ディマクによって召喚され,QB(三沢)によって破壊された地縛神の亡き骸は,
決闘者達のエントロピー(デュエルエネルギー)が集まる魔法陣の中に吸い込まれた。
そして「彼」を呼び出すための糧となったのだ。
今にして思えば,「彼」を現世に呼び出すことがディマクに課せられたカブチニフソだったのかもしれない。
「決闘者のみなさん,お久しぶりです」
「彼」の言葉に皆が混乱していた。いや,言葉以上にその姿に。
アキ「生きていたの・・・ディヴァイン!?」
そう,「彼」の姿はかつて地縛神Ccarayhuaに捕食されたディヴァインそのものだったのだ。
ディヴァインは,十六夜に向かって懐かしむように微笑んだ後,こう続けた。
ディヴァイン「少しだけ皆さんに説明しますので,しばしお付き合いを・・・」
私は何者か。
アルカディアムーヴメントの総帥です。
では,アルカディアムーヴメントとは何か。
それは「地縛民」の流れをくみ,神に与えられた痣を持つシグナーと
同等の力を持つ「サイコデュエリスト」を生み出すための組織です。
そう,私,
ディヴァイン=ディ=コマンダンテプレモは「地縛民」の一人です。
そうそう,神代君が闘ったディックもまた「地縛民」ですよ。
彼の名は
ディック=ディ=カドゥータ。彼自身はそのことを知らないでしょうがね。
(確かディマクの名前は
ディマク=ディ=ウナラディスでしたか・・・まぁいう必要はないでしょう)
「星の民」が「イリアステル」と名前を変えて世界に変革をもたらしていたように,
「地縛民」は「アルカディアムーヴメント」を通じて世界に影響を与えてきたのです。
さて,ここでサイコデュエリストについてお話ししなければなりません。
シグナーの方々にも関わりのある話ですので,そこの少年,起きなさい。
ルア「ふぇ」
この世界には,特殊な能力を持つ者が存在します。
その者は,サイコデュエリストであり,あるいは痣を持つシグナーです。
その能力の根元は同一。自分の力を越え,限界を突破する強い思い。
それは私たち「地縛民」の教えに通ずることです。
私たちにとって,カブチニフソとは,自らの力で越えるべき課題。
しかし個人によって越えられる壁には限度があります。
途中で挫折する者もいるでしょう。
「地縛民」の中でも弱い者がいました。
彼ら自身の力でカブチニフソを打破するには,彼らの力をさらに強力な者にする必要がありました。
我がコマンダンテプレモ家は,弱き力を持つ者に,神より与えられた痣の力と同等の力を与えることを,
一族に課せられたカブチニフソとし,アルカディアムーヴメントを組織し研究を始めたのです。
そしてついに,人間の奥底に眠る特殊能力SPECを呼び覚ます技術を開発したのです。
私のSPECは【具現】,遊星君とリアルファイトして時に具現化したサイコソードは私の能力によるものです。
そしてアキ,今にして思えばキミの力は痣の力とも思えますが,キミのSPECは【発散】。
自らの思いを実体化し,衝撃として放出する能力。
私が欲した能力の最たるものでした。
そして遊星君,キミの持つSPECは【突破】。
SPECの本質であり尤も純粋な能力です,実にあなたらしいSPECだ。
多くの仲間との,そして未来からの使者との関わりにより,あなたのSPECは進化を遂げました。
現時点であなたの持つSPECは・・・そうですね,【限界突破明鏡止水-オーバートップクリアマインド】と名付けましょう。
そこまで話すと,ディヴァインは口を閉ざした。
そして視線は,
ジャックに向けられた。
私が許せないのは・・・ジャック・アトラス,キミが持つSPEC【荒魂-バーニングソウル】なんですよ!!
あなたが有するそのSPECは,数千年の昔にある男がもっていた力と同じです。
その男は,我がコマンダンテプレモ家に課せられたカブチニフソを侮辱し,地縛神をも冒涜した!!
ご存じでしょう?シグナーの祖と呼ばれる男の事を!!
赤き竜誕生のきっかけとなったこの男だけは許せません!!
全く・・・そいつのことを思うだけで虫ずが走ります。この話はいいです。
クロウ「なぁなぁ俺のSPECはなんてゆーんだよ?」
ディバイン「・・・(空気よめないんですか?)・・・あなたのSPECは【升】です」
クロウ「???」
話を続けます。
かくして「星の民」と「地縛民」の争いが始まったのです。
我々「地縛民」にとってはそれもまたカブチニフソの一部ととらえていましたが,
あなた方「星の民」の人間はなんですか!
願えば赤き竜が何でもかなえてくれるといわんばかりではないですか。
夢を描き強く願えば叶うなんて事があり得ますか?
夢を描き,かなえるために行動し,夢を現実にする事で人は成長するとは思いませんか?
今までも幾度かあなた方とは話を重ねてきましたが,理解してはくれませんでした。
これも全てあの男の行動故です・・・
そろそろ私の話も終わりに近づいてきました。
最後に私がこちらの世界から消えた時の話をしましょう。
地縛神に魂を吸収された私は,本来ならば他の人間達と同じように戦いの集結と共に蘇ったのでしょうが,
私はこの一連の出来事こそ,私に与えられたカブチニフソであると理解しました。
そこで私は,私自身の魂を具現化したのです。
具現化した魂は,冥界へと送られました。
私の魂-思念体が冥界に到着したとき,おそらくその時,遊星君の力で最後の地縛神と冥界の王を倒したのでしょう,
冥界の王の座が空いていたのです。
私はその流れを追い風として,即座に冥界を統べる王として君臨することを決めました。
(その時に眼鏡の少年と決闘をしたのは,話すまでもないでしょう)
それからしばらくして,冥界の王だったエネルギー体が私の坐す居城へと近づいてきました。
高エネルギーだったものですから,つい,捕食してしまったんですねぇ。
実に高ぶりましたよ,極上のエネルギーでした。
しかしながら,冥界と現世をつなぐ扉を開くのは簡単ではなかったのです。
ディマクはよくやってくれました。
ほどなくして,私は現世の土を再び踏むことができたのですから。
ディヴァイン「どうでしたか,皆さん。私の退屈な話は?」
遊星「ということは,おまえが冥界の王ということか?」
ディヴァイン「冥界の王というのはふさわしくありませんね。現世をも統べることになるのですから。」
それはつまり。
ディヴァイン「私の手によってこの世界は最高の世界へと改変されます!!誰もが自立する世界へと!!」
言い終わるやいなや,ディヴァインは突如体を大きく反らす。
全ての筋肉が伸びきり,空高く飛び上がらんとするかのように大きく手を振り上げた。
それはかつての思想に燃えたディヴァインの姿ではなかった。それは形容するとすれば・・・
裏ディヴァイン「ヒャァァハッハ!!決闘者の諸君!!我れこそ冥界の王なり!!」
裏ディヴァイン「ディヴァインはいなくなりました。これからは私がこの体を,世界を支配しますよぉぉ」
もう何が合っても驚かないと思っていただろう決闘者の面々はその豹変ぶりに,三度驚くこととなった。
裏ディヴァイン「私の中には2つの魂が存在しています。ディヴァインと冥界の王。」
裏ディヴァイン「ディヴァインは冥界の王である私を吸収したつもりでしょうが、全くの逆です。」
裏ディヴァイン「遊星に敗れ瀕死だった私は冥界で最もエネルギーの高い存在に憑依しました。」
裏ディヴァイン「それがたまたまこの体だったかですからねぇぇ」
ルア「もう話長すぎるって。けっきょっく何が言いたいんだよ!!」
裏ディヴァイン「おこちゃまには難しすぎたかな?端的にゆうね。俺様、この世界、支配する!!」
ルア「なるほど~って、えぇ!!」
裏ディヴァイン「さぁまずは決闘者の皆さんには死んでもらいますよ」
その場にいた9名の決闘者の決闘円盤が反応した。
強制的にバトルが始まる!!
裏ディヴァイン「今回は特別なルールを採用しますよ。なんせ1対9ですからねぇ。」
裏ディヴァイン「ルール名は『ヴァンガルド式』!!各々の決闘者はメイン・エクストラデッキからモンスターを1対選択し場に出す。」
裏ディヴァイン「その状態から決闘がスタートするのです!!さぁ皆さん、モンスターを場に出すのですぅぅぅぅ」
遊星「光来せよ!!シューティングスタードラゴン!!」
ジャック「荒ぶる魂!!スカーレッドノヴァドラゴン!!」
クロウ「こいブラックフェザードラゴン!!」
十代「ネオスを召喚!!」
カイザー「サイバーエンドドラゴン!!」
遊馬「かっとびんぐだホープ!!」
シャーク「いけ、潜航母艦エアロシャーク!!」
カイト「わが魂、ネオギャラクシーアイズフォトンドラゴン!!」
十也「ガイアナイト!!」
裏ディヴァイン「ほうほうすばらしい。私はサイコエンペラーを召喚します。では」
一同「決闘!!」
裏ディヴァイン「私のターン、ドロー」
裏ディヴァイン「サイコエンペラーをリリース、マックステレポーターを召喚」
裏ディヴァイン「ライフを2000支払、デッキからサイココマンダーと寡黙なるサイコプリーストを特殊召喚」
LP4000→2000
裏ディヴァイン「プリーストの効果、静寂のサイコウィッチを捨てサイコエンペラーを除外」
裏ディヴァイン「サイココマンダーとプリーストでシンクロ。いでよサイコデビル」
裏ディヴァイン「プリーストの効果でサイコエンペラーを特殊召喚」
裏ディヴァイン「エンペラーの効果で私のライフを1500回復しますよぉぉ」
LP2000→3500
場の状況
☆6 マックステレポーター
☆6 サイコデビル
☆6 サイコエンペラー
裏ディヴァイン「私はレベル6のサイコモンスター3体でオーバーレイネットワークを構築!!」
裏ディヴァイン「冥界の深き闇を糧とする最高の王、世界を統べるべく今ここに降臨する!!」
裏ディヴァイン「私自身を召喚ンんんん」
オーバーレイネットワークの構築に伴い、現世と冥界の境界が薄れていく。
それはあたかも、現世と冥界がエクシーズするかのように、世界は混沌に包まれていった。
そしてフィールドには・・・
裏ディヴァイン「ランク666 冥界最古王 ロイドゥハウデス!!」
冥界の王の出現によりシティを覆っていた暗雲が晴れたかに見えた。
しかし正しくは、冥界の王の輝きが暗雲すらもかき消すほどの光量を放っていたのだ。
裏ディヴァイン「私自身の効果発動。オーバーレイユニット(ORU)を1つ消費し相手の場のモンスターをすべて墓地に送る」
歴戦を勝ち抜いてきた決闘者のエースモンスターたちが・・・
闘うことなく墓地へと消えていく・・・さらに・・・
裏ディヴァイン「そして墓地に送ったモンスターの攻撃力分ダメージを受けてもらいますよぉぉぉ」
カイザーLP4000→0
カイトLP4000→0
裏ディヴァイン「まだまだぁ、私自身の効果発動!!ORUを1つ消費して相手の墓地のモンスターをすべて除外する」
裏ディヴァイン「そして除外したモンスターの攻撃力分のダメージをうけてもらいますぅぅぅ」
遊星LP4000→0
ジャックLP4000→0
クロウLP4000→0
十代LP4000→0
万丈目LP4000→0
遊馬LP4000→0
十也LP4000→0
そして・・・
シャークLP4000→2100→200
(エアロシャークの攻撃力は1900だ!!)
ただ一人、立ち続ける決闘者がいた。
シグナーでもなければ、サイコデュエリストでもない少年が一人。
しかし、もはや彼以外に戦うことができる決闘者はいないのだ。
裏ディヴァイン「そして私の攻撃力はこの効果で除外したモンスターの攻撃力の合計値となりますぅぅう」
シャーク「なんてパワーだ。名のある決闘者が悉く。だがおれは負けるわけにはいかない。」
裏ディヴァイン「私はターンエンドです」
シャーク「俺のターン!!」
その時、シャークの眼前に光の球が現れた。
『神代君聞こえますか?』
シャーク「だれだ」
『私はディヴァイン。といっても魂を具現化したエネルギー体ですが』
『私が具現化した肉体は冥界の王にすべて占有されました。死しても冥界の王です』
シャーク「それで何の用だ」
『私が手を出すまでもなく、あなたが勝利してくれるとは思いますが、私はあなたに謝らねばなりません』
『ディックのことです。彼は「地縛民」であることを放棄した一族であり、すでにこの戦いとは関係なかったのですが』
『何の因果か、彼もまたダークシグナーとなり、そしてあなたと闘い命を落とした』
『神代君、私の最後のSPECです。あなたがイメージするものを具現化しましょう』
『起死回生のカードでも、冥界の王を滅する伝説の剣でも、現世と冥界が混在したカオスな世界でなら可能です』
『さぁ何を望みますか?』
シャーク「本来ならあんたなんか信用できないが、使えるものは使うんでね」
シャーク「具現化するものは・・・」
『…分かりました。2つの世界が同居するこの世界なら可能でしょう。健闘を祈っています・・・』
光の球が大きく輝いた直後、世界は少しだけ2つにずれた。
あるところは重なり、あるところは離れ。
シャーク「久しぶりだな、ディック」
ディック「んーどうなってるかいまいち分からんが、あいつを倒せばいいのかリョウガ?」
シャーク「そういうことだ。すべて終わったらお前の好きなチョコパフェでも食わせてやるよ」
シャーク・ディック「俺はビックジョーズを召喚。さらにシャークサッカーを特殊召喚」
シャーク・ディック「2体のモンスターでオーバーレイネットワークを構築。エクシーズ召喚」
シャーク「こい、ブラックレイランサー!!」ディック「いけ太鼓魔人テンテンテンポ!!」
裏ディヴァイン「モンスターの効果は受けないといったはずだぞおぉぉぉ」
ディック「テンポの効果。自分のORUを取り除き、場のORUを消失させる。これはモンスターへの効果じゃないぜ」
冥界最古王ORU→0
シャーク「ORUがないってことは、モンスターの効果を受けるってことだよな?」
裏ディヴァイン「ぐ・・・」
シャーク「レイランサーの効果ORUを取り除き、モンスターの効果を無効とする!!」
冥界最古王ATK→0
シャーク・ディック「行くぜ!!モンスターで冥界最古王を攻撃!!」
かすかに離れた2つの世界で、同時に攻撃を受けた冥界最古王。
そのプレイヤー、すなはち、裏ディヴァインのライフは同時に減少した。
裏ディヴァインLP3500→0
裏ディヴァイン「わ・・・・たしが・・・・マケ・・ルワケ・・・・ガナイ・・・ならば」
かすかに残った悪意が遠く時間を超えてある場所へ飛び立ったのを、
ただ一人の決闘者だけが気づいていた。
そして現世では・・・
@エピローグその1
探究者:三沢「ようシャーク元気してるか?」
シャーク「・・・いらっとくるぜ」
ディック「そんなこと言うなよ。三沢のおかげで俺がこっちの世界にいられるんだろ」
シャーク「・・・ったく」
現世へと戻ってきた決闘者たちの前にいたのは三沢であった。
三沢はすべてを理解しているようで、シャークと十六夜をアルカディアムーヴメントの跡地へと案内する。
地下には、アルカディアムーヴメントが研究していた設備が当時のままの姿でそこにあった。
三沢は赤の
使い魔モモジリに聞いた話をもとに、他の使い魔が依り代を作り出した「人口生命体製造装置」の研究をしていたのだ。
この装置はアルカディアムーブメントがサイコデュエリストを作り出すのに使用していたものだと後から分かった。
そしてこの装置を使って、ディックとディヴァインの魂を現世に固定化させたのだ。
三沢「どうやらこの装置は別の次元の物のようなんだ。もう少し研究してみるさ」
彼の誇らしげな顔がまぶしかった。
@エピローグその2
クロウ「なぁ俺のSPEC【升】ってどういう意味だよ?」
表ディヴァイン「あぁあれですか。升をばらしてみると分かりますよ」
升→チート→チート
クロウ「・・・」
@エピローグその3
遊星「ということがあったんだ」
ヤナギ「いや~おもしろいねぇ赤き竜も地縛神もいいねぇ」
ヤナギ「ん、おかしいな。ペルーにあった王国には文字はなかったはずだよ。あんちゃんが読んだ書物はだれが書いたものだったんだろうね?」
ルア「牛尾さんすごいよ。操られていたとはいえダークシンクロ全部使っちゃうんだもん」
牛尾「いや、月影竜は回収してないぜ」
ルア「え・・・ん・・・とにかくすごいよ!!」
牛尾「そうかぁあはははは」
超官「何とか事件は収束しましたね。ですがまだ油断なりません。この平穏は長くは続かない。その時が来るまでに彼らの力を・・・」
赤き竜の伝説編 END
ボルケーノ「あれ、俺の活躍は?」
最終更新:2012年06月09日 08:13