地球を守るヒーロー誕生

ASD20XX.07.04
~ミストラルシティ・果倉部道場~

ライトレイは悩んでいた。
兄弟家族と暮らす平穏な毎日に慣れ,なにもかも充実している現実を受け入れている自分に。
何か不満か?それ以上を求めるのは傲慢か?

ライトニング「どうかしましたか?レイがそんな顔するのをみたのはいつ以来でしょう?」

弟の問いかけにもどこか心あらずの兄を見て,ライトニングは声を落として続ける。

ライトニング「”かの国”…ですか?」

図星だった。

ライトレイ「よくわかるな」
ライトニング「顔に書いてありますよ。全く正直な人です」
ライトニング「…だからこそききたいのです。レイが語りたがらない”かの国”であったことを」

ライトレイが傷だらけで帰ってきたあの日から,ライトニングと先生は何があったのか聞けていなかった。
聞いてはいけない。聞いたら彼のココロまでも傷つけてしまいそうだったから。
先生と示し合わせて,ライトレイが自ら語るまでは何も聞かないと決めたのだ。

ライトニング「さすがにそろそろ聞かせてください。レイだけの問題ではないでしょう?」

少し考えたあと,ライトレイは意を決して話を始めた。
ライトレイ「トニー,俺と一緒に”かの国”に行ってくれないか?」
ライトニング「!!」

ライトレイ「俺は自分の力を過信していた。それであんなやつの誘いにのっちまったんだ」
あんなやつ…【挑戦者】である彼のことだろう。
ライトレイ「俺は,強くあるために多くの物を捨ててきた。勝つために大事な物を置いてきた。だが,それは間違ってたんだ」
ライトレイ「それらが俺の中から消えていくたびに,絶対的勝利に近づくと同時に,俺自身から遠ざかったんだ。気づいたら俺は俺じゃなくなっていた」
ライトレイ「トニーには寂しい思いさせちまったな,ワルイ…」

強さを求めて多くのモノと決別してきたライトレイであったが,薄っぺらくなっていく自分に耐えきれず,結果として”かの国”での決闘に敗れる要因となった。
そんな彼にも捨てられなかったモノがある。

ライトニング「レイ,あなたはすべてを捨てたわけではありません。私たち一族に代々受け継がれてきた「ライトレイ」の名とそれを冠するカードを。あなたは最後まで持っていました」
まっすぐに兄を見つめる弟の目はすべてを見透かしていた。
ああ,そうか。こいつも同じことを…
ライトレイ「だから,置いてきた物捨ててきた物を拾いに行く。俺が俺であるために」
ライトニング「やっとらしくなりましたね。私の兄なんですからしっかりしてくださいよ」


二人の戦士を優しく満月が包み込む。
何もないような毎日を,楽しく過ごすには笑顔が先,だったのだ。

~~
ライトニング「ところで,どうやって”かの国”へ行くのです?入国には条件とやらを達成しておかなければならないのでしょう?」
ライトレイ「そのとおり。そして俺たちはその条件を満たしていない」

ライトレイ「そこで,だ」
何を考えているのか,ライトニングには理解できな…したくなかった。


ASD20XX.07.12
~モゴラ大陸・ダーダネルス海峡~
小さな船が一艘。大海原を行く。
ライトレイ「海賊王に俺はなる」ドン!!
ライトニング「…じゃないです!!無茶ですよ,密入国なんて」
ライトレイ「何とかなる。確証はない」ドン!!

『ガーそこの小舟止まりなさい。ここはすでにモゴラの領海です』

ライトレイ「…突っ切るぞ」ドン!!
ライトニング「もうなんとでもなれ」どん!!

『ガー警告はしたぞ。放て』
ヒューバオォォォォォンンンン!!!!!!!!!!!!!

いともたやすく小舟は大破し,二人の兄弟は御用となった。

~巡視船タルタロス船上~
船員A「お前ら分かってるんだろうなこの領海の進入するということは国際法に…」

ライトニングの頭の中は真っ白だった。おそらくこのまま処刑される,まちがいない。

ライトレイ「あ」
ライトニング「なんですか?こんなときに。第一あなたがいけないんです。止めなかった私もいけないんですが…」
ライトレイ「これ」
彼が差し出したのは,”かの国”にむけて出発したときに先生から渡されたお守り。
ライトニング「そんなもの渡してどうなるっていうんですか。そもそもあなたの計画は無謀だったのですよ…」

お守りの中には小さな紙が。
それを見た船員は急に顔の色を変えて
船員A「これは失礼しました。すぐに船室をご用意します。お体もぬれてお寒いでしょう。大浴場をご利用ください」
ライトレイ「腹も減ったぞ」
船員A「すぐにでも!!」

ライトニング「…どういうことですか?」
ライトレイ「奇跡も魔法もあるんだよ」マドカ!!


~特等船室~
テーブルからこぼれそうな豪華な食事をほおばる兄弟。
ライトニング「レイ,紙にはなんと書いてあったのですか?私のお守りも回収されてしまって読みそびれました」ムシャコラ
ライトレイ「しらん」ムシャムシャ
ライトニング「…まさか適当にあのお守りを?」ムシ
ライトレイ「ああ」ムシャムシャ
ライトニング「またしても無鉄砲。何度もいいますがあなたたってヒトは…」
ライトレイ「何とかなったんだから,もういいだろう。先生がくれた物は絶対なの。魔法なの。奇跡なの」ムシャムシャ


???「食事中失礼しますよ」
そこに立っていたのは・・・

超官「待っていました。あなたたちのことを」
超官「ライト兄弟,あなたたちには”かの国”で力を高めてもらいます」
超官「そして・・・」

超官「世界を・・・地球を守るヒーローとなるのです!!」



かくしてライト兄弟は,”かの国”での鍛錬を経て,地球を守るヒーロー集団『C・P』の一員となったのであった。
最終更新:2012年09月10日 22:06