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「ちょっくら御免よ。なんか良い品物はあるかい?」

 三重県商店街。そこは数々の怪しい商店が建ち並ぶ魔境。そして商店街住人に負けない
怪しい者達が出入りしている。その客、風来人のシレンもその一人だった。

「いらっしゃいませ。何をお探しでしょうか?」

 店内では太った武器商人トルネコが満面の笑みでシレンを迎えた。

とりあえず適当に見させてもらうさ」
「どうぞどうぞ……」
「……」

 乱雑に品物が並べられた床をシレンはゆっくりと歩きながら、品物を手にとって見ては
戻すという事を繰り返した。その眼は、まるでインパスでも使っているかの様に真剣だ。
その光景を見たトルネコは直感した。その心境を表現するならこうだろう。

(コイツはくせェー、ミニデーモン以下の匂いがプンプンするぜー! こんな客には
出会った事が無いほどなァー! バトロワのせいで泥棒に走るだと? 違うねッ!!
こいつは生まれ付いての泥棒だッ! 盗賊番さん、早いとこコイツを捕まえちまいな!)

 だがトルネコも客の前で営業スマイルを崩す事は決してしない。

「お探しの物は見つかりましたでしょうか?」

 和やかさと親近感を演出しつつ声を掛ける。万引き防止には効果的だが、風来人には
あまり効果はない。シレンは当然のように聞き流している。トルネコだって客の時は
店主の言う事なんて聞いちゃいないからお互い様とも言えるが。
 シレンは眠っている涼宮ハルヒの周囲をゆっくり回って観察すると声を掛けた。

「店主さんよ、そこに転がっている娘っ子も売りもんなのかい?」
「多少お値段は張りますが、品質は保証しますよ。お値段は……でどうです?」
「ほう……高いな」
「少しは値引きさせていただき……」
「いや、必要ない。この子は貰ってゆく」

 トルネコの言葉を遮るってシレンはハルヒを軽々と担ぎ上げた。人間一人とは言え、
アイテム扱いされているうちは薬草一個と同じだ。店内に緊迫した空気が流れる。

「お客さん、店を出る前に支払いは済ませてもらえませんかね?」

 とトルネコが一歩踏み出した途端、いつの間にか仕掛けられていた地雷が炸裂し、
トルネコのHPは強制的に1となってしまった。

「すまないな店主。今回は罠師プレイと決めてるんだ」
「くっくっく。お客さん、残念ですがあなたの負けですよ。この狭い店内で私が盗賊番と
番犬を呼べばどうなるか、お分かりですかね?」
「アンタが死ぬ。それだけだ」
「!」

 シレンは詰まらなそうにトルネコに返答した。トルネコは一歩踏み出した時点で
ターンが終了している。シレンのターンでは距離があるので死にはしないだろうが、
次のターンで回復せずに盗賊番を呼べば、確実に殺されるだろう。だが希望はある。
シレンと自分との間に盗賊番が来れば、彼らを盾として回復しつつ戦えるのだ。
一か八かに掛けるか、無難に回復してシレンを見逃すか。選択肢は二つに一つ。

「ふっ、その程度の泥棒戦術で、私を追い詰めたつもりですか。カートリッジの若造が!」
「生まれなんざ、風来人には関係ねぇこって」
「いいえ、ズバリ関係しますね。あなたと私の決定的な違い! それは記憶媒体の差!
ミスが瞬時に記録され、やり直しが出来ないカートリッジのあなたに対し、この私は!
文明の利器、差し替え可能なメモリーカードを使用! この意味、分かりますよね」
「ちっ、汚ねぇ野郎だ。そんな事だからPS版はぬるま湯仕様って言われるんだ!」
「リセットしてでも勝てば官軍、殿様商売よ! いでい盗賊番っ!」

 トルネコの号令に応じて無数の盗賊番が出現した。そして運良くシレンとトルネコの
間にも盗賊番の一人が出現したのだ。これでシレンのターンに接近される事はない。
次のターンで回復さえすれば……

「勝った! 『風来のシレン 完』!」
「ほう、そしたら誰がDSの看板を背負うんで? 盗賊の小僧(ヤンガス)に主役を奪われた
あんたないだろう? それに言ったはずですぜ『今回は罠師プレイと決めてる』って」

 勝ち誇るトルネコに対して半ば呆れ気味だったシレンが足元のスイッチを踏んだ。

「俺のターンだ! 毒矢の罠を自分で踏んで作動! 毒矢は正面から俺に向かって飛ぶ!」
「何だと!」

 毒矢はシレンの正面に立つトルネコの背後に出現するとから、シレン目掛けて飛んだ。
そして残りHP1だったトルネコの背中に深々と突き刺さりその命を奪い取ったのだ。
地雷の後には弓矢に注意、そんな基本を怠ったが為の敗北だった。

「お前さんの敗因はたった一つだ。お前さんは、やりこみユーザーを怒らせた!」
「くっ、既にメモリーカードは抜いてあります。直ぐにデータをロードして今度こそ……」

 武器商人トルネコは消えた。だが彼の呼んだ無数の盗賊番達は残っている。
本当の戦いはこれから始まるはずだ。そんな緊迫感をぶち壊すかのように肩に担ぎ上げ
られていた商品がコメカミに無数の怒りマークを付け、遂に覚醒した。

「何か、うるさいんだけど!」


【三重県商店街 3日目 9時】


【シレン@風来のシレンシリーズ】
[状態]:LV99 HP999/999 力99/99 満腹度165/200
[装備]:秘剣カブラステギ+99(金、三)、ラセン風魔の盾+99(金、と)(それぞれ追加効果の全容不明)、
罠師の腕輪、転ばぬ先の杖
[道具]:荷物一式(所持品、支給品不明)、大量の復活の草、大量のデイパックとアイテム
[思考]
1:とりあえず盗賊番をどうにかする。
2:アイテムを大量に手に入れたので、ダンジョンを攻略する
3:敵モンスター(または誰でもいいので他人)に新しく手に入れたアイテムを試したり、
 既存のアイテムや戦法が通用するか実験してみる

【涼宮ハルヒ@涼宮ハルヒの憂鬱】
[状態]:健康、少し寝ぼけている
[装備]:なし
[道具]:不明
[思考]
1:降ろしなさいよ!
2:やっと起きたんだからさっさと活躍させなさいよ!



 ここは冒険の書や風来日記を記録するデータとデータの狭間。
禁断の奥義『リセット』はゲームによって対策はされているものの、その全てを根絶する
には至っていなかった。いつの世にも卑怯な手段を取る者はいるのである。

「ふう、もう少しでせっかく上げたレベルとアイテムが無駄になるところだった。
あの二番煎じのクセに生意気な風来人め。すぐにギャフンと言わせてやる!」

 トルネコは自分がPCゲーム『ローグ』のパクリと言う事を無視して早速、冒険の書を
再開しようとした。そうすれば少し前から再開できるはずなのだ。だが今は時空の歪んだ
カオス状態である。数々のゲームが混ざり合い、それは不思議のダンジョン系でも最悪と
名高いあの作品をも混合している事を意味していた。それがトルネコの盲点であった。

「こ、ここはいったい?」

 冒険の書を再開したトルネコは、見知らぬ空間へと飛ばされ正座させられていた。
その目の前に神々しい後光を放つ女神イシターが降臨し、優しく彼に問い掛けた。

『なぜ、あなたがここに呼ばれたのかわかりますか?』
「あ、いやその、何ででしょう?」

 後ろめたいトルネコは笑って誤魔化そうとしたが、イシターは深い溜息を付いた。

『では、ここに呼んだ理由をよくお聞きなさい。わたしはこれまでの冒険の記録を
書き記してきました。時と空間を隔てても再びこの地に戻れていたのは冒険の記録の力に
よるものなのです。記録をするには手順があることを知っていますか?』
「あーそれはその……」
『あなたはその手順を守らなかったためにこの世界の時の因果を乱してしまったのです。
時とは永久に流れ、万物に流転していくもの。神ならぬ人間が時の因果を歪めせしこと、
厳に戒めねばなりません』
「それはもちろん、分かっております、はい!」
『では、なぜ禁を破ったのですか?』
「こ、これは不慮の事故でして……」
『あなたの意思とは無関係にこの世界の時の因果を乱したことに変わりありません。
時とは永久に流れ、万物に流転していくもの。神ならぬ人間が時の因果を歪めせしこと、
厳に戒めねばなりません』
「申し訳ありません。平に、平にご容赦を……」
 流石に女神が相手だと分が悪いと感じたのか、全てのアイテムを失ったトルネコは
平謝りを繰り返した。

『このようなことを過ちを繰り返さぬと誓えますか?』
「はい!」
『…その言葉に嘘、偽りはありませんね?』
「はい!」
『本当に理解していますか?』(同じ質問を3回繰り返し)
「はい!」
『本当に理解していますね?』(同じ質問を3回繰り返し)
「はい!」
『本当に理解していますか?』(同じ質問を4回繰り返し)
「もちろんです!」
『本当は理解していますね?』
「はい!」
『本当は理解していませんね?』
「はい……あ!」

 女神イシターはお怒りのようだ。

『…あなたを時の流れに戻すにはまだ早いようですね。もう一度、最初からわたしの
問いに答えなさい(質問を最初からやり直し)』

 いくら質問に答えようとも一向に再スタートできる気配がないので、トルネコは
そのうち考えるのをやめた。

時空の狭間
【トルネコ@トルネコの大冒険、死亡確認】

【女神イシター@ザ・ナイトメア・オブ・ドルアーガ 不思議のダンジョン】
[状態]:健康
[装備]:なし
[道具]:不明
[思考]:リセットとかデータ改造とかした奴らに延々と説教する


最終更新:2007年01月18日 20:14