4
    • 部品: バイタルサインとは
    • 部品: 意識レベル
    • 部品: 体温
    • 部品: 血圧
    • 部品: 脈拍
    • 部品: 呼吸



部品定義


部品: バイタルサインとは

バイタルサイン(vital sign)とは、生体が生きている状態を示す指標のことである。
意識レベル・体温・血圧・脈拍・呼吸などが主な指標として用いられる。
とくに救急医療ではショック状態に陥っているか否かを確かめるため、バイタルサインを迅速に確認することは極めて重要である。
バイタルサインは、バイタル・生命徴候・生存徴候とも呼ばれる。

部品: 意識レベル

意識レベル(level of consciousness)とは、意識障害が疑われる場合、障害の程度を数量的に決める評価基準である。
意識レベルを評価する基準として代表的なものに、GCSとJCSがある。
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GCS(Glasgow Coma Scale)は、開眼機能(eye opening)・言語機能(verbal response)・運動機能(motor response)で意識レベルを評価する。
GCSにおいて、正常は開眼機能4点・言語機能5点・運動機能6点の総和15点、深昏睡は開眼機能1点・言語機能1点・運動機能1点の総和3点である。
GCSは点数が低いほど重症である。
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JCS(Japan Coma Scale)は、「刺激しないでも覚醒している」「刺激に応じて一時的に覚醒する」「刺激しても覚醒しない」の3群に分け、さらに各郡を3~4に細かく分けた10段階の数字で意識レベルを評価する。
JCSにおいて、「刺激しないでも覚醒している」は1桁、「刺激に応じて一時的に覚醒する」は2桁、「刺激しても覚醒しない」は3桁の点数で、桁数が多いほど重症である。
最低点は「刺激しないでも覚醒している」の「意識清明」0点、最高点は「刺激しても覚醒しない」の「痛み刺激に対してまったく反応しない」300点である。
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意識障害の患者を診断する際は、まず患者の名前を呼びかけ、患者が反応するか確認する。
呼びかけに反応がなければ、胸壁をつねるか、指を圧迫して、痛み刺激に反応があるか確認する。
その後、左右の瞳孔の大きさと対光反射を確認する。
対光反射(pupillary light reflex)は、対光反応(pupillary light reaction)とも呼ばれ、光に対して瞳孔が収縮する反応である。
対光反射の確認方法は、ペンライトの光をゆっくりと外側から内側にかけて瞳孔に当てる。
光によって瞳孔が1ミリメートル以上、迅速に収縮するか確認する。
対光反射には直接対光反射と間接対光反射がある。
直接対光反射(direct light reflex)は、直接対光反応(direct light reaction)とも呼ばれ、光を当てたほうの眼の瞳孔が縮瞳することである。
間接対光反射(indirect light reflex)は、間接対光反応(indirect light reaction)とも呼ばれ、光を当てていないほうの眼の瞳孔が縮瞳することである。
瞳孔の収縮を支配する動眼神経(oculomotor nerve)の核が脳幹部にあるため、瞳孔径の左右不同や対光反射消失がある場合、意識障害の原因は脳にあることが多い。
逆に瞳孔径と対光反射の両方とも異常がなければ、意識障害の原因は全身の病気であることが多い。
眼底鏡があれば、網膜静脈の拍動も確認する。
網膜静脈が拍動していれば、頭蓋内圧は亢進していない考えられる。

部品: 体温

人知類を含む恒温動物には、環境による温度変化や肉体活動にかかわらず、体温(body temperature)を一定の範囲に保持されるよう調整する機能がある。
これを体温調整(thermoregulation、body temperature regulation)と呼ぶ。
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体温計(clinical thermometer、fever thermometer)とは、動物の体温を測定するための温度計である。
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体温を測定する際は体内温度に最も近い部位で測定することが好ましい。
人知類の場合、一般に腋窩・口腔・直腸・鼓膜が選ばれる。
腋窩で測定する場合、体表温の影響を受けやすいため、腋の汗をよくふき取る。
その後、体温計の先端が腋窩動脈に触れるよう前方から斜めに挿入し、しっかりと腋を締め、密着させる。
体の左右どちらかに麻痺がある場合、麻痺している側は血液循環が悪く、体温が低く測定されるため、麻痺していない側で測定する。
口腔での測定は、腋窩より安定した値を得られやすいが、咽頭に当たりやすく手技には経験を要する。
測定前の飲食を控え、体温計の先端を舌底面の下に向け、斜めに挿入、口を閉じてもらう。
体温計を舌下に挿入する際、舌小帯に当たらないよう注意する。
直腸での測定は、腋窩温や口腔温と比べ、外部の影響を受けづらく、深部体温に近い値が得られる。
体温計の先端に白色ワセリンやオリーブ油などの潤滑油をつけ、側臥位の患者の肛門から直腸内にゆっくりと体温計を挿入する。
体温計を直腸内に挿入する深さは、人知類の場合、成年なら5センチメートルから6センチメートル、小児なら2センチメートルから3センチメートルである。
耳の鼓膜で体温を測定する場合、赤外線体温計を使用する。
赤外線体温計とは、放射される赤外線を感知し、体温を表示する体温計を使用する。
耳で体温を測定する場合、鼓膜と鼓膜周辺から放射される赤外線で体温を測定する。
耳に体温計を挿入する際は、外耳道をまっすぐにするため、耳介を斜め上に引くようにして挿入する。
体温計を耳に挿入する際、挿入する位置や深さによって測定値が変わることがあるため、注意が必要である。
体温測定は、いずれの測定方法でも、測定後、体温計をアルコール綿で清拭する。
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体温を評価する際、体温は個人差があるため、厳密には普段の体温の比較が重要である。
普段の体温が不明なら、人知類の場合、小児は摂氏37.3度以上、成年は摂氏37.0度以上、高齢者は摂氏36.8度以上を発熱の基準とする。
発熱(fever)とは、体温が上昇している状態のことである。
発熱反応は、外界から体内に侵入した病原体が血液中の多核白血球や単球を活性化し、内因性発熱物質を産生、その信号が脳に作用することで発現する。
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発熱に対して解熱剤を使用することは、必ずしも適切ではない。
発熱による発汗や食欲低下で潜在的に脱水状態になっている場合、血圧が低下しないよう、末梢血管を収縮させていることがある。
この状態で血管を拡張させる作用のある種類の解熱剤を投与すると、一気に末梢血管が拡張して血圧が低下し、循環血液量減少性ショックとなる。
また、解熱剤は併用する薬剤によって、けいれんを起こすものがある。
熱型を見るために解熱しないという考え方もある。
ただし、小児やてんかんの既往がある場合はこの限りではない。
小児の脳は未発達なため、高熱になると熱性けいれんを起こしやすくなる。
また、てんかんの既往がある患者は、けいれんの閾値が下がって発作を起こしやすくなる。
そのため、このような場合は解熱剤を積極的に使用してもよい。
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体温の変動を経時的に記録し、グラフで表現したものを体温曲線(thermometer curve)と呼ぶ。
熱型(fever type)とは、この体温曲線の分類である。
熱型には、稽留熱・弛張熱・間欠熱・波状熱などの種類がある。
稽留熱(continued fever)とは、高熱で1日の体温差が摂氏1度以下の熱型である。
稽留熱で考えられる疾患には、肺炎や腸チフスなどがある。
弛張熱(remittent fever)とは、高熱で1日の体温差が摂氏1度以上あり、低くても平熱にならない熱型である。
弛張熱で考えられる疾患には、敗血症や膠原病などがある。
間欠熱(intermittent fever)とは、高熱で1日の体温差が摂氏1度以上あり、低い場合は平熱に戻ることがある熱型である。
発熱の周期は疾患によって異なるが、間欠熱で考えられる疾患には、弛張熱と同様の疾患の他、マラリアなどがある。
波状熱(undulant fever)とは、発熱する時期としない時期が不規則に繰り返される熱型である。
波状熱で考えられる疾患には、マラリア・ホジキン病・胆道閉鎖症などがある。
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発熱から平常体温に戻ることを解熱と呼ぶ。
熱型と同様、解熱にも分利や渙散などの型がある。
解熱において、分利(crisis)とは、数時間の間に熱が急速に下降し、平熱となる解熱である。
分利は多くの場合、発汗をともなう。
たとえば、肺炎連鎖球菌性肺炎で抗生物質を使用せず、自然に解熱した場合、分利となることが多い。
分利は、熱分離(febrile crisis)とも呼ばれる。
解熱において、渙散(lysis)とは、高熱が数日・数週間を費やして徐々に下がる、熱の下がり方である。
渙散の典型的な例が、腸チフスの解熱である。

部品: 血圧

血圧(blood pressure)とは、血液が血管壁に及ぼす圧力のことである。
血圧はBPとも呼ばれる。
血圧は血管の場所によって異なり、ふつうは四肢の動脈の血圧、とくに上腕動脈の血圧のことを指す。
動脈の血圧は、動脈圧(aterial pressure)、動脈血圧(aterial blood pressure)と呼ばれる。
動脈の血圧は、心周期に一致して周期的に変動する。
心周期(cardiac cycle)とは、心房の収縮から次の心房の収縮までを1周期とする、一連の心臓のうごきのことである。
収縮期血圧(systolic blood pressure)とは、心臓の収縮期の血圧で、SBP・最高血圧・最大血圧とも呼ばれる。
拡張期血圧(diastolic blood pressure)とは、心臓の収縮期の血圧で、DBP・弛緩期血圧・最低血圧・最小血圧とも呼ばれる。
収縮期血圧と拡張期血圧の差は、脈圧(pulse presseure)、PPと呼ばれる。
通常、血圧は2回測定し、その平均値で診断する。
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心拍出量が多いほど、末梢血管抵抗が大きいほど、血圧が高くなる。
心拍出量とは、1分間あたりに心臓から拍出される総血液量である。
心臓の収縮力が強まったり、心拍数が増加すると、心拍出量が増加する。
末梢血管抵抗とは、血管の内腔径や血液の粘性などである。
動脈硬化によって血管壁が硬くなると、血流に合わせて血管を広げられなくなるため、末梢血管抵抗が増加する。
また、高血糖や高脂血症で、血液の粘性が増すと、末梢血管抵抗が増加する。
循環血液量も血圧に影響する。
腎不全などで水分を体外に出す機能が弱っている場合、全身の血液量が増え、血圧が高くなる。
逆に、大量出血や脱水などで、循環血液量が低下した場合、血圧は低くなる。
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血圧が正常な範囲より高い場合、脳血管疾患を引き起こすおそれがあるため、注意が必要である。
逆に、血圧が正常な範囲より低い場合、ショック症状に注意する必要がある。
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血圧計(hemodynamometer、sphygmobolometer、sphygmodynamometer、sphygmomanometer)は、血圧を測定する装置である。
血圧計は脈圧計とも呼ばれる。
血圧計には間接式と直接式があり、通常、間接式が用いられる。
間接式の血圧計は、上腕に巻きつけたマンシェットで上腕動脈を圧迫し、その血圧の変化もしくは阻止するために要する圧力を気圧計で読む。
測定の際、上腕の高さは心臓と同じくらいにし、マンシェットは肘関節から2~3センチメートル上を指2本入るくらいのきつさで巻く。
マンシェット(manchette)とは、体の一部に巻きつけることができる帯状の構造物である。
マンシェットは内腔を有し、気体や液体を内腔に注入することで動脈血を測定する。
直接式の血圧計は、カテーテルを血管内に挿入し、その内圧を電気信号として測定する装置である。
直接式の血圧計は動脈圧モニター(aterial pressure monitoring)とも呼ばれ、主に手術中に用いられる。
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血圧計がない場合でも、患者の橈骨動脈と上腕動脈をそれぞれ、検者の左右の手指の触診によって、血圧を推定することができる。
上腕動脈をどの程度の強さで圧迫すれば、橈骨動脈の拍動が触れなくなるかで血圧を推定する方法である。
また心臓から離れた動脈ほど脈拍が弱くなるため、脈拍が橈骨動脈・大腿動脈・総頸動脈など、どの動脈まで触れるかから、血圧を推定することができる。

部品: 脈拍

脈あるいは脈拍(pulse)とは通常、体表面から触診できる動脈の拍動のことである。
広義には、動脈血圧の伝播速度や断面容積の変動、心臓に近い静脈の拍動も脈拍に含まれる。
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健常な人知類の場合、新生児なら毎分130拍前後、乳幼児なら毎分100拍前後、成年なら毎分70拍前後である。
脈拍や心拍が毎分60拍未満を徐脈あるいは徐拍(bradycardia、pulsus infrequens、infrequent pulse)、毎分90拍以上を頻脈あるいは頻拍(tachycardia、pulsus frequens、frequent pulse)と呼ぶ。
ただし、人知類の高齢者は、普段の脈拍数が毎分60拍前後の場合もあるため、毎分50拍未満で徐脈とする。
徐脈の原因は発熱・貧血・心不全・甲状腺機能亢進・ショックなどが考えられる。
また、頻脈の原因は甲状腺機能低下・虚血性心疾患・薬剤などが考えられる。
徐脈・頻脈はどちらも原因が多岐にわたるため、ほかのバイタルサインにも注意することが大切である。
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脈拍の律動が不規則なものを不整脈(arrhythmia、pulusus irregularis)と呼ぶ。
不整脈には、規則的不規則と不規則的不規則がある。
規則的不規則とは、規則的に脈が飛ぶ不整脈である。
また、不規則的不規則とは、律動がまったくばらばらな不整脈のことである。
不規則的不規則は絶対的不整脈とも呼ばれる。
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人知類が人知類の脈拍を測定する場合、手首にある橈骨動脈の走行に沿うよう人差し指・中指・薬指の3本の指をそろえて触知する。
この際、指先より指の腹のほうが触れやすい。
脈拍数は通常1分間で測定する。
不整脈の既往がない場合、30秒の脈拍数を2倍にして測定値としてもよい。
ただし2倍にした場合、誤差が生じやすいため、注意すべきである。
大動脈炎症候群(aortitis syndrome)や動脈瘤(aneurysm)では、動脈の狭窄を生じた側の拍動が弱くなるため、左右差が生じることがある。
そのため、両腕の拍動を同時に触知して左右差を確認することが重要である。
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脈拍欠損(pulse deficit)とは、心臓が空打ちのようになり、心拍数より脈拍数が少なくなることである。
通常1分あたりの心拍数と脈拍数の差を指す。
たとえば心拍が毎分120回、脈拍が毎分100回なら脈拍欠損は毎分20回である。
脈拍欠損は心房細動で頻脈のときにみられる。
脈拍欠損は脈欠損、脱落脈(dropped-beat pulse)とも呼ばれる。

部品: 呼吸

呼吸(respiration)とは、生体が酸素を外界から摂取し、二酸化炭素を外界へ排出することである。
バイタルサインとしては、呼吸数・呼吸のリズム・呼吸音などが重要である。
呼吸を観察する際は、すべての診療手技と同様に、視診・聴診・触診の順におこなう。
視診では、患者の左右の胸郭が同時に上下していることを確認する。
患者に呼吸を観察していることを伝えると、患者が意識して呼吸数増加の恐れがあるため、伝えないほうがよい。
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呼吸数(respiration rate、respiratory rate)とは、1分間の呼吸運動周期の数のことである。
年齢によって異なるが、人知類の場合、安静時は1分間に12回から15回くらいである。
呼吸数がおおむね毎分20回以上を頻呼吸(tachypnea)、毎分12回以下を徐呼吸(bradypnea)と呼ぶ。
頻呼吸の原因は、運動・恐怖・興奮・発熱・うっ血性心不全・呼吸器疾患などが考えられる。
また、徐呼吸の原因は、頭蓋内圧亢進・急性アルコール中毒、麻酔薬や睡眠薬の投与などが考えられる。
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呼吸のリズムには、チェーン・ストークス呼吸、ビオー呼吸、クスマウル呼吸などがある。
チェーン・ストークス呼吸(Cheyne-Stokes respiration)とは、浅い呼吸から深い呼吸に移行し、再び浅くなり一時的に呼吸停止という周期を1周期30秒から2分くらいで繰り返す異常呼吸である。
チェーン・ストークス呼吸は、中枢神経疾患・うっ血性心不全・睡眠時無呼吸症候群などでみられる。
チェーン・ストークス呼吸は交代性無呼吸とも呼ばれる。
ビオー呼吸(Biot respiration)とは、呼吸と無呼吸を不規則に繰り返す異常呼吸である。
ビオー呼吸は、脳炎・髄膜炎・脳腫瘍・脳外傷などでみられる。
ビオー呼吸は髄膜炎性呼吸や間欠髄膜炎性呼吸とも呼ばれる。
クスマウル呼吸(Kussmaul respiration)とは、深く大きい呼吸をゆっくりと繰り返す異常呼吸である。
クスマウル呼吸は、糖尿病や尿毒症などでみられる。
クスマウル呼吸は、呼気にアセトン臭がみとめられることもある。
クスマウル呼吸は糖尿病昏睡性大呼吸とも呼ばれる。
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閉塞性換気障害がある場合、呼気時に末梢気道の閉塞を防ぐため、口唇をすぼめ、ゆっくり息を吐くようになる。
このような呼吸を、口すぼめ呼吸(pursed-lip breathing)と呼ぶ。
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呼吸困難の患者は、横になると呼吸しにくいため、座ったままものによりかかることがある。
このような姿勢をとることを起坐呼吸(orthopnea)と呼ぶ。
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呼吸音(breath sound)とは、換気運動により気道内で発生した音のことである。
呼吸音を聴く際は、まず聴診器を用いずに、患者の呼吸音を聴く。
この際、声が出せるかも同時に観察する。
その後、患者がリラックスできる体勢になってもらい、聴診器で呼吸音を詳しく聴く。
聴診は左右対称の点を交互におこなう。
この際、聴診器のチェストピースを胸部前面や背面にしっかりと密着させる。
チェストピースには、膜面とベル面がある。
膜面は、腸音や肺音など、高音域の音を聴くときに用いる。
ベル面は、血管音や血圧など、低音域の音を聴くときに用いる。
呼吸器系においては、基本的に膜面を当てて聴診し、くぼんでいる肺尖部などはベル面を当てる。
一箇所につき、吸気と呼気の一呼吸は最低聴取したほうがよい。
聴診する部位によって、正常な呼吸音は異なるため、部位ごとの正常な呼吸音を理解することが重要である。
看護記録に残す際、呼吸音が正常か異常か、あるいは聴取できないかは最低限、記録に残すようにする。
呼吸音の減弱・消失の原因としては、気胸や胸水貯留で呼吸音の伝達が阻害された場合、疼痛や筋力低下で換気量が低下された場合などが考えられる。
肺性の副雑音(adventitious sound)はラ音(rale)と呼ばれ、50ミリ秒以上持続する連続性ラ音と10ミリ秒以内の断続性ラ音に大別できる。
連続性ラ音(continuous sound、continuous rale)は、乾性ラ音(dry rale)とも呼ばれ、いびき音と笛音に分けられる。
いびき音は、比較的低い音で、いびきのような連続性の雑音のことである。
いびき音は、吸気ではほとんど聴かれず、主に呼気のはじめから聴取される。
太い気管支の狭窄がいびき音の原因で、気管支喘息・気管支炎・気道異物・肺がんなどで聴かれる。
咳によっていびき音が変化・消失することもある。
いびき音は、低調性連続性副雑音・低音性連続性ラ音・ロンカイ(rhonchi)・ロンカス(rhonchus)とも呼ばれる。
笛音(piping rale)は、笛や口笛を吹くような高調の純音で、呼気に特徴がある。
気道狭窄部を空気が流れることが笛音の原因で、気管支喘息・気管支炎・気道異物・肺がん・肺気腫などで聴かれる。
笛音は、水笛音(water-pipe sound)・笛声音(whistling rale)・ウィーズ(wheeze)とも呼ばれる。
断続性ラ音(discontinuous sound、discontinuous rale)は、湿性ラ音(wet rale)やクラックル(crackle)とも呼ばれ、水泡音と捻髪音に分けられる。
水泡音とは、肺水腫や肺炎などで気道内に水分や分泌物が貯留したところを、空気が通過することによって生じる膜や気泡の破裂音である。
水泡音は、吸気の初期から聴かれ、呼気でもみとめられる。
水泡音は、粗い断続性副雑音・粗い断続性ラ音・コースクラックル(coarse crackle)とも呼ばれる。
捻髪音とは、毛髪を耳のそばでねじったときに聞こえる音に似た高調の細かい音である。
捻髪音は、面ファスナーをはがすときの音に近い。
捻髪音は、線維化して弾力性を失った肺胞が膨らむ際に生じる音とされており、間質性肺炎・肺線維症・石綿肺・過敏性肺臓炎・肺水腫などで聴かれる。
捻髪音は、捻髪様ラ音(crepitant rale)・ファインクラックル(fine crackle)とも呼ばれる。



提出書式


 大部品: バイタルサイン RD:6 評価値:4
 -部品: バイタルサインとは
 -部品: 意識レベル
 -部品: 体温
 -部品: 血圧
 -部品: 脈拍
 -部品: 呼吸
 
 
 部品: バイタルサインとは
 バイタルサイン(vital sign)とは、生体が生きている状態を示す指標のことである。
 意識レベル・体温・血圧・脈拍・呼吸などが主な指標として用いられる。
 とくに救急医療ではショック状態に陥っているか否かを確かめるため、バイタルサインを迅速に確認することは極めて重要である。
 バイタルサインは、バイタル・生命徴候・生存徴候とも呼ばれる。
 
 部品: 意識レベル
 意識レベル(level of consciousness)とは、意識障害が疑われる場合、障害の程度を数量的に決める評価基準である。
 意識レベルを評価する基準として代表的なものに、GCSとJCSがある。
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 GCS(Glasgow Coma Scale)は、開眼機能(eye opening)・言語機能(verbal response)・運動機能(motor response)で意識レベルを評価する。
 GCSにおいて、正常は開眼機能4点・言語機能5点・運動機能6点の総和15点、深昏睡は開眼機能1点・言語機能1点・運動機能1点の総和3点である。
 GCSは点数が低いほど重症である。
 /*/
 JCS(Japan Coma Scale)は、「刺激しないでも覚醒している」「刺激に応じて一時的に覚醒する」「刺激しても覚醒しない」の3群に分け、さらに各郡を3~4に細かく分けた10段階の数字で意識レベルを評価する。
 JCSにおいて、「刺激しないでも覚醒している」は1桁、「刺激に応じて一時的に覚醒する」は2桁、「刺激しても覚醒しない」は3桁の点数で、桁数が多いほど重症である。
 最低点は「刺激しないでも覚醒している」の「意識清明」0点、最高点は「刺激しても覚醒しない」の「痛み刺激に対してまったく反応しない」300点である。
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 意識障害の患者を診断する際は、まず患者の名前を呼びかけ、患者が反応するか確認する。
 呼びかけに反応がなければ、胸壁をつねるか、指を圧迫して、痛み刺激に反応があるか確認する。
 その後、左右の瞳孔の大きさと対光反射を確認する。
 対光反射(pupillary light reflex)は、対光反応(pupillary light reaction)とも呼ばれ、光に対して瞳孔が収縮する反応である。
 対光反射の確認方法は、ペンライトの光をゆっくりと外側から内側にかけて瞳孔に当てる。
 光によって瞳孔が1ミリメートル以上、迅速に収縮するか確認する。
 対光反射には直接対光反射と間接対光反射がある。
 直接対光反射(direct light reflex)は、直接対光反応(direct light reaction)とも呼ばれ、光を当てたほうの眼の瞳孔が縮瞳することである。
 間接対光反射(indirect light reflex)は、間接対光反応(indirect light reaction)とも呼ばれ、光を当てていないほうの眼の瞳孔が縮瞳することである。
 瞳孔の収縮を支配する動眼神経(oculomotor nerve)の核が脳幹部にあるため、瞳孔径の左右不同や対光反射消失がある場合、意識障害の原因は脳にあることが多い。
 逆に瞳孔径と対光反射の両方とも異常がなければ、意識障害の原因は全身の病気であることが多い。
 眼底鏡があれば、網膜静脈の拍動も確認する。
 網膜静脈が拍動していれば、頭蓋内圧は亢進していない考えられる。
 
 部品: 体温
 人知類を含む恒温動物には、環境による温度変化や肉体活動にかかわらず、体温(body temperature)を一定の範囲に保持されるよう調整する機能がある。
 これを体温調整(thermoregulation、body temperature regulation)と呼ぶ。
 /*/
 体温計(clinical thermometer、fever thermometer)とは、動物の体温を測定するための温度計である。
 /*/
 体温を測定する際は体内温度に最も近い部位で測定することが好ましい。
 人知類の場合、一般に腋窩・口腔・直腸・鼓膜が選ばれる。
 腋窩で測定する場合、体表温の影響を受けやすいため、腋の汗をよくふき取る。
 その後、体温計の先端が腋窩動脈に触れるよう前方から斜めに挿入し、しっかりと腋を締め、密着させる。
 体の左右どちらかに麻痺がある場合、麻痺している側は血液循環が悪く、体温が低く測定されるため、麻痺していない側で測定する。
 口腔での測定は、腋窩より安定した値を得られやすいが、咽頭に当たりやすく手技には経験を要する。
 測定前の飲食を控え、体温計の先端を舌底面の下に向け、斜めに挿入、口を閉じてもらう。
 体温計を舌下に挿入する際、舌小帯に当たらないよう注意する。
 直腸での測定は、腋窩温や口腔温と比べ、外部の影響を受けづらく、深部体温に近い値が得られる。
 体温計の先端に白色ワセリンやオリーブ油などの潤滑油をつけ、側臥位の患者の肛門から直腸内にゆっくりと体温計を挿入する。
 体温計を直腸内に挿入する深さは、人知類の場合、成年なら5センチメートルから6センチメートル、小児なら2センチメートルから3センチメートルである。
 耳の鼓膜で体温を測定する場合、赤外線体温計を使用する。
 赤外線体温計とは、放射される赤外線を感知し、体温を表示する体温計を使用する。
 耳で体温を測定する場合、鼓膜と鼓膜周辺から放射される赤外線で体温を測定する。
 耳に体温計を挿入する際は、外耳道をまっすぐにするため、耳介を斜め上に引くようにして挿入する。
 体温計を耳に挿入する際、挿入する位置や深さによって測定値が変わることがあるため、注意が必要である。
 体温測定は、いずれの測定方法でも、測定後、体温計をアルコール綿で清拭する。
 /*/
 体温を評価する際、体温は個人差があるため、厳密には普段の体温の比較が重要である。
 普段の体温が不明なら、人知類の場合、小児は摂氏37.3度以上、成年は摂氏37.0度以上、高齢者は摂氏36.8度以上を発熱の基準とする。
 発熱(fever)とは、体温が上昇している状態のことである。
 発熱反応は、外界から体内に侵入した病原体が血液中の多核白血球や単球を活性化し、内因性発熱物質を産生、その信号が脳に作用することで発現する。
 /*/
 発熱に対して解熱剤を使用することは、必ずしも適切ではない。
 発熱による発汗や食欲低下で潜在的に脱水状態になっている場合、血圧が低下しないよう、末梢血管を収縮させていることがある。
 この状態で血管を拡張させる作用のある種類の解熱剤を投与すると、一気に末梢血管が拡張して血圧が低下し、循環血液量減少性ショックとなる。
 また、解熱剤は併用する薬剤によって、けいれんを起こすものがある。
 熱型を見るために解熱しないという考え方もある。
 ただし、小児やてんかんの既往がある場合はこの限りではない。
 小児の脳は未発達なため、高熱になると熱性けいれんを起こしやすくなる。
 また、てんかんの既往がある患者は、けいれんの閾値が下がって発作を起こしやすくなる。
 そのため、このような場合は解熱剤を積極的に使用してもよい。
 /*/
 体温の変動を経時的に記録し、グラフで表現したものを体温曲線(thermometer curve)と呼ぶ。
 熱型(fever type)とは、この体温曲線の分類である。
 熱型には、稽留熱・弛張熱・間欠熱・波状熱などの種類がある。
 稽留熱(continued fever)とは、高熱で1日の体温差が摂氏1度以下の熱型である。
 稽留熱で考えられる疾患には、肺炎や腸チフスなどがある。
 弛張熱(remittent fever)とは、高熱で1日の体温差が摂氏1度以上あり、低くても平熱にならない熱型である。
 弛張熱で考えられる疾患には、敗血症や膠原病などがある。
 間欠熱(intermittent fever)とは、高熱で1日の体温差が摂氏1度以上あり、低い場合は平熱に戻ることがある熱型である。
 発熱の周期は疾患によって異なるが、間欠熱で考えられる疾患には、弛張熱と同様の疾患の他、マラリアなどがある。
 波状熱(undulant fever)とは、発熱する時期としない時期が不規則に繰り返される熱型である。
 波状熱で考えられる疾患には、マラリア・ホジキン病・胆道閉鎖症などがある。
 /*/
 発熱から平常体温に戻ることを解熱と呼ぶ。
 熱型と同様、解熱にも分利や渙散などの型がある。
 解熱において、分利(crisis)とは、数時間の間に熱が急速に下降し、平熱となる解熱である。
 分利は多くの場合、発汗をともなう。
 たとえば、肺炎連鎖球菌性肺炎で抗生物質を使用せず、自然に解熱した場合、分利となることが多い。
 分利は、熱分離(febrile crisis)とも呼ばれる。
 解熱において、渙散(lysis)とは、高熱が数日・数週間を費やして徐々に下がる、熱の下がり方である。
 渙散の典型的な例が、腸チフスの解熱である。
 
 部品: 血圧
 血圧(blood pressure)とは、血液が血管壁に及ぼす圧力のことである。
 血圧はBPとも呼ばれる。
 血圧は血管の場所によって異なり、ふつうは四肢の動脈の血圧、とくに上腕動脈の血圧のことを指す。
 動脈の血圧は、動脈圧(aterial pressure)、動脈血圧(aterial blood pressure)と呼ばれる。
 動脈の血圧は、心周期に一致して周期的に変動する。
 心周期(cardiac cycle)とは、心房の収縮から次の心房の収縮までを1周期とする、一連の心臓のうごきのことである。
 収縮期血圧(systolic blood pressure)とは、心臓の収縮期の血圧で、SBP・最高血圧・最大血圧とも呼ばれる。
 拡張期血圧(diastolic blood pressure)とは、心臓の収縮期の血圧で、DBP・弛緩期血圧・最低血圧・最小血圧とも呼ばれる。
 収縮期血圧と拡張期血圧の差は、脈圧(pulse presseure)、PPと呼ばれる。
 通常、血圧は2回測定し、その平均値で診断する。
 /*/
 心拍出量が多いほど、末梢血管抵抗が大きいほど、血圧が高くなる。
 心拍出量とは、1分間あたりに心臓から拍出される総血液量である。
 心臓の収縮力が強まったり、心拍数が増加すると、心拍出量が増加する。
 末梢血管抵抗とは、血管の内腔径や血液の粘性などである。
 動脈硬化によって血管壁が硬くなると、血流に合わせて血管を広げられなくなるため、末梢血管抵抗が増加する。
 また、高血糖や高脂血症で、血液の粘性が増すと、末梢血管抵抗が増加する。
 循環血液量も血圧に影響する。
 腎不全などで水分を体外に出す機能が弱っている場合、全身の血液量が増え、血圧が高くなる。
 逆に、大量出血や脱水などで、循環血液量が低下した場合、血圧は低くなる。
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 血圧が正常な範囲より高い場合、脳血管疾患を引き起こすおそれがあるため、注意が必要である。
 逆に、血圧が正常な範囲より低い場合、ショック症状に注意する必要がある。
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 血圧計(hemodynamometer、sphygmobolometer、sphygmodynamometer、sphygmomanometer)は、血圧を測定する装置である。
 血圧計は脈圧計とも呼ばれる。
 血圧計には間接式と直接式があり、通常、間接式が用いられる。
 間接式の血圧計は、上腕に巻きつけたマンシェットで上腕動脈を圧迫し、その血圧の変化もしくは阻止するために要する圧力を気圧計で読む。
 測定の際、上腕の高さは心臓と同じくらいにし、マンシェットは肘関節から2~3センチメートル上を指2本入るくらいのきつさで巻く。
 マンシェット(manchette)とは、体の一部に巻きつけることができる帯状の構造物である。
 マンシェットは内腔を有し、気体や液体を内腔に注入することで動脈血を測定する。
 直接式の血圧計は、カテーテルを血管内に挿入し、その内圧を電気信号として測定する装置である。
 直接式の血圧計は動脈圧モニター(aterial pressure monitoring)とも呼ばれ、主に手術中に用いられる。
 /*/
 血圧計がない場合でも、患者の橈骨動脈と上腕動脈をそれぞれ、検者の左右の手指の触診によって、血圧を推定することができる。
 上腕動脈をどの程度の強さで圧迫すれば、橈骨動脈の拍動が触れなくなるかで血圧を推定する方法である。
 また心臓から離れた動脈ほど脈拍が弱くなるため、脈拍が橈骨動脈・大腿動脈・総頸動脈など、どの動脈まで触れるかから、血圧を推定することができる。
 
 部品: 脈拍
 脈あるいは脈拍(pulse)とは通常、体表面から触診できる動脈の拍動のことである。
 広義には、動脈血圧の伝播速度や断面容積の変動、心臓に近い静脈の拍動も脈拍に含まれる。
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 健常な人知類の場合、新生児なら毎分130拍前後、乳幼児なら毎分100拍前後、成年なら毎分70拍前後である。
 脈拍や心拍が毎分60拍未満を徐脈あるいは徐拍(bradycardia、pulsus infrequens、infrequent pulse)、毎分90拍以上を頻脈あるいは頻拍(tachycardia、pulsus frequens、frequent pulse)と呼ぶ。
 ただし、人知類の高齢者は、普段の脈拍数が毎分60拍前後の場合もあるため、毎分50拍未満で徐脈とする。
 徐脈の原因は発熱・貧血・心不全・甲状腺機能亢進・ショックなどが考えられる。
 また、頻脈の原因は甲状腺機能低下・虚血性心疾患・薬剤などが考えられる。
 徐脈・頻脈はどちらも原因が多岐にわたるため、ほかのバイタルサインにも注意することが大切である。
 /*/
 脈拍の律動が不規則なものを不整脈(arrhythmia、pulusus irregularis)と呼ぶ。
 不整脈には、規則的不規則と不規則的不規則がある。
 規則的不規則とは、規則的に脈が飛ぶ不整脈である。
 また、不規則的不規則とは、律動がまったくばらばらな不整脈のことである。
 不規則的不規則は絶対的不整脈とも呼ばれる。
 /*/
 人知類が人知類の脈拍を測定する場合、手首にある橈骨動脈の走行に沿うよう人差し指・中指・薬指の3本の指をそろえて触知する。
 この際、指先より指の腹のほうが触れやすい。
 脈拍数は通常1分間で測定する。
 不整脈の既往がない場合、30秒の脈拍数を2倍にして測定値としてもよい。
 ただし2倍にした場合、誤差が生じやすいため、注意すべきである。
 大動脈炎症候群(aortitis syndrome)や動脈瘤(aneurysm)では、動脈の狭窄を生じた側の拍動が弱くなるため、左右差が生じることがある。
 そのため、両腕の拍動を同時に触知して左右差を確認することが重要である。
 /*/
 脈拍欠損(pulse deficit)とは、心臓が空打ちのようになり、心拍数より脈拍数が少なくなることである。
 通常1分あたりの心拍数と脈拍数の差を指す。
 たとえば心拍が毎分120回、脈拍が毎分100回なら脈拍欠損は毎分20回である。
 脈拍欠損は心房細動で頻脈のときにみられる。
 脈拍欠損は脈欠損、脱落脈(dropped-beat pulse)とも呼ばれる。
 
 部品: 呼吸
 呼吸(respiration)とは、生体が酸素を外界から摂取し、二酸化炭素を外界へ排出することである。
 バイタルサインとしては、呼吸数・呼吸のリズム・呼吸音などが重要である。
 呼吸を観察する際は、すべての診療手技と同様に、視診・聴診・触診の順におこなう。
 視診では、患者の左右の胸郭が同時に上下していることを確認する。
 患者に呼吸を観察していることを伝えると、患者が意識して呼吸数増加の恐れがあるため、伝えないほうがよい。
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 呼吸数(respiration rate、respiratory rate)とは、1分間の呼吸運動周期の数のことである。
 年齢によって異なるが、人知類の場合、安静時は1分間に12回から15回くらいである。
 呼吸数がおおむね毎分20回以上を頻呼吸(tachypnea)、毎分12回以下を徐呼吸(bradypnea)と呼ぶ。
 頻呼吸の原因は、運動・恐怖・興奮・発熱・うっ血性心不全・呼吸器疾患などが考えられる。
 また、徐呼吸の原因は、頭蓋内圧亢進・急性アルコール中毒、麻酔薬や睡眠薬の投与などが考えられる。
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 呼吸のリズムには、チェーン・ストークス呼吸、ビオー呼吸、クスマウル呼吸などがある。
 チェーン・ストークス呼吸(Cheyne-Stokes respiration)とは、浅い呼吸から深い呼吸に移行し、再び浅くなり一時的に呼吸停止という周期を1周期30秒から2分くらいで繰り返す異常呼吸である。
 チェーン・ストークス呼吸は、中枢神経疾患・うっ血性心不全・睡眠時無呼吸症候群などでみられる。
 チェーン・ストークス呼吸は交代性無呼吸とも呼ばれる。
 ビオー呼吸(Biot respiration)とは、呼吸と無呼吸を不規則に繰り返す異常呼吸である。
 ビオー呼吸は、脳炎・髄膜炎・脳腫瘍・脳外傷などでみられる。
 ビオー呼吸は髄膜炎性呼吸や間欠髄膜炎性呼吸とも呼ばれる。
 クスマウル呼吸(Kussmaul respiration)とは、深く大きい呼吸をゆっくりと繰り返す異常呼吸である。
 クスマウル呼吸は、糖尿病や尿毒症などでみられる。
 クスマウル呼吸は、呼気にアセトン臭がみとめられることもある。
 クスマウル呼吸は糖尿病昏睡性大呼吸とも呼ばれる。
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 閉塞性換気障害がある場合、呼気時に末梢気道の閉塞を防ぐため、口唇をすぼめ、ゆっくり息を吐くようになる。
 このような呼吸を、口すぼめ呼吸(pursed-lip breathing)と呼ぶ。
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 呼吸困難の患者は、横になると呼吸しにくいため、座ったままものによりかかることがある。
 このような姿勢をとることを起坐呼吸(orthopnea)と呼ぶ。
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 呼吸音(breath sound)とは、換気運動により気道内で発生した音のことである。
 呼吸音を聴く際は、まず聴診器を用いずに、患者の呼吸音を聴く。
 この際、声が出せるかも同時に観察する。
 その後、患者がリラックスできる体勢になってもらい、聴診器で呼吸音を詳しく聴く。
 聴診は左右対称の点を交互におこなう。
 この際、聴診器のチェストピースを胸部前面や背面にしっかりと密着させる。
 チェストピースには、膜面とベル面がある。
 膜面は、腸音や肺音など、高音域の音を聴くときに用いる。
 ベル面は、血管音や血圧など、低音域の音を聴くときに用いる。
 呼吸器系においては、基本的に膜面を当てて聴診し、くぼんでいる肺尖部などはベル面を当てる。
 一箇所につき、吸気と呼気の一呼吸は最低聴取したほうがよい。
 聴診する部位によって、正常な呼吸音は異なるため、部位ごとの正常な呼吸音を理解することが重要である。
 [[看護記録]]に残す際、呼吸音が正常か異常か、あるいは聴取できないかは最低限、記録に残すようにする。
 呼吸音の減弱・消失の原因としては、気胸や胸水貯留で呼吸音の伝達が阻害された場合、疼痛や筋力低下で換気量が低下された場合などが考えられる。
 肺性の副雑音(adventitious sound)はラ音(rale)と呼ばれ、50ミリ秒以上持続する連続性ラ音と10ミリ秒以内の断続性ラ音に大別できる。
 連続性ラ音(continuous sound、continuous rale)は、乾性ラ音(dry rale)とも呼ばれ、いびき音と笛音に分けられる。
 いびき音は、比較的低い音で、いびきのような連続性の雑音のことである。
 いびき音は、吸気ではほとんど聴かれず、主に呼気のはじめから聴取される。
 太い気管支の狭窄がいびき音の原因で、気管支喘息・気管支炎・気道異物・肺がんなどで聴かれる。
 咳によっていびき音が変化・消失することもある。
 いびき音は、低調性連続性副雑音・低音性連続性ラ音・ロンカイ(rhonchi)・ロンカス(rhonchus)とも呼ばれる。
 笛音(piping rale)は、笛や口笛を吹くような高調の純音で、呼気に特徴がある。
 気道狭窄部を空気が流れることが笛音の原因で、気管支喘息・気管支炎・気道異物・肺がん・肺気腫などで聴かれる。
 笛音は、水笛音(water-pipe sound)・笛声音(whistling rale)・ウィーズ(wheeze)とも呼ばれる。
 断続性ラ音(discontinuous sound、discontinuous rale)は、湿性ラ音(wet rale)やクラックル(crackle)とも呼ばれ、水泡音と捻髪音に分けられる。
 水泡音とは、肺水腫や肺炎などで気道内に水分や分泌物が貯留したところを、空気が通過することによって生じる膜や気泡の破裂音である。
 水泡音は、吸気の初期から聴かれ、呼気でもみとめられる。
 水泡音は、粗い断続性副雑音・粗い断続性ラ音・コースクラックル(coarse crackle)とも呼ばれる。
 捻髪音とは、毛髪を耳のそばでねじったときに聞こえる音に似た高調の細かい音である。
 捻髪音は、面ファスナーをはがすときの音に近い。
 捻髪音は、線維化して弾力性を失った肺胞が膨らむ際に生じる音とされており、間質性肺炎・肺線維症・石綿肺・過敏性肺臓炎・肺水腫などで聴かれる。
 捻髪音は、捻髪様ラ音(crepitant rale)・ファインクラックル(fine crackle)とも呼ばれる。
 
 


インポート用定義データ


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         "title": "バイタルサインとは",
         "description": "バイタルサイン(vital sign)とは、生体が生きている状態を示す指標のことである。\n意識レベル・体温・血圧・脈拍・呼吸などが主な指標として用いられる。\nとくに救急医療ではショック状態に陥っているか否かを確かめるため、バイタルサインを迅速に確認することは極めて重要である。\nバイタルサインは、バイタル・生命徴候・生存徴候とも呼ばれる。",
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       {
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         "description": "意識レベル(level of consciousness)とは、意識障害が疑われる場合、障害の程度を数量的に決める評価基準である。\n意識レベルを評価する基準として代表的なものに、GCSとJCSがある。\n/*/\nGCS(Glasgow Coma Scale)は、開眼機能(eye opening)・言語機能(verbal response)・運動機能(motor response)で意識レベルを評価する。\nGCSにおいて、正常は開眼機能4点・言語機能5点・運動機能6点の総和15点、深昏睡は開眼機能1点・言語機能1点・運動機能1点の総和3点である。\nGCSは点数が低いほど重症である。\n/*/\nJCS(Japan Coma Scale)は、「刺激しないでも覚醒している」「刺激に応じて一時的に覚醒する」「刺激しても覚醒しない」の3群に分け、さらに各郡を3~4に細かく分けた10段階の数字で意識レベルを評価する。\nJCSにおいて、「刺激しないでも覚醒している」は1桁、「刺激に応じて一時的に覚醒する」は2桁、「刺激しても覚醒しない」は3桁の点数で、桁数が多いほど重症である。\n最低点は「刺激しないでも覚醒している」の「意識清明」0点、最高点は「刺激しても覚醒しない」の「痛み刺激に対してまったく反応しない」300点である。\n/*/\n意識障害の患者を診断する際は、まず患者の名前を呼びかけ、患者が反応するか確認する。\n呼びかけに反応がなければ、胸壁をつねるか、指を圧迫して、痛み刺激に反応があるか確認する。\nその後、左右の瞳孔の大きさと対光反射を確認する。\n対光反射(pupillary light reflex)は、対光反応(pupillary light reaction)とも呼ばれ、光に対して瞳孔が収縮する反応である。\n対光反射の確認方法は、ペンライトの光をゆっくりと外側から内側にかけて瞳孔に当てる。\n光によって瞳孔が1ミリメートル以上、迅速に収縮するか確認する。\n対光反射には直接対光反射と間接対光反射がある。\n直接対光反射(direct light reflex)は、直接対光反応(direct light reaction)とも呼ばれ、光を当てたほうの眼の瞳孔が縮瞳することである。\n間接対光反射(indirect light reflex)は、間接対光反応(indirect light reaction)とも呼ばれ、光を当てていないほうの眼の瞳孔が縮瞳することである。\n瞳孔の収縮を支配する動眼神経(oculomotor nerve)の核が脳幹部にあるため、瞳孔径の左右不同や対光反射消失がある場合、意識障害の原因は脳にあることが多い。\n逆に瞳孔径と対光反射の両方とも異常がなければ、意識障害の原因は全身の病気であることが多い。\n眼底鏡があれば、網膜静脈の拍動も確認する。\n網膜静脈が拍動していれば、頭蓋内圧は亢進していない考えられる。",
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         "title": "体温",
         "description": "人知類を含む恒温動物には、環境による温度変化や肉体活動にかかわらず、体温(body temperature)を一定の範囲に保持されるよう調整する機能がある。\nこれを体温調整(thermoregulation、body temperature regulation)と呼ぶ。\n/*/\n体温計(clinical thermometer、fever thermometer)とは、動物の体温を測定するための温度計である。\n/*/\n体温を測定する際は体内温度に最も近い部位で測定することが好ましい。\n人知類の場合、一般に腋窩・口腔・直腸・鼓膜が選ばれる。\n腋窩で測定する場合、体表温の影響を受けやすいため、腋の汗をよくふき取る。\nその後、体温計の先端が腋窩動脈に触れるよう前方から斜めに挿入し、しっかりと腋を締め、密着させる。\n体の左右どちらかに麻痺がある場合、麻痺している側は血液循環が悪く、体温が低く測定されるため、麻痺していない側で測定する。\n口腔での測定は、腋窩より安定した値を得られやすいが、咽頭に当たりやすく手技には経験を要する。\n測定前の飲食を控え、体温計の先端を舌底面の下に向け、斜めに挿入、口を閉じてもらう。\n体温計を舌下に挿入する際、舌小帯に当たらないよう注意する。\n直腸での測定は、腋窩温や口腔温と比べ、外部の影響を受けづらく、深部体温に近い値が得られる。\n体温計の先端に白色ワセリンやオリーブ油などの潤滑油をつけ、側臥位の患者の肛門から直腸内にゆっくりと体温計を挿入する。\n体温計を直腸内に挿入する深さは、人知類の場合、成年なら5センチメートルから6センチメートル、小児なら2センチメートルから3センチメートルである。\n耳の鼓膜で体温を測定する場合、赤外線体温計を使用する。\n赤外線体温計とは、放射される赤外線を感知し、体温を表示する体温計を使用する。\n耳で体温を測定する場合、鼓膜と鼓膜周辺から放射される赤外線で体温を測定する。\n耳に体温計を挿入する際は、外耳道をまっすぐにするため、耳介を斜め上に引くようにして挿入する。\n体温計を耳に挿入する際、挿入する位置や深さによって測定値が変わることがあるため、注意が必要である。\n体温測定は、いずれの測定方法でも、測定後、体温計をアルコール綿で清拭する。\n/*/\n体温を評価する際、体温は個人差があるため、厳密には普段の体温の比較が重要である。\n普段の体温が不明なら、人知類の場合、小児は摂氏37.3度以上、成年は摂氏37.0度以上、高齢者は摂氏36.8度以上を発熱の基準とする。\n発熱(fever)とは、体温が上昇している状態のことである。\n発熱反応は、外界から体内に侵入した病原体が血液中の多核白血球や単球を活性化し、内因性発熱物質を産生、その信号が脳に作用することで発現する。\n/*/\n発熱に対して解熱剤を使用することは、必ずしも適切ではない。\n発熱による発汗や食欲低下で潜在的に脱水状態になっている場合、血圧が低下しないよう、末梢血管を収縮させていることがある。\nこの状態で血管を拡張させる作用のある種類の解熱剤を投与すると、一気に末梢血管が拡張して血圧が低下し、循環血液量減少性ショックとなる。\nまた、解熱剤は併用する薬剤によって、けいれんを起こすものがある。\n熱型を見るために解熱しないという考え方もある。\nただし、小児やてんかんの既往がある場合はこの限りではない。\n小児の脳は未発達なため、高熱になると熱性けいれんを起こしやすくなる。\nまた、てんかんの既往がある患者は、けいれんの閾値が下がって発作を起こしやすくなる。\nそのため、このような場合は解熱剤を積極的に使用してもよい。\n/*/\n体温の変動を経時的に記録し、グラフで表現したものを体温曲線(thermometer curve)と呼ぶ。\n熱型(fever type)とは、この体温曲線の分類である。\n熱型には、稽留熱・弛張熱・間欠熱・波状熱などの種類がある。\n稽留熱(continued fever)とは、高熱で1日の体温差が摂氏1度以下の熱型である。\n稽留熱で考えられる疾患には、肺炎や腸チフスなどがある。\n弛張熱(remittent fever)とは、高熱で1日の体温差が摂氏1度以上あり、低くても平熱にならない熱型である。\n弛張熱で考えられる疾患には、敗血症や膠原病などがある。\n間欠熱(intermittent fever)とは、高熱で1日の体温差が摂氏1度以上あり、低い場合は平熱に戻ることがある熱型である。\n発熱の周期は疾患によって異なるが、間欠熱で考えられる疾患には、弛張熱と同様の疾患の他、マラリアなどがある。\n波状熱(undulant fever)とは、発熱する時期としない時期が不規則に繰り返される熱型である。\n波状熱で考えられる疾患には、マラリア・ホジキン病・胆道閉鎖症などがある。\n/*/\n発熱から平常体温に戻ることを解熱と呼ぶ。\n熱型と同様、解熱にも分利や渙散などの型がある。\n解熱において、分利(crisis)とは、数時間の間に熱が急速に下降し、平熱となる解熱である。\n分利は多くの場合、発汗をともなう。\nたとえば、肺炎連鎖球菌性肺炎で抗生物質を使用せず、自然に解熱した場合、分利となることが多い。\n分利は、熱分離(febrile crisis)とも呼ばれる。\n解熱において、渙散(lysis)とは、高熱が数日・数週間を費やして徐々に下がる、熱の下がり方である。\n渙散の典型的な例が、腸チフスの解熱である。",
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         "description": "呼吸(respiration)とは、生体が酸素を外界から摂取し、二酸化炭素を外界へ排出することである。\nバイタルサインとしては、呼吸数・呼吸のリズム・呼吸音などが重要である。\n呼吸を観察する際は、すべての診療手技と同様に、視診・聴診・触診の順におこなう。\n視診では、患者の左右の胸郭が同時に上下していることを確認する。\n患者に呼吸を観察していることを伝えると、患者が意識して呼吸数増加の恐れがあるため、伝えないほうがよい。\n/*/\n呼吸数(respiration rate、respiratory rate)とは、1分間の呼吸運動周期の数のことである。\n年齢によって異なるが、人知類の場合、安静時は1分間に12回から15回くらいである。\n呼吸数がおおむね毎分20回以上を頻呼吸(tachypnea)、毎分12回以下を徐呼吸(bradypnea)と呼ぶ。\n頻呼吸の原因は、運動・恐怖・興奮・発熱・うっ血性心不全・呼吸器疾患などが考えられる。\nまた、徐呼吸の原因は、頭蓋内圧亢進・急性アルコール中毒、麻酔薬や睡眠薬の投与などが考えられる。\n/*/\n呼吸のリズムには、チェーン・ストークス呼吸、ビオー呼吸、クスマウル呼吸などがある。\nチェーン・ストークス呼吸(Cheyne-Stokes respiration)とは、浅い呼吸から深い呼吸に移行し、再び浅くなり一時的に呼吸停止という周期を1周期30秒から2分くらいで繰り返す異常呼吸である。\nチェーン・ストークス呼吸は、中枢神経疾患・うっ血性心不全・睡眠時無呼吸症候群などでみられる。\nチェーン・ストークス呼吸は交代性無呼吸とも呼ばれる。\nビオー呼吸(Biot respiration)とは、呼吸と無呼吸を不規則に繰り返す異常呼吸である。\nビオー呼吸は、脳炎・髄膜炎・脳腫瘍・脳外傷などでみられる。\nビオー呼吸は髄膜炎性呼吸や間欠髄膜炎性呼吸とも呼ばれる。\nクスマウル呼吸(Kussmaul respiration)とは、深く大きい呼吸をゆっくりと繰り返す異常呼吸である。\nクスマウル呼吸は、糖尿病や尿毒症などでみられる。\nクスマウル呼吸は、呼気にアセトン臭がみとめられることもある。\nクスマウル呼吸は糖尿病昏睡性大呼吸とも呼ばれる。\n/*/\n閉塞性換気障害がある場合、呼気時に末梢気道の閉塞を防ぐため、口唇をすぼめ、ゆっくり息を吐くようになる。\nこのような呼吸を、口すぼめ呼吸(pursed-lip breathing)と呼ぶ。\n/*/\n呼吸困難の患者は、横になると呼吸しにくいため、座ったままものによりかかることがある。\nこのような姿勢をとることを起坐呼吸(orthopnea)と呼ぶ。\n/*/\n呼吸音(breath sound)とは、換気運動により気道内で発生した音のことである。\n呼吸音を聴く際は、まず聴診器を用いずに、患者の呼吸音を聴く。\nこの際、声が出せるかも同時に観察する。\nその後、患者がリラックスできる体勢になってもらい、聴診器で呼吸音を詳しく聴く。\n聴診は左右対称の点を交互におこなう。\nこの際、聴診器のチェストピースを胸部前面や背面にしっかりと密着させる。\nチェストピースには、膜面とベル面がある。\n膜面は、腸音や肺音など、高音域の音を聴くときに用いる。\nベル面は、血管音や血圧など、低音域の音を聴くときに用いる。\n呼吸器系においては、基本的に膜面を当てて聴診し、くぼんでいる肺尖部などはベル面を当てる。\n一箇所につき、吸気と呼気の一呼吸は最低聴取したほうがよい。\n聴診する部位によって、正常な呼吸音は異なるため、部位ごとの正常な呼吸音を理解することが重要である。\n[[看護記録]]に残す際、呼吸音が正常か異常か、あるいは聴取できないかは最低限、記録に残すようにする。\n呼吸音の減弱・消失の原因としては、気胸や胸水貯留で呼吸音の伝達が阻害された場合、疼痛や筋力低下で換気量が低下された場合などが考えられる。\n肺性の副雑音(adventitious sound)はラ音(rale)と呼ばれ、50ミリ秒以上持続する連続性ラ音と10ミリ秒以内の断続性ラ音に大別できる。\n連続性ラ音(continuous sound、continuous rale)は、乾性ラ音(dry rale)とも呼ばれ、いびき音と笛音に分けられる。\nいびき音は、比較的低い音で、いびきのような連続性の雑音のことである。\nいびき音は、吸気ではほとんど聴かれず、主に呼気のはじめから聴取される。\n太い気管支の狭窄がいびき音の原因で、気管支喘息・気管支炎・気道異物・肺がんなどで聴かれる。\n咳によっていびき音が変化・消失することもある。\nいびき音は、低調性連続性副雑音・低音性連続性ラ音・ロンカイ(rhonchi)・ロンカス(rhonchus)とも呼ばれる。\n笛音(piping rale)は、笛や口笛を吹くような高調の純音で、呼気に特徴がある。\n気道狭窄部を空気が流れることが笛音の原因で、気管支喘息・気管支炎・気道異物・肺がん・肺気腫などで聴かれる。\n笛音は、水笛音(water-pipe sound)・笛声音(whistling rale)・ウィーズ(wheeze)とも呼ばれる。\n断続性ラ音(discontinuous sound、discontinuous rale)は、湿性ラ音(wet rale)やクラックル(crackle)とも呼ばれ、水泡音と捻髪音に分けられる。\n水泡音とは、肺水腫や肺炎などで気道内に水分や分泌物が貯留したところを、空気が通過することによって生じる膜や気泡の破裂音である。\n水泡音は、吸気の初期から聴かれ、呼気でもみとめられる。\n水泡音は、粗い断続性副雑音・粗い断続性ラ音・コースクラックル(coarse crackle)とも呼ばれる。\n捻髪音とは、毛髪を耳のそばでねじったときに聞こえる音に似た高調の細かい音である。\n捻髪音は、面ファスナーをはがすときの音に近い。\n捻髪音は、線維化して弾力性を失った肺胞が膨らむ際に生じる音とされており、間質性肺炎・肺線維症・石綿肺・過敏性肺臓炎・肺水腫などで聴かれる。\n捻髪音は、捻髪様ラ音(crepitant rale)・ファインクラックル(fine crackle)とも呼ばれる。",
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最終更新:2020年12月05日 20:33