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その時である。
ドスッ!!
鈍器のようなもので斎藤は強打された。

「なっ……何……?」

さらにもう一発強打が斉藤の後頭部を襲う。
そのまま斉藤は崩れ落ちた。

「いやいや死んでませんよね?」

斉藤を後ろから殴った男は急いで脈があるかどうか確認した。

「……まだ生きはありますか、ではお連れしなさい」

鈍器を持った長身の男は側近にそう指示した。



アンゼロットとイシドは日本武道館にいた。
幸いにもここはまだ震災の被害は受けてなかった。

「首尾はどうなってますかね?」
「今全員、ホールに集結させている……最終確認させて特別支給品を渡すだけだ」

2人がそんな会話を交わしている時に電話が掛かってきた。

「おや、ゲーチスですね。そちらの方も抜かりないですか?」

アンゼロットは電話の相手にそう言った。
彼は主催側の人間の1人であるゲーチスである。
プラズマ団壊滅後、潜伏していたところを帝愛にスカウトされたのであった。

「もちろん、そちらの要望で兵庫県に赴いて例の連中をかき集めてまいりましたよ」
「ご苦労様です。文人も月島さんや他のジョーカーも多忙であなたが快く引き受けてくれたのは助かります」
「もうすぐ武道館へ到着いたしますが、それより面白い土産話も二つほどついでに……」
「なんですかそれは?」



長身の男ことゲーチスは武道館へある一団を連れて足を踏み入れた。
ゲーチスが連れて来たのは姓名判断士の被害者の皆さんだった。
アンゼロットは彼らも戦力として組み込もうとゲーチスに頼んだのだ。

「あたし達の名前を変える方法があるって本当ギョラ?」
「とにかく早く案内しやがれっ!」
「まあそう慌てずとも……さあ付きましたよ」

そこにはイシドが集めた参加者がいた。

「あんたらもドラゴンボール目当ての口?」
「えっ!? ここにいるのみんなそう!?」
「俺は借金返済のためだが……」

後は黒服らに任せゲーチスは彼らを残すとアンゼロットらのいる特別室へ向かった。



アンゼロットはまどかに擬似ソウルジェムを投与している最中だった。
イシドには支給品の最終調整を任せていた。

「お楽しみのところでしたかな?」

ゲーチスがニヤニヤと入ってきた。

「冗談はそこまでですよ」
「これはこれは……失礼しました」
「とにかく大役ご苦労様でした。さて土産話とやらを説明してください」

アンゼロットが問う。
そしてゲーチスがゆっくり話し始めた。

「実は面白いモノを捕獲しまして……ノイ・ドヴァイの従者と言えば話は早いですかね?」
「それは興味深いですね」

ノイ・ドヴァイに協力者がいたとは初耳だったと思うアンゼロットだったが。
たしかに『琴吹紬』にならいるのであるが。

「実はこちらへ向かう途中崩壊したビッグサイトを見ようと思いましてそこでこんなモノを見つけたんですよ」

ゲーチスが指をパチンと鳴らすと猿ぐつわをされて縄で縛られた意識を失った斎藤が連れてこられた。
まだあんな化け物に忠義を誓う物好きがいたとはアンゼロットも驚きである。
普通ならすぐに見限って逃げ出すのが人間の心理だったからだ。
ゲーチス的にノイ・ドヴァイが苦しむ様が見たいのもあったようだが。

「また面白い余興ができそうですね、ワタクシとしてはあなたへご協力が出来て嬉しい限りですよ」
「ならばコレもノイ・ドヴァイ討伐に加えちゃいましょう……」

秋山澪ほどではないが精神的な打撃は多少は与えられると思いそう指示した。
そしてゲーチスもずいぶんと悪趣味ですねと思うアンゼロットであった。

「……それでもう一つの方も説明しましょうか?」
「話してください」
「ホールにいるでしょう、目立たないのですがね……」

アンゼロットは窓越しのホールの様子を見た。
そこには明らかに和田アキ子らや姓名判断士の被害者の会ではない者がいた。

「ちょっと誰ですか彼女?」

アンゼロットがその少女に指差す。

「実に興味深い戦闘力でしたので部下に命じて連れてこさせました」
「どれくらいの実力なんですか?」

これからノイ・ドヴァイと戦わせるのである。
並みの戦闘力がなければ無意味なのは分かっていた。

「モニターを観察した黒服の話によるとTバック男爵とジェイル・スカリエッティらを殺害したそうです」
「これほどの実力者がどうして今まで目立ったなかったんですかね……それで彼女の名前は?」
「赤座あかりです」
「……いましたね、そんな名前の子。では彼女もうまく言いくるめてノイ・ドヴァイと戦わせましょう」

いくら強豪を殺害したとは言えアンゼロットはあかりについての成果はあまり期待してなかった。
戦力になったとしても時間稼ぎが限度だろう。
現時点での赤座あかりをその程度しか評価できなかった。
丁度その時、調整を終えたイシドが入ってきた。

「特別支給品は準備できましたか?」
「なんとかな、だがアレの使用は本当に大丈夫なのか?」
「主戦場が外宇宙ですし、主会場の地球圏には影響はないでしょう」
「ああ、そうか……付近の惑星は崩壊するかもしれんが」
「それはやむを得ませんね、おそらくは住む星を破壊されて生き残った原住民が難民化するくらいですね」
「宇宙とアレを天秤にかければどっちが重いか言わなくても分かる」
「それでもダメなら『アレ』の投入も……」
「『アレ』……?」
「いえ何でもありませんよ」

万が一の場合は地球から別の舞台に移す方法も検討しているのだ。
まだ『最後の切り札』は残しておくべきだと彼女はそっと胸にしまった。



最終更新:2012年01月17日 23:19