千葉県。
永江衣玖の空気を読む程度の能力によって大災害で生き残った日本も数日中に天変地異が襲うことを知った雪音クリスと
シマリス。
知り合い探しを兼ねて、この緊急事態を伝えるべく奔走することにした一行であったが、そこで怪人の急襲を受けた。
シンフォギア「イチイバル」を纏った雪音クリス、究極の胡桃使いであるシマリス、サタデーナイトフィーバーポーズしか取れないとはいえ空気を読む程度の能力を応用した電撃技に加えて仮面ライダーイクサに変身することで能力を増大した永江衣玖の三者の前ではただの怪人などひと捻りだろう。
……そう、ただの怪人ならば。
「クソッ、死んだ仲間を悼む暇もなく、ヤバイ奴に出くわしちまったッ!」
「わ、わたしの技が全然効かないなんて……」
「これは少々まずいですね」
クリスもシマリスも衣玖ですら多大なダメージを受け、消耗していた。
強者の部類に入るであろう三人をここまで追い詰めるのはそこらに転がっている有象無象の怪人では土台無理な話だ。
つまり、彼女たちが戦っているのは自分たちより遥かに強い敵である。
その強敵こそ、宇宙生物ワームの中でも最強であるカッシスワーム・乃木であった。
「三人ともスジはいいようだが、もうここまでだ」
ボロボロのクリスたちに対してカッシスワームは全くの無傷である。
これは敵の攻撃をエネルギーに還元吸収する能力を持っているからである。
したがって、シンフォギアで生成した銃弾・投げ込んだ胡桃・電撃もエネルギーとして吸収されてしまったのである。
さらに吸収した技をコピーして返せる能力まで備わっているため、攻撃するということはそのまま自分に攻撃が返ってくるということであった。
「だが、諸君ほどの腕の持ち主を殺すのは些か惜しいな。
俺の傘下に下るのならば、降伏を認めてやってもいいぞ」
このまま押し切れば三人を殺せるであろう乃木が戦闘の最中に取った行動は、意外にも降伏勧告であった。
「そっちから襲いかかってきやがったくせに、何勝手なことを言ってやがる!」
「それは君たちを腕試しするためだ。
俺もこんな下らない殺し合いなど進んでしたくはない」
「……信用できませんね。
私たちに何かをさせたいようですが、あなたの目的は何なのです?」
衣玖の問いに、カッシスワームは淡々と答える。
「諸君には三つほど手伝ってもらいたいことがある。
一つは愚かな主催共の打倒、一つはこの邪魔な首輪を外せる技術者の捜索。
そしてもう一つは、弱くて愚かな他の参加者の間引き」
「間引きって……どういうことでぃす!?」
「力も技術も持たない弱者を生かす必要はない。
そういったものは俺の糧になってもらう形で有効利用させてもらう」
カッシスワームのスタンスは対主催である。
だが、日本という僅かに残った土地と資源では人類含む全ての生物を賄いきれない事ぐらいは理解しており、主催に対して反抗的な理由も社会基盤そのものを壊しかねない『殺し合いによる』人口削減を否定しているだけだ。
人口削減そのものは必要であると彼は思っている。
仮に、この男が殺し合いを打倒した暁にも壮大な間引きが待っている。
自分にとって不都合な存在……特に弱い人類は淘汰・虐殺し、自身が優れた種であると信じている宇宙生物ワームによる日本の統治を始めるつもりなのだ。
いわば超危険対主催、この男に殺し合いの破壊をさせても人類や弱者に未来はない。
そんな男を野放しにできる理由がクリスたちにはあるハズがなかった。
「……ざけんなッ!!」
「アンタ
みたいなのを放っておいたら、ぼのぼのちゃんたちの身が危ないでぃす!!」
「なおさら、あなたのような人を生かす理由がなくなりました」
ダメージを負った体に鞭を打ちながら、クリスは両腕のガトリングガンを、シマリスは大量の胡桃を、衣玖はイクサの上をいくライジングイクサに変身し、カッシスに再び戦いを挑む。
「諸君、それは交渉決裂と見ていいようだね。
だが君らでは俺に勝てる見込みはないだろうな」
余裕を見せるカッシスに三人は銃弾・胡桃・電撃による弾幕を浴びせる。
しかし、それでは攻撃をエネルギーに還元吸収できる敵に餌を与えているに過ぎない。
「無駄だよ、その程度で俺に勝とうなど……?」
ふと、カッシスは気づいた。
弾幕の影の中で自分を囲むように三者が移動をしていたことに。
「確かにあなたはあらゆる攻撃を吸収できる力をもっているようですが、限度は必ずあるはずです」
「バラバラだった火力を一点に集中させりゃあ、どうなるかな?」
「まさか……」
「そのまさかでぃす!!」
三人は一見無敵に見えるカッシスの吸収能力にも限界はあると見抜き、その可能性に勝負を賭けた。
三方向からの集中砲火でカッシスを倒すつもりなのだ。
「いくぜッ!! メガデスパーティーッ!!」
「
秘奥義、ナッツアバランチでぃす!!」
「弾幕&ファイナルライジングブラスト」
クリスの方角からは大量の弾丸とミサイルが、シマリスの方角からは課長を確実に殺害できる雪崩のような胡桃が、仮面ライダーイクサライジングは必殺の光線とスペルカードによる弾幕がカッシスに押し寄せる。
それは嵐のような、回避不能の理不尽弾幕であった。
カッシスは襲いかかる弾幕の中に飲み込まれて見えなくなり、彼を中心に大きな爆炎が巻き起こった。
「やったか!?」
そう言ったのはクリスである。
いくらカッシスと言えど、吸収しきれぬほどのありったけの力を注ぎ込んだんだ。
パワーだけでなく攻撃から逃げられないように隙間もないほど撃ち込んだ……負けるハズがない。
彼女だけではなく、他の二人もそう信じていた。
だが。
「……ゴフッ!」
「衣玖さん!?」
「衣玖ッ!?」
突然、衣玖の腹部から見覚えのある二つの刃が飛び出した。
背中から腹部を貫くほどのひと突きに、腹部にかけてあったイクサベルトが全壊して変身が解除されてしまう。
変身が解けて元の美少女の姿に戻った衣玖の姿は、刃が刺さったままの腹部からの出血と口からの吐血で真っ赤に染まっていた。
そして彼女を背後から刺したのは一瞬でも倒したと思ったていた無傷のカッシスワーム・乃木であり、クリスとシマリスは目を見開かざるおえなかった。
「あの攻撃でピンピンしている……でぃすと……?」
「どうして生きてやがるんだ!」
「惜しかったな。
吸収能力を上回る火力で攻撃するという諸君らの着眼点は悪くなかった。
だが私のもう一つの能力……時間を止める力『フリーズ』を使わせてしまったのが悪手だったな」
「時間を止めるだって?!」
カッシスは通常のワームがもつ高速移動できる能力『クロックアップ』から進化した力、時間そのものを停止できるフリーズの力を持っているのだ。
もっとも『グラディウス形態』に移行した現在ではエネルギーの還元吸収能力と引き換えに使えなくなったハズだったが、先の佐倉杏子、高町ヴィヴィオの肉体を吸収した際に使用できるようになったのだ。
テラカオス化の進行か、それとも魔法少女と聖王という特殊な存在を取り込んだことでカッシスの肉体に変化を及ぼしたのだろう。
制限によって一度の使用に体力を消耗するので無限に使えるわけではないが、時間停止能力を持たぬ者にとってただ一度の使用ですら脅威となる。
回避不能に見えた理不尽弾幕ですら、彼の前では宙に浮いたオブジェにしかならないのだから。
クリス、シマリスはただ驚愕するしかなかった。
「能力の使用で少々小腹が空いてきたところだ。
歯向かった罰として、この小娘には最初に糧になってもらう」
「そんなことさせるか!」「でぃす!」
「安心しろ、諸君らも直に同じ場所に行き着く、そこで大人しく見ているがいい」
クリスたちが満身創痍の衣玖を救おうとするが、それよりも早くカッシスは衣玖の肉体をエネルギーに還元しようとする。
「……させませんよ」
「なにッ!?」
突如、衣玖は刺されてなお続けていたサタデーナイトフィーバーポーズを解き、腹から突き出ているカッシスの刃を握り締め、さらに自分とカッシスの周りが強く帯電をさせた。
それらの事象に対して直感的にまずいと感じたカッシスは急いで自分の体の一部でもある刃を引き抜こうとするが、衣玖は刃を腹や両手の肉に喰い込ませて、どんなに鮮血を垂れ流し激痛を感じても離そうとしなかった。
「あなたの一部である…この刀は絶、対に離し……ません。
時間を停めても無駄ですよ……あなたには私と共に死んでもらいます」
「貴様ッ……!」
周囲の帯電がより一層
強くなる。
帯電の発生源は衣玖本人であり、その発生源から離れられない以上、カッシスはフリーズを使っても無意味である。
吸収能力の許容限界を超えたエネルギーはカッシスの身を焼くこともできる衣玖の会心の策である。
……引き換えに衣玖自身も命を落とすことになるが。
ポーズを解くと制限で呼吸困難に陥るが、致命傷で死ぬ以上、もう呼吸する必要もないと見越して彼女はポーズを解いたのだ。
「衣玖さん!」
「衣玖ッ! 馬鹿な真似はよせ!」
「お二方……どのみち、この傷…では私は助かりません……」
一人と一匹は衣玖を助けようとするが帯電が強すぎて近づくこともままならなった。
されど自分を助けようとしてくれている仲間たちの気持ちだけでも嬉しかったのか、衣玖は最後に微笑みかけ後を託すことにした。
「クリスさん、シマリスさん……私の代わりに天子様を、お願い致します……」
その言葉を最後に衣玖は力尽き、それと同時に莫大な量の電気が衣玖とカッシスを包んでその場を中心に大爆発が生じさせた。
「衣玖ぅーーーーーーーッ!!」
「衣玖さーーーーーーーん!!」
感情のままにクリスとシマリスが叫ぶが、爆炎が消えた跡にはクレーター以外は何も残っていなかった。
衣玖も……カッシスも……粉微塵になった、彼女と彼はそう理解した。
:::
それからしばらくして、クリスとシマリスは先の戦闘の爆音を聞きつけたゼクスを中心とする対主催グループに保護された。
MS・ガンダムエピオンの手に乗って彼らが拠点にしていた浦安市にある某遊園地まで案内されることになった。
現在はその遊園地の敷地内にあるホテルで身を休めている。
「先ほどの爆音はそういうことだったのか……」
「まあ、仲間に関しちゃ残念だったというしかねえが、お嬢ちゃんと小動物くんは立派に戦ったよ」
「しかし、あらゆる攻撃を自分のパワーにし、時間まで止める相手とはとんでもないですね。
あなたたちが止めてくれなければどれだけの被害が出ていたことか……」
応急処置を受けながら先の戦闘の顛末をクリスたちは、ゼクスと彼の仲間であるベルナドットとLに話していた。
衣玖と過ごした時間はとても短いが、それでもかけがえの無い仲間だった。
そんな彼女を守れなかったクリス・シマリスは自分を責め、己の無力さに恥を覚えていた。
(もっと強くなりてぇ……響や衣玖のような犠牲を出さないためにも)
(今のままのわたしじゃぼのぼのちゃんやアライグマくんを守りきれないでぃす、どうすれば……)
衣玖の死は、二人にカオスロワの厳しさを教えたのだった。
これが後の成長に繋がるかどうかはまたの後の話である。
二人は衣玖の死を嘆くと同時に、彼女が遺した言葉の一つを思い出した。
「そうだ! シマリス、あのことをゼクスたちにはまだ話してなかったよな!」
「ええ、まだでぇす」
「あのこと?」
衣玖は空気を読む程度の能力を使って、この日本であることが起きることを知っていた。
それはあの大災害を生き残った者全てに伝えるべき重大な事柄であった。
「みんな殺し合いなんて悠長なことやってる暇はないんでぃす!」
「近日中にこの日本にも天変地異が、あの世界を沈没させた大災害が生き残った日本にも襲いかかってくる……衣玖はそう言っていた」
世界が滅びるかも知れない将来の可能性を真顔で伝えるクリスとシマリス。
それを聞いたゼクス、ベルナドット、Lの三人の男たちは――
「えっ」「えっ」「えっ」
――面食らっていた。
(うん、まあ普通はそんなリアクションだろうな)
(シマリス達もそれを初めて聞いた時は似たような感じだったでぃす)
【
二日目・1:00時/千葉県 浦安市にある某遊園地】
【雪音クリス@戦姫絶唱シンフォギア】
【状態】ダメージ(大)、疲労(中)、悲しみと怒り
【装備】イチイバル
【道具】支給品一式、その他不明
【思考】
基本:仲間を探して現状を打破する
0:とりあえず、今はゼクスたちについていく
1:近日中に来る天変地異のことをより多くの者に伝える
2:もっと強くなりてぇ
3:響、どうして死んじまったんだ……
4:衣玖の代わりに比那名居天子を保護する
【シマリス@ぼのぼの】
【状態】ダメージ(大)、疲労(中)
【装備】胡桃百個
【道具】支給品一式、その他不明
【思考】
基本:仲間と共に生き残る
0:とりあえず、今はゼクスたちについていく
1:近日中に来る天変地異のことをより多くの者に伝える
2:胡桃の扱いを極める
3:胡桃の補充をしたい
4:衣玖の代わりに比那名居天子を保護する
【永江衣玖@東方project 死亡確認】
【ゼクス・マーキス@新機動戦記ガンダムW 】
【状態】健康
【装備】ガンダムエピオン@新機動戦記ガンダムW
【道具】支給品一式 そのほか不明
【思考】基本:バトルロワイヤルを止める
0:えっ
1:今はクリスとシマリスの手当をする
2:殺し合いを止める意志のある仲間を集めたい
※浦安市にある某遊園地を拠点にしているようです。
【ピップ・ベルナドット@HELLSING】
【状態】健康
【装備】自動式拳銃×2 M16
【道具】支給品一式
【思考】基本:バトルロワイヤルを生き残る
0:えっ
1:生存確率が上がりそうなので今はゼクスについていく
2:あの
アーカードの旦那が死ぬとは……
【L@DEATH NOTE】
【状態】健康
【装備】自動式拳銃
【道具】支給品一式 手榴弾×25
【思考】基本:バトルロワイヤルを止める
0:えっ
1:クリスたちと情報交換をする
:::
クリスたちが先程までいた戦闘跡地。
焦げ付いたクレーターの中から這い出るように怪人が現れた。
――カッシスワームだ。
クリスたちが死んだと思っていたカッシスワーム・乃木は生きていたのだ。
「くっ、おのれ小娘……だが俺を仕留めるには今一歩踏み込みが足りなかったな」
彼の身体は多少は焼き焦げており、ダメージは確かに与えられ、気絶によって数時間ほど行動不能に追い込んだ。
されど、殺すことはできなかった。
衣玖が命を投げ打って起こした電撃は、彼の吸収能力を超えるエネルギーだったが、その襲いかかるエネルギーで衣玖が粉微塵になる瞬間と同時にカッシスはフリーズを発動、手枷になっていた衣玖の骸が消滅することで腕の自由を取り戻す。
さらにその腕で地面を掘って天然の絶縁体である地中へと緊急避難、電撃ダメージを最低源まですり減らした。
結果的に一時的に気絶まで追いやれるダメージは与えたものの、殺しきるにはいたらなかった。
クリスとシマリスをカッシスから引き離すことができたという意味なら衣玖の死は無駄ではなかったが。
「もう一人の小娘と小動物はどこかに行ったか。
まあいい、無理に追いかける意味もない……殺すのは主催共を皆殺しにし、この無意味な殺し合いを終わらせた後からでも遅くない」
カッシスはあくまで感情に囚われず、クリスたちは後回しにすることにした。
ただし、ワームに逆らった者として次に遭遇した場合は確実に始末するつもりではあった。
「とにかく今は一刻も早く首輪を外したい。
これが外れてくれぬことには主催を皆殺しにはできないからな」
カッシスの現在の目標は自分を縛る首輪の解除である。
首輪が付いている限り主催との交戦ができない。
いち早く首輪を外せる技術者を確保する必要があった。
技術者以外は襲撃し、腕が立つ参加者は利用し、そうでないものは糧にする。
それが彼のロジックである。
「しかし、もっと効率の良い探し方を検討した方が良さそうだな。
虱潰しでは流石に時間がかかりすぎるし……ん?」
より良い技術者探しを思案するカッシスの目に止まったのは一軒のネットカフェであった。
「インターネット……地球人にはそんな便利なものもあったな」
今まで手を出さなかったが、パソコンでネットに繋げばまだ生きているであろう技術者の捜索も楽になる。
そう思ったカッシスは一旦、乃木の姿に戻りネットカフェの中に入っていた。
乃木怜治……彼が首輪を解除して主催に勝利したとしても、人類にもたらされるのは殺し合いからの解放ではなく、ワームが世界の支配権を握る地獄だけが待っている。
【二日目・1:00時/千葉県のネットカフェ】
【乃木怜治@仮面ライダーカブト】
【状態】ダメージ(中)、疲労(中)
【装備】なし
【道具】基本支給品一式、不明支給品
【思考】
基本:愚かな参加者の諸君を始末し、最後には主催者の諸君も始末する
0:ネットカフェでしばらく情報収集
1:特に首輪を外せる者を優先して探す
2:利用出来る参加者がいるなら利用するが、そうでないなら餌にする
3:クリスとシマリスは後回し、もう一度遭遇したら殺す
※佐倉杏子、高町ヴィヴィオの肉体を吸収しました。
※時間を止める能力・フリーズが使用可能ですが、使用毎に体力を消費する制限がついています。
最終更新:2014年05月18日 11:49