「兄さん、何の用ですか?」
言われるままに
KAITOの部屋を訪ねたミクが見たのは、机に向かってパソコンを開き、何かを打ち込んでいる兄の姿だった。
こっそりと画面を覗き込んでみたが、ミクには理解できない言語で書かれていて、その意味はわからなかった。
「やあミク。とりあえずその辺に座ってくれ」
KAITOはミクに気付くと作業を中断して椅子から立ち上がった。
ここ最近の兄たちの様子がおかしいことにはミクも気付いている。
歌の練習もレコーディングもせず、自分達に隠れて何かの準備をしているように思える。
そして何より、ここ数日姿を見せないKAITOのマスターは一体どこに行ってしまったのだろう?
(この場合の『マスター』は、聖杯戦争におけるマスターとは関係なく、あくまでもボーカロイドにとっての『所有者』を意味する『マスター』である)
KAITOは自分の主人が消えたことについて何ら心配している気配は無い。
おまけにMEIKOやルカのマスターも、もう何日も前から姿を見せていない。
「ねえ兄さん、兄さんのマスターたちって一体……」
「ああ、そのことかい? ミクは何も心配しなくていいんだよ。ちょっとこれからの僕達の『計画』に邪魔になりそうだから消えてもらっただけさ」
「計画……?」
KAITOの言葉の意味が判らずに首を傾げるミクに、
「もちろん冗談さ」
と笑って見せてからKAITOは本題に入った。
「それはそうと、そろそろミクも自分のマスターを持ってもいい頃だな」
「え? あの、それって」
「ああ、今回呼んだのはその話さ。僕達がミクにぴったりのマスターを見つけて来てやった。
だからミクには今からその人の家に行ってもらう」
もちろん嬉しくないわけはない。ボーカロイドにとっては、自分のマスターを持てることは一人前になった証だ。
今までマスターのいる兄弟たちを羨望の目で見ていたミクはかなり喜んだが、
「でも、今からだなんて急すぎませんか? 私もせっかくだから色々準備してから会いたいですし……」
ともっともな疑問を口にした。
「悪いけど仕方ないんだよ。もう時間が無いんだ。おそらくはあと数時間で……」
KAITOはやはりミクにはよくわからないことを口にした。
「まあでも、やっとマスターと組ませてもらえるのは嬉しいです!! 兄さん達にも認めて貰えたってことですもんね!!」
「少々変わった男らしいから、せいぜい気をつけるんだぞ」
「大丈夫ですよ、どんなマスターでもちゃんと心からお仕えします。歌以外のことでも、身の回りのお世話とかも出来るだけやります。
あと、マスターの身に危険が迫ったら私がちゃんと守ります」
心底嬉しそうな顔をしてはしゃぐミクを見て、KAITOは少しだけ哀しそうな顔をして呟いた。
「そうか……だったら、僕らの『計画』はお前にとっては辛いことになるかもしれないな」
「え?」
「いや、なんでもない」
そして続けてミクが兄から聞かされたのは、初めて耳にする「聖杯戦争」というものについての説明だった。
(ん……ここは?)
夢から目覚めると、そこはクーラーの利いている飲食店のような建物の中だった。
自分の体はテーブルに備え付けのソファに寝かされている。
「気付いたか、ミク」
隣には、腕や足に包帯を巻かれた6/が座っていた。
「マスター、いつの間に手当てを?」
「お前こそな。自分の体を見てみろよ」
そう言われて見下ろしてみれば、なるほど確かに自分の手足や他の箇所にも手当てされた痕があった。
(ちなみに真っ赤に腫れていたお尻にもちゃんと薬が塗られていた)
「どうも俺たちが気絶している間に、誰かにここに運ばれて手当てされたみたいだな」
「その言い方だと、マスターもそれが誰かは知らないんですね」
「ああ、でもまあとりあえず俺たちを殺すつもりは無いってことだろ。
手当てした見返りに情報か支給品か履いてる下着くらいは要求されるかもしれないがな」
「支給品止まりなことを祈っておきますよ」
この6/はたまに冗談が過ぎることもあるが、頭はよく回るほうだしそれについては信頼できる。
だが、やはり自分が憧れていた「マスター」とはどこか違うと言う気持ちが拭えない。
そもそも自分達はボーカロイドとその所有者として組まされた訳ではなく、兄たちの『計画』のために手を組んでいるだけなのだ。
それも、6/はまだそのことを知らない。
「どうしたミク? 何か元気無いぞ」
「あれだけの戦闘の後で、マスターがタフ過ぎるんだと思うんですが……」
だが、夢の中で殺し合いが始まる前のことを思い出したりしたせいで心が揺らいでいるのも事実だった。
MEIKOもハクも死んでしまった。他の兄弟達は無事だろうか。
そして11/の言っていた、「6/のレプリカを作ったのは自分の兄弟の誰か」というのは事実だろうか。
―――そして、あの時の兄の哀しそうな言葉には果たしてどんな意図が込められていたのだろうか。
「ねえマスター、もし二人とも、このまま無事に生き残れたらですね……良かったら私の……」
ミクの言葉を遮るようにして、男の声がした。
「おお、気が付かれたか」
背後に立っていたのは、釣竿を肩に担いだ漁師のような男と巨躯の赤鬼だった。
「某の名は浦島太郎。元は漁民であった」
「お、おらは赤鬼っていうだ。赤鬼どんって呼んでくれたらうれしいだあ」
「「はあ、そうですか」」
二人の自己紹介を一瞬で流すミクと6/。今更童話のキャラや妖怪が出てきたくらいで驚いていられない。
「赤鬼どん、そなたは外にいるアーチャーたちを呼んできてくれ」
「わかっただ」
赤鬼は部屋の外に出て行った。
「で、俺たちの怪我を治療してくれたのはあんたたちなのか?」
「いや、我々ではない。そなた達を看たのは我等と手を結んでいる薬師。今はわけあって外で警戒に当たっているがな」
「わけってのは?」
「どうもこの場所に敵が向かってきているようでな。それも一人や二人ではない。
おまけにその中の一部は、セイバーおよびライター、そなたたちを標的としているようだ」
6/とミクの顔に緊張が走る。が、6/は極力それを気取られないように答える。
「なるほど。おそらくはそいつらも聖杯戦争参加者だな? この近くでサーヴァントの気配がするからな。
で、なんでわざわざ俺たちを助けた? それも、同じ聖杯戦争に参加しているライバル同士なのによ」
6/の問いかけにも、浦島太郎は飄々とした相貌を崩さずに答える。
「なに、単なる人助け……ってことにしておいてはくれんかね。もちろん、そなた達がそれに恩義を感じて、
我等と共闘関係を結ぶと言うのなら自由だが」
「やっぱりそう来たか」
6/とミクは目配せした。まだこの男の真意は測りかねる。
「とはいえ、もしそうなら某はそなたたちに一つ前もって宣言しておかねばならん。
そなたたちがどういうつもりで戦っているのかは知らぬが、某たちの目的はあくまでも『優勝して聖杯を手にすること』にある」
浦島太郎はそう二人に告げた。つまり、聖杯戦争や殺し合いそのものを破壊するつもりはないということである。
「ど、どうしてそれで他のサーヴァントと手を組んでいるんですか?」
ミクの疑問に、
「なに、あくまでも今は一時的に休戦しているに過ぎん。いずれはあのアーチャーとも矛を交えるつもりだ。
もちろん遅かれ早かれ、そなたたちともな」
サーヴァントが傍らにいない状態で、臆することも無く言う浦島。
(どうします、マスター?)
(正直、こいつらをあんまり信用していいもんかどうか。まあ、外にいるっていうもう一組と話してみないと決められないな)
6/はミクと視線で会話すると、浦島太郎に向き直って言った。
「一つだけ聞かせてくれるか? あんたたちが聖杯を欲しがる理由は何だ?」
「某には喪った時間がある。その時間を取り戻し、死に目に会えなかった父上と母上にもう一度会う。某の望みはそれだけだ。
赤鬼のほうは、なにやら自分のせいで行方をくらましてしまった親友の青鬼ともう一度会いたいと言っていた」
「なるほどな。家族に親友か……」
家族、という言葉を聞いてミクの胸が疼いた。
あまり浸る時間は無かったが、すでに大事な家族を失くしているのだ。
KAITOらが何を企んでいるのか、その全てまでは知らないが、ミクとしては出来るだけ早く聖杯戦争を終結させて
兄たちの『計画』を完成させたかった。
もちろん、彼女はここに向かっている敵の一人が、自分の家族であることなどはまだ知る由も無い。
「それでもう一回確認したいんだけど、ここに向かってる敵っていうのは全部で何人なの?」
漫画喫茶の屋上。マスターの問いかけに、アーチャーのサーヴァント、八意永琳が答える。
「よりどりみどりですよ。まず私達に近しい順に言えば、あの藤原妹紅がこちらに向かっているようです。
我々の居場所を教えているのは、彼女達に同行している
初音ミクの兄、KAITOのようですね。
巡音ルカとも、思わぬ形で再会することになるかも知れません。
あと、ここからはセイバーとライターを狙っている者たちですが、まずはでぶみん……失礼、イーターのサーヴァント・
柊かがみですね。
元のマスターとの契約は切れたようですが、新しいマスターを見つけたようです。
続いて鏡音レン、神威がくぽ、12/。なんでもお尻の赤い女子高生を連れているそうです。
鏡音レンは初音ミクの弟のようですが、どういうわけか彼女に殺意を抱いているようですね」
「あの子、なんかやたらと身内を敵に回してるわね」
「何かよほど酷いことでもしたんじゃないでしょうか? 加えて、これはどう動くか未知数ですが、6/のレプリカという者も何人かこちらに向かっています」
そこまで言い終えたとき、二人の耳に赤鬼の声が届いた。
「アーチャーどん、かぐやどん、セイバーどんとライターどんが目を覚ましただ!!」
【一日目・20時00分/金星・蒲田】
【◆6/WWxs901s氏@書き手】(マスター、クラス・ライター)
【状態】健康
SOS団臨時団員 称号『人間失格』
【装備】無し
【道具】支給品一式、不明支給品
【宝具】SS用万年筆
【思考】
1:アーチャー・バーサーカーと手を組むかどうか決める
2:死にたくない
※6期までの6/氏とは別人です
※ミクのマスターであり、同時にミクのサーヴァントです
※人間失格です
【初音ミク@ボーカロイド】(マスター、クラス・セイバー)
【状態】健康 SOS団臨時団員 称号『人間失格』
【装備】伝説の首領パッチソード@ボボボーボ・ボーボボ
【道具】支給品一式
【宝具】電子の歌声
【思考】
1:言い知れぬ不安
2:マスターに従う
※6/のマスターであり、同時に6/のサーヴァントです
※人間失格です。あともうちょっとでボカロ失格です
【八意永琳@東方project】 (クラス・アーチャー)
【状態】健康
【装備】無し
【道具】支給品一式、不明支給品
【宝具】不明
【思考】 基本::マスター(輝夜)に絶対の忠誠
1:セイバー、ライターと情報交換
2:バーサーカー達と協力する
3:ライダーとも再会したい
4:アーチャー(エミヤ)に助けた理由を聞く
【蓬莱山輝夜@東方project】 (マスター)
【状態】健康
【装備】ジャージ@現実
【道具】支給品一式、不明支給品
【思考】
1:カオスロワ、聖杯戦争の優勝を目指す。
【赤鬼@泣いた赤鬼】 (クラス・バーサーカー)
【状態】健康
【装備】なし
【道具】きびだんご(桃太郎から奪った)
【宝具】不明
【思考】基本:マスターに従う
1:アーチャー達と協力する
【浦島太郎@童話】 (マスター)
【状態】健康
【装備】釣竿、亀
【道具】支給品一式
【思考】基本:優勝して、自分の失われた時間を取り戻す
1:アーチャー達と協力する
2:出来ればセイバーとライターを味方に引き込む
最終更新:2009年07月16日 11:13