アットウィキロゴ
月夜の公園に獣がいた。
彼女が食らうは人の肉、既に辺りにいくつもの屍が転がっている。
それでも食い足りないかと示すように、獣はけたたましい雄叫びをあげながら、その牙を光らせる。
今宵も新たな獲物を求め、飢餓を満たすべく月下の街へと駆けていく。


「はぁ・・・・・・はぁ・・・・・・」

女は走る。
後ろを振り向くことも無いまま、桃色の髪をたなびかせて走っていた。
女は侵入禁止の立て札も無視して花壇の中を足を踏み入れていく。


女は走る。
餌になってしまった者達へ謝罪の言葉を述べながらも、
自身が同じ道を歩まぬようにと突き進む。

「ごめんなさい」

息を上げながらも、女はまた言い直す。
涙で顔を濡らしながら、震えそうな足に鞭を打って走っていた。

「ごめんなさい」

三度目、自分自身に対する弁明が告白される。
女、巡音ルカは逃げていた。
かつて姉と呼んでいた者から、そして彼女が殺してしまった人達から逃げていた。
ルカにとって、MEIKOは愛している家族の一人であった。
いや、愛していたのはルカの方だけだったのだろう、彼女はそう確信していた。

(私がちゃんとしていれば、こんなことにはならなかったのよね・・・・・・)

ルカは、北海道に住む6人暮らしの次女として、彼女は生を受けてきた。
歌手の兄と姉がいて、彼らに勧められて自分もプロとしてのデビューを果たした。
妹達と弟は、姉の就職を喜んでくれた。
兄達も自分が頑張れるように、様々なアドバイスをしてくれた覚えがある。
近所からうらやましい家族だと言われたことは、まだ記憶に新しい。


(MEIKO姉さん・・・・・・ごめんなさい)

心の中で、再び姉に向かって謝る。
MEIKOは周囲の人間から姉貴分だと慕われていた。
ルカや、幼い妹、弟達に優しさで報いていた。
しかし、MEIKOという人間は本来そのような人間では無い。
早くして親を亡くしたルカ達をKAITOとともに育てていた彼女は、彼らをどう思っていたのだろう。

(もっと早く気づいてあげれば良かった。 もっと私が頑張っていれば良かったのに・・・・・・)

MEIKOがルカ達に愛情を注いでいたように、彼女もまた愛を欲していたのかも知れない。
ルカはいつしか、MEIKOが自分達に向ける愛情に、どこか空虚な物だと受け止め始めていた。
例えるなら会社で気に食わない上司に向かって挨拶するような、形だけの空っぽの物。
気づいた時にはもう遅かった。
殺し合いが始まって早々見つけた彼女は、憎悪で人の命を貪る悪食な獣へと変化していた。

(ごめんなさい、何もできなくて・・・・・・)

MEIKOを見た時は、彼女に対する恐怖だけがルカを支配していた。
だから今は、彼女からこうして逃げている。
しかし、MEIKOを説得できたかも知れない、そうすれば殺された人達も助かったかも知れないと思うと、
彼らが自分を責めてきているような気がして、自然と涙が流れていった。
恐怖が洗い流されていくと、後にMEIKO達への謝罪の念だけがルカの中に残っていく。
それを誤魔化すかのように、公園を抜けた今もこうして街中を走っているのだ。
やがて、彼女の視界の中には小さな人影が入り込んでいた。





「うがーーーーー!!! 何処の命知らずかは知らんが、余計なことをしおって!」

ラハールは怒っていた。
とある惑星を魔界として長年統治してきた魔王である自分が、どうして人間達に従わされなければならない。
人を遥かに超える寿命を持ち、絶大的な力を持つはずの悪魔が、何故自分を殺し合いに放り込むできたかという疑問もあったが、
今彼の中を支配している憤怒に比べてみたらどうでも良かった。

「これはどうしたことだ? 力も思うように出せん。 これもやつらの仕業なのか!?」

一度この星を破壊しようかと思ったラハールであったが、魔力が一定以上出せないことに気づき断念した。
どうやら参加者全体にパワーセーブをかけているらしく、彼自身も本来の力を引き出すことができなくなっているのだ。
主催者、それも人間に良いように扱われる屈辱が積み重なり、ラハールをさらに奮わせる。
そして怒りを内に留めることができなくなったのか、彼は目に映る物を手当たりしだいに破壊し始めた。





(誰だろうあの子)

ルカの視界に入った少年は、パンツ一丁に赤いマフラーと非常にラフな格好をしていた。
夏場といえど、海水浴場にマフラーをつける物はいないであろうと、青い髪の少年を観察し始める。
まず目につくのは、頭から生えた二本の触角。
青い髪から突き出るそれは、昆虫図鑑で見たことがある何かの虫だと連想させる。
そして次にルカが注目したのは、彼の耳だ。
妹達がやってたゲームに出てくる『エルフ』のような尖った形をしている。
だが、少年は目を尖らせて如何にも悪そうな人相をしているため、悪魔のような少年だと印象付けた。

(うわ!? 暴れ始めた)

少年は拳を掲げたかと思うと、その手で付近の住宅を殴りつけたのだ。
さらにその家の屋根を突き破り、そのまま両手を空に翳し、上空にいくつもの光弾を作り出していく。

(え?)

両手が前に差し出された瞬間、光玉は地面や建物と衝突して爆発していく。
そして辛うじて原型を保っていた家に、少年は滑空してパンチを放つ。
いくつものコンクリートが爆ぜていく中、ルカは逃げることも忘れて、目の前の光景に驚愕を隠せなかった。
漫画やアニメでしか見たことのない超人が、実際に暴れまわっているのだから。
もしかしたら、少年は奇人でもコスプレイヤーでもなんでもなく悪魔なのかも知れない。

(化け物・・・・・・!)

ルカは、MEIKOとは別のベクトルで危険な存在だと少年に対する認識を改める。
彼は未だに破壊活動を続けているが、特定の物を標的にしている様子はない。
目に映る物全てをとりあえず攻撃しているだけだ。
八つ当たりにしか見えない少年の奇行に、ルカは言い知れぬ恐怖を感じていた。

(これで殺せるかな?)

支給品である銃を取り出す。
汚れ一つ無い綺麗な銀色をしていたが、
手にかかる重量が、それが殺すために作られた物だということを認識させる。
撃たれれば人間ならばまず生きていられないであろう。
しかし人外ならばわからない。

(逃げる? それとも戦う?)

少年はルカの目から見ても明らかに危険人物、このままでは自分の家族にも被害が及ぶかも知れない。
少なくとも、比較的ここから近くにいるMEIKOが殺されてしまう可能性は非常に高い。

(戦っても勝てる見込みは少ない、でも・・・・・・)

歌以外に取り柄のない一般人、それが巡音ルカだ。
実は狙撃の練習をしてきたとか、武道に心得があるとか、そういった経歴は決して持ち合わせてはいない。
ここで逃げれば命は助かるであろう。 だが、公園での記憶が撤退を阻害させる。
逃げた場合、あの少年は自分を見失っているMEIKOに襲い掛かるかも知れない。
自分が動かなかったせいで、また誰か人が死んでしまうかも知れないのだ。
しかし、誰かを救えるかも知れないという可能性が、返って自身を窮地に追いやることを、彼女は身をもって知ることとなる。




「おい貴様」
「!?」

今さっき聞いたばかりの声が耳に入ってくる。
ルカが顔を上げてみると、そこには紛れもなく悪魔のような、いや本当の悪魔、ラハールが腕を組んで立っていた。
反射的に銃を構えるが、ラハールはそれよりも早く彼女の銃を蹴り上げた。
ルカの視線が空へと向けられる。
慣性の法則にしたがって落ちる銃を目で追いかけていくと、自然とそれはラハールの手に収まった。

「何をしていた?」

ラハールの声に、ルカはその場へと崩れ落ちる。
彼女は目を丸くして、自身へと向けられている銃口を見つめている。

「さっさと答えろ!」

体を震わせ、その場に黙り込むルカに苛立ち、ラハールは彼女の額へと銃口を突きつけた。
だがそれでもルカは言葉を放つことができずにいる。
罵詈雑言を浴びせるラハールを忘れ、ルカの脳裏には家族の思い出が走馬灯のように流れていた。





『おねえちゃん・・・・・・ぼく、すっごくへんなの・・・・・・』

引き金となったのは、弟の一言からだった。
トイレに行こうと彼の部屋を通っていた最中、呻き声が聞こえたため、
ノックをしてやったことは今でも覚えている。
扉を開けるとズボンを脱ぎ下ろした弟が涙目になって、ルカに泣きついたのだ。
思えばこの日から全てが狂い出したのかも知れない。
それまでも家族間でギクシャクしていたことはあったが、どれも大きな問題まで発展することは無く、
結果的には丸く治まっていた。
しかしこの時弟から受けた相談が、家族達の仲に致命的な変化を齎した。

『ぼくのおちんちんがへんなの・・・・・・
 ルカおねえちゃんたちをかんがえると、おっきくなって、さわるとなんだかへんなきもちになっちゃって、
 おかしなおしっこもでちゃう・・・・・・ぼく、びょうきになっちゃったのかなぁ・・・・・・?』

小動物のように震えた眼差しでルカを見つめるレンに、彼女の心は動かされる。
当時のルカは高校生、レンのいう”びょうき”の正体はすぐにわかった。
男性ならば誰でも経験する、精通という現象だ。
男子が大人へと成長していく上で発生する生理現象であり、学校の教育課程でも習うため、
女性のルカでも知識だけなら知っているのだ。
部屋には男子特有の烏賊の香りが充満しており、彼のパンツや手を白濁液が汚している。

『おしっこいっぱいでたけど、とまらないんだ・・・・・・
 ねえおねえちゃん。 ぼく、だいじょうぶだよね・・・・・・?』
『え、ええ大丈夫よレンくん』

今にも泣き出してしまいそうなレンを、ルカは必死に慰める。
それは男なら誰でも経験することだ、だから悪い病気ではないし、放っておいても害はない。
とにかくルカは、レンに必死に大丈夫だと諭し続けたのだ。

『じゃあどうやったらおさまるの?』 
『そ、それは・・・・・・』


ルカは後に続く言葉を失う。
こういった生理現象はルカ自身も覚えがあるし、たまに”一人でする”ことはあるのだが、
そうすること以外に解消する術を知らない。
だから思わず口に漏らしてしまったのだ。



『その・・・・・・エッチなことをいっぱいすればいいと思うわ』



ルカの答えは決して間違ってはいなかった。
一説では、昔から男は吐き出せない性欲を運動に昇華しているが、結局は個人の性欲の度合いによって異なる。
周りの目を気にせずに済む状況であれば、一々筋トレをする人はそれほどいないであろうし、
何より発散後の気持ち良さを知っている。
ならば快楽を優先させればその内消えていくのだ。


『エッチなこと・・・・・・? わかった!』
『え? ちょっレンくん!?』


答えを聞いたレンは、目を輝かせてルカに抱きつく。
そしてそのまま、彼女の胸を揉みしだき、服に手をかけた。
ルカは一つ大きな過ちを犯した。
彼女の返答はベターな物ではあったが、レンの性欲を計算に加えていなかったのだ。
何度も射精を繰り返しても未だに衰えぬ精力は、ただの○○○ーで解消できるものではなかったのだ。

『あいしているひとたちはエッチなことをするって本にかいてあったんだ!
 ぼく、ルカおねえちゃんのことだいすき!』
『レンくん、何を言って・・・・・・いや!』

口では抵抗するも、ルカは動くことも無いまま服を脱がされていく。
パジャマが投げ捨てられ、ブラジャーがレンの手元に舞い降りる。
そして













         _,、=:ニ;‐、、--――‐y、,_     ,,r;;;;''''=―--、、,_
       /´  ヽ,ヽ,.゙'l,.゙Y;--',r'゙'ヾ;'V.j   /∠,,.r_;'゙-‐-,<゙゙ヽ,'i、'‐、,
      ./_   .,,_j ゙l l,. Y/゙'ヾ、;、ノ,r;'|  /jフ,r-、ヽ、  _,,>.゙'ー;゙' ーi,. |'i,
      j.ヾ!  ト‐! | .| .|,_ ./,.〈. 〉| ./ .(゙   _>゙'゙ r''゙´'i,゙l, ,j レ! .|:|
      .|il,  __  j .j゙ .l  ト,゙',/ j.゙ r;| .レ'゙‐ニ'゙r''゙´ .゙l,ヽ,. ,ノ ゙ r''1.jノ
      .|.l,゙l, ゙ー゙.ノノ  / / ゙l ゙l,ヽr',r'l ゙;| .ト、,. /./´゙ヽ;.、 ノ ,゙rッ  .,Y';V
      | l,.゙ヽ--'゙ ,ノ  /  l, ゙'゙,,.l, ,j ゙| l,ヾ,、--、,,,、'_, r''゙ l   / li,;)
      l,. ゙'i,  /  ,rシ-、,ィ) l,゙i,V/゙j゙ /゙,,、、、,_  ゙\!.レ゙  .| Y゙
       ゙l゙i,・ヾi, ,/ィl、・_ノ ,;:: ゙シ'i.l,ノ ./゙    \  ゙Y:   .l /   待たせたね君達。
       | `ラ´゙'''´ ''"'´  .|  |:.r'`V'''" ̄`゙ヽ、  ゙'i,  |.   ' /
       ゙'i,         .j  |./ ∧、, ゙̄ヽ、. \ ゙l. |\ ./      キング・クリムゾン、エロ描写は吹き飛ばす!
        ゙i,. r、,,,.、,_   / ノメ、 .j |ヾヽ,゙'ー---‐'ヾ-、,‐'
         .゙i,ヾ'-'ニワ.  / ./ノ .V j゙ |'i,. ヽ;-‐-、,_::::__ ::..>
        /:::l,〈`   //‐'´ ./.ヽ/ .j.ノ  .:ヾ、;:) ゙'i    `ヽ、
       /::::::::|ヾ‐;<;/__,、r'´ ./ .)='゙  ..::  ,ソ  .(:: _,,r‐''゙⌒`゙ヽ、,
      / l;::::::::::Y゙人゙l;:.    .,/,r'ニ゙   _,、r''´  ..:: ゙ヾ、     ::  ヽ,
     l  /,r:| j‐゙''l; ゙ニー‐'゙ (`l.(_,r‐'''゙´__,, ....:::::   .`ヽ、,....:::::..   ゙l,
     .!. .l゙l゙レ'>‐゙ | ト;゙i,l、ノ,r;;'ニ゙/´゙Y .,r'゙ ̄    .....::::::::::::::::::::::::.゙ヽ、:::    l,
     | 'ー;l.'i,.l゙  ,j 'シ'‐-ヘ;'V゙./  ゙l, ヽ, ......:::            ::::..ヽ,   ゙l
     .|._,rラl,.|  / ,i l,   .ノ , ゙i,   .゙ィ,.レ'                :.゙l,  .|
     / / ゙l l,゙l,/./ .l, l, ././ .゙l,゙l、  /.,ィ´ ,.r ヾ,            .:l, j゙
   .,rl´.'-‐ニ, .,、 L,,,,,゙l, V /   ヽ,゙'´/.|  .l゙/;=iミ;゙'i,. [        .:::::::::::::::Y゙
  .,r',、 「゙´  | .| jヾ、--、ヾl,    /,、 ゙l,.゙l、-';j;ノ::::::゙レ゙lj゙   ........::::::::::::::::::::::::::|
 / ./.| .レ-‐' 'ソ::l,゙l, ./.∧、ヽ、,,/,/,,゙'i,,゙L、‐'゙::/::://     :::::::::::::::::::::::::::::j゙
 レ:'二i .i''゙゙´| .|:::::::)、V.l゙  ゙l,.゙'V /   ゙'i, ゙V゙ /ノ゙ /゙L,___,,,_   : : :: :::::l
..゙T´ .| |  ,.| .|::::::/ ゙'i,゙l,  `i , l,    〉,,.〈/  .ヽ、,,,,,、、-―‐-、ヽ、  ..:: .:/











            • それから、ルカの日常は狂っていった。
暇さえあれば、夜にはレンに抱かれていた。
ずっとレンの性欲を受け止め続けていた。
”ハジメテ”が奪われたが、不思議とレンを拒みはしなかった。
簡単なこと、ルカもレンを愛していたからだ。
愛していたが故に何も出来ず、しようとせず、ただ快楽を享受し続けていたのだ。
そこで終われば幸せだったのかも知れない。

『ミクお姉ちゃん、ぼく、もう・・・・・・』
『レンくん、気持ちいいよぉ』
『レン・・・・・・くん?』

しかしレンの性欲がルカ一人に収まるわけがなかった。
ルカと交わることができない日には、彼は性欲を持て余していたのだ。
だから同じように大好きなミクを襲っていた。
ルカどころか、家族全体が狂っていたと気づいたのはもう遅かった。
気づけばMEIKOやリンはおろか、親戚のハクやネル達までもレンの毒牙にはまっていたのだ。
その時から、MEIKOの家族を見る視線が厳しくなっていた気がする。
その日から、リンの、レンとの関係が一方的な物へと見えた気がする。
バトルロワイアルが無くても、家族が壊れるのは時間の問題だったのかも知れない。



「レンくんは本当は悪くない、全部私が間違えてしまったからなの・・・・・・
 私がちゃんとしていれば、こんなことにはならなかった」
「それで全てか?」
「ええ」

ルカの告白を聞き終えたラハールは、興味を無くしたのかそっぽを向いて歩き始めた。
くだらない。
それがルカの家族に対する、彼の感想であった。
一行に反撃する様子を見せないルカを無害だと判断し、話を聞いてやったものの、
返ってきたのは土産話にもなりゃしない身の上話ばかりだ。
一応、彼女の家族の特徴も聞いておいたが、だからといって彼らを助けてやるつもりなど毛頭ない。
むしろMEIKOという輩は殺し合いに乗っているらしいので、襲い掛かってきたら問答無用でぶっ飛ばしてやる予定だ。

「待って!」
「なんだまだ用があるのか」
声をかけてくるルカに、気だるそうに振り向く。
これ以上足を止めるなら殺すぞ、とばかりに睨み付けたら案の定腰を抜かした。
そして手に持っている銃をルカに投げ返す。

「そんな弱い銃などいらん、邪魔だからお前が持っていろ」

ルカの横にコツンと銃が落ちた。
ラハールはデイバッグから立派な刀を引き抜き、これでもかというほどルカに見せ付ける。
ルカが銃を拾ったことを確認すると、ラハールは再び路上に歩き出した・・・・・・が

「私、どうすればいいのかな・・・・・・」


まだ聞こえてくるルカの声にラハールは歩く速度を緩める。
誰もいないせいか、彼女の声が嫌でも耳に入ってきた。

「愛してる、私はKAITO兄さんやレンくんミクちゃんはもちろん、MEIKO姉さんやリンちゃんだって大好きなんだ」
(愛だと?)

愛、それはラハールが最も忌み嫌う言葉である。
彼はかつて、その言葉を唱えた者のことが大好きであった。
だが、彼女は自分を救うために命を落としてしまった。
もしも愛が無ければ、母が死ぬことは無かったであろう。
後にとある部下によって、それに対する抵抗が緩くなったのだが、
結局その感情は、命を蝕む物であるという認識は変わらない。

「例えどう思われていても、私が彼女達を愛しているのは変わらないよ・・・・・・でも」
「やかましい!」

怒声により、ルカは表情が凍りつく。
ラハールは彼女に嫌悪していた。

「愛してるだと?
 ならばお前は今まで何をしていた?
 ただ嫌われることを恐れて逃げていただけではないか!」
「!?」

ラハールの母は、息子を愛するが故にその命を賭けられた。
ラハールの部下は、愛で全てを解決できると本気で信じており、
誰かに嫌われることさえ問わず、ひたすら愛を訴え続けていた。

「お前みたいな臆病者は隅で震えているのがお似合いであろう。
 わかったら俺さまの前からさっさと消えるんだな!」

だから我が身かわいさに逃げ続けている彼女の言う”愛”がとても薄っぺらい物だと感じたのだ。
今度こそ振り向かずに歩き出す。
すると、ラハールの耳に自分とは違う足音がするのが聞こえ始めた。





『愛してるだと?
 ならばお前は今まで何をしていた?
 ただ嫌われることを恐れて逃げていただけではないか!』

(本当だ・・・・・・)

ラハールの怒声がルカの中でリピートされ続けてる。
確かに彼の言うとおり、彼女は逃げてばかりであった。
関係無い言葉を選んででは言い訳して逃げてばかり・・・・・・自分は一体家族に何をしてあげられたのだ。
レンからの歪んだ愛を、MEIKOからの空っぽの愛を、家族からの愛情を受けていただけではないか。

(私、何もしてないや)

甘えてばかりの駄目な妹、こんなんじゃ姉から愛想をつかされるに決まっている。
涙が溢れてきそうになるが、ぐっと堪えて袖で目元を拭い去る。
家族にしがみ付いていた自分はもうお終い、これからは大好きと言われてあげる番。
立ち上がり、小さくなっていくラハールの背中を追いかけ始める。

「ねえ、いいかな?」

ラハールは答えない。
だけどルカは言葉を続ける。

「私、みんなを探す。
 何が出来るかわからないけど、みんなのために出来ることを頑張って探す」

ラハールの足が止まる。
息を荒げながらも、ルカの口が止まることはない。

「協力してほしいなんて言わない。
 ただ、あなたについて行く。 あなたと一緒の方が心強いから」

つまり『お前と一緒にいた方が死ななくて済むから同行しろ』ということである。
ラハールが単なる危険人物でないとわかった以上、彼と一緒に探した方が、自身も家族も死亡確率が減る。
対して彼自身にルカを連れて回るメリットは無い。 精々お人良しに好かれる程度のものだ。
それは紛れも無く、お前を利用してやる宣言であった。
ラハールの眉間にシワがより、再びルカに向かって怒鳴りかけた。

「勝手にしろ!」












「ラハールくんありがとう!」
「俺さまを呼ぶ時はせめてラハール様、せめてラハールさんにしろ!
 後、俺さまはお前のようなムチムチした女は苦手なのだ!」
(あれ、ラハールさんかわいい)

強気なラハールの意外な弱点を見つけ、密かに微笑むルカであった。


【一日目・00時40分/日本・神奈川】

【巡音ルカ@VOCALOID】
【状態】健康
【装備】ヴァッシュの銃@トライガン
【道具】支給品一式、不明支給品
【思考】
基本:家族を助けたい
  1:ラハールについていく。
※8期までのルカとは何も関係ありません。
※人間です。

【ラハール@魔界戦記ディスガイアシリーズ】
【状態】健康
【装備】秘剣カブラステギ@風来のシレンシリーズ
【道具】支給品一式、不明支給品
【思考】
基本:主催者をぶっ殺して魔界に帰る
  1:ルカが着いてくるのは構わん、だがムチムチした女は苦手だ!
  2:知り合いも一応探してやる。
最終更新:2011年08月18日 10:20