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「ちょっとなにこの駅弁めっちゃマズイし!! もう最悪!!」
「半分以上食べてから文句を言うことも無いだろ……ほら、そんなにイヤなら代えてやるよ」
「はあ? 兄さんの食べかけとかキモくて喰えねえし!!」
仲睦まじいとは言いがたい兄妹が、電車の席に向かい合わせで座って買ったばかりの駅弁を食べていた。
京都から一路東京へと向かうことにしたKAITOとLilyだったが、新幹線がつかまえられなかったためとりあえず特急で手近な駅まで移動することにしたのだ。
「てゆーかなんで東京なワケ? どうせなら実家のある札幌まで戻ったほうが良いってもんじゃないの?」
Lilyが、彼女から見れば当然の疑問を口にする。
「それは……」
「まさか兄さんが聞いたとか言う、幻聴かもしれない変な声の言ってたことを真に受けるつもりなの?」
そういう言い方をされると言葉に詰まってしまう。
自分だってあの声のことまでは全面的に信じていいかどうかは疑問に思っている。
だが、とにかく今は東京に行かなくてはいけないという気がする。
「別に無理に俺に付き合うことは無いよ、Lilyは札幌まで戻ればいい」
「ちょっと、そういう言い方する!? わざわざ付き合ってあげてるのに……」
Lilyが掴みかからんばかりの勢いで食って掛かった、まさにその時……


「まさかこんなとこで会うなんてねえ……これはついてる、かな? 恨みを晴らすチャンスがこんなに早く転がりこんでくるなんてさ」


少女のものには違いないが、背筋が凍りそうなほど殺意を帯びた声。
その少女はKAITOから見れば正面、Lilyから見れば背後の通路に立っていた。
振向いたLilyの目に入ったのは、一見小学校高学年くらいの少女。しかしセーラー服を着ていることからもう少し年上らしい。
その隣には、彼女と『組』を作っているらしい男も立っている。
「は? 何アンタ、アンタまで兄さんに因縁つける気?」
目元に泣き黒子のある少女はLilyの問いかけは完全に無視してKAITOに一歩一歩近寄っていった。
「私のこと忘れちゃった? あんたに捕まって解剖されて、そのまま殺された泉こなただよ」
KAITOの目に驚愕が浮かぶ。またしても記憶にないこと。
なるべく考えないようにしていた先ほどの群集のセリフも脳裏に蘇ってくる。

『この人殺し!!』
『あれだけ残虐なことをしておいて……』
『俺たちはお前を絶対に許さない!!』

「何その顔? ひょっとして平行世界の別人? でも例えそうだとしても許せないけどね……
私たちを殺したことだけじゃないよ。そもそも全てはあんたが聖杯戦争なんかを始めたから起こったことなんだよ?
そのせいでつかさも、ゆーちゃんも、かがみんも、みんな……」
こなたは明らかに冷静さを欠いた目でそう告げると、背中に隠していた斧を見せ付けるように振りかざした。
咄嗟にLilyがKAITOを椅子から突き飛ばした。椅子は斧によって一刀両断される。
「ちょっとちょっと一体何のマネなわけ!? いまどきヤンデレなんて流行らないんですけどー!!」
「黙れ!! あんたに想像できるの? 目の前で友達が死んでいくのを見るのがどんな気持ちか……
そして、友達と殺し合いをすることがどんな気持ちなのか!! 私は絶対に許さない!!」
「ちょ、ちょっと泉さん、ここは少し落ち着いて……」
こなたと組を作っていた男が止めようとする。が、その首は即座に斧によって撥ねられた。
「うるさい、邪魔するな!!」
座席の上に男の首が転がる。
「っ……兄さん、こっち!!」
LilyはKAITOを突き飛ばすようにしながら隣の車両へと走る。
「逃がさないよ!! 妹のお尻を叩くのが好きな変態の癖に何守られてるのさ!!」
狭い通路では思うようには斧を振れない。こなたは舌打ちをしながらも斧を引きずってその後を追う。

「ほら兄さん、何呆けてんのよ!!」
隣の車両に逃げ込んだ二人だったが、このまま逃げてもいずれ追い詰められるのはわかっている。
だがKAITOはもはや『今、どうするべきか』など考えることはできなかった。
(俺が人殺しを……もしかして本当に……いやそんなハズは……でも……
解剖? あの女の子を? それに聖杯戦争? 妹のお尻を叩くのが好きな変態?
わからない、わからない、わからない、わからない、もう、どうにでもなってくれ……)

――『やれやれ情けないねえ。仮にもあいつとは同一人物とは思えんなあ』

「なっ!!」
またあの声だ。しかし今度の声の主はさっきのそれとは違った。

――『大丈夫、兄さんならきっとなんとかできますよ』

次に聞こえたのはまたしても別人の声。しかもその声には聞き覚えがあった。
「その声は……まさか……」
「兄さん、来るわよ!!」
Lilyの声で我に返った。見ると彼女は自分をかばうように車両の出入り口の前に立っている。
(そうだ、今の声はあくまで幻聴。俺は今、俺にできることをしないといけないんだ!!)
「Lily、そこをどけ!!」
「え?」
彼女が振向くと、そこには氷の剣を構えた兄の姿があった。
KAITOは妹を座席の上に突き飛ばすとドアの前に立つ。チャンスはおそらく一度きり。
そう、あの少女がこの扉を開けるその瞬間――
「覚悟はでき――」
扉が開いた、それとほぼ同時にドアの隙間に剣の切っ先を滑り込ませる。
その切っ先はこなたの鳩尾を突いた。
「ぐ……そん、な……」
斧を大きく振りかぶっていたこなたは、そのまま斧の重さに引きずられるようにして後方に倒れた。
KAITOは大きく肩と腕を震わせながら激しく息を吐く。
指が硬直して離せない。人を指した時の感触が忘れられない。
さっきは相手がモンスターだったから良かった。しかし今度はどうだ?
相手は年端もいかない少女じゃないか。
「この……殺人鬼め……」
少女は口から血を吐きながら恨みがましくKAITOの顔を見上げる。
「ほ、本当に思いだせないのなら教えてあげるよ……あんたは自分の都合で何人もの人を巻き込んだ殺人ゲームを始め、
罪も無い人を何千人も殺し、災害を起こして更に何百万人も殺し、そして自分の家族まで殺した……
最悪の……殺人者なんだよ……」
そう言い終えると、少女は動かなくなった。


他に乗客はいないのか、騒ぎを聞いて駆けつける者などいなかった。
KAITOとLilyは血痕を前にして無言で佇んでいた。
「兄さん……」
「これで証明されたな……俺は確かに殺人犯だ……少なくとも、ここで一人の人を殺した、な」
幽鬼のような声でそう呟くと、ふらふらとさらに前の車両に向かって歩き出す。
「俺は次の駅で降りる……お前は好きなとこに行ってくれ……もう俺みたいな殺人犯に関わりたくないだろ?」
もう、罵られようがどうされようが文句は言えない。家族に合わせる顔も無い。


「ばっっっっっっかじゃないの!!」

後ろから思いっきり首を絞められた。
「ちょ、落ちる落ちる落ちる!!」
思わず素で苦しがるKAITOの耳元でLilyはわめき散らすように言った。
「人殺しだろうがなんだろうが、兄さんは兄さんに違いないでしょうが!!
それに兄さんは殺人鬼なんかじゃないわよ!! 私のこと守ってくれたんでしょうが!!」
KAITOが振向くと、妹の目には涙が溜まっていた。

【一日目・0時45分/滋賀/天候・嵐】

【KAITO@VOCALOID】
【状態】疲労(大)
【装備】ヴォーパルソード@テイルズオブシンフォニア
【道具】支給品一式
【思考】
1.……
2.生きて家族に会いたい
3.東京へ向かう
※七期とは別人です。

【Lily@VOCALOID】
【状態】健康
【装備】穴抜けの紐@ポケットモンスター×2
【道具】支給品一式
【思考】
1.KAITOと一緒に行動する

【タケシ@ポケットモンスター  死亡確認】
【泉こなた@らき☆すた  死亡確認】
※泉こなたが持っていた斧@金太郎は車両内に落ちてます
最終更新:2011年01月27日 19:24