252 :yukikaze:2012/01/18(水) 23:16:40
ちょいと考えてみた『夢幻会が銀英伝世界に転生したら?』

帝国暦486年。皇帝フリードリッヒ四世が在位三十周年を迎えるこの年。
新無憂宮の飛燕の間には、帝国の重鎮たちが集っていた。

「30年か。長いというべきか短いというべきか」
「あっという間でしたな。かつても今も。がむしゃらに生きた」

遠い目をして語るは、ブラウンシュバイク公爵とリッテンハイム侯爵。皇帝の女婿にして
帝国でも有数の大貴族の二人である。

「しかし・・・よりにもよってこの世界に飛ばされるとは」
「全く。萌えの概念が殆どないことに絶望しましたよ。私は」

どこか達観した表情をしている閣僚筆頭のリヒテンラーデ侯爵に対し、実に嘆かわしい
といわんばかりの声で答えるのは、やり手で名高いカストロプ財務尚書である。

「軍務尚書・・・」
「皆まで言うな。平常運転だ」
「前の世界から換算して150年位ですか。歪みがないですね。あの人」

乾いた笑みを浮かべながら脱力するのは、帝国3長官。上から順に、ミュッケンベルガー宇宙艦隊司令長官、
エーレンベルク軍務尚書、シュタインホフ統帥本部長である。
もっとも、彼らの目には、こうした会話が楽しめるだけの余裕があることへの感謝もあった。
それだけ彼らは、ここに至るまでの間に多くの危機に直面し、乗り越えていったのである。
それは、かつて前の世界で次々に直面した危機に勝るとも劣らない代物であった。

「色々あったな・・・本当に」

そう呟くエーレンベルクの脳裏に、これまでの事が走馬灯のように駆け巡ったのであった。

475 :yukikaze:2012/01/19(木) 23:39:29
昨日書いた→252の続き。
なお、テツ様支援SSに出てきた閑院宮を使わせていただきます。

当然のことではあったが、銀英伝世界に転生した夢幻会のメンバーの心境は
「またかよ・・・」という諦めにも似た境地であった。
もっとも、彼らがそういう境地に浸っていたのはごくわずかな時間であり、彼らはすぐにも
自らに出来る行動に着手した。
何しろ、このままでいくと金髪によって軒並み殺されてしまうのである。
また、金髪による殺害フラグもさることながら、帝国崩壊のフラグも又刻一刻と迫っていることも
考えれば、彼らが安穏としていることなどとてもではないができるものではなかった。

まず最初に、彼らが執り行ったのは、自分達と同じ同志を見つけることであった。
何をやるにしても協力者がいなければ話にならない。そして彼らは憂鬱世界での経験をもとに
「銀英伝世界で無能呼ばわりされている存在」をピックアップするわけだが、何しろ対象者が
余りにも多すぎ、探し出すのに一苦労するという一幕もあった。
(最終的にこれを解決したのは、カストロプ公に憑依していた辻の存在であった。憂鬱世界で
辻に予算折衝でさんざん苦労していた面々は、例え世界が違ったとはいえ、彼の交渉のやり方を
忘れてはいなかったのだ)

そして時間はかかったが、再び夢幻会を結成した彼らは、様々な改革へと動く。
彼らにとって幸運だったのが、夢幻会が再結成されたのがフリードリッヒ四世が即位した直後であり、
少なくとも30年近い猶予が得られたことであった。
そこで、夢幻会側は、同盟に対しては難攻不落のイゼルローン要塞を利用することで
防衛戦を展開することで、軍事予算と兵の損失を可能な限り抑えると同時に、その分浮いた予算と人員を
利用して、辺境地域に対する開発を大々的に行っている。
これにより、帝国内における経済の活性化を促し、国力を増強しようとしたのである。
この方針に、軍はやや渋い顔をしたものの、国力の増強は軍備の増強にもつながるとして、最終的には受諾。
(エーレンベルクに憑依した嶋田と、シュタインホフに憑依した杉山が軍の不満を抑えた)
門閥貴族たちは、開発費用が先帝が溜め込んだ莫大な金を使うと言われたことから
『別に自分たちの懐も痛まないし』と、殆ど他人事であった。
(ブラウンシュバイク(伏見宮)、リッテンハイム(閑院宮)、リヒテンラーデ(近衛)が
『予想通りだったな』と、溜息交じりに言葉を交わすほど、予想された反応であった)

かくして夢幻会側は、国家的事業として辺境地域の開拓を行うとともに、ゆっくりとではあるが
着実に自己の勢力の浸透に注力することになる。
何しろ彼らが行おうとしているのは、自らの生き残りのために、これまでの特権階級層を切り捨てる
ことに他ならないのだ。それに、帝国の国力増大を嫌うフェザーンや地球教の暗躍にも神経をとがらせなければならない。
魑魅魍魎が跋扈する宮廷という戦場において、彼らが細心に細心を重ねるのも当然のことであった。

そして15年後。辺境地域の開発に一定のめどが立った時、彼らは行動に移すことになる。
『帝国の春の目覚め』と称されることになる、一大改革と内乱の始まりである。

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最終更新:2012年02月10日 06:39