人は不純を嫌う。
例えば一面の白い画用紙の上に絵の具をたらしたらどう思うだろう。
垂らされたインクが何色であるかに関わらず、人はそれに穢れを感じる。
白という調律が乱れたことに嫌悪するのだ。では次に、別のインクを垂らしてみよう。
また汚れる。 純白という和が更に乱れ始める。
更にインクを垂らす、垂らす、垂らす。 和が乱れ・・・・・・いや、乱れたとはもう言わない。
絵の具と絵の具が混ざり合い、白の空間が染まり、やがて歪みを生み出し始めた。
ぐちゃぐちゃに混ざり合っていくうちに、歪みはすでに歪みではなくなり、一枚の絵を生み出した。
そしてこの一枚の絵に役者が集う。
ある者は白髪の少年、
ある者はポーカーフェイスの少女、
ある者は女子高生、
ある者は決闘者、
ある者はサラリーマン、
ある者は絵札を従えし一人の少女、
そして絵札に閉じ込められし少女達。
彼らを待ち受けるのは一人の騎士。
深遠の闇を彷彿とさせる、漆黒の鎧に身を包んだ男。
右手にはかつて八つの首を持つ大蛇を薙いだ太刀、
左手にはかつて一人の王が国を治める道を切り開いた大剣を持つ。
「念仏は済んだか小僧共、では行くぞ」
この舞台に終幕を降ろすため、騎士は双剣を構え役者達に切りかかった。
「おみずどーん!」
朝倉は両の手を合わせて滝のような水流を放つが騎士はそれを一閃する。
剣による衝撃波は水流の中を突き進み、後にはXの字に切り開かれた水柱が飛散していった。
そしてそのまま剣閃は少女を切り刻むところだったが、それは一つの障壁によって止められた。
「・・・・・・ありがとう長門さん」
「礼には及ばない」
「なんか私助けられてばっかりだね。 長門さんがそんな姿になったのも私のせいだし・・・・・・」
「気にしなくていい、私も朝倉さんを守りたかっただけ」
「長門さん・・・・・・」
「女の話は長いというが、こんなときぐらいは自重してもらいたいな」
気づけば目の前で、アカギが
テラカオスの双剣を刀で受け止めていた。
しかし名も無き刀は大義を唱えた二本の大剣に及ぶはずもなく、刃のぶつかりあっているところからひび割れていく。
もっとも刀が折れることはなかったが。
「サイコクラッシャァァァァァ!!!」
闘気を纏ったスーツ姿の男が騎士を突き飛ばした。黒き甲冑が闘気によって一瞬だけ紅く染まる。
「嫁の説教も長くてねえ、これが終わったら謝りに行かなくてはなあ」
タラコ唇が印象的なサラリーマン、
アナゴはネクタイを整え、騎士が飛んでいった方向に向けて再びファイティングポーズをとった。
「ほんとほんと。 僕のママもいちいちうるさくてさぁ・・・・・・いけ!ブラックマジシャン!」
紅葉を彷彿とさせる少年は闇色のローブを纏った魔術師に命令を下すと、彼の杖の先から黒いエネルギー弾が発射された。
黒・魔・導(ブラック・ マジック)と呼ばれる球体はテラカオスを全身を包み込み、その鎧に幾つものひびを入れ始める。
『いくわよあなたたち!』
『任せてください姉様!』
『合点承知!』
文字通り激流に身を包んだ水竜の合図により、
蒼白の輝きを放つ龍とそれと対照的に暗黒の鱗を持った竜が共にブレスを放つ。
青と白と黒の輝きが混沌の名を冠する騎士の視界を完全に覆いつくした。
ひび割れていた鎧は破壊音によってかき消されつつも完全に崩壊し、彼の肉体を保護するものはなくなったのだ。
甲冑を完全に破壊しつくした光、そして闇は次にテラカオス自身を焼いていく。
そして彼は一粒の塵も残さず消滅した・・・・・・はずだった。
『え・・・・・・・?』
テラカオスを覆っていた、アカギ達が生み出したエネルギーの柱から漏れた金色の大剣が黒竜を貫いたのだ。
漆黒の鱗からはよくわからないが、零れ落ちた液体は紛れも無く竜の血液である。
共に闘っていた少年達は、その事実を否応なく受け入れることとなる。
『夏奈・・・・・・?夏奈ぁぁぁぁぁぁ!!!!!!』
『ウ・・・・・・ソ・・・・・・?』
彼女と最も親しき二頭の竜は、突然の悲劇に失望、あるいは絶望する。
大剣は竜の心臓と思われる所に深く突き刺さっていた。
「くそっ、まだ生きていたのか!」
「ちょっと想定外だったかな」
あまりにも突然な出来事に、竜のことをあまりよく知らない少年達は悲観する前に現状を確認し直していた。
その冷静さが不幸中の幸いだったかもしれない。
今度は一本の刀が光龍の首を狙うが、それは幾多の槍によって龍に届く前に落とされていた。
しかし刀は少年達に拾われる前に、飛んできた方角へと戻っていく。そして黒竜ごと金色の剣も戻っていった。
「できれば光龍の力も得たかったが仕方ないな。 だがよかろう」
声の主は
混沌の騎士。 その鎧はとうに朽ちても騎士である証の王の剣は健在だ。
・・・・・・最も今のそれがエクスカリバーと思えるかは別だが。
金色の剣には、その刀身に決して似付かわぬモノが刺さっていた・・・・・・
『夏奈ぁぁぁぁぁぁ!!!!!!』
カナと呼ばれてた少女は、剣が断つにはあまりにも不恰好なモノだ。
いかに大義を持った剣でも、まだ幼さを残す無垢な少女を殺してしまえば単なる人殺しの道具でしかない。
しかし、騎士はもう一本の剣を少女に向け始める。
「黒竜の力は吸収したしな、しばしの余興とするか」
いつのまにか黒き鎧を纏い漆黒の翼を生やした騎士は、もう一本の剣で少女を突き始める。
『あ・・・あ・・・・・・』
「貴様ぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!」
「ちっ、早く止めるぞ!」
銃弾、高圧水流、サイコクラッシャーなど、様々な方法でテラカオスの処刑を止めようとするアカギ達。
だが透明の障壁がそれらをことごとく遮った。
「ぶるわぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!」
『どうして・・・・・・どうして効かないの!?』
「『黒・爆・裂・破・魔・導』でも駄目なんて・・・・・・」
「このバリア硬すぎるよ・・・・・・」
「結界自体が光速にも匹敵する速度で再生している。 破壊するのは極めて困難・・・・・・」
「絶対に安全なガラス張りの中から公開処刑か・・・・・・悪趣味だな」
アカギ達は結界という名の処刑場、否、死体処理場の外で、テラカオスを睨み続けるしかなかったのだ。
しかし彼らは、見るということすらできなくなる。
それは余興というにはあまりにも残酷で無慈悲だった。
草薙の剣は少女だったモノをひたすら突き続ける。
首、胸、腹、足、そして頭、いたるところを貫いて、草薙の剣と呼ばれた殺人包丁が完成した。
両手両足が崩れ落ち、すでに人の原型をとどめていない少女だったモノに耐えられず視線をそらすアカギ達。
朝倉に至っては隣に長門がいるのにも関わらず嘔吐物を撒き散らしていた。
「さて最後の仕上げだ」
テラカオスは一個の丸い塊を持って、自分の周りにいなかった少女に向けて歩み始めた。
★ ★ ★
金色の何かがカナに刺さった。 なんかみんなありえないって顔をしている。
どういうことだカナ。 お前この後に及んで遊んでいるのか?
腹に剣を刺したって無駄だぞ、そんな手品すぐに・・・・・・いや考えればわかる。
おい何処へいく、返事をしろ。悪ふざけはやめろよバカ野郎、姉様も怒ってるぞ。
でもこんなときだから私は許してやるよ。 アカギ達もわかってくれるさ。
だからカナ、早くこっちに戻ってこい。戻って・・・・・・
「『コンナ時間マデ何処ホッツキ歩イテイタンダコノ野郎』なーんてな、ひゃはははははははは」
騎士が、その風貌に似つかわない口調で生首の口を動かして話しかけてきたのだ。
生首と言っても人と呼べるような場所は最早骨格だけで、両の目玉はすでに抜け落ち、
肉は骨ごと貫かれ、所々にできた空洞から脳漿がはみ出し、毛髪は血と大脳によって染まってしまって、
ほとんど肉や骨とともに削げ落ちてしまっている。
「カ・・・・・・ナ・・・・・・?」
「『ソウダゾチアキ』っと私の声真似も中々のものだな」
しかしそれでも千秋はわかってしまった。
テラカオスの声真似のせいもあるが、生首に残された唯一の個性があったからである。
まるで『わざと』残しているように生えそろったツインテール。
この部分だけわざわざ血液や肉片を綺麗に拭き取られ、整えられていた。
これにより、千秋は一人の姉、南夏奈の死を、あまりにも残酷な形で受け止めることになってしまったのだ。
「さて
南千秋、私と一つになろう」
テラカオスが動かなくなった千秋に手を差し伸べる。
千秋は無言でただその手を受け取った。
「これはもういらないな」
そして彼は両手で掴んでいた肉塊を落とす。
万有引力の法則により支えを失ったそれは地面に叩きつけられる。
ぐしゃ
少女は思考を停止した。
★ ★ ★
『よくも・・・・・・よくも妹達をぉぉぉぉぉぉ!!!!!!』
「貴様ぁぁぁぁぁぁ!!!!!!」
「あんただけわぁぁぁぁぁぁ!!!!!!」
南春香ことウォータードラゴン、アナゴ、
朝倉涼子はただ怒りの感情に身を任せ、テラカオスに襲い掛かる。
次の瞬間、騎士の二つの高圧水流とかめはめ波が互いに交じり合い、爆ぜた。
爆心地だけ大津波にでも飲み込まれたかのように抉れており、水竜が暴れた後を彷彿とさせる。
人はおろか、生物であるならばこの大災害に生き延びれる者などいないだろう。 生物であるならば。
「ふははははははははは!!!!!! これがライトアンドダーク!
光と闇こそ混沌の根源!
闇だけでは足りぬ、究極の光を手にした今こそ真のカオスが完成した!」
災害地の上空にその男は浮かんでいた。
漆黒だった翼は、片翼だけ天使のように白く変化しており、それに応じて鎧の左半身だけ純白に染まり終える。
全ての空を照らす天の輝きと、数多の大地を包み込む夜の衣をかね揃えた姿は正に混沌の主に相応しい姿になっていた。
「最悪の結果になっちまったな・・・・・・」
俺はテラカオスを見上げて思わず呟く。 知らない。 俺はこんなものは知らない、こんなものは要らない。
アナゴ達が全力で食い止めているが長くは持たないだろう。 生きているだけ大したものだ。
「まだ、結果じゃない。 結果とは私達があきらめてから発生するもの」
それは屁理屈っていうんだ。 現実を見てみろ。 夏奈と千秋のガキの力を吸収したアレは、
ただでさえ叶うかどうかわからなかったのに更に力をつけて、文字通り俺たちを見下している。
現にアナゴがワールドデストロイヤーなんて物騒な技を放っているのにも関わらず、ぴんぴんしてやがる。
ワールドデストロイヤーの爆風が消えるや否や、範囲外から待機していた春香と朝倉が突っ込んでいくが、
涼しい顔をして軽くいなしている。 澄ました顔が気に食わない。
遊戯の野郎も新たなモンスターを召喚して迎撃準備をしているが、やっているだけ時間の無駄だ。
この力量差では策を立てたところですぐに潰されるのがオチだ。
「あきらめるの?」
「・・・・・・」
この女、心を読んだか・・・・・・まあそんなことは関係ない。
俺が今やることは一つだけだ。 戦う? 馬鹿言え。 あんな化け物に拳銃とオンボロの刀で何ができるというのだ。
「じゃあ何をするの?」
俺が思ったことに対して返答をする長門。
傍からみりゃはっきり言って変人だが、俺とこいつしかいないこの場に置いては大した問題じゃない。
探せ、探すんだ。 この場を打開できる役があったはずだ。
まずは今に至るまでのメンバーの状況を整理し始める。
人の命どころか世界の運命を賭けた一世一代の大博打、これに巡り会っている自分はかなりの悪運なのだろう。
「ククク・・・・・・狂気の沙汰ほど面白い!」
『千秋を!夏奈を返して!返しなさいよぉぉぉ!!!』
「落ち着いて春香さん!」
「下手に突っ込んだらぁ俺たちが危なぁい」
暴れるウォータードラゴンを必死に押さえつけるアナゴと朝倉。
圧倒的、いや絶対的なテラカオスの力を目の当たりにして、冷静になった彼らであったが、春香だけは未だ高ぶる激情を抑えようとはしない。
いつもふざけてはいたがムードメーカーとなって周囲を和ませてくれた夏奈、
そんな彼女といつも言い争いしていたけど、結局はそんな夏奈を思っていた真面目な千秋、
何故そんな娘達が殺されなければならないのだ。 かわいい妹達が何をした。
姉妹との仲を引き裂かれ、殺し合いの場に放り出され、中途半端に希望を持ったあげく
それを遥かに上回る絶望に押し潰されて死んでいく。
許してなるものか、絶対に殺してやる。
そう言い聞かせて無理矢理、自分の怒りの炎を燃やしている。
『あんたたち離しなさいよ!離してって言ってるでしょ!私はあいつを殺すのよぉぉぉ!!!』
己の内に燃え滾る激怒の業火に身を任せ、アナゴ達の拘束を振り切った春香は妹達の仇に食らい付こうとする。
「そんなに妹に会いたいなら会わせてやろう。 ただし冥府でな」
左手の大剣を振り上げ、その剣の名を叫ぼうとするテラカオスだったが、直後、彼の視界が一面の茶色で覆われた。
「クリクリ~」
「魔法カード『増殖』で
クリボーを増殖! これで・・・・・・」
「甘いわ! エクスカリバァァァァ!!!!」
それはある意味喰らう側にとっては死刑宣告ともなりえる。
剣は輝きを放ち、彩られていた血の紅は全て消し飛んでしまった。
それとともに無数のクリボーが全て消滅をする。 テラカオスの視界は完全にクリアとなり、
本来の美しさを取り戻したエクスカリバーと右手の草薙の剣以外何も残ってなかった。
「春香さん!? そんな・・・・・・」
「魔法カード、『モンスター回収』を発動!『ウォータードラゴン』と『クリボー』をデッキに戻して元の手札の枚数だけぽカードをドローするよ!」
そう宣言した遊戯の手には、南春香の魂が写っていた『ウォータードラゴン』のカードの姿があった。
ちゃっかりクリボーまで回収しているところが彼らしいといえば彼らしい。
「君は少し頭を冷やしてね・・・・・・じゃあ手札の『暗黒騎士ガイア』と『カース・オブ・ドラゴン』を融合、『竜騎士ガイア』を召喚するよ」
突如空中に歪みが生じ始めたかと思うと、空間のねじれからほとんど骨格といってもよい翼竜と
それにまたがる双槍を持った竜騎士が現れた。
槍と剣のぶつかりあう金属音がする。
竜騎士の双槍の突きを、混沌騎士は剣の面を使って器用に受け止め続ける。
「貴様ごときでは余興にすらならんわ!」
混沌の騎士の草薙の剣は無数の突きを一閃して払い、もう片方のエクスカリバーで竜騎士の首を捉えたが、
竜騎士の頭部が胴体と別れることはない。
ガイアもテラカオスと同じ要領でエクスカリバーの刀身を槍で弾き返したのだ。
さらにガイアは、弾かれてがら空きとなったテラカオス胴体に横薙ぎに槍を払ったが槍が届く前に、
テラカオスはバックステップの要領でカース・オブ・ドラゴンの頭を蹴り飛ばして後方に下がることで避けられてしまう。
だがそれは、少し早計だったかもしれない。
頭を踏んづけられたカース・オブ・ドラゴンは、自分の視界にテラカオスが移った瞬間にブレスを放つ。
「いまだ! ドラゴンブレス!」
遊戯の宣言と同時に放たれた灼熱の息吹が、テラカオスの肉体を包み込みながら彼を吹き飛ばしていく。
「まぁだ終わりではなぁい! 三・連・殺!!」
「次は接近戦で・・・・・・」
不意の一撃によって宙を舞うテラカオスに、斧を振りかぶったアナゴとナイフを構えた朝倉が挟み込み、
流れるような斬撃が両脇からテラカオスを襲う。
それでも肉を引き裂く音は一回も聞こえず、金属音だけが鳴り続ける。
双剣でアナゴと朝倉の攻撃を裁いていたテラカオスはもう飽きたと言わんばかりに二人を弾き飛ばす。
そして自分と剣舞を繰り広げていた最初の相手へと向かっていった。
「いけない、『ビッグ・シールド・ガードナー』召喚!」
ガイアを守護するかのようにカース・オブ・ドラゴン頭上に重厚な盾を持った筋骨隆々とした男が現れる。
だが、並大抵の竜の息吹なら全て防いでしまう障壁も、竜の力を手に入れたもう一人の騎士の前では無意味だった。
盾は男とともに紙切れのように両断され、そこから生まれた衝撃波は槍を構えていた、竜騎士ごと切り裂く。
かつての英雄が所持していた剣の前では竜騎士の槍すら容易く断たれてしまうのだ。
得物ごと両断されてしまった男達は一瞬停止していたかと思うと、体を預けていた竜と共に結晶と化して砕け散ってしまった。
「そんな・・・・・・『ビッグ・シールド・ガードナー』まで・・・・・・だけど負けない! 手札の磁石の戦士α・β・γを生贄に、
『磁石の戦士マグネット・バルキリオン』を召喚!」
竜が散った地点に全身が鋼鉄の骨格で作られた新たな騎士が誕生する。
攻撃力3500を誇る遊戯の切り札の一つだ。
だが、テラカオスは鋼鉄の戦士を意に介すことなく地表で下僕を召喚し続けている決闘者を見下ろす。
極めて冷酷で視線そのものが一つの凶器ではあったが、放たれる言葉は全く別の性質を持っていった。
「何故そこまで頑張れる? どうして死を受け入れない? 我に敵うことは叶わない願いだとすでにわかっているはずなのに・・・・・・」
それは同情、憐憫、哀れみ。
優しさとも別の性質を持った言葉は、
武藤遊戯だけではなく今この空間に存在する全てに語りかけているようにも聞こえた。
「簡単だよそんなこと。 デッキがまだ残っている限り僕はまだ戦える! 全ての手札を使い切るまでは僕は決してあきらめたりはしない!!」
「俺もだぁ! この肉体が朽ちぬ限り戦い続けるぅ!!」
「長門さんと幸せな結婚生活を過ごしたいから死ぬ気はないんだよね」
高らかに宣言した少年に答えるかのように、戦士達は己の望みを言葉に紡ぐ。
彼らの瞳には希望が朽ちることはなかった。
「そうか」
ただ一言、彼らの言葉をその一言で締めたテラカオスは無造作に剣閃を放った。
「え・・・・・・?」
武藤遊戯は目の前の光景を信じることができなかった。
肉体になんらかの異常が生じたわけではない。 腕も脚もなんの支障もなく動かせるし、胴体を痛みが襲ってもいない。
壊れたのは彼ではなかったからだ。 しかしそれは一般的な見解。 彼と同属の人種であれば、彼がそう思う理由もわかるだろう。
「これで貴様らの希望は潰えた」
剣圧は決闘者たる証、デュエルディスクを破壊し、装填されていたカードが単なる紙吹雪と化して宙を舞っては散っていった。
彼の視界には四肢を貫かれたアナゴと朝倉がいる。
「さて小僧、貴様はまだ戦うか?」
「・・・・・・」
マグネット・バルキリオンを切り捨てて武藤遊戯の近くに降り立つテラカオス。
デュエルディスクの残骸と運良く形状を保っていた僅かなカードを踏みつけながら、少年の前へと歩む。
しかしそれでは彼は騎士の問いに答えることなく地表を見つめている。
軽く鼻息を鳴らしたテラカオスは、地面に落ちた難を逃れたカードを一枚拾い上げ、言葉を続けた。
「まだ切り札があるのか? ならばこの紙切れを一枚づつ破いてみよう」
おどける口調でカードの両端と両端を掴むテラカオスに反応して、遊戯は子を奪われたライオンのように顔を上げた。
テラカオスの脳裏に浮かぶのは怒りと絶望に染まった醜い表情を浮かべる武藤遊戯。
だけど触れるだけで壊れてしまいそうなほど繊細で、思わず触りたくなってしまう自分がそこにいる。
壊したい。
南夏奈のように
長門有希を破壊したら朝倉涼子はどうなるかを見てみたい。
泣き叫び、喚き、狂い、廃れていく様子を鑑賞したい。
絶望という暴力でちっぽけな希望を踏み潰してしまいたい。
アカギやアナゴは鏡を用意して自らの肉体が崩壊していく様を鑑賞させるというのはどうだろう。
瞼を切り取って目玉を剥き出しにして固定、舌を噛み切ってしまわないように猿轡をつけておこう。
強靭な精神を持った彼らがどうなっていくのか想像しただけでわくわくする。
そして南千秋のように壊れたら後は吸収するだけだ。
極めて幼稚な発想に善も悪も彼の中には存在するわけがない。そこにあるのは欲望だけ。
殺し合いの中で自我を持った存在だから、こうなってしまうのはある意味必然だった。
「しばし余興とするか」
無邪気な笑みを浮かべたテラカオスは顔を上げた武藤遊戯の表情を拝見する。
しかし武藤遊戯の表情は怒りに燃えているわけでも絶望に歪んでいるわけでも、ましてはすでに壊れているわけでもなかった。
「なぁにこれぇ?」
「なんだありゃ?」
俺としたことが思わず間抜けな声を出してしまった。
長門の結界によって守られていたおかげもあってか、俺はこの状況を打開できる役を見つけることができたのだ。
九蓮宝燈、いやこの場合は切り札というべきだな。
混沌という支配に革命を起こす札がジョーカーであるというのはなんとも奇妙な話だが、現状を見てみれば些細なものだ。
それよりもなんだあれは。 タバコは吸っているがヤクをやった覚えはない。
『新生SOS団、
全軍突撃ぃぃぃ!!!』
『やれやれ・・・・・・』
『そうしょげないでください
キョンくん、今こそ正念場なんですから』
『はわわわわ、皆さん頑張りましょう!』
『ここで活躍すれば私も晴れてレギュラーに・・・・・・』
『ここで活躍すれば愛しの彼は私のもの・・・・・・』
『キー(いやその理屈はおかしい)』
ハルヒ達がでてきた。
ハルヒだけではない、死んだはずの喜緑や暗黒長門までいる。
なぜか悪趣味といえば悪趣味なぬいぐるみ?を抱えているが・・・・・・
『ストーリー考える気晴らしに現世に舞い戻ってきたぜ!』
『士郎、帰ったらご飯よろしくお願いします』
『料理とくれば私も腕を振るいますぞ』
『ははは、そのときは僕にも食べさせてくれよノーマン』
『嫁のためにワシも頑張るぞ』
『キテレツ斎、長門は俺の妹だってことも忘れないでくれ』
『うじゅ達マスコット軍団も頑張るのじゃ!』
『秋田県民の魂、しかと受け取ったべ!』
『萌えキャラは我一人でいい・・・・・・』
今度は知らないやつらが出てきた。
隣の長門はDボゥイ・・・・・・とかまるで黄泉返ってきた人間を見たかのような顔をしている。
いや黄泉返ってき『俺の歌を聴けぇぇぇぇぇぇ!!!』
『
カービィ!バサラさん!俺達のコンサートをテラカオスに聴かせてやろうぜ!!』
『ぽよっ!』
声だかなんだかよくわからない爆音によって思考を止められる。
気づけばギターを持って赤い戦闘機に乗り込んだ男が、太り気味のガキとピンク玉とともに叫んでいた。
正直うるさい。 知らない。 こんな音知らない。 こんな音要らない。
『歌はいいね。歌は心を潤してくれる。リリンの生み出した文化の極みだよ』
『あたいたちってばさいきょーね!』
『らんらんるー』
『魂だけになっても混沌に立ち向かえる。 こんな私達もきっと特別な存在なんでしょう』
『それも私だ』
魂だけ? やっぱりこいつらは死人ってわけか。
周囲には俺の知らない顔が山の数ほど並び、全員がテラカオスのやつの中に入っていく。
一人、また一人入っていくたびに何故かやつが悶え、呻き声をあげる。 何故だ? やつは魂を吸収するはずだ。
『それは簡単だ。 一つの肉体に幾つもの数え切れない魂に自我が耐えられるはずがない』
「以前は自我を含め、何も持たなかった故に無尽蔵に魂を吸収できた。 だがぁ今は違ぁう」
『自我が生まれてしまった故に他の魂を吸収するにはそれらの意識を時間をかけて乗っ取る必要があった。
だから一度に自分の意思に相反した大量の自我が入ることには耐えられないんだ。 行きなさいお前達!』
『『『『『『『はい名護さん!!!!!!』』』』』』』
名護という男の命令により大量の兵士達がテラカオスの中に突っ込んでいく。
というかあんたこの状況にもう溶け込んでいるのか。
『びゃあ゛ぁ゛゛ぁうまひぃ゛ぃぃ゛』
『こらカツオ! あれほど卵割り機をマスオさんに見せないでって言ったのに!』
『また俺のマグカップを勝手に使ったな・・・・・・断罪する!』
『今はそれどころじゃないって!』
『ふはははは! 諸君、闘争だ!』
三点に団子と極めてキチガイ染みた髪型をした女とスーツ姿の男が
夏奈とカツオを追いかけていく。 見た目は20代後半という男の中から湧き出る、
赤コートの男やら金髪のガキやら妙な立ち方をしている男が彼らを追いかけ、
いずれもテラカオス内へ入っていった。
こいつらはやっぱり遊戯が持っていたカードから発生したらしい。
アーマゲモンといっただろうか。
遊戯の持つカードとは企画の違うそれは、以前海馬達の魂が出てくるときの鍵となっていたものだ。
やつの正面で一枚の札が凄まじい光を放っている。
『うおっまぶしっ!』
『まぶしくて目を開けられない男、スパイダーマッ!』
『閉じていても変わらないと思うのだが・・・・・・』
『細かいところは無視だ! テラカオスのところに行くぜお前ら!』
『俺、この戦いが終わったら喜緑さんと結婚するんだ・・・・・・』
『俺らもう死んでるってwwwwwwうえwwwうえwwwwww』
『テラカオス、できれば青学にスカウトしたかったがな』
『やつならメジャー狙えるな』
『OKAMI!今こそ我らのKIを!』
『わかってるよ! あんたら腹はくくったかい?』
あいつはホルスの黒炎竜か。 随分騒がしいやつらと一緒に出てきたな・・・・・・ってなんだ?
『会いたかったぜ相棒!』
「やだなぁ、僕はあのままでもよかったのに」
『またまた遊戯さんったらそんなこと言っちゃって』
遊戯のやつの隣にいる一人は十代だとわかるが、もう一人は遊戯?
気のせいか背が高い。
『ククク・・・・・・同一人物ならここにもいるぜ』
背後を振り返ってみると白髪の頭に特徴的な角ばった鼻に顎。
背は高いが間違いない。 俺だ。
もうどうにでもなれ。
★ ★ ★
『は、入りました・・・・・・』
『ああ、次は6/だ・・・・・・』
『弁当食べたぁい』
『歪みねえな』
『こちらスネーク、テラカオス内部に突入した』
聞き覚えのある声に寒気を感じた俺は俺は思わず体を震わせる。
なんで俺こんなところにいるんだ?
確かかがみを助けるために
野比玉子の内部入ってそれで・・・・・・
なんで俺は考えることができるんだ?
確かテラカオスに全てを奪われて機能を完全に停止したはずだ。
なのに俺はどうして考えることができるんだ。
『それは私が教えてあげます』
!? みなみ!?本当にみなみなのか!?
別れて二度と会えなくなった後もずっと心の片隅にいた少女、ずっと愛して止まなかった最愛の女性。
彼女に会っている、話をしてくれている、たったそれだけの事実が俺の疑問を全て吹き飛ばした。
『6/さん・・・・・・そんなに思ってくれるのはうれしいですが疑問を吹き飛ばしては困ります』
真っ赤になったみなみもかわいいぜ・・・・・・てあれ?
どうして俺が思ったことがみなみに伝わっているんだ?
『6/よ・・・・・・お前自分がしゃべっていることに気づけよ』
『雑種が・・・・・・あまり惚気ないことだな』
「え?しゃべっているってどういうこと?」
声が出た。 みなみの横に6/とジャイアンの母書き手が現れる。
俺はすでに死んでしまったのだろうか。
『違います6/さん。 私達は魂ですがあなたは確かに生きています』
「そうか・・・・・・じゃあ何故俺はこうして動いている?」
みなみ達が死んだという事実を再認識したが、落ち込んでいる場合じゃないので
最初に思った疑問を問いかける。
『死者スレのやつらの魂がお前達の肉体に入り込んでいるんだ』
『そして6/さんの停止した肉体を6/さんの代わり動かしているんです』
『本来ならば雑種共の魂に自我が崩壊するところだがな。 だが雑種共は皆、貴様を好いておる。
従って貴様の肉体は貴様の思うように動かせるぞ』
「みんなが・・・・・・俺を・・・・・・」
両腕を回してみたり、手のひらを握ったり離したりしてみる。
確かに俺の感覚だ。 なんか右側から『三人のこなたと合体ぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!!!!!!!』
というかがみの叫び声が聞こえてきたから彼女ももう大丈夫だろう。
一方左側では何故か千秋が海馬や夏奈と抱き合っていた。 なんで彼女達がここにいるのだろうか・・・・・・
涙を夏奈の袖で拭った千秋の体に海馬と夏奈が吸収される。
彼女はいつここに来たのだろうか? 外ではどうやら色々あったらしい。
『じゃあ6/、俺達も入るぞ』
『貴様が決着をつけるのだ』
『6/さん、いつまでも・・・・・・見守ってるから・・・・・・』
そして
692達の魂も俺に吸収された。
俺達の周りにほとんど誰もいなくなっていた。
どうやら目を覚ます前にかなりの魂が俺の中に入ったらしい。
かがみと千秋も一足早く外に出ていってしまったのだろう。
自分も脱出しなくてはという焦りに襲われて心臓が高鳴る。
今の胸の鼓動は彼ら魂の鼓動でもあるのだ、こうしちゃおれない。 俺も・・・・・・
『まだワシが残ってるぞ』
「!?」
勝てないのだ。 自分の、いやあらゆる男の『アレ』がそのまま具現化した存在、
それが今、6/の前にそそり勃つ『モノ』なのだから 絶句した。
まるで『わざと』残しているように勃ち塞がるマラ。
彼だけわざわざ今まで6/に入ることなく、ご立派なそれは輝いていた
これにより、6/は
マーラ様を吸収しなくてはならないという事実を、あまりにも残酷な形で受け止めることになってしまったのだ。
「さて6/、ワシと一つになろう」
マーラが動かなくなった6/のバックを取る。
6/は無言でただそのアレを受け入れた。
「これはもういらないの」
そしてマーラは6/の着ていたウェディングドレスを剥ぎ取る。
万有引力の法則により、ドレスはひらひらと舞いつつも緩やかに地面に着地する。
アーッ!!
男は思考を停止した。
★ ★ ★
「さあ観念しなさいテラカオス!」
「これで私達の勝ちだ、バカ野郎」
「ほざけぇ・・・・・・」
柊かがみはパクったエクスカリバーと草薙の剣を、
南千秋は兄の形見である水竜剣を手に取り、テラカオスに向ける。
アカギ達も勝利を確信した表情でそれぞれ自分の得物を構えた。
そして衰弱したテラカオスに変化が起き始める。
「う、うげぇぇぇぇぇえぇぇええ!!!!」
「何吐いてんだバカ野郎!」
テラカオスの口内から出てきた人型のものをみるなり千秋達は混乱する。
なんかぴくぴくと蠢いている。それに耐えられなくなった春香ことウォータードラゴンと朝倉が水流を出して
押し流した。
「ちょいきなり何を(ry」
「6/!? あんた一体何やってんのよそんな格好で!」
流れた水の中から現れた人物は紛れも無く6/だったのだ。
ただし全裸で。
「うるせえよ! 俺だって好きでこうなったわけじゃねえ!」
何故か泣きながらかがみに反論をする6/。
アカギとアナゴは呆れ果て、春香は両手で千秋の目を覆って自分の目も閉じている。
朝倉も春香に習って長門の両目を覆っている。
「はいはいわかったからさっさとそれ持って止めを刺しなさい」
「俺草薙の剣を持っていたんだが」
「エクスカリバーじゃなきゃやつに決定打を与えられないでしょ」
かがみはそう言ってかつての己の愛剣を投げ渡した。
自分のやるべきことを把握した6/は新たな相棒を手に取り再びテラカオスのほうに向き直った。
「草薙の剣にはこういう使い方もあるのよ」
かがみが地面に草薙の剣を刺したかと思うと、刺した地面から青い閃光が地走ってテラカオスに直撃する。
しかし閃光は彼を包み込むだけで消えてしまった。
「この程度私には・・・・・・」
「ほんとバカねあんたって。 奪った装備品の能力ぐらい把握しなさい」
かがみがテラカオスに言い放ったとき、テラカオスが纏っていた甲冑が突然老朽化を始めたのだ。
攻撃補助魔法ルカナン。
喰らってしまった相手は自らの守備力が弱体化してしまう魔法である。
やまたのおろちが落とすくさなぎのけんは伊達じゃない。
「いくのだぁ6/!」
「あんなやつ早く倒しちゃってよね」
「6/さん、最後はあなたに任せるわ!」
「あのバカ野郎にとどめをさすんだぞ!」
「長門さんにかっこいいところ見せたかったけど、今回はあなたに譲るわ」
「・・・・・・決着をつけて」
「男を見せなさい! 6/!」
仲間達の応援を受け、6/はテラカオスに向けて駆けていく。
「やめろぉぉぉぉぉぉ!!!」
王の剣を手にした一人の青年は人々の絶対的な希望。
だが絶望にとってはそれは死神ともなる。
金色の剣に漆黒の鎌を垣間見たテラカオスは思わず背を向け逃げていく。
しかし魂というエンジンがかかった肉体を突き放せるわけもなく、いつのまにかテラカオスの眼前まで回りこむ6/。
そして彼は剣の真名を開放する。
「エクス・・・・・・カリバァァァァァァァァ!!!!!!!!!」
混沌は秩序という輝きに飲み込まれていく。
ぐちゃぐちゃなインクで染まった画用紙が再び白く染め上げ、
役者達が新たな絵を描きあげる。 8人の男女が円陣を囲って一人の男を祝福している。
その絵の中央には王の剣を持ってガッツポーズをしている男、6/が一人立ち残っていた。
ただし全裸で ← 重要
【6/(全裸)@現実】
【柊かがみ@らき☆すた】
【赤木しげる@アカギ】
【南千秋@みなみけ】
【南春香@みなみけ】
【朝倉涼子@ハルヒシリーズ】
【真・長門@涼宮ハルヒシリーズ】
【武藤遊戯@遊☆戯☆王(テレ朝アニメver.)】
【アナゴ@サザエさん】
【以上、9名。バトルロワイアルより――生還】
【テラカオス@テラカオスバトルロワイアル 死亡確認】
エピローグ
「姉様、長門さんからお手紙です」
「ありがとう千秋」
千秋から手紙を受け取った私は早速裏側を見てみる。
結婚一周年の写真だ。
エプロンを身に着けた朝倉さんがかわいらしい赤ん坊を抱えている。 すっかり主婦が板についてきたみたいね。
そして彼女の隣にはスーツ姿の長門さん。 今は一家を支えるサラリーマンになって働いているらしい。
高校中退ということになるのだが、一年前のあの事件もあったので今の日本は労働力が不足しているらしく、
割と条件のよい職にありつけたらしい。
一年。 あの忌まわしきバトルロワイアルからもう一年が経ったのだ。
一時はカードになっていたが、遊戯君によって再び人に戻ることができた。
いや人と言ってもマムクートの家系だったとかなんとかで竜になることはできるんだとか。
だが日常ではそんな力を使う必要もなく、今は家の仕事と弟の会社の手伝いをしている。
「姉様、何をみているの?」
「おいモクバ、それは姉様宛に届いたものだぞ」
「いいじゃんどうせうち宛なんだし」
「二人とも喧嘩しないの。 一緒に見せてあげるから」
「「はーい」」
私が注意をすると妹と弟は一緒に私の持っている手紙を覗き込む。
見ているかな海馬くん。 私、今モクバくんの姉になっているの。
こんなこと言ったら怒るだろうけど、モクバくん本当に海馬くんのことが好きだったのね。
実際最初は中々懐いてくれなくて、中々心を開いてくれなかったんだ。
海馬くんが死んだと言ったときモクバくんは必死になって否定してたよ。
『兄様が死んだなんて嘘だ!』ってね。
だから私も必死に説得したよ。 私が海馬くんが出会ったときのこと、一緒に戦ったこと、
そして最後の戦いで・・・・・・
そしたら話しているうちに私まで涙が出てきちゃって・・・・・・私も海馬くんのことが好きだったみたい。
泣き落としといったら反論できないけど、それでもモクバくんはその日から少しずつ心を開いてくれた。
本当の兄弟姉妹になるために努力はした。 今の私達、姉弟になっているかな?
「モクバ様、春香様、千秋様、御迎えに参りました」
「あ、今行きます」
玄関から聞こえてきた磯野さんの声を聞くなり、千秋とモクバくんは駆け出していく。
私も慌てて着ている服を軽く整え、玄関に走っていった。
「ごめんね、ちょっと遅れちゃった」
「姉様遅いよ!」
「こらモクバ、姉様も忙しかったんだ」
「皆さん揃ったようですね、全速前進!」
少女達を乗せた黒塗りの車はエンジン音を鳴らして去っていく。
その様子を見ていた少年が一人。
「ククク・・・・・・久々に面を拝みにきたが俺が出る幕はなかったようだな」
背格好には似合わぬ白髪の少年が路地裏へと戻っていく。
闇に紛れるためにタバコの火を消して、やがて街中から消えていった。
赤木しげる ~闇に降り立った天才~
後に裏社会において伝説となって語り継がれていく男の名前である。
★ ★ ★
「ぶるわぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!」
男の振るった斧とともに異形の人型がステンドグラスとなって砕け散っていく。
「すごいわア名護さん、一度にあれだけのファンガイアを倒してしまうなんて・・・・・・」
感嘆の声をあげる女の名は麻生恵、アナゴ、いやア名護さんとともに人々の生命を喰らう異形の存在、
ファンガイアを狩るハンターだ。 豪快でいて無駄のない、そんなア名護さんの戦いにただ驚くばかりの恵。
しかしそんな彼女にア名護さんは渇を入れる。
「くぉぉぉら恵ぃぃぃぃぃぃぃ!!!! 貴様それでもファンガイアハンターかぁ!!」
「
ごめんなさいア名護さん!」
正気を取り戻した恵は同僚の遺品、イクサナックルを取り出して己の手の平に当てる。
『レ・デ・イ』
「私も戦士だってことを証明してみせる! だからイクサ、力を貸して!」
『フィ・ス・ト・オ・ン』
恵の体を白の甲冑が包み込む。
新たな仮面ライダーイクサとなった麻生恵は、残ったファンガイアを倒すためにイクサカリバーを取り出した。
母の、戦友の意思を告ぐために。
★ ★ ★
「待ってたよ千秋ちゃん」
「約束の時間に来たばかりだぞバカ野郎」
幕張メッセに役者が集う。
かつての戦いから大きな傷跡を残した会場は最早激戦の傷跡を殆ど残していない。
全てが元通りになったのだ。
観客達は皆、これから始まる新たな激戦を待ち望みメインゲストの登場に歓喜をあげる。
ゲスト武藤遊戯と南千秋の他に魔法使い、騎士、奇術師など、見た目もそこから生まれる個性も全くの別人であったが、
ただ一つの共通点があった。
「新しいデュエルディスクとデッキがあるからね。 千秋ちゃんも遠慮しなくていいよ」
「誰が遠慮するか。 全力でいくぞ」
「焦らない焦らない。 さあ開会式が始まるよ」
決闘者と名乗る彼らの腕には決闘者の証たるデュエルディスクが装着されている。
『これより海馬コーポレーション主催の第1回幕張メッセデュエルグランプリを開催する!』
『デュエル開始を宣言してください磯野さん!』
『決闘開始ぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!!!!!!』
★ ★ ★
舞台は変わって夢の国外れの草原。
そこにはいくつもの墓標が立っている。
皆、バトルロワイアルの悲劇の中で死んでいったものたちだ。
「みなみ、ようやく結婚指輪ができたぜ」
黒髪の男、6/はダイヤモンドが埋め込まれた高級感溢れるプラチナリングを一つの墓に埋める。
今までの思い出に感傷に浸りつつ、彼女の冥福を祈る6/。
「じゃあな、また来るからよ。 おいかがみ行くぞ」
青年はそういい残して連れの女性に声をかける。
「ううんこなたぁ大好きだよぉ」
「いつまでも墓に抱きついているんじゃねえ! まだやることが残ってるんだ、さっさと行くぞ!」
「仕方ないわねぇ・・・・・・ じゃこなた、また来るからね」
恍惚の顔を浮かべて隣の墓標にしがみ付いていた柊かがみは6/の指示に従って彼についていく。
「それにしても本当にやるの?」
「ああもちろんだ」
「長くなるわよ」
「関係ないね」
そうだ関係ない。 俺とかがみは今まで起きたバトルロワイアルをまとめ、本にするために各地を旅しているのだ。
今回は偶然通りかかったから墓参りにきただけである。
「ねえ教えて、なんでこんな途方もないことやろうとしているの? まあ私はいいんだけどさ」
「それは・・・・・・」
答えは決まっている。 人々に真実をだとか二度と同じ悲劇を繰り返したくないなんてもんじゃない。
たった一つ、たった一つのシンプルな答えだ。
「書き手だからさ」
【第5次テラカオスバトルロワイアルα~終焉のカオスへ~ 完結確認】
最終更新:2008年11月22日 16:39