天帝の残滓

~ダーダルネス海峡上空~
スライ「・・・というわけだ」
彼の口から話された内容は,本来ならば理解に苦しむものだっただろう。

●天帝の残滓
しかし,ここ数ヶ月にわたる超常的な出来事を経験していた彼らには,以外にも簡単に受け入れられた。
【天帝】は,全ての人間の魂が誕生する前に”あった”,【純然たる悪意】からの攻撃を退けていたのだ,という事実を。

ツバメ「母さんは,この世界に誕生する前の魂が【純然たる悪意】に染まるのを防いでいたということね」
ライトレイ「【純然たる悪意】の目的は,生まれながらにしての悪を誕生させることだったんですね」
ライトニング「先生はそうならないように,全ての人間の魂を浄化していたのか」
スライ「俺以外に,生まれる前の記憶を持つ人間にあったことはない。おそらく存在しないだろう。でもな,事実なんだ」
スライ「先生が生存している限りは,人間に【純然たる悪意】は発現しなかったんだ!」


にろく「なぁ,もしかして「星の力」って,先生が”そのときに”俺達に与えてくれた力だったんじゃないか?」
ナル「インキュベーターとの契約は,あくまでも代償を蓄積する手段を得るものであって,力は生まれたときから持っていたってこと?」
シャーク「なるほど。だから果倉部かもめが死んだときに「星の力」が失われたのか」
ディック「ねぇそういえばさ,おれ,結局「コズミックスペル!!」って言っても何も出んかったんだけど・・・泣」
スライ「おそらく・・・いや,そうだろうな。先生の加護が消失した今,俺たちは自らの力で自らを守らなきゃならないんだ」
スライ「その手段が「ナイトメアナンバーズ」なんだよ」
バウンダー「私の星を滅ぼした悪しき力が,その根源【純然たる悪意】を倒すのに必要とはなんだか空しいものです」
スライ「とはいえ現状,他に方法がないのだから,そこは割り切ってくれ」


十也「んーでもさ,「ナイトメアナンバーズ」は【純然たる悪意】が使役するモンスターなんだろ?俺達が所有しているだけでも悪い影響があるんじゃないだろうか?」
結利「そういえば十也,よくみたら君の目つきがいつにも増して悪くなってるような・・・」ジー
十也「生まれつきだ!!」
スライ「それは大丈夫だろう。俺達の【コネクト】なら「ナイトメアナンバーズ」のD・Eに耐性がある」
アポロニウス「「ナイトメアナンバーズ」は”16枚目のエクストラ”に保管されている。いわば存在しない場所に封印されている状態だ」

イワオ「あ、名のなき戦士だあああかっこいいいいいいいいいいい」

●「名のなき戦士」
ボルケーノ「改めて説明したほうがいいんじゃないか?」
アポロニウス「我が名はアポロニウス。古の英雄「アポロン」と「プロメテウス」2人の魂を受け継ぐもの。私のSPEC【神託】は魂を保留し,俺のSPEC【天生】は魂を器に宿す」
メサイア「そんなわけで僕がうまれたんだよー

彼ら一行が乗る”それ”が返事する。
ボルケーノ「前は2人が上限だったのに。ずいぶんと巨大化できるようになったもんだ」
メサイア「えへへー」

アポロニウス「メサイアを導くには”器”が必要だった。そのためにソナタらの力を借りなくてはならなかった」
ライトレイ「最初からそういってくれれば快く協力したっていうのに」
ライトニング「まぁまぁ。ともかくメサイアが転生できたんですから」

メサイア「えへへー」

●「端末世界」
メサイア「ここから重要だからよーくきいてねー」
イワオ「はーーーーーーーーーーーーい」

メサイア「端末世界とは,この世界とよく似た別世界でね。三沢博士の提唱した次元のひとつなんだ」
ボルケーノ「どうやらその端末世界の入り口は「火の国」にあってさ,俺の父が入り口を開いたって話だ」
ナル「メルト=スパイラルは「トゥルースシリーズ」を端末世界で手に入れたといっていた。「火の国」では端末世界に赴き,カードを手に入れていたのですね」

アポロニウス「「トゥルースシリーズ」は「小宇宙文字」が刻まれたカードだ。微量ではあるがD・Eが含まれていたこのカードの使用者は一時的にSPECのような特殊能力が発現していた」
メサイア「それ自体はたいしたことじゃなかったんだけどね,問題はやっぱり【純然たる悪意】がもたらしたんだ・・・」

メサイア「【天帝】によって守られたこっちの世界に見切りをつけた【純然たる悪意】の次なる標的,それが端末世界だった」
メサイア「守ってくれるものがいないから。端末世界では,生まれながらにしての悪・・・【純然たる悪意】は爆発的に増殖していったんだよ」
メサイア「「火の国」の決闘者の対応はちょっとだけ遅かった。いや,力を求めすぎていたのかもしれない。彼らは【純然たる悪意】に染まった「トゥルースシリーズ」をこっちの世界に運んできてしまったんだ」
メサイア「すぐに扉を閉じたけど,【純然たる悪意】は「火の国」から他の国へと流出し,各国にばら撒かれた。そして「トゥルースシリーズ」を手に入れてしまった者たちの中から,後天的に【純然たる悪意】に染まった決闘者が現れたってわけ」

メサイア「でもまぁしばらくは安心かな♪」
結利「え?どういうこと?十也と二人でばら撒かれた「トゥルースシリーズ」を回収しなきゃって思ってたとこなんだよ!!」
十也「俺もか!?」
イワオ「おれもやるうううううううううううううううううううう」

メサイア「じゃあさためしにみんなのお気に入りのカードをだしてみてー」
一同「・・・!?」

●消えた「小宇宙文字」
にろく「エンディミオンの「小宇宙文字」が消えている・・・」
ナル「俺のマエストロークもだ(・・・ん?なんだこのカードは?)」
ディック「俺のギガンテックファイターもだ。あ,俺には最初から見えてなかった」テヘペロ

シャーク「・・・どういうことだ?カードとのつながりが強くなれば「小宇宙文字」を認識できるようになるとルナに聞いていたが,消えてなくなることがあるのか?」

スライ「エーリアンの姫の解釈は間違っていない。引用させてもらえば,カードとのつながりが薄れれば「小宇宙文字」は認識できなくなる。だが,一度に多くのカードが使用者との関係を悪化させたとは考えられない」
メサイア「そうだね。じゃあどうしてかというとね・・・「アクセス権」を失ったんだよ」

メサイア「『ヌメロンコード』への・・・アクセス権をね」

●『ヌメロンコード』
これは世界の全てを記したカード
このカードの中には世界がどうやってできたのか,そしてどこへ向かうのか,その過去と未来が全て記されている

それが『ヌメロンコード』


メサイア「他の呼び方をすると,アカシックレコードとか「世界の魔導書」と呼ばれているね」
にろく「!?」
メサイア「「小宇宙文字」は,対応する『ヌメロンコード』のある章のある節のある文のある部分にアクセスするための鍵なんだ」
メサイア「僕たちは知らず知らずに世界の理に足を踏み込んでいたのさ!!」

ツバメ「そうか,わかったわ。「小宇宙文字」が消失したのは,使用者との関係性の変化ではなく,何らかの理由で『ヌメロンコード』が書き換わり,それまでのアクセス権での認証が不可能になったから。それはつまり,私達の世界が一新されたってことね」
ライトレイ「世界観測システムの目的が達成された・・・」
ライトニング「えっ!?」
ライトレイ「客観的にみればそういうことだろう。オリジネイターシステムがなさんとしたことは世界の変革。『ヌメロンコード』が書き換わったのは,彼らの・・・俺達の勝利があったからじゃないか?」
結利「・・・」

メサイア「【星詠】を持つナルくん,きみの記憶ではいつぐらいから「小宇宙文字」が消え始めた?」
ナル「い,いやぁ~俺も気づいたのはついさっきで・・・(でも天十也のガイアナイトからは一度も”感じた”ことはなかったなぁ)」
十也「・・・」

メサイア「まぁ時期はいつでもいいさ。大事なのはこれから「小宇宙文字」がほぼ消えるって事。そうすれば【純然たる悪意】に染まっていたカードも自然と浄化されるからね」


「小宇宙文字」が消える
それは単に人間の知る権利が失われるだけなのか・・・
それとも他になにか意味があるというのだろうか・・・

十也「・・・なぁ!」
十也「俺達が今「火の国」に向かう理由はなんだ?扉はすでに閉じているんだろう?」

●メ「扉をぶっ壊せ!!」
メサイア「うん。僕が生まれたときにもちょろっといってたけどね。端末世界からヤバイやつらがきそうなんだよ」
ボルケーノ「こちら側から開けられる以上,向こう側から空けられない道理はないからな」
メサイア「それでね,端末世界への扉をみんなで物理的にぶっ壊そうと思うんだ」
イワオ「かげきだねぇぇぇぇぇえぇぇぇぇえぇぇ」

メサイア「ただ・・・これもさっき言ったけど,向こう側から来るやつらとはなんらかの形で闘うことになるんだ」
メサイア「どうしてそうなるかは分からない。でもそう『伝えなきゃならない』」
メサイア「これが僕のマストロールだから」


ここで口をつむいだメサイアは何を思うか
『ヌメロンコード』が書き換わった今,未来を知るすべはないはず
しかしメサイアには2つの確証があった

ひとつはこれから「端末世界の神」との戦いがあることを
そしてもうひとつは・・・

メサイア「この大きさでの着陸に全く自身がないって事にね!」


ひゅーどかーーーーん!!
彼らはモゴラ大陸「火の国」に,流星のごとく降り立ったのであった。
最終更新:2013年02月06日 23:25