「ルカ姉……俺のせいで……」
大火災から生き延びた数少ない一人となったレンは、虚ろな目でただただ歩き続けていた。
結局自分はまた何も出来なかった。
今度は自分がルカを助けると誓ったはずなのに、そのルカは自分を守って死んでしまった。
しかも今この星の上では、死者を弔う余裕すらも許されなかった。
災害が襲った地をたどたどしく歩く。雨や風や炎は、その通り道にあったものを例外なく破壊していた。
逃げ惑う人々のうち何人かはレンを心配して声を掛ける。
だがレンはそれには気付かずに、何かから逃げるように歩き続けた。
そして、ついに見つけてしまった。
大規模な戦闘があったと思しき荒れ果てた場所。その中に転がっていた、何かの残骸。
黄色い髪とリボン。見覚えのある服。
見間違いなどするわけがない。それは、彼の双子の姉妹のものに相違無かった。
「リン……」
結局、自分には何も残らなかった。
みんな死んでしまった。
いつも守ってくれた人たちも、生まれたときからずっと一緒にいた片割れも、そしていつか越えるはずだった目標も、
みんないなくなってしまった。
(俺も死のう。早くみんなの所に行こう)
死に場所なんか、今この星の上では少し探せばすぐに見つかるだろう。
どこかで今も燃えている炎の中か、増水した川の中か、もしくは地震で出来た地割れの中にでも飛び込んでやろう。
それでやっと、こんな馬鹿げたことにこれ以上関わらずにすむ。
そう思って、死に場所を求めて彷徨っていた。
少年がそのサーヴァントに出会ったのは、そんな時だった。
「そこのお人、私のマスターになってはくれませんか?」
「なるほどなるほど、あなたもあの少女と同じ歌歌いの一人でしたか。
私も噺家ですから、言うなれば私たちは言葉を芸にするもの同士。これも何かのご縁でございますね」
一方的に話す笑点のピンクに、レンは思わず圧倒されてしまった。
ちなみに笑点のピンクのほうは内心ちょっと失敗したなと思っていた。
この少年、鏡音レンはかつて秋葉原で出会ったセイバーのサーヴァント、
初音ミクの弟らしい。
他のサーヴァントの関係者であるだけでもややマズイが、魔力もそこまで多いとは言えない。
とは言ってもこの際背に腹は代えられない。マスターがいないよりはマシだ。
「でも、
ごめん……俺、あんたのマスターにはなれないよ。というか、今から死ぬつもりだから」
レンは苛立ったような声で言った。
「はい? それはまた何でですか?」
レンは笑点のピンクに今までのことを語った。誰でもいいから聞いて欲しかったのかもしれない。
「ほうほう、嫉妬心のあまりに姉を殺そうとしていたが、やっとそんな暗い感情から抜け出せた矢先に
家族のほとんどを失ってしまったと。いやあそれは心中お察ししますよ」
よくもまあ知ったようなことを、と思いながらもレンは言い返さなかった。
「しかしですねえ、だったらなおのことあなたは死んではいけませんよ。先に死んだご家族の分まで頑張らないと」
「俺なんかが頑張ったって今更どうにもならないよ。兄さんたちがはじめた聖杯戦争も、この殺し合いそのものも。
どうせそのうちこの星は太陽に衝突してみんな死んじゃうんだ。頑張る理由なんて無いだろう」
「そんなことは無いですよ。あなたは生きないといけません。私は何が何でも最後まで生き残るつもりです」
笑点のピンクは、自分がだんだんと本気で彼を説得しようとしているのに気がついた。
マスターとして利用するためだけに声をかけたはずなのに。
こんな感覚は昔どこかで味わったことがあった。
(ああ、そうか。あのピンクの髪の少女と話したときが、こんな感じでしたねえ)
この少年はあの少女とどこか似た雰囲気があった。そして、自分ともどこか似ている。
おそらくは、周りに自分よりも人気がある人たちがたくさんいる中で、
なんとか自分の居場所を探しているところが同じなのだろう。
「ここであなたが死んだらどうなりますか? あなたのお姉さんたちはみんな無駄死にになるじゃないですか。
そして、あなたまで死んでしまったら、誰がみんなに歌を届けるんですか?」
「え……?」
「あなたは生き残って、そしてその暁にはご兄弟の代わりに歌を歌うんですよ。
この殺し合いと災害のせいで傷つき疲れている、皆さんのためにね」
そうだ。俺が今この世界で出来ること。
そんなの決まりきっているじゃないか。ミク姉やルカ姉やリンが出来なくなったことを、俺が代わりにやるんだ。
「ふん、『生き残ったら』なんて悠長なことを言ってられるか!! 俺は今からでもみんなに歌を届けに行く。
みんなに笑顔になってもらうために……それが、俺たちの役目だ」
「やれやれ、私としては少し予定外ですが、まあ仕方ないですねえ。お付き合いしましょうか」
笑点のピンクはレンの横顔を見て優しく微笑んだ。
(MEIKO姉さん、ルカ姉、ミク姉、リン、あとがくぽにテトにハク。それに、
KAITO兄さん。
みんな……俺なんかがみんなの代わりになれるのかって心配だろうけど、でも、やれるだけやるからさ。
だって、俺はもう、一人じゃ無いんだから)
【笑点のピンク@現実】 (クラス・アサシン)
【状態】健康
【装備】拳銃
【道具】支給品一式、タバコとライター、ハイエーテル×1
【宝具】落語家の言霊
【思考】基本:必ず生き残って目立つ
0:レンを手助けしながら生き残る
1:自分を殺そうとする相手からは極力逃げる
【鏡音レン@ボーカロイド】
【状態】肉の芽、ほぼ全裸
【装備】なし
【道具】支給品一式
【思考】
1:みんなを歌で勇気づける
最終更新:2010年04月26日 00:35