埼玉県・西武ドームは今や戦場となっていた。
神聖な球場は血で穢され、天井は破壊され、現在も戦いが止むことはない。
「ヒャッハー!」
「ぐああああぁぁぁぁ!」
謎の妖精に黒影トルーパーの一人が吹き飛ばされる。
絵面も叫び声も状況も何もかもが混沌、世紀末であった。
この大乱闘が終わるには、もう少しだけ時間を要するだろう。
――同刻。
「今であります!」
「ぐっ……!?しまった!」
「おら、燃えろぉ!」
ドームの通路では、二体の仮面ライダーの戦いが繰り広げられていた。
しかし一方の仮面ライダー、ヒノケンこと火野ケンイチにはケロロという強力なサポーターがついている。
吐き出されたガマ油の効果で転倒した衛宮切嗣は、ここで得物から手を離すという真似はしなかった。
たとえ転んだ状態であったとしても、相手の攻撃パターンは大体把握しているから対処できる……
そう考えていた矢先、ヒノケンの炎はあらぬ方向へと放たれる。
切嗣が転倒した際にデイバックより飛び出した、爆弾の起爆スイッチこそが彼の狙いだったのだ。
「ち……!」
「よくやった。これでドームが瞬間で崩落する危険性もなくなったぞ」
仮面の下で苦々しげな表情を浮かべる切嗣とは対照的に、ヒノケンは笑みを浮かべていた。
ドームの崩落こそがもっとも危惧していたことであり、さらに爆弾の位置はファイアマンにより特定済み。
あとは目の前の仮面ライダーを始末してしまえば、こちらの勝利確定だ。
燃やした死体と証拠の爆弾を手土産にすれば
聖帝軍に恩を売れる。
そんなことをしなくとも、まだ戦闘が続いているらしい聖帝軍を援護すれば、それだけでも恩を売れるだろう。
「……そうなるとこの女ももう用済みか。万が一連中にこれを見られると不信感を持たれかねない」
「そうでありますな。いまさらながら、デイバックの中に人間をねじ込むのは結構外道だったであります」
「!?」
ぬるっとデイバックから取り出されてそこらへんに放置された女性に切嗣は驚愕する。
彼女こそ、初期からずーっとヒノケンに捕まり続け、気絶しっぱなしで、とうとうデイバックにねじこまれた不幸な善野監督である。
元は交渉のためにさらわれ、計画が潰されてからは食料などと交換するつもりで持ち歩かれていたが、聖帝軍と合流するなら必要ない。
むしろ万が一見つかってしまった場合、正義感の強い者が多い聖帝軍からは確実に危険視されるだろう。
少しばかりもったいないという感情もあったが、ヒノケンはこれからのことを考えて善野監督の放棄を決めたのだ。
まさかその判断が命取りになるなんて、わかるわけがない。
「ふっ……!」
次の瞬間には、切嗣は善野監督の元へと駆けていた。
まさかの行動に、ヒノケンもケロロも対処が遅れる。
そのまま切嗣はデイバックから不明品……小さな立方体を取り出すと、それを善野監督の口に入れて飲み込ませた。
ごくん
立方体が、食道を通って胃に向かう。溶けていく。
「イエアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッッ!!!!!」
そして監督は、弾けた。
「な、なん……!?」
あの病人の、結構乱暴な担ぎ方をしても全く起きなかった女が、突然跳ね起きて奇声をあげる。
あまりの光景にヒノケンの頭は一瞬真っ白になったが、そのまま彼は人生に幕をおろすこととなった。
「フウウウウゥゥゥゥゥゥゥゥゥッ!」
「な……っ!」
高速で接近してきたのは切嗣ではない。善野監督の方だ。
その勢いのままヒノケンを担ぎ上げるとそのまま、死の技の構えに入った。
デ ス バ レ ー ボ ム で あ る !
ぐしゃりと嫌な音が響く。
頭から硬い床にめり込むほど、その凄まじい衝撃は頭蓋骨は勿論のことベルトさえも破壊した。
ファイアマンもろともヒノケンは、何が起きたのか理解する間も無く息絶える。
【火野ケンイチ@ロックマンエグゼ】死亡確認
【ファイアマン@ロックマンエグゼ】死亡確認
「ヒ、ヒノケン殿!? おのれ、よくも……!」
復讐に燃えるケロロ。
しかし猛然と向かってくる軍曹に放たれたカウンターは……
ド ロ ッ プ キ ッ ク だ っ た !
色々なものが砕ける鈍い音が鳴った。
小柄な体躯が災いし、全身に強烈なダメージを負ってしまったケロロもまた、ヒノケンの後を追う。
【ケロロ軍曹@ケロロ軍曹】死亡確認
「あー……生き返った気分……でもこの感じ、クラウザーさんは亡くなってしまったのね……」
「う、うむ……そのために今我々は生贄をSATSUGAIしているところだ」
ようやく少しは落ち着いたらしい善野監督に対して、切嗣は若干ひいていた。
相変わらず儚げな印象の女性であり、それでいて先程の凄惨な光景を見せられては何が何やら。
切嗣はただ、この女性がクラウザーさんに異常に飢えていることを悟り、回復させることで2対2の状況を作れればいいと思っていただけだ。
ちなみに食べさせた立方体の名前はDMC(ドーピング・メタル・コンソメキューブ)
熱狂的なDMCファンのとある有名シェフが作った、ドーピングアイテムである。
女性使用者からのクレームを受け、改良を重ねた結果、口からの摂取で十分効力を発揮できる代物となっている。
その主な成分は、大量の鉄分とクラウザーさん成分であるクラウザニウム。
クラウザーさんの歌が聞けない状況下でも、クラウザーさん成分を補給できる素晴らしい食べ物である。
善野監督の入院の理由も実はこれだったりする。
最初は普通に病気で倒れたのだが、「クラウザーさんの歌を3時間も聞けば全快する」といった善野監督の言葉を医者が無視。
病院内はお静かにという理由で、当然入院中のクラウザーさんの歌はご法度。食事も病院食であり、ドーピング食も食べられなかった。
結果として、病気のほうではなく極度のクラウザニウム不足により善野監督は衰弱しきり、長期入院していたのである。
ちなみにヘルカイザー亮は体質でクラウザニウムを体内に溜め込める量が少なく、常にクラウザーさんに飢えているらしい。
だがここまでであれば、ドーピング・メタル・コンソメキューブを食べたところで、善野監督が全快するだけ。
ドーピング・メタル・コンソメキューブはあくまでクラウザーさん成分を大量に取り込むことで興奮状態を生み出し、信者の力を一時的に上げるだけだ。
肉体に大きな変化がないことから分かるとおり、これはコンソメスープなどとは違いガチガチの戦闘用ではない。
いくら摂取したところでとてもではないが、病人にヒノケンとケロロを粉砕するような真似はできない。
善野監督は一般人の病人ではあるが……雀士だ。
首脳クラスになればもう宇宙レベルの強さになるというあの雀士である。
ここで、同じく雀士である東横桃子の言葉を思い出してもらいたい。
彼女は現在都庁の同盟の一員となっているが、魔物を見た彼女は清澄の大将と似た感じであると発言している。
そう――高校生であっても全国クラスの、特にふざけた異能持ちの雀士はもはや人間ではない!
この事実は女子高生雀士の間では既に周知のものとなっており、各校は魔物クラスの雀士の対策に追われている。
そんな中で編み出されたのが、己の雀力を攻撃力及び防御力に変換し、肉体を強化するというものであった。
全ての雀士がこれをできるわけではないが、この技を身に着ければ魔物クラスの攻撃を受け止め、貫く礎になる。
何しろ普通の試合中であっても、竜巻だのなんだのが発生する危険地帯なのだ。防御力を上げなければやってられない。
東横桃子は残念ながら全国大会への出場はできなかったものの、異能を持ちかつその雀力は魔境長野でも上位に入る。
その実力から彼女もこの雀力変換法を体得しているのだ。周りに説明していないだけで。
これがなければ、ジプシー・デンジャーの攻撃で中ダメージで済んだり、ぼのぼのを一撃で倒すことはできなかっただろう。
姉帯豊音も同じくである。彼女は全国出場を果たした異能持ちであり、さらにその能力は6つ。
フィールド制圧系能力やピンポイントなカンでもしない限りその能力を打ち破るのは難しく、基礎雀力も高い。
結果として彼女の雀力変換法は桃子以上の効力を発揮し、ムドーを秒殺する力とマウンテンドロップを耐えられる防御力を手に入れた。
これは
テラカオス化ではない。雀力のおかげなのである。
名門姫松の監督を務める善野一美が、彼女達以上の雀力、つまり強さを持っていても不思議ではないだろう。
「久々に動いたら疲れた……ボディーシザースドロップの方がよかったかも……?」
「正直なんでもいい……」
ここで最後の疑問。何故、善野監督までもがプロレスを嗜んでいるのか。
答えは簡単。麻雀協会のお偉いさんがエンターテイメントとして、流行のものと麻雀を組み合わせてはどうかと発案したのだ。
大災害にあう前の世界では様々なものが流行っていたが、その中でも特に流行っていたのが
麻雀、DMC、格闘技、野球、ネットバトル……などである。
この時、コークスクリューツモという凄まじい荒業を生み出した選手が現れ、以後女性雀士は格闘技を学んでいるものが多いそうな。
とにかく言えるのは、聖帝軍の背後にまた一人、凶悪な相手が生まれてしまったということである。
【衛宮切嗣@Fate/Zero】
【状態】中ダメージ、武神鎧武に変身中
【装備】銃、戦極ドライバー、ロックシード(ブラッドオレンジ)
【道具】支給品一式、D・M・C×2
【思考】基本:同志の夢を叶えてクラウザーさんを生き返らせる
1:状況によっては、一個一個爆弾を発動させる
2:セイバー達との合流
3:正直この女にあまり近寄りたくない
※一斉起爆ができなくなりましたが、爆弾そのものはまだ生きています
【善野監督@咲 -Saki-】
【状態】すこぶる健康、クラウザニウムMAX
【装備】患者服
【道具】なし
【思考】基本:クラウザーさんの蘇生
1:恭子を殺した主催者もSATSUGAIする
最終更新:2015年02月07日 18:46