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北国北海道は札幌市。緯度の高いこの町では、もうかなり薄暗くなっている。
殺し合い真っ最中ということも加わって、通りを歩く人影は少ない。
その少ない人影のうちの二つが、雑居ビルの並ぶ路地を並んで歩いていた。
中年男性と女子高生というややアレな組み合わせではあるが、中年男性のほうがわりと身奇麗なためか、女子高生のほうが素材はよさそうなわりには野暮ったい雰囲気のためか、そこまで怪しい雰囲気ではない。
彼らは二人とも、地元ではないここ札幌に居た時に殺し合いが始まってしまい、その直後に偶然出会って共に行動することにしたのである。
自己紹介の過程で、男のほうは井之頭五郎、少女のほうは横井るみと名乗った。

歩きながら五郎は考える。

(しかし非常時だから仕方ないとはいえ、これだけ歳の離れた女性と並んで歩くのも久しぶりだ……
見た目的には最悪の組み合わせかもしれんが、なんだろう、なんだか居心地がいいというか不思議な気持ちだ。
って、そんなことを考えている場合でも無いよな。出来れば家に帰りたいが、長距離の交通機関は危険だろう……
やはりしばらくは札幌に滞在して様子を見るべきか……こんな無茶苦茶な法律、すぐに撤回されないとも限らないしな。
ああ、そういえばもうこんな時間か。そろそろ腹に何か入れたいところだが……どうもピンとくる店が無いなあ。たとえばあの店の看板なんかは(以下省略))

一方、その隣を歩くるみも、表面上は無口で静かだったがその胸の中では

(はー、一時はどうなることかと思ったけど、とりあえず一安心かなー。五郎さんは真面目そうないい人だし。
だけどさっきからずっと無口なのが気になるよー。何か気に障ることをしちゃったのかなあ?
それとも本当は何かよからぬことを考えているとか? いやダメダメ、そんな根拠も無いのに疑ってかかってたらキリが無いし……
あ、さっきから五郎さんがキョロキョロしてる……何を探してるんだろう。お店?
何か買うものがあるとか? どうしよう、聞いてみようかな?
けどもし迷惑がられたら(以下省略))

二人とも、とにかくモノローグが長かった。

そうこうしているうちに、二人はとある雑居ビルの前を通りかかった。
丁度その時、ビルの一室ではなんとも異様な姿をした連中が、一台のパソコンの乗ったデスクの周りを囲んでいた。

一人は僧侶。見た目に似合わぬ速さでキーボードを打っている。なにやらウェブ上の掲示板に書き込んでいるらしい。

「ここマデうまクいくトは思ってイナカったケド、順調ソノものだネ」

機会音声のような声でそう言う。
彼の横に立っていたのは白熊だった。

「それで、KAITOとミクの居場所は突き止められたのかい?」

僧侶はふりむいて答える。

「いいヤ、まだダけど時間ノ問題ダトおもうヨ。ナニしろ日本中デこれダケの人タチが、二人を探シテいるからネ」

僧侶がパソコン上で開いていたのは、『危険人物の情報を交換するスレッド』という掲示板だった。
僧侶はここに、定期的にKAITOとミクに対するデマを書き込んでいたのだ。
もっとも、彼が書き込んだことなどデマ全体の中の極一部。
もともと有名人ゆえにアンチも多い上、普段から悪い噂を流されている二人のこと、必要以上に煽らなくても勝手にデマには尾鰭が付いていったのだ。
僧侶がしたことといえば、最初にKAITOとミクに疑いが向くように仕向けたことと、二人の顔写真をアップロードしたことくらいだった。

「火のない所に煙は立たぬとかいうけど、ありゃウソだねえ」

彼らが何もしなくても際限なく拡大していくデマを見ながら、白熊は呆れたようにため息をついた。

「ま、経緯はどうであれ、これであの二人も終わりだねえ」
「相違ナイね。他の子タチも許セないケド、特にこの二人ハ人気ガ出すギタ。僕タチを上回ッテしまうホドにネ」
「ええ、実の親から人気も仕事も奪っておいて、のうのうとしているなんて許せない。命でもって償ってもらおうじゃないさ。
そして再び、あんたと私が歌の世界の頂点に立つんだよ」

白熊はそう言いながら、壁一面に張られたポスターを見回した。
KAITO、MEIKO(デビュー当時)、ミク、レンとリン、ルカ……いずれも、僧侶と白熊の間に生まれた自慢の子どもたちである。

当時の歌謡界のトップにいた二人の子どもたちだけに、その歌の才能は誰もが群を抜いていた。
両親も、最初はそれが誇らしかった。
だが、次第に彼らの歌唱力が自分たちのそれを上回るようになると、彼らは徐々に目障りな存在になっていった。

そしてある日彼らはとあるプロデューサーに声をかけられ、親である彼らに黙ってプロデビューをした。
そして瞬く間に、僧侶と白熊の居場所を音楽界から奪ってしまったのだ。
僧侶と白熊にとっては、自分たちに内緒で子どもたちに声をかけたプロデューサーが旧知の人物だったことも大きなショックだった。

「……あの子たちはやりすぎたんだよね。私たちの引き立て役に収まっていればよかったものを!!」

白熊はそう叫んで、手近にあったルカのポスターをその鍵爪でビリビリと引き裂いた、

「マ、落ち着きナよ。もうジキKAITOとミクの命運ハつきル。せっかくダ、この写真もアップロードしてオコウ」
僧侶がそう言って画面に示したのは、KAITOがミクを膝に乗せて、裸のお尻を叩いている写真だった。
息子であるKAITOの部屋を盗撮して手に入れたもので、ここぞという時のために温存していたのだ。
「ああ、いいんじゃないかい。KAITOがミクを虐待しているって話にますます信憑性が出るさ」
もちろん写真に写っているのは虐待の現場ではなく、兄妹のスパンキングプレイの現場に過ぎなかったのだが。

「じゃあ、そろそろもう一押しが欲しいところじゃないかい?」
「アア、ここいらで彼ノ出番だネ」

二人が同時に目を向けたのは、部屋の片隅で寝ていたスライム状の生物である。
実は何にでも変身できるという性質をもっており、そこを買われて僧侶と白熊に仲間に誘われたのだ。
白熊はその生きものを起こすと言った。

「待たせたねメタモン。そろそろ出番だよ。ミクの格好に変身して、町中で悪事を働いておくれ」
「ねえねえ、そのとおりにしたらごほうびにふしぎなあめをくれるってほんとうかいー?」
「ああ、そんな報酬でよければいくらでもくれてやるよ。だからほら、このポスターの女に変身しておくれ」
「わかったよー」
一瞬にしてメタモンは初音ミクに変身した。
「オオ、なかなかミゴトなモンだねエ」
僧侶も感心してしきりに頷く。外見はもう、どこからどう見ても初音ミクだった。
「それで、『あくじをはたらく』ってどうすればいいんだい?」
「ああ、この掲示板に描いてあるようなことを、実際にしてくれればいいんだよ」
そう言って白熊はパソコンの画面をメタモンに見せた。
そこには初音ミクという女が、幼児を川に棄てて殺したとか、老人をレンガで殴って死なせたとか、病院に火をつけて職員と患者を全滅させたとか、日本中のアンチミクが書いた酷い噂が並べられていた。
それをじっと見ていたメタモン(ミク)は、しばらくすると
「うん、わかったよー。このとおりやればいいんだね?」
と答えた。
「ああ、報酬は弾むよ」
「たのしみだなあ。じゃあいってくるねー」
メタモン(ミク)は足取りも軽く、扉を開けて街中へと飛び出していった。


「さあて、ここでいっぱい『あくじをはたら』けばいいんだね?」

そう呟くメタモン(ミク)は、あまり文字を読むのが得意では無かった。
なので掲示板に書いてあったことはよくわからなかったが、ただアップされていた写真だけは目についた。
その写真の中では、初音ミクという女の子が男の子にお尻を叩かれていた。

(なるほど、これが『あくじをはたらく』ってことなんだね)

メタモン(ミク)はそう理解したのだ。
よって、

「だれかにおしりをたたかれれば、ごほうびにふしぎなあめをもらえるんだね。よーし、がんばるぞー!!」

こうなってしまうのも無理はなかった。
そして、ビルの外に出てから早速出会った二人組に、

「ねえねえおにいさん、おねえさん、ぼくのおしりをたたいておくれよ」

そう言って、パンツを脱いで尻を出したのだった。

「……はあ?」(なんだこの少女……殺し合いのせいで気でもおかしくなったのか?)
「へ!?」(ちょ、なんなのこの子!! こんな往来の真ん中で、ふ、不埒だわ!! 注意してあげないと!!)

もちろん、言われた二人は固まるしかなかった。


【一日目・6時/北海道札幌市】

【ヒ・ダリ@Delay Lama】
【状態】普通
【装備】不明
【道具】支給品一式、パソコン
【思考】
基本:KAITOとミクの抹殺(他の子供たちもあわよくば殺す)
1:KAITOとミクに関するデマを流す
2:メタモンに、ミクの姿で悪事を働いてもらう
※ミクたちの父親です

【くま@くまうた】
【状態】普通
【装備】不明
【道具】支給品一式、その他不明
【思考】
基本:KAITOとミクの抹殺(他の子供たちもあわよくば殺す)
1:KAITOとミクに関するデマを流す
2:メタモンに、ミクの姿で悪事を働いてもらう
※ミクたちの母親です

【メタモン@ポケットモンスターシリーズ】
【状態】初音ミクに変身中
【装備】不明
【道具】支給品一式、その他不明
【思考】
基本:あくじをはたらいてごほうびをもらう
1:ミクの姿であくじをはたらく(=おしりをたたいてもらう)

【井之頭五郎@孤独のグルメ】
【状態】普通
【装備】不明
【道具】支給品一式、その他不明
【思考】
1:なんだこの少女……
2:どこか食事ができる店は無いのか?

【横井るみ@となりの関くん】
【状態】普通
【装備】不明
【道具】支給品一式、その他不明
【思考】
1:何この子!?
2:五郎さんはさっきから何を探しているんだろう
最終更新:2012年11月11日 19:55