俺は絶望を知っている。
騒がしいガキと、時々ハッスルするジジイの絶望も知っている。
ある男の生前の三つの絶望を知っている。
俺の位置は真ん中、二つ目の絶望。
愛してくれた家族を失い、それでも希望に縋り生き続けた先で、愛する人を失った絶望。
俺の背に乗る少女は、若くしてすでに俺の位置まで絶望を味わってしまった。
家族が多い分、家族を深く愛し、愛されていたからこそ一気に二つの絶望が襲い掛かった。
そしてさらに、つい先程まで話していた仲間を失う絶望も知ってしまった。
俺には四つ目、この少女には三つ目の絶望。
俺は元々戦いの中に身を置いていた。だから人の死にはある程度耐性がある。
だが、こいつは一般人だ。人の死はおろか、ろくに血を見たこともないだろう。
そして絶望の密度も普通ではない。家族と楽しく暮らしていた時から、まだ半日も経っていないのだから。
俺はこいつを護る。あいつらの遺志だからというだけでなく、俺の意思でも護る。
俺の知る最後の絶望には到らせない。これ以上の絶望を与えてはならない。
まだ、家族が残っているのだから。
「ハクお姉ちゃん!?」
「あれがお前の姉か。そうなると、隣に乗っているのが……!?」
そうだ。これ以上の絶望を与えてはならない。
だが、すでに深い絶望を味わった。そう簡単に新たな絶望が生まれるわけがない。
だから、あれは俺の見間違いのはずだ。
あれほど再会を心待ちにしていた妹に向けて、姉が銃を構えたなど。
在ってはならない。よりにもよって、家族を誰よりも愛しているこの少女に対して……
『家族に裏切られる絶望』が与えられるなど、在ってはならない……っ!
「リンッ……伏せろ!」
何が起きたのか、わからない。
とにかく、前から走って来た車にハクお姉ちゃんが乗っていて。
お姉ちゃんがこっちに何かを向けてきて。
プラシドさんが伏せろと叫んで。
次の瞬間には、乾いた音が響いて、プラシドさんが倒れた。
乱れた天気のせいで路面の調子が悪いと速度を下げていたけど、それでも私は投げ出された。
身体中が痛い。けど不思議と気にならない。
お姉ちゃんの乗っていた車はもう見えなくなっていて、私の視界に入るのは倒れたプラシドさんだけ。
「プラシドさん!」
「ぐ……リ、リン……無事か……?」
そこで私は見てしまう。プラシドさんの体にあいた三つの穴を。
いや、本当はお姉ちゃんが何かを……拳銃を向けてきた時から理解はしていた。
ただ、認めたくなかっただけ。
でも、現実にプラシドさんは……私を庇って、ハクお姉ちゃんに撃たれたんだ。
そのショックよりも、私は自分の情けなさに涙が出てきた。
私は、誰かに護られてばっかりだ。
いつもの生活では、優しいお兄ちゃんとお姉ちゃんに護られて。
この世界に来てからも、システムさんに護られてから今に至るまで護られっぱなし。
そして、みんな倒れて、死んでしまった。未だに実感が持てない、人が死ぬということ。
ミクお姉ちゃん達とまた一緒に歌いたかったけど、もう歌えない。
違う世界のネルお姉ちゃんの歌も聞きたかったけど、もう聞けない。
システムさんの言っていたおかしな世界のお話も聞きたかったけど、もう聞けない。
ラグナさんとエリスさんが言っていた黄金色の野菜のお話も聞きたかったけど、もう聞けない。
プラシドさんがやっているカードゲームのお話は……まだ聞ける。
「プラシドさん、しっかりしてください!今、どこかの病院へいきますから!」
前にプラシドさんが言っていた。誰かに依存するだけでなく、自分にもできることを考えろと。
護られてるだけじゃ駄目なんだ。私にできることを……
「そこまでよ!」
「!?」
突然、リン達のもとに紫髪の魔女が現れた。
「反逆者プラシド……本部から殺害許可も降りてるわね」
「だ、誰ですかあなたは!」
「アンチ連盟よ。あなたは無関係だからおとなしくしてなさい。
全く、前期は親友の私を差し置いて、レミィばっかり活躍して目立っていたみたいじゃない。
妬ましい限りだわ。でも、こうやって手柄をコツコツ貯めていけば、病弱な私もいつかは……」
アンチ連盟の刺客、パチュリー・ノーレッジは思わず言葉を失った。
意識を失っているであろうプラシドにとどめを刺そうとしたら、
鏡音リンが彼の持っていた剣を震える両手で握り締めて立ち塞がったのだから。
「……やめときなさい。あなたには人は殺せやしない」
「私は……お姉ちゃんやお兄ちゃん、家族のみんなが大切……
でも……!この世界で知り合って仲良くなった人たちも大切なの!
護られるだけじゃ駄目……私も、大切のものを護るために戦わないといけないの……!」
剣など握ったことのない少女に、人を殺せるわけがない。
持っている剣は、熟練の剣士でも扱いの難しい軍神の剣。
だから、完全に油断していた。
目の前に迫る刄を見ても、パチュリーはまだ現実を理解できず、そのまま切り裂かれた。
【パチュリー・ノーレッジ@東方Project 】死亡
「はぁ……はぁ……」
血だまりに沈んだ屍と、初めて人を斬った感触が手から離れず、リンはボロボロと涙を流す。
その涙の中にはきっと、ハクが自分たちを撃ってきた悲しみも含まれているだろう。
しかし、その眼には確かな決意が宿っていた。
自分が決めた道。絶望に震えるのではなく、絶望に立ち向かう茨の道だけど。
もう後戻りはできない。
「護られてるだけじゃ駄目……私も、プラシドさんやみんなみたいに……
殺し合いを止めて、大切な人たちを護らなきゃ……
……たとえ、本当にハクお姉ちゃんが殺し合いに乗っていても…………止めてみせる……!」
【一日目・9時15分/神奈川県/天候・雨】
【プラシド@遊戯王5D's】
【状態】気絶、ダメージ(大)、決意、サイクロン号と合体中
【装備】サイクロン号、機皇帝ワイゼル∞(スターダスト、防衛白コア入り)
【道具】支給品一式
【思考】
基本:世界の破滅の根源であるニアラを消す。アンチ連盟も。不動遊星は保留。
1:…………
2:リンを防衛し、絶望の道を歩ませないようにする
3:速い男(クーガー)を警戒
4:ミクトランは許さない
※神龍ニアラがシンクロモンスターだと思ってます
※7期の世界を知りました
【鏡音リン@VOCALOID】
【状態】ダメージ(中)、疲労(中)悲しみ、決意
【装備】覇邪聖皇剣、その他不明
【道具】支給品一式、その他不明
【思考】
基本:生き残り、家族と再会する。
0:プラシドを治療できる場所を探す
1:プラシドと一緒に行動する。
2:護られるだけではなく、自分も戦う
3:ハクの真意が知りたい。やむを得ない場合は戦う
※7期とは別人です。
※7期の世界を知りました
最終更新:2011年02月19日 17:10