「兄さん、もうそろそろ限界なんじゃない……?」
Lilyの指摘に
KAITOはうなずくしかない。
制御を失った電車は加速を続け、このままでは脱線するのは時間の問題。
運転手たちは全く起きる気配がないし、いくらなんでもこんな状況で素人が操縦桿を握るのはリスクが大きすぎる選択だ。
背水の陣というのならまだしも、こっちには穴抜けの紐があるのだ。
東京を前にして降りるのは惜しいが、命のほうが惜しい。
(俺たちは生きないといけないんだ……ミクや、めーちゃんの分まで)
放送で呼ばれた家族の顔をもう一度思い出し、KAITOは妹に告げる。
「脱出しよう」
「うん!!」
他に交通機関がないわけもないだろうし、ここまでくれば最悪歩いてもいい。
Lilyはポケットに手を入れる。が、その時これまでにない揺れが車体を襲った。
KAITOはとっさにそばの座席にしがみついたが、Lilyはバランスを崩して車体のはるか後方まで飛んでいく。
そして窓から見える景色は大きく回転していた。
脱線したのだ、と認識するまでに時間はかからなかった。
車体は空中に浮いている。この速度で地面にぶつかれば、乗客が生存できる可能性など考えること自体が馬鹿馬鹿しいだろう。
「兄さん!!」
「Lily-!!」
彼ら兄妹にできたのは、声の限りに互いの名前を呼ぶことだけだった。
数分後。
彼らは自分たちが生きながらえたことを知る。
車体の揺れは収まっていた。窓の外を雨が静かに叩いている。
運転席を見ると、中にいた二人は天井に強く頭を打って死んでいた。
「り、Lily!!」
KAITOは慌てて起き上がって車体の後方に向かう。
金髪の少女は額から血を流し、痛そうに床の上でうめいていたが生きていた。
「おい、大丈夫か!? しっかりしろ!!」
「うるさいわねえ……そんなに大声出さなくても聞こえてるわよ……」
悪辣な口調はいつもどおりだったが、口の端はかすかに笑っているようにも見えた。
ほっと胸を撫で下ろしたKAITOは、そこに至ってようやく自分たちがまだ異常な状況下にいることに気が付いた。
窓の外から見える風景は、この車体がまだ空中にいることを示していた。
そんなバカなと思って窓に顔を近づけてみると、何本もの木の枝がこの車体に絡みついていた。
この枝が自分たちを……信じがたいことだが、助けてくれた、らしい。
(一体、何がどうなってるんだ……?)
「どうかしたの……兄さん……」
床の上で上半身を起こして怪訝そうな顔をするLily。その時、後方の窓ガラスが割られて、一匹の野生動物とも妖怪とも妖精ともつかないが
とりあえずかわいい生き物が入ってきた。
その緑色の生き物は目を丸くする兄妹に向かってこう言った。
「ねえねえお兄さんたち、僕のおじいちゃんを殺した人を知らないかなあ?」
【一日目・5時00分/埼玉県/天候・雨】
【KAITO@VOCALOID】
【状態】疲労(中)
【装備】ヴォーパルソード@テイルズオブシンフォニア
【道具】支給品一式
【思考】
1.キッコロを警戒
2.生きて家族に会いたい
3.東京へ向かう
※七期とは別人です。
【Lily@VOCALOID】
【状態】軽傷
【装備】なし
【道具】支給品一式
【思考】
1.キッコロを警戒
【キッコロ@愛地球博】
【状態】健康
【装備】不明
【道具】支給品一式
【思考】
基本:おじいちゃん(モリゾー)を殺した奴を見つけてお仕置きする
※穴抜けの紐×2は車両内のどこかに落としています
【股尾前科@重大事故仮想再現VTR 死亡確認】
【股尾前田@重大事故仮想再現VTR 死亡確認】
最終更新:2011年02月09日 00:54