~ミストラルシティ・果倉部道場~
門下生たち「えいっ!やぁっ!」
ライトニング「いい調子です。そのまま続けてください」
道場は今日もにぎわっていた。
果倉部かもめが亡くなった後,道場の存続が危ぶまれたが,ライトニングが名乗り上げ自ら師範代となることで事なきを得たのだ。
門下生はそれまでと変わらず修練しているのかというと・・・
ライトニング「今日はこれまで。皆さん自宅に帰った後も修練を欠かさずに」
門下生たち「・・・ありがとうございましたー」
どこか打ち解けていないような・・・
そしてそれを見て笑う男が一人。
ライトレイ「トニー,固いってば。もっと朗らかに,ほら」
にかーっと笑顔を見せるライトレイであるが,そばを通り帰路に着く門下生たちはひそひそと話していた。
門下生たち「・・・ニートだ・・・ニートだ・・・」
???「駄目ね。全然駄目よ」
ライトニング「おや,いらしていたんですね」
ライトレイ「ったく,おせっかいがきたよ・・・」
イワオ「つばめちゃん!遊びに来たの?」
つばめ「そうよイワオ!でもちょっと待っててね。こいつらにお灸をすえてやらないといけないの」
ライトレイ「何がお灸だ。ちょっとは年上を敬えっ!」
つばめ「年上なら年上なりの行動をなさい!まったく門下生に笑われてるのに気づいてないの?」
声を荒げるこの少女。道場の復興中に突然現れ,ライトニングたちを突然罵倒したのはついこの間。
道場の看板の位置が気に入らないだの,もっと床はきれいに磨かなきゃいけないだの,とにかくけちをつけた。
イワオ「君の名前は?」
つばめ「つばめ。私の名前は今寄咲(いまよりざき)つばめ」
今寄咲といえば世界でも有数の資産家の名である。
何を隠そうこの少女は,いずれは今寄咲家を継ぎ社長となるもの,なのだ。
そんな少女がなぜ今も道場に来ているのか。それは・・・
つばめ「ライトニングもそうよ。もっと門下生と仲良く接することはできないの?」
ライトニング「努力は・・・してます」
ライトレイ「あははは。俺と同じこといわれてるぜ。ロビンの話題出せば一気に仲良くなれるってのに」
ライトニング「いやぁ・・・それは・・・私の自尊心と言うか羞恥心というか・・・」
ライトニングはロビン好きを広く公言できていないのだ。
つばめ「あなたたち,今ここで決闘しなさい!」
突然の宣告。ライトレイとライトニングはキョトンとしながらも,少女の次の言葉を聞き逃すことはなった。
つばめ「あなたたちのどちらが『ロードの系譜』を継ぐべきか決めなさい!」
ライトレイ「お前・・・」
ライトニング「どうしてそれを・・・」
つばめ「重要なのは私がなぜそれを知っているかではないわ。かつての決闘の決着を,あなたたちはつけなくてはならないわ」
ライトレイ「・・・それって・・・」
ライトニング「・・・『ロードの系譜』を継ぐものを決める決闘のこと・・・でしょうね・・・ですが,勝負は決しています。私はレイに敗北し,『ロードの系譜』はレイが継ぐことになりました」
つばめ「いいえ,まだよ。ライトニング,あなたは兄のためにわざと負けた」
ライトニング「!!」
つばめ「ライトレイ,あなたはそれを知っていて,偽りの勝利を受け入れた」
ライトレイ「・・・」
つばめ「もう一度言うわ。今ここで『ロードの系譜』を賭けて決闘なさい!」
ライトニング「な・・・何を言っているんです。私はそんなこと」
ライトレイ「トニー!」
ライトレイ「とにかく決闘しようぜ。気楽にな」
ライトニング「・・・分かりました。レイがそういうのなら・・・」
ライトレイ&ライトニング「決闘!!」
決闘★開始
-ターン01-
ライトレイ「先行は俺からだ。ドロー!」
ライトレイ「俺はライトレイ・グレファーを召喚。手札からモンスターを捨て,デッキからライトレイ・ディアボロスを除外する。これでエンドだ」
-ターン02-
ライトニング「私のターン。ドロー!」
ライトニング「私はトライデントウォリアーを召喚し,効果でシャインナイトを特殊召喚。レベル4のモンスターが2体そろいました」
ライトニング「2体のモンスターでオーバーレイネットワークを構築!出でよ,セイクリッド・オメガ!」
ライトニング「オメガで攻撃します!」
オメガ ATK2400 VS グレファー ATK1700
ライトレイLP4000→3300
ライトニング「カードを2枚伏せてターンエンドです」
つばめ「ライトレイ,あなたは気づいているはずよ。何を自覚すべきか。何をすべきか」
ライトレイ「相変わらず小言が多いな・・・ただ,意見は一致しているぜ」
ライトレイ「俺たちはただの兄弟じゃない。双子だ。そこに上下関係なんて存在しない。だが・・・トニー,お前は俺が兄である事を,自分が弟である事を求めている時がある」
ライトニング「・・・否定はしません。ですが私は・・・」
-ターン03-
ライトレイ「・・・たまには兄らしくしてみるか,俺のターン,ドロー!」
ライトレイ「俺は手札からOKAサンダーを召喚。効果でOTOサンダー召喚。さらに・・・」
ライトレイ「ONIサンダーを召喚!」
ライトニング(あのモンスターは,レイが使用を頑なに拒んだカード・・・)
ライトレイ「ONIサンダーの効果発動。召喚成功時,デッキから光属性・雷族・攻撃力1600以下のモンスターを手札に加える。俺はサンダードラゴンを手札に!」
ライトレイ「サンダードラゴンを捨て,同名カード2体を手札に!」
ライトレイ「レベル4モンスター3体でオーバーレイネットワークを構築!エクシーズ召喚!サンダースパークドラゴン!」
ライトレイ「サンダースパークドラゴンの効果発動!ORUを3つ使い,モンスターを破壊する!」
ライトレイ「さらに融合発動!天空より轟雷響かせ現れよ,双頭の雷龍!」
ライトレイ「バトルだ!サンダースパークドラゴンで攻撃!」
ライトニング「ダメステに奇策発動!ロビンを捨て,攻撃力を3000下げます!」
サンダースパークドラゴン ATK2400→0
ライトレイ「ならば双頭の雷龍の攻撃!」
ライトニング「墓地からロビンを特殊召喚!さらにガムシャラ発動,ロビンを攻撃表示に変更します」
反撃に出るロビンであったが,バトル終了時にフィールドに残っていたのは・・・
ライトニング「双頭の雷龍に・・・美しい羽根が・・・」
ライトニングLP4000→1200
ライトレイ「いつ見ても強力だよな,オネストは。手札がハンドレス,よってターンエンド」
つばめ「ライトニング,あなたはライトレイを意図的に超えないようにしている」
ライトニング「それは・・・私が弟だから・・・」
つばめ「それではあなたの先は無い。あなたにもいえるわ,何を自覚し,何をすべきか」
ライトレイ「門下生にも気さくに声かければいいんだ。難しく考えるな,がむしゃらに行け!」
-ターン04-
ライトニング「ふふっ考えてみれば私が先に生まれてたのかも知れなんですよね,ドロー!」
ライトニング「手札を1枚捨ててDDR発動。異次元より正義震わせ現れよ,異次元エスパーロビン!」
ライトレイ「ほう,俺の場の攻撃力が0となったサンダースパークドラゴンを攻撃したところで俺のライフは0にはならない。手札もないトニーでは俺を倒すことはできないな。次の俺のドローに勝敗がかかっているな」
ライトニング「・・・レイ,あなたはいつもそうです。私は知っています。あなたが誰よりも誰かの笑顔を好きでいる事を。毎日シティを巡回しては人知れず誰かの役に立っていることに」
ライトニング「私はあなたを誇りに思います。私にはできないことを,あなたはやってのけるのです。ですが・・・」
ライトニング「決闘だけは負けません!!」
ライトニング「私はDDRのコストで捨てた神剣フェニックスブレードの効果発動!2体の戦士を除外して手札に加え,ロビンに装備します!」
ロビン ATK3000→3300
ライトニング「異次元エスパースターロビンで,サンダースパークドラゴンもといレイにダイレクトアタック!!」
ライトレイLP3300→0
イワオ「ぴったりボーナスだね」
決闘★終了
つばめ「勝負あったわね。『ロードの系譜』を継ぐべきものは・・・」
イワオ「今日はライトニングのかち~前はライトレイが勝ったんだっけ?じゃー引き分けだね^^」
ライトレイ「ぷぷ」
ライトニング「確かに,そうですね」
つばめ「だ・・・だめよ,はっきりさせなきゃ。じゃ・・・じゃあもうひと勝負しなさい」
ライトニング「もういいんです。私たちはまだまだ自覚が足りません」
ライトレイ「『ロードの系譜』を継ぐのは俺たちがもう少し成長してからでも遅くない。父さんもそういってくれるだろう」
つばめ「そんな~白黒つけたいのにぃぃ」
つばめ(でも・・・親の意志を継ぐのは,簡単なことじゃないわよね)
門下生たち「すっごい決闘だったー超感動したー」
ライトニング「!!あなたたち見ていたのですか。気づかなかった・・・」
ライトレイ「ようお前ら,怪我はもう大丈夫か?」
門下生「はい。僕が足を滑らして100階のビルから落ちたとき受け止めてくれてありがとう!」
ライトニング(え?)
門下生「高速道路で遊んでた時に突っ込んできた100tトラックにはねられかけた僕をかばってくれてありがとう!」
ライトニング(え?え~!)
ライトレイ「そうだお前ら,トニーはロビン大好きなんだぜ」
ライトニング「あ,ちょっとレイ!」
門下生「師範代は決闘でもロビン使うんですね!でもそのカードはロビンが持ってるはずじゃあ?」
ライトニング「以前ロビンと決闘して譲ってもらったんです」
門下生「え~!!ロビンと戦ったの?すげー」
門下生「どっちが勝ったの?ねぇどっち?やっぱりロビン?」
ライトニング「やっぱりってなんですか。いえ,確かに私は負けましたけど」
門下生「ロビンTUEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEE」
ライトレイ「そうそうそれでいいんだよ。好きなように。身を任せればさ」
つばめ「そうだわイワオ,遊ぶよ!」
イワオ「うおおおおおおお楽しいいいいいいいいいいい」
つばめ「まだ何もしてないでしょ。こら,先にいかないでよー」
ライトニング「また聞きそびれてしまいました」
ライトレイ「会うたびに疑問が増えていくぜ。どうして『ロードの系譜』のことまで知ってやがるんだ?」
ライトニング(それにあの子とはずっと前から会っていたような気がするのです・・・いえ難しく考えるのはやめましょう)
門下生「師範代!僕と決闘してよー」
ライトニング「はい!よろこんで!」
ライトレイ「飲み屋かよw」
門下生「ライトレイはあたしとねー」
ミストラルシティは今日も笑顔にあふれている。
受け継がれるは資格など必要ない。そこに想いがあるのなら自然に気持ちは続いていくのである。
~~
今寄咲つばめは,果倉部かもめが残した唯一の実子。
生まれてすぐに今寄咲家に引き取られ今日まで何不自由なく生きてきた。
果倉部かもめの魂が肉体を離れたそのとき,つばめは突如自分自身がかもめの子であると理解する。
さらにかもめが歩んできた長い人生を,知リ得た事実を,そして想いを。
つばめはこれからも果倉部道場を訪れて,新しくも懐かしい絆を紡いでいくことになる。
ちなみにつばめは特にSPECを持ち合わせていはいない。
【天帝】は【天命】とは異なり,継承される力ではなかったのだ。
最終更新:2012年12月23日 20:52