「そろそろ、出発するぞ。光太郎の話だと、この近くに彼の拠点である宿屋があるはずだ」
ヒイロが、宗介が、ティアが同意しつつ立ち上がる。
しかし、
キョンだけは座ったまま動かなかった。
「キョン?」
「……一人にさせておいてもらえますか」
「ここで一人でいるのは危険だ」
「いいんです、俺のことは。……大丈夫です、自殺とかはもう考えないんで」
全然大丈夫に見えない。虚ろな目で、心ここにあらずといった様相だった。
しかし大切な人を失ったキョンの背景を考えると、一同はかける言葉が出てこない。
そんな中、ティアがキョンの前に出る。ほんの一瞬、悲しげな表情を見せて。
「いい加減にしなさい。いつまでも悲しんでいる暇はないわ」
有無を言わさぬ、一喝。
「こうしている間にも、私達は何処かから誰かに狙われているかもしれない。
今は感傷に浸ってる場合じゃないのよ」
「……悲しんじゃ、いけないっていうのか」
だが今のキョンには、強引な誘導はかえって逆効果だった。
先程までの死んだも同然だった声に、僅かながら怒気が含まれる。
「自分の大切な人達が殺されて、それを悲しんじゃいけないっていうんですか」
「時と場合を考えなさい。今も殺し合いは続いているのよ」
「……俺には、あんた達みたいに割り切れない」
「甘ったれないで!ここに敵が襲ってきたらどうするの!?殺し合いに乗った敵が現れたら!?
あなた、戦える!?あなたに何ができるの!?置かれている状況を考えてから物を言って!」
「……ッ」
キョンにも、ティアの言っていることが間違っていないことはわかる。
だが、理屈と感情は別だ。だからと言って、悲しみを抑え込むことなどできはしない。
「そこまでにしておけ、ティア」
泥沼になりかけた所に、ヒイロが割って入った。
「キョン。お前のその感情は自然なものだ。抑える必要などない」
「……」
「だが……かつて悲しみと怒りに囚われ、取り返しのつかない過ちを犯した者を知っている」
「……そんな人のことを言われたって困る」
「今はわからなくていい。ただ、お前のその悲しみに飲み込まれるな」
「……」
キョンは押し黙る。
今は……これから先もわかるような気がしない。その前に自分の心が潰れるような気がする。
ただ、それでもヒイロの言葉から少なからず気遣いらしきものを感じ、キョンはそれを口にすることはしなかった。
「わかってますよ……行けばいいんでしょう、行けば」
半ばやけくそ気味にそう言い放って、キョンは歩き出した。
「行くぞ……どうかしたか」
自分に対し、物珍しい視線を向けてくるティアに、ヒイロは尋ねる。
「い、いえ……あなたがそういうことを言い出すとは思えなかったから……」
「感情のままに動くことを、俺は否定しない。それだけのことだ」
「……俺も、その考えには肯定する」
ヒイロの言葉に、宗介も同意する。
彼らの脳裏に浮かぶは、それぞれの大切な人か。
「せっかく東京まで来て、お客さん呼べると思ってたのに!
どこまでもうちの営業を妨害するつもりね!あの変態主催者、許せないわ!!」
「わかったから落ち着いて。それと目のやり場に困るから歩き回るのは……」
せっかく着いた東京を離れる羽目になり、下着姿のままで怒り狂うリッカと、彼女を宥めるルイージ。
そんな光景を、カウンターの隅でマーニャが他人事のように眺めていた。
「それより光太郎とフォルカ遅いなぁ。一体どこまで行って……」
そんな時、宿屋に4人の男女が入ってきた。
宗介が警戒しながら中を見回し、ヒイロ、ティア、キョンと続く。
「この建物……光太郎の言っていた宿屋か」
「あ、いらっしゃい……」
「いらっしゃいませぇぇぇ!!!!」
ルイージの声を遮って、リッカが目を輝かせながら彼らのもとに駆け寄った。
「すごい、お客さんが一度に4人も!大変、早く部屋を用意しなくちゃ……」
「え?いや、お客さんって……」
「いらっしゃい、お客さん!!大丈夫、うちの宿はサービス満点ですよ!
さあさあ、お荷物お持ちしますから!ゆっくり休んでいってくださいね!」
「……何だこの女は」
呆気に取られるヒイロ達をよそに、活き活きとした笑顔で接待するリッカ。
ヒイロと宗介の荷物をふんだくり、そのまま二人をエレベーターへと連れて行く。
「お、おい……!?」
「私はこっちの陰気そうな二人をお部屋に案内するから!
ルイージさんはそっちの彼とお姉さんをお願い!」
「……はいはい」
口早に捲し立てながら、リッカはヒイロと宗介を客室へと連れて行った……
「お客さん……?彼女は何を言ってるの?」
「ごめんね、ちょっと彼女の宿屋ごっこに付き合ってあげて」
唖然とするティアに、ルイージは溜息をつきながら言った。
「それじゃ、夕食まで時間がありますから!それまで、どうぞごゆっくり!」
二階客室。
リッカが部屋を出て行くと、一気に静けさが立ち戻る。客室には、ヒイロと宗介だけが取り残された。
「……何なんだ、彼女は?これは何かの罠か?」
「わからん。ただ、サービスは行き届いているようだ」
部屋を見回す。細かい所まで綺麗に掃除され、居心地の良さを感じさせた。
リッカも、勢い任せのように見えて接客サービスは完璧だった。ホテルとしては一流と言えるだろう。
「罠と言うには敵意がなさすぎる。ここを教えてくれた南光太郎にしても、特に怪しい所は見られなかった……
無論、警戒を怠るつもりはないが」
「フロントには他にも二人いたな。緑のヒゲの男と、褐色肌の女だ」
「緑のヒゲのほうは、第一印象に限れば特に危険性はなさそうに見えるが……
輪から外れていた女のほうには、気をつけておいたほうがいいか」
南光太郎の仲間達と合流することで、頭数は一気に揃った。だが、彼らの全てを信用するにはまだ至らない。
二人は今後の行動について検討する。
「これからどう動く?名古屋での結果を見る限り、これ以上のハッキングでの情報収集は難しいだろう」
「……ならば、違う切り口から調べる。キョンとティアが迷い込んだという世界……
そこから、何らかの手がかりが掴めるかもしれん」
「電脳世界か。そこに迷い込んだ二人は、次の放送で死者として名前を呼ばれたんだったな」
「それは、二人が行ったその世界が、主催の手が届いていない可能性があることを示している。
断定はできないが……調べてみる価値はあるだろう」
新たな目的を設定し、ヒイロはその鋭い目を光らせた。
【一日目・16時00分/神奈川県・リッカの宿屋2階客室/天候・真夏日】
【相良宗介@フルメタル・パニック!】
【状態】健康、上半身裸
【装備】ショットガン、手榴弾×2
【道具】支給品一式、レーバテイン@フルメタル・パニック!
【思考】
基本:バトルロワイアルの破壊とかなめを探す。
1:電脳世界についての情報を収集する
2:クライシスの怪人ラミア、怪魔妖族不気ーポップを警戒する
【ヒイロ・ユイ@新機動戦記ガンダムW Endless Waltz】
【状態】健康、パンツ一丁
【装備】拳銃
【道具】支給品一式、ウィングガンダムゼロカスタム@新機動戦記ガンダムW Endless Waltz
【思考】
基本:バトルロワイアルの破壊とリリーナを探す。
1:電脳世界についての情報を収集する
2:クライシスの怪人ラミア、怪魔妖族不気ーポップを警戒する
※レーバテインとウイングゼロは宿屋の外に停めてあります
「そうか、光太郎と出会ったのか。えーと……メシュティ……なんだっけ?」
「メシュティアリカ。……ティアでいいわ。
それで……あなたの言った楠舞神夜さんだけど、最初の頃に一緒に行動していたわ」
フロントでは、ルイージとティアが情報を交換していた。
少し離れた席にキョンが座り、さらに離れたカウンターの隅の席でマーニャが彼らを眺めていた。
「そうなのか!それじゃ、今彼女はどこに!?」
「あなた、彼女の知り合い?あなたのような人がいたなんて、彼女から聞いてないけど」
「ああ、それは……」
ルイージはそれまでの経緯をティアに説明した。
ハーケンの死を看取ったこと、アシェンの裏切りを――
「というわけで、彼女を探してたわけなんだけど」
「……彼女に会って、どうするつもりなの?」
「え?」
ティアの口から返ってきたのは、冷め切った言葉だった。
「どうって……ハーケンの言葉を伝えなきゃ」
「それから、どうするつもり?彼の恋人への謝罪だけを伝えて、それだけなの?」
「……できることなら、力になりたいと思ってる。
アシェンのこともあるから、何もせず放っておくことは……」
「……あなた、何もわかってないのね」
「え……?」
自分なりの決意を口にしたルイージに向けられたのは、呆れすら含んだ冷たい視線だった。
「神夜さんとハーケン・ブロウニングのことを、あなたは何を知っているというの?
二人だけじゃない。アシェン・ブレイデルや錫華姫についても。彼女達のことを、少しでも理解できているの?」
「理解って、それは……」
「それがないなら、あなたの考えていることはただの傲慢でしかないわ」
一蹴。あまりにもあっさりと、ルイージの決意を斬って捨てた。
「時と場合によるけど、事情も知らずに、他人のことに首を突っ込むものではないわ。
特に、恋人を失って悲しむ人の心に土足で踏み込むのは、あまりにも無神経じゃないかしら」
「土足って、僕はそういうつもりじゃ……」
「あなた、ハーケンからあの二丁の銃を託されたと言ったけど……
それがどういう意味か、遺志を受け継ぐことがどういうことか、わかった上で受け取ったの?」
「意味……?」
容赦のない言葉に、返答に窮するルイージ。だがティアは追求を緩めない。
「あの銃を、他の誰かに向ける覚悟があるの?
それは同時に、このバトルロワイアルでは人を殺す覚悟でもあるわ。
他人の命を、可能性を奪う覚悟が。そして奪われる覚悟はあなたにある?」
「僕は殺し合うために受け取ったんじゃない!」
「甘いのね。そんな自己満足で、誰かの心に踏み込む資格はないわ。
今のあなたじゃ、逆に神夜さんを傷つける……そんな可能性を孕んでいるのよ」
「傷つける……?」
ティアは大きく溜息をつく。
「あなたにはわからないでしょうね。大切な人を失った者の悲しみを」
――気まずい沈黙。
ちっ、と誰かが小さく舌を打った。
ティア達から少し離れた席に座っていた、キョンだ。
「……知った風な口を」
「キョン、何か言った?」
「いいえ。別に何も」
返すキョンの態度は、露骨にふてぶてしかった。
その態度に、ティアが言い返そうとした時――
「お客さん、お待たせしました~!!……あれ?何、この空気?」
場違いなリッカの明るい声が、空気をぶち壊した。呆気に取られる他の面子。
しかしそんなことお構いなしとばかりに、リッカはティアとキョンを連れて行く。
「さあさあ、お客様二名ご案内!すぐにお部屋を用意しますから!」
「ちょ、ちょっと!?」
「あ、お二人は個室のほうがいいかしら。大丈夫!部屋ならいっぱいありますからね!」
有無を言わさぬ勢いで、二人を部屋のほうに案内する。
なすがままに、ティアとキョンは連れられて行った。
「あんた、言うじゃない」
ティア達がエレベーターに乗ろうとした時、ちょうど近い席に座っていたマーニャが、声をかけた。
かけた相手は、無論ティアだ。
「……私?」
「他に誰がいるのよ。別に何か言おうってわけじゃないわ。あんたの言ったことは正論だし」
「……」
「まあ、あんたが何をムキになってるのか、過去に何があったか知らないけどさ……
だけど、言うなら少しは言葉選ばないと……逆に潰す事になるわよ。あいつも、そしてそっちの子もね」
「……」
エレベーターの扉が開き、ティアはリッカに中へと急かされる。
ティアとマーニャの会話は、そこで途切れた。
扉が閉まり、フロントにはルイージとマーニャだけが残された。
「甘い、か……確かに、そうかもね……」
ルイージは、ハーケンの銃を手に取る。
人の可能性を絶つ、その得物の重さを改めて感じ取る。
自分に、この重みを背負えるのだろうか。
いや、そんな考えが彼女の言う、傲慢な自己満足だというのか。
「……そうだとしても、僕は……」
――もし、兄さんだったら、彼女の言葉にどう返したのだろう。
(私が……ムキになっている?)
ティアとて、大切な人を失う辛さを知らないわけではない。むしろ、痛いほど知っている。
かつて彼女は実の兄と戦い、討った。そして……
大切な人――ルークも、彼女の前からいなくなった。
だからこそ、ルイージが許せなかった。
彼女はルークがいつか帰ってくることを信じている。
だがそのことについて、ろくに知りもしない人間に図々しく口を出されてはたまらない。
それと同じことが、神夜にだって言えるはずだ。
力になろうだの、遺志を継ごうだのと、安易に口にするあの男が気に入らなかったのかもしれない。
だが、それはお互い様だ。
ティアにしても、ルイージが兄の死に葛藤したことを知らない。
自分の中の複雑な感情に整理をつけ、死を乗り越えて進もうとしていることなど考えてもいなかった。
キョンに対しても、あるいはこの場にいない神夜に対しても……結局は自分の考えを勝手に押し付け当てはめているに過ぎない。
ヒイロがキョンに言った言葉――悲しみに飲み込まれるな。
ティアは気付かない。自分が悲しみに囚われていること、それにより感情が張り詰めていることに。
……もっとも、今回のカオスロワでは、参戦の時間軸の違いのせいか。
ルークは長髪時代で参加し、しかもドバイでメタな思考と共にバカンスを楽しんでいたりするのだが。
【一日目・16時00分/神奈川県・リッカの宿屋/天候・真夏日】
【ルイージ@マリオシリーズ】
【状態】健康。覚醒 やや鬱
【装備】ハンマー、ナイトファウル、ロングトゥーム・スペシャル
【道具】支給品一式
【思考】基本:
ゲーム破壊
1:……。
2:アシェンを追い、決着をつける
3:楠舞神夜を探し、ハーケンの遺言を伝える
【リッカ@ドラゴンクエスト9】
【状態】健康 下着姿 上機嫌
【装備】リッカの宿屋
【道具】支給品一式
【思考】基本:宿屋を繁盛させ、対主催の拠点にする
1:ティア達を接待する
2:ルイージ達と共に行動
【キョン@涼宮ハルヒの憂鬱】
【状態】罪悪感、精神疲弊、憂鬱、自暴自棄。上半身裸
【装備】なし
【道具】不明
【思考】
1:…………
2:ティアに不快感
※人に会ったら『ジョン・スミス』と名乗る
【ティア・グランツ@
テイルズオブジアビス】
【状態】健康、レオタードのみ
【装備】ナイフ
【道具】支給品一式 その他不明
【思考】 基本:殺し合いからの脱出
1:知り合いを探す
2:キョンを励ます
3:ルイージに苛立ち
※ED、ルーク帰還前からの参戦です
【マーニャ@ドラゴンクエスト4】
【状態】健康、すっからかーん
【装備】タンクトップにショートパンツ
【道具】支給品一式、ふんd……踊り子の服
【思考】基本:どんな手段を使ってでも生還する
1:ルイージがほっとけないから、とりあえずしばらく面倒見てやる。
2:アシェンを危険視、錫華が心配。
3:自分のスタンスに若干の疑問。
最終更新:2011年03月10日 00:37