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午後8時、再び始まった混沌の宴は、もうすぐその幕が降ろされようとしている。
殺し合い打倒を志す者達により。

「これで全てが終わるんだな・・・・・・」

千秋が誰に語るわけでもなく呟く。
仲間、そして家族を失った少女はようやく訪れる終幕の時を前に、安堵の表情を見せる。

「呑気なものだな。 まだ結果がわかっているわけでもないのに」
「肯定だ。 俺達が木原マサキに破れてしまっては意味はない」

式と宗助、この殺し合いにおける千秋の新たな仲間が彼女に口を入れるが、千秋は少しムスッとした表情を見せた。

「ちょっとそこまで言うことないじゃない!」
「そうだそうだ! 千秋だって色々あったんだぞ!」
「色々あったねぇ・・・・・・」

口を挟むのは凛と冬馬、彼女達も千秋の新しい仲間だ。

「なんだよ!」
「色々あったのは何も千秋だけじゃあない。 この殺し合いの中でなら誰かしら何らかの悲劇を経験しているはずだよ。
お前とかな」
「!!!」

最後に言い残した式の言葉に冬馬は両目を見開く。
そう、バトルロワイアルに置いて大切な人を失ったのは千秋だけではない。
千秋の家族は冬馬にとってもかけがえの無い人であったし、
彼女自身、クラスメイトや短い間だが兄と慕っていた男性が逝ってしまったのだ。
だからこそ冬馬は千秋の気持ちが痛いほどわかる。
不穏な空気が辺りを包みこむ。
だがそんな中笑う者が一人。


(そうだ・・・・・・そういがみ合っていればできることもできなくなる。
倒せるはずの主催も倒せなくなる。 お前達がくたばりかけたらその時は・・・・・・)

Fは嘲笑う
されど口元に笑みを押し留めたまま。
心の中で嘲笑う。
近い将来彼らが出会う絶望を。

(最高、それでいて最低のタイミングで裏切ってやるよ!)

悲劇の引き金を引く瞬間を思い浮かべながら。



「びゃあ゛ぁ゛゛ぁうまひぃ゛ぃぃ゛」
「は?」

突然の奇声に凛が間の抜けた声を放った。
他の者も凛が振り向いた方角を見ている。

「はーいそこまでだよ君達」
「マス夫さん」

闖入者はフグ田マス夫、一見すると眼鏡をかけたサラリーマンだ。
しかし彼こそが千秋達をこの場に導いた人間であり、木原マサキの打倒を誓った者である。
凛達の視線が自分に注がれたのを確認すると、笑顔を一転、神妙な顔となって言葉を続けた。

「これから決戦って時に喧嘩していてどうするのさ。 もうすぐ出発だよ、ほら卵でも食べて落ち着いて」
「食事が生卵(割り済み)とは随分珍妙だな」
「後ろの機械の説明を要求する」

マス夫から渡された卵入りのお椀から卵黄を飲み込みながら宗助は質問をする。
宗助がなにやら黄色いハロみたいなやつから手が生えている機械に向かって指を指した。

「さて、千秋ちゃんと式さんと宗助君・・・・・・後、Fルートの人は直接木原マサキの元へ向かってもらう」
「わかった」
「ちょうど退屈になってきたところだ、早いところ向かわせてもらうよ」
「任務了解」
「わかりました・・・・・・」

マス夫に誤魔化された気がしないわけでもないが、ともかく四人は頷く。

「ちょっと待て、俺達はどうなるんだよ」
「私達を置いてきぼりってことは、何か意図があるのかしら?」

冬馬と凛はマス夫に尋ねる。
何故目的は同じなのに仲間と別行動をしなければならないのだろう、
この後に及んでチームを分離させるには何かしら意味がある。
さもなくば、これから力量がわからぬ相手と戦うのに戦力分散は愚考だ。

「なーに、君達にはちょっと話たいことがあるのさ。 千秋ちゃん達は先にカタパルトに行ってくれ。
僕はちょっとトイレ行ってくるから」
「トイレってちょっと待てよ俺達はどうなるんだ?」
ごめんよ冬馬ちゃん、さっきの卵お腹壊したんだ」
「自業自得ね・・・・・・まあいいわ、しばらく待ちましょ」

腹を抱えたマス夫を見送りながら溜息をつくが、そこにFルートの人が出る。


「どうしたの?」
「いや、これを渡そうと思ってな」

Fルートの人が差し出したのは、青を貴重としたフリルのドレスを着た人形であった。
凛と冬馬は、あまりに意外だったのか、唖然としている。

「たまたま俺の支給品にあったモノだ。
お前達が持っていたほうがこいつも喜ぶだろうさ、お守り代わりにしてやってくれ」
「えーっとせっかくだから頂いておくわ」
凛は人形を両手に抱え、冬馬も若干興味深そうに眺める。
二人が受け取ったのを確認すると、Fルートの人は彼女らに背を向けて千秋達を追いかけるために扉に手をかけた。

「あ、そうだFルートさん」
「なんだよ」

出鼻をくじかれたのか、Fルートの人は不機嫌な表情で冬馬に返す。
しかしそれもすぐに消える。

「この人形の名前何?」

瞬間、Fルートの人の口元が緩んだ。
いや歪むといった方が適切かも知れない。
一瞬、凛と冬馬は怯むが、Fルートの人は満面の笑みを浮かべて答える。
彼が今まで行動を共にした人形の名前、女性の名前を。

「水銀灯だよ」


☆ ☆ ☆


「いよいよ決戦だな」
「おじけついたのか?」
「そんなわけあるかこの野郎」
「離陸中の余計な私語は舌を噛むぞ」

後部座席で会話をしていた千秋と式は、宗助の指摘を受けて口を閉じる。
Fルートの人は変わらず沈黙を保ったままだ。
彼らは今、nice boat号に乗って、木原マサキが潜伏している小惑星、ホワイトスターに向かっているのだ。
nice boat号と思えば5期で主催が使っていた船を思い浮かべるだろうが、実は密かにマス夫に改良されて宇宙戦艦になっているのである。
そのため、操縦席には何人も座席に腰掛けられるようになっており、操縦桿を握っているのは宗助、
後部座席に千秋、式、Fルートの人がシートベルトをかけて座っている。

「ん?」
「どうした?」

疑問を放つ千秋に式が尋ねる。

「いや今なんか立っていたような・・・・・・」
「そういえばいたね」
「運行には支障はない。 今は気にしない方がいい」

ちなみに外装は全然変わってないので、うっかりタイタニックごっこやって落ちても知らない。
【タケシ@ポケットモンスター 死亡確認】
ディアボロ@ジョジョの奇妙な冒険 死亡確認】
死因:タイタニックごっこやってて落下(ちなみにタケシが男役)


「ん?」
「どうした?」

またも疑問を放つ千秋に式が尋ねる。

「いや、今なんかが前に見えたような」
「そういえばいるな」
「!?」

宗助が目を見開く。
そして千秋達が驚愕する。
無理もないだろう、彼らの、いや正確にはnice boat号の前には


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`ー=''"                  } i |、,/
「「スプーだぁぁぁ!!!」」

千秋とFルートの人は思わず叫ぶ。
nice boat号よりも一回り大きい身体で彼らの前に立ちはだかったのだ。
宗助は旋回を試みようと舵を思いっきり回す。

「回避・・・・・・不可能か!」

上昇に勢いが付きすぎて回避には間に合わない。
さらにこのスピードで巨体にぶつかってしまえば結果は火を見るよりも明らかだ。

「さーて、脱出準備でもしようか」
「ここまで来たのに引き返すのかよぉぉぉぉぉぉぉ!!!」


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  ,i /             `i     | ● |           ノ ⌒ノ  i,         |    i,
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  |  i,            `i,         '~    ,、       |         |    |
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   |  |  | |            `i,           /              |     |
    i_,/し'`-'              ` x,     ,,x='"                |  ,  !
                        `ー=''"                  } i |、,/

「あれ?」
「目標の切断を確認、理由は不明・・・・・・」

宗助が若干唖然とした口調で答える。
本当に突然の出来事だった。
いきなり現れた怪獣にぶち当たりそうになった瞬間に怪獣が真っ二つになったのだ。
更に、怪獣の肉が鳥のシルエットによって攫われていく。
後には虹色の羽が数枚舞い落ちただけで、何も残らなかった。




☆ ☆ ☆
同時刻、虹色の羽を持った鳥が少女と女性と蛙を乗せて飛んでいた。
二人の女はその小柄な体躯に合わないほど巨大な肉に食らいつき、蛙は彼女らを呆れた目で見ていた。

「それにしてもたまには変わった動物も食べたいですわねぇ」
「何いってやがる。 今までだって散々モンスター食ってきたじゃねえか・・・・・・まさか!」

肉を食べ終えた少女、ユエルにカエルは溜息をついた。
ユエルは巨大な猪に猛獣、恐竜にドラゴン、自分の肉体を遥かに超えるほど強大な生物を食らってきたのだ。
今更どんな化け物を食えと。 っとそこでカエルの脳裏に一つの不安が訪れる。

「人肉? あんなもの腹が膨れるだけで大した味はしませんわよ。 そこらの養殖の牛や豚のほうがよっぽど上等ですわ」
「そうかそれならよかっ・・・・・・って食ったことあるのかよ!」
「ええ既に死んでいた人のを少し」

恐ろしいことを平気で言いやがる・・・・・・呪いで蛙人間になっている自分がいつ食われてもおかしくない気がしてきた。
そんな不安を胸に抱えたカエルに女性、セイバーオルタが追い討ちをかける。

「何を言っているんだ。 私達が食べてきたのは所詮、四足歩行や二足歩行の得物、
既存の定義に乗っ取った生物に過ぎないだろう」
「そうですわ。 たまには私達の常識を覆すような生き物を口にしたいのですわよ」
「俺から見ればお前らの方がよっぽど常識を覆しているんだよ・・・・・・」

カエルは嘆くはこの二人には全く耳に入っていないだろう。
それもそのはず、ユエルとセイバーオルタは呆然と他の方向を見ているのだから。

「おいお前らどうした・・・・・・ってうおっ!?」

カエルは驚く。 無理もないだろう、二人に釣られて眺めた景色には、なんか黄色い化け物が写っていたのだから。

「そういうことかよ! いくぜラーミア!」

カエルはユエル達に急かされる前にラーミアに言い放つ。
しかし何故かカエルはセイバーオルタに掴まれ、ラーミアは検討違いの方向に行く。

「おいおいまさか・・・・・・はぁ」

そしてカエルは自分が今すべきことを理解させられた。
そうかい、またこういうことかい。
溜息をつきながらもシエロツールを構え、自らの身体に回転を加えられて視界が目まぐるしく変化していることを感じる。

「「いっけぇぇぇぇぇ!!!」」

こうしてカエルのぶん投げソードがスプーの肉体を両断したのだ。
スプーのお肉はユエル達がしっかり確保しました。

☆ ☆ ☆


「ファルコォォォン!」
「ぎゃあああああああ!!!」

一方夢の国では、闇サトシがピジョンを渋井丸拓男に嗾けていたところだった。
嘴が突き刺し、そこからわざと中にひっかけて千切ることで肉をえぐる。
後はそれの繰り返し。
刺して出す刺して出す刺して出す刺して出す刺して出す刺して出す刺して出す刺して出す刺して出す
刺して出す刺して出す刺して出す刺して出す刺して出す刺して出す刺して出す刺して出す刺して出す
刺して出す刺して出す刺して出す刺して出す刺して出す刺して出す刺して出す刺して出す刺して出す
出来上がったのは全身の肉を(グロいので以下省略

【渋井丸拓男@デスノート 死亡確認】


「た、たあ・・・・・・」

野原ひまわりは怯えていた。
目の前の少年は男の惨状を笑い飛ばしている。
何故ここまで人を醜い姿に変えることができるのだろう。

「ちっ! もう動かなくなっちまいやがった」

このバトルロワイアルで父が何度も悪人をこのような姿に変えるのは見てきた。
それはそれはとても愉快なものだった。
自分や家族を苦しめていたマーダーが命乞いをする姿は実に見てて楽しかった。
狂気でまみれた姿は救いのヒーローに見える気がして。
だからひまわりは闇に堕ちたひろしでも、頼れるパパとして見ることができたのかも知れない。

「じゃあ次はてめぇの番だな」

強者が慢心しきった愚者に絶望を刻み付けて殺す、バトルロワイアルにてこれまで変わらず行われてきた事である。
ただ、今回違うことは、狂気の矛先が自分に向いていることだけ。
そうか、自分の父親はこんな顔をしていたのか。

「たぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」

だからひまわりは立ち向かった。
支給品であるサブマシンガンを取り出して、闇サトシに銃口を構える。

「おいおい邪魔しなければ命だけは助けてやるってのによぉ」

少年は嘲笑うがひまわりは聞こうとしない。
命だけは助けてくれる、その言葉を何故信じられるのだろうか。

"まさかてめぇ、自分が安全だと思っちゃいねぇだろうな?"

狂った父の言葉が頭にリピートされる。
こんな人間に屈して安全を確保できるなんて思ってはいけないのだ。
そこにあるのは更なる闇。 希望を全て塗り替えられるほど深い絶望を味わって惨めに死ぬだけだ。
だからせめて、明日は自分の手で切り開きたかった。

「しゃあねえなぁ・・・・・・いけ!ファルコォォォン!」

翼を広げたピジョンが両足の爪を剥き出しにしてひまわりに襲い掛かってくる。
ひまわりはサブマシンガンを放ち続けるが、器用なことにピジョンは彼女を中心に円を描くように旋回して避ける。
次第に円の大きさが小さくなって、ピジョンの爪がひまわりの頭に食らいつく・・・・・・はずだった。


「なっ!? ファルコォォォン!!!」

闇サトシは自分の僕の名を叫んだ。
しかし首を跳ね飛ばされたピジョンがそれに答えられるはずもなく、彼の叫び声が室内に空しく響き渡る。
そして闇サトシはいつのまにか全裸となり、逃走した。


「たぁ?」

ひまわりは再び混乱する。
自分の命は確保されたがその理由がわからない。
きっと誰かに助けられたのだろう。
闇父の心情には少し逆らうことになるが、闇サトシに屈しなかっただけでもよかったというべきか。

「またつまらぬものを斬ってしまった・・・・・・よし次はひまわりを!」
「お前もう帰れ」

なのはのフェイトに似た人物がプーチンに似た人物によって突っ込みを入れられてどっかに逃げていった。
フェイトっぽい人物の発言に身の危険を感じたひまわりであったが、プーチンっぽい人物は危害を加えないようなので少し安堵した。
よく見ると他にも数人いるようだ。

「なーに、別にお前に用があるわけではない。 俺達が用があるのはこの施設さ」
「そろそろカオスロワを終了させようと思ってね」
「たぁ!?」

顎の長い少年と全身タイツの女性の発言にひまわりは驚く。
殺し合いを終わらせるとなると彼らは対主催、いやそれはどうでもいい。
ロワの終焉→自分を安全だと思っている人間が溢れることになるではないか。
それは父の望みではない。

「この娘、まさか脅されて主催をやっているんじゃないのかな?」
「たぁたぁ」

ひまわりは首を振って否定した。
ロワという現実の中で死を間近にたたきつけることで、自分は死なないという慢心を捨てさせるのが父のもう一つの目的。
今までのカオスロワで人々は考え直したんじゃないかって? いいや違う!
事実、カオスロワ5期が終わって命の大切さについて感じた連中は、例の英雄達を含めて少数。 それも日本の関東圏のやつらばかりだ。
比較的被害が少なかった地方のほとんど連中は何事もなかったかのように笑っている。
日本で起こった悲劇なんぞ世界各地の人々は知っている"だけ"。
自分は明日も生きていける、そんな保障なんて何処にもないのに。

「ククク・・・・・・つまりお前はまだ主催ごっこを続けるというわけだな」
「たぁっ!!」

顎の長い少年にひまわりは怒る。
全ての人間に死と向き合わせる、その使命を馬鹿にされたような気がしてひまわりはサブマシンガンを手に取った。
女子高生が前に出て、ビームサーベルを構えるが、顎の少年は彼女を制止した。

「アカギ!なんで止めようとするのよ!?」
「まあ待て・・・・・・赤ん坊、お前はこのロワに主催が必要だと思うのか?」
「たぁ?」

ひまわりは首を傾げる。
何を馬鹿なことを言っているのだ。
ロワが行われているのならそれを管理する人物が必要だ。
カオスロワとて例外ではない。

「考えても見ろよ。 主催が入れ替わり続けようがどんな制限ができようがやつらは勝手に殺し合いを続けている。
こうしてお前が俺達を話をしていても死者は増え続けているぜ。 それは何故かって?」

瞬間、ひまわりの首にプーチンっぽい男の手が添えられる。
ひまわりは一瞬目を掴むがそれも束の間。


―カシャン


「これがあるせいだ」

アカギは真っ二つになったひまわりの首輪を拾って言い放ち、ひまわりははっとした。
既に狂気の引き金は引かれてたのだ。
首輪を全世界の人間につけて殺し合いを始めると宣言さえしてしまえば、後は少年の言う通り、殺人が勝手に行われる。
誰もが皆、首輪という枷に繋がれて、武器を手に取り他人を傷つける。
後は死者を放送で読み上げればいいだけ。 しかもその役割は機械でも済む話だ。
だから元々カオスロワに主催なんて必要なかったのかも知れない。
そして最早、この地球上に自分が安全だと思っている人間なんて何処にもいないだろう。
最初から自分がここにいる必要なんて無かったのだ。 こんなことならひろしに着いていくべきだった。

「アカギ、首輪の機能の停止に成功したわ」
「わかった、じゃあ次の予定に写るか」
「たぁ!?」

気づけば女性がコンピュータを操作している。
彼女台詞から察するに、参加者にかかっている枷は事実上無くなったらしい。
だがひまわりが思案している内に少年は更に放送機器をいじり始める。

☆ ☆ ☆



――クックックッ……。

――――ハッハッハッハッハッハッハッ……。

――――アーッハッハッハッハッハッハッハッハッハッハッハッハ!!!!


「なんだこの馬鹿野郎丸出しな笑い声は」
「全く馬鹿となんとかは高い所が好きだというけど、宇宙にいるなんてね・・・・・・」
「気を引き締めろ、敵は目の前にいるぞ」

ホワイトスターに突入した千秋達の前に待っていたのは巨大なドーム中央に君臨する青き巨人であった。
ドームの周囲の景色には様々な映像が浮かんでいる。 恐らくバトルロワイアルの実況だ。
特に悲惨な光景ばかりが大きく映し出されていることから、巨人はそれらの映像ばかりを見ているのだろう。

「ここまで来たことは褒めてやろう、屑どもにしては上出来だ」

巨人の顔が千秋達を見下ろす。
釈迦のような背中の金輪のせいか、まるで神に見られているかのような威圧感だ。
だが目の前に聳えるのは紛れも無く、バトルロワイアルを仕組んだ邪神である。

「特に南千秋、お前は中々楽しかったぞ。 神の子とかな」
「!?」

直後、ひときわ大きいスクリーンに一つの映像が映し出される。
そこには微かな笑みを浮かべた少女が人を殺している。
降参と両手を上げているのにも関わらず引き金を引いている少女。
襲ってきたから。 それを免罪符として快楽を得ている少女がいる。
殺すという行為を娯楽として覚えてしまった、南千秋という少女がそこにいる。

「気にするな千秋、あれは所詮過去のお前だ。 今は違うんだろ」
「あ、ああ・・・・・・」

式によって慰められるものの、映像から目を反らしてしまいそうな自分が恨めしい。
誓ったではないか。 バトルロワイアルによって殺してしまった人々の罪を償うと。
なのにこの有様はなんだ。 これじゃあ死んだ姉さまに顔向けできないじゃないか。
千秋は苦悩する。

「反応が薄くなってきたな・・・・・・ならこれならどうだ」

マサキの言葉とともにスクリーンの映像が切り替わる。
今度は千秋ではないようだ。
そこに映し出されていた少女は千秋よりもいくつか年上、少女というよりかは女性といってもいい。
彼女は胸を鋭利な刃で抉られており、刺されてもいない千秋の胸もきりきりと痛む。

「あの女がどうしたんだ千秋」
「・・・・・・さま」
「む?」

千秋の言葉が聞き取れず、彼女の顔を除きこむ式。
今までの彼女の気迫は何処へ行ったのだろうか。
式はこんな表情の千秋を見たことがない。
だが彼女はすぐに目尻を吊り上げ、巨人の奥にいるマサキを睨みつける。

「ほぅ、姉の死を見せ付けられてもその程度とはな」
「私を見くびるなよ馬鹿野郎。 春香姉さまが死んだことなんてもうわかっていたんだ。 だから・・・・・・」
「だからどうした? 貴様も姉のように屑みたいな死に方をするというのか?」

マサキは屑の部分を一際強調させて言い放つ。
すると千秋の顔が真っ赤になっていくだろう。
かつての英雄もそうなっては形無しだ。
英雄とは人の夢、故に簡単に壊れてしまう。
南春香の死に様はなんと儚いモノであったか。
屑に目をつけられたせいで屑みたいにあっけなく死んでいった。
そしてそれはかつての彼女の仲間達とて例外ではない。
6/、アナゴ朝倉涼子長門有希、彼らもみんな散った。

「お前達は俺という主催に運命を弄ばれているに過ぎないというのに」


―パァニ・・・・・・


銃声が響くと同時にスクリーンに亀裂が割れ、砂嵐のみが鳴り響く。
音源は銃を持ったマスコットだ。
着ぐるみには大よそ不相応の銃から硝煙が漏れている。

「黙れ木原マサキ。 貴様には彼女の発言を阻害する権利はない」

マスコット、ボンタ君から宗助の声が発される。

「木原マサキ! 私は姉さま達やみんなを見下したお前を倒す!!」
「やってみろよ、このネオグランゾンに勝てるというのならな!」

千秋の体が光に包まれ、白銀の光龍が姿を表す。
式と宗助、そしてFルートの人を背中に乗せたことを確認すると千秋は飛翔をする。
ネオグランゾンと呼ばれた邪神は前方にワームホールを形成して胸の中央の光球を光らせた。



「まずは小手調べから行こうか」

瞬間シャイニングドラゴンを囲むように、ドーム外側に無数のワームホールが形成される。

「そらそらそらそらそらぁ!」

そしてワームホールからビームが発射され、千秋はそれを間一髪で交わす。
しかしビームはそれだけで終わらず、他のワームホールからまた別のビームが飛び出してくる。

「千秋、構うことはないこのままやつに突っ込むぞ」
『おい何言ってんだよ!?』
「すぐにわかるさ、それよりも早く行くんだ。 ここで蜂の巣になるのはごめんだからね」
『わかったよお前に任せるからな!』

戦艦の主砲に劣らぬビームが20発、30発と雨のように降り注ぐ。
僅かにできたビームとビームの隙間を潜り抜け、千秋はネオグランゾンの方へと突撃していく。

「何かと思えば飛び込んでくるだけとはな・・・・・・」

ネオグランゾンと機体一つ分の距離になったところで、千秋達の目の前に新たなワームホールが形成される。
ワームホールの形成は止まることを知らず、10、20更に千秋を包囲しつつ増殖していく。
だが式の顔に焦りは見えない。

「このまま目の前の穴に飛び込め!」
『このやろぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!!!』



ネオグランゾンのセンサーが捉えるのは無数のワームホールによって形成された球体だ。
今ごろ千秋達は光の奔流によって嬲られているころだろう。
だがマサキの表情に特に変化はない。

「やはりこの程度か」

予定事項、木原マサキが乗り込んできた輩を虐殺するのも既に決定されていたに過ぎない。
どいつもこいつも意気込みだけの屑だ、この冥王と殺り合えるだけの逸材というのはいない。
自分以外の命など全て屑同然、その屑ができることといえば己を楽しませることだけ。

「全く大人しく殺し合いを続ければ良かったものの・・・・・・ん?」

悪態をついていたが彼はモニターに映されていた球体に違和感を感じる。
喩えるならばガラスに刻まれた不釣合いなライン、
触ったら崩れ落ちてしまいそうな石像のパーツ、
無造作に落とされた卵のような―――


―ピシリ


沈黙が解かれる。
空間の渦のみ構成されていた球体に新たな鼓動が起きる。

―万物には全て綻びがある。

女の声が球体から零れ落ちる。

「生きているのなら、神様だって殺してみせる」

ワームホールが切り裂かれ、光輝く龍の頭に乗った女性が言い放つ。
するとそれと結びついていたワームホールも存在意義を失ったのか、消えていった。

「クックックッ・・・・・・中々面白いものを見せて貰ったぞ!」
『うるさい馬鹿野郎、ここからぶっ飛ばしてやるからな!』

冥王が笑い、少女達が睨む。
そしてネオグランゾンは手元に発生されたワームホールから剣を取り出した。
ブルーアイズシャイニングドラゴンが爪を振り上げ、ネオグランゾンがグランワームソードを横にして構える。
龍と青き邪神の闘争はまだ終わらない。

☆ ☆ ☆


このバトルロワイアルにて、狩猟に生きるものは一つではない。
貴婦人達が天の異形を狩っている間にここにも狩人として生きるものが二人。

「リヴァイアサン待てやぁぁぁぁぁ!!!」
「ここで見つけだが百年目、今度こそは貴様を獲ってみせる!」

濱口とアーチャーはハワイ近海にて、巨大な海蛇と対峙していた。
いや海蛇というには語弊があっただろうか。
それは海蛇と言うにはあまりにも大きすぎた。
大きくぶ太く荒々しく、そして逞しすぎた。
それはまさに大津波だった。

「GYAAAAAAAA!!!!!」
「ちぃ、またさっきの大波が来るぞ、しっかり捕まっていろ!優!」
「いわれなくても捕まってるわい!」

濱口はいかだの帆にしがみ付いてアーチャーに怒鳴り返す。
リヴァイアサンのフィールドは海そのものである。
それに対して二人は即席で作られた木のいかだは、あまりにも心許無い。
海獣は渦を巻き、巨大な大波を放つ。

「熾天覆う七つの円環(ロー・アイアス)!!」

されど彼らとて無策のまま荒波に飛び込むほど愚かな猟師ではない。
いかだの前面に投影された花びらを模した盾が津波の衝撃を分散させる。
津波が消えるころには花びらは全て散ってしまったが、いかだも濱口とアーチャーも無事だ。

「優! 長期戦は無理だ、一気に決めるぞ!」
「おうワイの出番やな!」

濱口が巨大な銛を持ち上げてリヴァイアサンの方を睨む。
海竜と一介の人間、その差といえば、虎と対峙したねずみ程のものだ。
だが、濱口もアーチャーも一向に怯むことなく巨体を見据えている。

古来より海は人の居られぬ未開の地。 陸上に住まう生物が何故態々生存できぬところに飛び込むのだろうか。
それは好奇心、見知らぬ生物と出会い、食したいという欲望だ。
だがそこは竜巻、津波、渦潮、陸では考えられないほどの災厄に満ち溢れている。
故に今まで海に行った者達は、その体を打ちのめされ、時には命を落とした。
だから海を目指す者は知っている。 海の恐怖を、そして海に立ち向かう術を。
海に生き、海の脅威に立ち向かう男、人それを『漁』師と言う。

「だがいつ決めればいいんや? あいつ今にでも襲ってきそうやで」
「ああ、下手に出ればあの巨体に弾き飛ばされるのがオチだな」

リヴァイアサンはそんな二人を決して見くびることもなく、出方を慎重に伺っている。
海に生きる獣は知っていた。
海に立ち向かう人間の強さを。
神は人を弱く作った。 故に知恵が要る、勇気が要る、仲間が要る。
そこから生まれた力は、これまでどれだけの同胞を奪ってきたのだろうか。
そして己を狩ろうとしている、狩ることができる人間がすぐ目の前にいる。
ならば答えてやろうではないか、海神の名を駆る者として。

「GYAAAAAAA!!!」
「どうやら先手を取られたようだな」

リヴァイアサンの口元に冷気が収束していく。
氷系最大魔法ブリザガだ。
あらゆる対象物全てを極寒の檻に閉じ込めてしまう。
たとえ英霊のアーチャーとはいえこれを喰らうわけにはいかない。
まして、身体能力が上がった程度の濱口が耐えられるわけがない。

「優! 俺にしっかり捕まっていろ!」
「なんか知らんけどそうした方がよさそうやな!」

濱口が肩車するのを確認したアーチャーはそのまま跳躍する。
そして同時に彼らが直前まで立っていたいかだがアイスロックへと変わり果ててしまった。
もしもアーチャーが盾を投影していたなら、盾ごと凍り付いて二人とも海の藻屑に変わり果てていただろう。

「よくもわいらの船を・・・・・・許さんでー!」
「いかん優!」

次の瞬間、濱口はアーチャーを踏み台にしてリヴァイアサンへと跳躍する。
狙いは竜の頭部、いくらリヴァイアサンといっても所詮生物だ。
急所を貫いてしまえばその生命活動を停止するはず。
巨大銛を振り上げて、今にもリヴァイアサンを貫こうをするそのときだ。

「うわっ!?」

本来そこにあったはずの頭部が濱口の視界から消える。
そう、リヴァイアサン自身も生物であることを自覚していた。
だから己の弱点ぐらい心得ているのだ。

「って下は大口やないか! このままやと落ちるぅぅぅ!!!」

だからリヴァイアサンは罠を張ったのだ。
勢いを失った濱口の体はそのままリヴァイアサンの口に落ちていく。
濱口は、リヴァイアサンの頭が近づいていくに連れて、剥き出しとなった歯がより鋭いものへと感じられた。

「優、新しい足場だ!」

アーチャーの叫び声がするのと同時に、巨大な氷塊が濱口の視界に差し掛かる。
これを足場にすれば・・・・・・

「って先がとがって立てるかこんなのぉぉぉぉぉ!!!」

そうなのだ。 ブリザガで凍りついたいかだの形状はアイスキューブなどという綺麗な形ではない。
色々尖っていて素足の濱口が着地したら確実に怪我をしてしまう。 というか落下速度ついてるから無理。

「しゃあない、こうするわ」

濱口はアイスロックに巨大銛を刺す。
そして銛の一部と化した巨大な氷塊をそのまま思いっきり―――

「おらぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」

リヴァイアサンに向かって叩きつけた。

「GYAAAAAAA!!!」

しかし脳天ではなく鼻に当たったため、それほど怯むことはない。
氷塊は砕け、濱口の体が宙に舞う。
辺りを覆うのは巨大な肉壁。 そして牙。

「ちっくしょぉぉぉぉぉぉ!!!!!」

濱口は悟る。
己の敗北を。 リヴァイアサンとの対決に負けたということを。
自然界にて敗れた者にもう一度はない。
あるのは搾取され、相手の一部になるという現実だけ。
これまで海の生物を食してきた濱口が、今度は食される側になる、ただそれだけなのだ。

(しっかしワイもよくやったわな、あんな化けモンと遣り合えるようになるなんて)

濱口の脳裏に走馬灯がよぎる。
きっかけは番組のプロデューサに言われた時であったか。
自分は番組の企画で様々な海獣を獲ってきた。
節約番組の一環であったとは言え、あの時の自分は英雄になることができた。
一介の俳優でしかなかったのに、その時だけは海の男として生きることができたのだ。

(まあ、全力を出したんやから悔いは無い・・・・・・有野、ワイが死んでもよゐこは不滅や)

お笑い番組でバカ野郎を演じ、今まで共に過ごしてきた相方のことを思い出す。
そういえば彼とは中学生の頃からの間柄だ。
今の漁の相方であるアーチャーとは比べ物にならないほどの年月を共にしてきた。
別れの挨拶ができないのが少し残念だが、自分は海の男として死んだのなら彼も納得してくれるだろう。
だから今願うことは唯一つ。

(アーチャー、後は頼んだで)


そして濱口の視界を白が覆う。
それは得物を砕くために骨が剥き出しとなった部分だ。
巨大な歯の白、走馬灯が消えるときの白、閃光のような白。

(ん、光?)


「GYAAAAAAAAAAA!!!!!!!!!!」

リヴァイアサンは悲鳴を上げる。
得物を口に放り込んだと思ったら突如、己の口内が爆発したのだ。
歯は所々砕け落ち、口の周りはすっかり焼け焦げてしまっている。
そして更にアーチャーがリヴァイアサンの肉体に宝具を放つ。
宝具は次々と爆発し、次第にリヴァイアサンの体力を削っていく。

―壊れた幻想(ブロークンファンタズム)

宝具とはそもそも膨大な魔力の塊である。
だから敢えて破壊することで、魔力の奔流を引き起こし、破壊を齎すことも出来るのだ。
普通は自ら宝具を破損する発想など考えもつかないだろう。
宝具を投影することができるアーチャーならではの技である。

「何するんやドアホォォォォォォォ!!!!!!」
「ほう優、やっぱり生きていたのか」
「生きていたのかじゃないわ! お前はワイを殺す気かぁぁぁぁぁぁ!!!」

リヴァイアサンの口内から身を乗り出した濱口が怒鳴りつける。
ぴんぴんしているようにも思えるが、全身は黒焦げであり、服装も所々破れてしまっている。

「お前ならなんとなく無事な気がしてな。 それよりも今こそやつに止めを刺すんだ!」
「ああそうやったな」

アーチャーの声を聞き、濱口は跳ぶ。
口、鼻、眉、次々と景色が変わっていくが、濱口が目指すのはそのようなところではない。
巨大銛が捉えたのは龍の額、今度こそ外さない、これを逃したら次はない。

「喰らえぇぇぇぇぇぇぇ!!!!!!」

鈍い音が放たれる。
海竜の悲鳴が海に轟いた。




「さっきはよくもやったなー!」
「すまん優」

濱口がアーチャーを扱き倒している。
彼らが跨るのは自らが倒した獲物の上だ。
殴られているアーチャーは痛そうだが、それでも笑顔を浮かべている。
濱口も何処かうれしそうだ。
二人の耳に新たな放送が鳴ったのはそんな時である。


『俺はアカギ、赤木しげる。 このバトルロワイアルをやっている者全てに伝えたいことがある』
最終更新:2009年05月04日 08:56