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「――♪」

セプテントリオンが一人、武曲星ミザールは上機嫌であった。
念願であった都庁の屋上にぶらさがれたのだから、当然と言えば当然だろう。


「「都庁にまた変な化け物がくっついたぞ!?逃げるんだ!」」


もっとも、その珍妙な巨体で都庁にぶらさがろうものなら、周囲からは注目の的である。
かなりの距離が離れていても、一般参加者はミザールの姿を確認し、都庁から少しでも離れようと逃げるに決まっている。
こういった化け物に立ち向かう力がない参加者が各地で都庁の危険性を口々に話す為、これでさらに都庁に近寄る人間は減るのだろう。
化け物を退治してみせようとする正義の味方やら賞金稼ぎなどはあえて近づくのかもしれないが……
生半可な腕前では、今や植物の織り成す迷宮へと姿を変えつつある都庁の養分になるのがオチだ。

「ふふ……潜行が可能となる我がシークレット・トレイルならばなんなく都庁へも侵入でき――」

※ あ あ っ と ! ※

「オレサマオマエ、マルカジリ」
「な、なんだこのドラゴ――」

【根来忍@武装錬金】死亡確認 死因・骨竜による丸かじり

もちろん、下手な小細工をしても結果は変わらない。


だが。
ぶらさがるミザールはぶらさがることに熱中し、骨竜は地下からの侵入者に気をとられていた。
他の魔物も、しばらく人間が近寄らないために内装のリフォームに集中していた。
だから気がつかない。


「さて、魔物がいた以上、ここが都庁のはずなんだが……随分様変わりしているな」
「おおきいねぇ……」

「グ、グオオオオォォォォォ……!」

恐ろしい食人鬼、全てを喰らい取り込む二人組が、四条化した怪物が、堂々と都庁の正面口へとやってきたことに。
番人の役割も兼ねていた魂の裁断者が果敢に挑むも、四条化した風鳴翼の強さはこれまでの人間の比ではなかった。
刀剣での近接攻撃、その戦闘技術もさることながら、真に恐ろしいのはその口。
裁断者の体は既にところどころが抉られている。翼に『食われた』のだ。

「こいつには特に耐性があがる効果はないみたいだが、意外と熊肉というのも美味しいな」
「はごたえがあるね」

ぐっちゃぐっちゃと裁断者の肉を咀嚼する二人の怪物。
数々の冒険者を引き裂いてきた裁断者は、だからこそ相手の強さも理解してしまう。
おそらく、仲間であるアイスシザースや大王もこの怪物には勝てない。
リーダーか、あるいは新入りの叫帝クラスでなくては。

「オオォゥ……」

しかし、連中は気になる言葉を口にしていた。耐性が上がるだのなんだのと。
万が一、雷への耐性をこの怪物が持っていたら?炎耐性も同じく危ない。
もし耐性持ちだとすれば、非常にまずい。こちら側の敗北もそうだが、怪物がさらに手をつけられない存在となってしまう。
相手を食うことで飛躍的に強くなる怪物など、樹海でもいるかどうか……
目の前の怪物の外見は人間とラッコだが、限りなく得体の知れない存在にしか見えなかった。

「さて、この分なら中の魔物も楽しめそうだな」
「そうだね。おなかいっぱい食べられるかな?」
「グォウ!」

裁断者は、恐怖していた。
それでも爪を掲げ、臨戦態勢をとった。
たとえ勝てずとも、時間稼ぎはできる。
自分の肉は食い尽くされたところで、敵に耐性を与えることもない。
自分の遺志は、仲間が継いでくれるだろう。
少しでも戦いを長引かせ、リーダー達にこの怪物の存在を気がつかせねばならない。

「いきがいいくまさんだねぇ」
「だが悪いな、私たちが欲しているのは耐性があがる肉なんだ」

翼が刀を構え、裁断者にとどめを刺そうとする。

――その時だった。

「それなら、僕の肉を食べてみればいいんじゃないかな?」
「っ!?」
「――そう簡単に食べさせはしないけどね?」


翼の背後から現れた青年はそれだけ言うと、体を捻り、高速回転させながら突撃をしかけた。
間一髪でそれをかわす翼だが、わき腹に激痛を覚える。

「ツバサおねえさん!」

ぼのぼのの叫びを聞き、翼はようやく自分のわき腹が、ほんの少しだけ削られていることに気がついた。
そして、裁断者と自分の間に割ってはいった青年を睨む。
青年の口の端からは――血が滴っていた。

「もぐもぐ……ぺっ!」

青年が何かを咀嚼後、吐き捨てた。
確認するまでもないだろう。まさに今『食われた』翼の肉だ。

「駄目だね、美味しくない。君らが人を食べるのは理解に苦しむよ」
「くっ……下衆め……私に何をした!?」
「どっちが下衆なんだい?ここの魔者達からは、大地を大切にする思いがひしひしと伝わってくる……そんな彼らを食べるだって?
 ふざけるのも大概にしなよ。不味いけど、君らも少しは食べられる側の気分を味わってみる?」

開かれた口と、その奥に並ぶ歯はごく普通なもの。断じて牙ではない。
しかし真っ赤に染まったそれは、間違いなくその歯が、翼の肉を食った証でもあった。

「悪いけど、僕はオリハルコンを練りこんだ料理も問題なく食べられる程度には歯も胃も丈夫なんだ。
 ああ、劇毒にも慣れてるよ。昔は毎晩寝る前に飲むのが日課だったからね。食人鬼の肉でも問題なく食べられる。
 君たちが望んでいる完全耐性も、僕には備わっている。まあ、装備品も含めてではあるけど……
 全属性吸収に加えて、無属性も半減できるんだ。君たちが僕を食べれたら……お得だとは思わない?」
「何者だ……一体……」
「僕はレスト。……君たちに食べられたアゼルと同じ、アースマイトだよ」

アゼルの名が出た瞬間、翼は僅かに顔を歪めた。
かつての仲間を自分が食い尽くしたのだという現実の再認識と……
そして彼が魔物を庇い、自分を狙う理由がわかったからだ。

「もしかして、フレイって言う子も食べたのかい?彼女もアースマイトだったんだけどね」
「悪いが、知らないな」

短い間ではあったが、アゼルとは仲間であり、彼の口からアースマイトのことも聞いていた。
いわく、大地の声を聞き、大地を守り、大地と共にあることを宿命づけられた希少種族。
まさか、都庁に群がる魔物の声まで聞きつけたというのか。

「まあどっちでもいいよ。君らは殺す。ここの魔者達に手を出す奴は殺す。自然をなんとも思わない連中は――皆殺しさ」
「ふん、アゼルの仲間かと思えば、随分と恐ろしい考えを持っているようだが?」
「僕だって、話し合いでどうにかしようと思った時期もあったよ?でもそれじゃあ駄目なんだ。
 その昔、一人のアースマイトが帝国の世界征服の野望を阻止した。その時彼は、皇帝を手にかけず、見逃した。
 優しいと思うだろう?でもね、皇帝は改心なんてしてなかった。どころか、アースマイトという種族そのものを逆恨みしてたよ。
 そのとばっちりは僕や街の人にも及んで……あろうことか、僕の愛した女性、セルザまで傷つけたんだよ。下らない野望のためにね……だから――

ガォン!

レストの言葉を、発砲音が掻き消す。

「くっ!?」
「あれ、この距離でかわされちゃった。ごめんよツバサおねえさん」

見れば、いつの間にかぼのぼのが回り込み、銃を構えていた。
彼は以前に殺害したフォズのことを思い出し、脳味噌を食うつもりでヘッドショットの奇襲をしかけたのだ。
もうそこには、かつての心優しいラッコは存在しない。同族の翼以外全てを食糧としてしか認識できない、怪物しか存在しない。

「へえ、君は動物だからまだ見逃そうと思ったのに。銃を、使うんだね?行く行くは近代兵器にまで手を出すつもりかい?
 ――ああ、憎いったらないよ。行き過ぎた銃火器も科学も軍隊も……それを扱う人間も、何もかも!」
「どうやら完全耐性とやらも、銃弾には……いや、物理的な力には意味を成さないらしいな?ならば……」

翼は自らのギアである天羽々斬を巨大化させ、構える。
彼女は足にも刃を装備しており、言うなれば完全武装の状態だ。
そこに四条化で手に入れた強靭な歯があわされば、弱点となりがちな頭部も克服したことになる。

「私がお前を――食ってやろう」

相手はただの人間ではないようだが、銃弾が翳めた頬から血が滲む存在。
純粋な物理攻撃には耐性を持たない、物理攻撃を最も得意とする自分にとっての――獲物でしかない。

「蒼ノ一閃ッ!」
「そうだね、僕を殺して食べたいなら、物理攻撃しかない。でも……」
「何っ!?」

放出された巨大な蒼い刃を、レストは鞄より取り出した大剣で叩き伏せる。
並の剣ではそのまま蒼ノ一閃に切り裂かれるであろうが、振るわれた剣には傷一つなかった。

「僕の得物はこの天ノ村雲ノ剣。……大剣が得意なのは、何も君だけじゃあないんだよ?」
「ちっ……!」

続けざまに振るわれた大剣からは衝撃波が放たれる。
蒼ノ一閃ほど巨大ではないが、牽制には十分。直撃すれば深手になるだろう。

(迂闊には近寄れないし、蒼ノ一閃では決定力に欠ける。なんとか懐に飛び込めれば……
 そのまま、そのハラワタヲ、ニクヲ……あぁ、駄目だ。お腹が空いて空いて……)

「ぼのぼの、そこを離るんだ!千ノ落涙でこいつを――」



「光よ、焼き尽くせ!」
「ぐぁっ!?」
「うわぁ!?」


突然、圧倒的な光の奔流が翼とぼのぼのをまとめて吹き飛ばした。

「何をしているレスト。愚か者共を始末するのはいいが、まずは負傷している魔物の治療が先ではないのか?」
「す、すみませんダオスさん……」

乱入者――ダオスと呼ばれた長身の男性は、光の放出を続けたままレストへ目配せをする。
状況を把握しきれていない、手負いの魂の裁断者を癒せと。
慌てたレストは剣をしまい、裁断者に回復魔法をかけはじめた。

(これで、あの魔物も一命は取り留めるだろう。問題は……)

両の手からの光線は、未だに続いている。
都庁付近の建物も巻き込まれ次々に崩れ落ちていく程の威力だ。

「……タイダルウェイブ」

しかしダオスは突然攻撃を中断し、何かを呟く。
次の瞬間には、光ではなく凄まじい激流が周囲を容赦なくなぎ払った。


「一応、応急処置が終わりました」
「ご苦労。しかし警戒は怠るな。連中はおそらく、まだ生きているぞ」
「さっきのレーザーの直撃を受けて、ですか?」
「ああ。光の中でこちらの隙を窺っているように見えた。
 おそらく完全ではないが、光と熱に対して既にある程度の耐性を得ている可能性が高い」
「それで水魔法に切り替えたんですね」

捕食者を撃退した二人は、改めて都庁を眺めた。
もうそこには、コンクリートやガラスなどで構成された都庁の面影はほとんど残っていない。
絡み合う樹木、茂り始めた大きな葉、自然の産物が文明の象徴を覆っていく。

「「美しい……」」

それはさながら、新たに生まれた世界樹のようで。

「……これこそ、この世界のあるべき姿ですよ。自然と共に生き、大地の恵みに感謝を忘れない。
 行き過ぎた文明や科学なんて必要ないんです」
「私はお前のような熱心な自然崇拝者というわけではないが、科学の根絶には賛成しよう。
 人間共がくだらぬ化学兵器を使うせいで、世界は穢れて枯れ果てるのだ。もっと大樹のありがたみというものをだな……」

彼らは大地の守人と大樹の守人。
都会の真ん中で生まれつつある新たな大樹と、自然を愛する魔物達を守るために手を組んだのだ。
共に科学的なものを毛嫌いしていたのも大きな理由であったといえる。
そしてさらに、互いが互いの弱点を補う存在であったことも。

「連中以外にも、ここを狙う輩はいるだろう。
 お前の使役していた三幻竜のうち一体も行方不明だというし、戦闘は私に任せ、援護とそやつの治療にまわってくれ」
「わかりました」

ごきごきと手を鳴らすダオスは、魔王と称され、魔術でしか倒すことができないと言われた男である。
膨大な魔力と卓越した格闘術も十二分に脅威だが、彼は物理的な攻撃を受け付けないことが売りであった。
裁断者を治療するレストは、特殊な装備練成と肉体強化により、あらゆる魔法攻撃を受け付けない。
二人が揃うことによって、擬似的にあらゆる攻撃を受け付けない完全な状態が作り上げられるのだ。

(私はもとより、レストも戦いに秀でている。魔物達もここを占拠するだけの力を持っている。
 科学使用者共に負けるつもりはないし、負けてはならぬのだが……
 あの二人組は、一体なんなのだ……? 魔物でも、人間でもない、もっと得体の知れない……)

【一日目・18時50分/日本・東京都庁樹】
【ダオス@テイルズオブファンタジア】
【状態】健康、物理攻撃無効、雷耐性低
【装備】ダオスマント
【道具】支給品一式、不明品
【思考】
基本:星の自然環境改善
1:主催者含めあだなす存在は全身全霊で滅ぼし、協力者は助ける
2:機械っぽい外見の奴は問答無用で潰す
3:四条化コンビを警戒
4:都庁の魔物を狙う参加者を迎撃する
5:グンマーの世界樹の迷宮も気になる

【レスト@ルーンファクトリー4】
【状態】健康、全属性攻撃吸収、無属性攻撃半減
【装備】天ノ村雲ノ剣、
【道具】支給品一式、不明品
【思考】
基本:星の自然環境改善
1:主催者含めあだなす存在は全身全霊で滅ぼし、協力者は助ける
2:機械っぽい外見の奴は問答無用で潰す
3:四条化コンビを警戒
4:魂の裁断者の治療
5:あわよくば竜と結婚できる世界を作りたい
※フレクザィードの飼い主でしたが、バサラによりその権限を奪われていることに気がついていません

【魂の裁断者@新・世界樹の迷宮 ミレニアムの少女】
【状態】瀕死(治療中)
【装備】無し
【道具】長くて丈夫な木の棒、支給品一式
【思考】
基本:都庁を住処にしたモンスター達で協力して生き残る
1:気絶中


「かはっ……」
「うぅ……」

濁流に揉まれた翼とぼのぼのは、都庁から離れた位置まで流されていた。
持ち前の生命力と、食への渇望により命に別状はないが、初めてダメージらしいダメージを負っていた。
浴びた攻撃は水属性のもの。都庁に向かう途中で手に入れた耐性は風であり、水にはまるで耐性ができていなかったのだ。

【疾風のゲハ@ボボボーボ・ボーボボ】 翼とぼのぼのに捕食され死亡

「あの男達……かなりの強さだな。だが同時に……アア、ゼヒトモ食べてミタいな?」
「でもでも、かなりたいへんそうだよ?」
「なに、食べるのが困難な食材ほど、美味いというものサ……お腹、スイタな。
 あの男の攻撃を耐えるためにも、次は水耐性を得られそうな相手を狙って……いや、今はとにかくダレデモ……」

初めて、かなりの傷を負い。
初めて、食事をとることに失敗した。
それと同時に死亡してしまった四条貴音の無念はどれほどのものだったことだろうか。
だが彼女と違うのは、翼もぼのぼのもまだ生きているということ。
そしてご馳走を前に『お預け』をくらったことにより……より『食』への思いが強くなったことだ。
前菜ともいえる熊肉すら満足に食えていないのだ。当然の結果といえる。
だんだんと理性が削られていき、より獣に近くなっていっていることに、二人はまだ気がつかない……

【一日目・18時50分/日本・東京都のどこか】

【風鳴翼@戦姫絶唱シンフォギア】
【状態】中ダメージ、超空腹、炎耐性(強)、聖耐性(強)、闇耐性(弱)、風耐性(弱) 四条化、きゅんっバンパイア化
【装備】シンフォギア・天羽々斬@戦姫絶唱シンフォギア
【道具】支給品一式
【思考】
基本:四条貴音の意思を継ぎ、空腹を満たす
0:水耐性を上げたいが、今はとにかく空腹
1:食べられればなんでも良いが、特にらぁめんを食べたい
2:貴音の失敗を鑑みて、より多くの耐性が得られそうなものを優先して食す
3:ペットとしてぼのぼのは連れて行く
4:立花たちが今の私を見たらどう思うか……
5:都庁の敵を警戒
※四条貴音の細胞に肉体を侵食されたため、四条化し貴音の能力と一部の記憶を受け継ぎました
テラカオス化の進行度合いも受け継がれています。さらに本人も気がつかないうちに現在も進行しています

【ぼのぼの@ぼのぼの】
【状態】中ダメージ、超空腹、炎耐性(強)、聖耐性(強)、闇耐性(弱)、風耐性(弱) 四条化、きゅんっバンパイア化
【装備】ウィンチェスターM1912
【道具】支給品一式、ヒョウヘンダケ@ぼのぼの×10
【思考】
1:すごくおなかすいたなあ
2:「ころしあい」っていうのはたべることなんだね!
3:ツバサおねえさんについていく
4:みんなどこにいるのかなぁ
※四条貴音の細胞に肉体を侵食されたため、四条化し貴音の能力と一部の記憶を受け継ぎました
※テラカオス化の進行度合いも受け継がれています。さらに本人も気がつかないうちに現在も進行しています
最終更新:2014年01月29日 17:58