「そんな、野原くんが亡くなったなんて……」
野原ひろしの上司、課長は、
第一回放送を聞いた後しばらく呆然としていた。
放送中、確かに読み上げられた彼の部下の名前。沖縄に出張中のはずの彼は、
もうこの世にはいなかった。
課長は、オフィスの椅子にがっくりと腰を落とす。
この殺し合いが始まってからも、彼は律儀に会社に出勤していた。それが、
会社員としての自分の責務と信じたからだ。しかし、こんな状況下では商談の
ひとつもまとまるはずがなく、そして
「私は結局、大事な部下一人も守れずに……
まさか彼が、家族を遺して逝くなんて……」
野原の妻も、息子も、課長の顔なじみだった。あれほど家族思いだった野原だ。
どれだけ無念だっただろうか。
「……行かなくてはな。上司として、彼の家に」
せめて、会社を代表してお悔やみの挨拶に行かなければ。それが、自分に出来る
唯一のつぐない。
課長は、この狂った
ゲームを心底恨みながらオフィスを出て、階段をおり始めた。
四段、降りた時だった。
「ん? 何の音だ? 」
石が転がるような音? それも、上から……
「な、何だ一体!? 」
階段の上から、大量のクルミが転がってきた。ごろごろごろと、耳障りな音が狭い
階段室に響く。課長はあわてて階段を駆け下りようとする。それが、命取りとなった。
彼の足元を狙ったかのように飛んできた、ひときわ大きなクルミ。課長はそれの上に靴を
乗せてしまった。足が滑り、課長の体は宙に舞った。
課長は、長い階段を転がり落ちた。そして、踊り場に頭を打ち付けた。
激痛は一瞬。すぐに意識が霧散し始めた。ろくに会社に人もいない今では、助けも望めなかった。
(の……はら……くん。私も……ここまでの、ようだな。
すぐに、そっちに行くから……そしたら、また、一杯やろうや……もう、仕事のことなんか、
考えなくていいんだから、さ……でも、せめて最後に、君のご家族に……あの、楽しい家族に……
会いたかったな……)
君を守れなくて、
ごめん。
君の家族を守れなくて、ごめん。
こんな、うだつのあがらない上司で、ごめん。
だから、次に飲むときは……僕に、おごらせるんだぞ?
「あなたに恨みはないのでぃす。でも、死んでもらわなくてはならないのでぃす」
階段の上から、もう動かなくなった男の死体を見下ろしながら、
シマリスは悪びれる様子も
なく言った。
自分たち、動物をも巻き込んではじめられたバトルロワイアル。
力の弱い、小動物である自分にも、守りたい誰かがいた。
「ぼのぼのちゃん、アライグマちゃん、プレーリードックちゃんに、お姉ちゃん。
きっとみんな、人殺しなんかできるわけないのでぃす。だから、シマリスが……やるのでぃす。
ぼのぼのちゃんたちを守るためには、これしかないのでぃす」
自分に言い聞かせるように、シマリスはつぶやいた。
もう、ぼのぼのと一緒に遊ぶことはない。
もう、アライグマと喧嘩をすることはない。
自分には、そんな資格などもうない。
だけど、それでも守りたい彼らだったから。
「……ごめんね。ぼのぼのちゃん、アライグマちゃん」
【埼玉県
二日目 15:00】
【シマリス@ぼのぼの】
[状態]:健康
[装備]:クルミ五千個
[道具]:支給品一式
[思考]
1:友人達を守る為に、友人を殺すかもしれない人間達を殺す
【課長@クレヨンしんちゃん 死亡確認】
最終更新:2006年12月23日 00:38