時刻は10時まで遡る。
長野県の上空。
そこには空飛ぶでかい山、阿蘇山を緊急脱出装置に変えられたASO-3が飛んでいた。
その後方、数十キロ後ろには超人血盟軍の四人がASO-3を追撃していた。
ASO-3コクピット内――……
「あいつら、まだ追ってきやがりますか!!」
後方の状況を映し出したモニターを見て、そう言ったのはコクピットのシートに座る特務機関員の少女、ニャル子だった。
ASO-3は僅か3時間足らずで日本海から長野県へ移動できるほど速いが、空を飛べる四人の超人達はそれ以上に速い。
今は数十キロ以上距離を離しているが、相対距離的にはいつか追いつかれてしまうだろう。
「落ち着いてくださいニャル子さん。奥の手を使います!」
そう言ってニャル子の隣に座っている異形の宇宙人にして特務機関員の一人メフィラスはコクピットにある赤いスイッチを押した。
IQ一万を超えるメフィラスはASO-3の機能についてリサーチ済みであり、隠された機能を把握していた。
それはブリーフ博士のホイポイカプセルの原理を利用した、物体を小さくする能力である。
この頃には故人と化している祐一郎さんが、生前にホイポイカプセルの画期的な機能に目をつけ、取り入れた代物である。
そして、カチリとスイッチが押されると、巨大なASO-3は夥しい煙に包まれ、一瞬の内に中のニャル子達ごと小さくなった。
カプセルサイズになった以上、常人では目視は困難だろう。
「よし、これで……」
ニャル子は小さくなったASO-3のハンドルを右に切る。
まっすぐ向かってくる超人血盟軍に対して進路をずらすことで、躱そうとしたのだ。
これでニャル子は追われる心配はなくなると微笑んだ。
……だが、それはすぐに糠喜びに変わった。
ASO-3が進路を変えたのに合わせて超人血盟軍も進路をこちらに合わせてきたのだ!
「ちょ!?」
「なぜだ? カプセルサイズに小さくなった以上、目視は困難なハズ」
驚き声を上げるニャル子とメフィラス。
そんな彼女と彼の疑問に対して、後部座席から返答がきた。
「……気だ」
「ガチホm…ジャック・O!」
「ジャック、それはどういうことですか?」
答えたのは後部座席に縛り付けられている五大幹部の一人、リンクスにして参謀格のジャック・Oであった。
「超人血盟軍にいるベジータが、我々の気を辿っているんだ。
気を探れる奴の前では、ただ小さくなっただけでは無意味だ」
ジャックの推測通り、ベジータはASO-3を目視だけでなく、気を辿って探っていた。
物体は小さくなっても、搭乗者の気の大きさまでは変わらない。
気を消す術を持たない四人では、ベジータの目をごまかすなど出来はしないのだ。
そして、ASO-3と超人血盟軍との相対距離がドンドン縮まっていく……残り50キロ、残り40キロと。
焦燥するニャル子とメフィラス。
「どどどどどどうすれば……!
メフィラスさん! 他に隠し機能とかないんですか!?」
「なくはないですが、ジャックの言うとおりならベジータの前では透明化能力も
無意味。
ミサイルを使わない彼らにチャフなんて無用の長物。
砲台やバリアもありますが、時間稼ぎにもなるか怪しいでしょう」
生き残るためにあらゆる手を考える、大慌ての二人。
(ダークザギをダークライブして応戦する?
いくらチート悪トラマンであるダークザギとはいえ、ゆで超人三人に加えてスーパーサイヤ人がいるけど勝てますかねえ?
……いっそのこと降参して、ベイダー卿とジャックを売り渡して命拾いした方がお得で早くね?
私、女の子ですし、土下座でもなんでもすれば助けてくれますよねー?)
(恩人であるベイダー卿を裏切ることになるが降参止むなしか。
ベイダー卿らの縄を解いて解放し、共に戦ってもらうにしても勝算は極めて低い。
ならば投降して人的被害を出さない方が賢いでしょう。
……ベイダー卿らの考えている『プロジェクト・
テラカオス』の全貌も、投降した後に超人血盟軍と共に聞けば良い)
多少の思考の際はあれど、ニャル子とメフィラスの頭の中に降参という二文字が浮かび上がっていた。
「コーホー、投降は無駄だ。やめておけ二人とも」
「「!?」」
超人血盟軍に降参しようとした二人の考えに待ったをかけたのは、ジャックと同じく後部座席に括りつけられたシスの暗黒卿ダース・ベイダーだ。
突然の制止に驚くニャル子とメフィラス。
「口使ってないのに、なんで私達の考えがわかったんです!?」
「余には貴公らの思考をある程度読める能力がある。
……フォースによってな。コーホー。
ニャル子よ、余らを売り渡して助かろうとしているのもバレバレだぞ」
「ギクッ!」
ベイダーは超能力であるフォースの力で二人の思考を読んでいたのである。
「コーホー。だが、無駄だ。
投降したところで奴らに殺されるのがオチだ」
「え、マジで?」
「コーホー。ベジータとアシュラマンから我々への強い殺意を感じる。
仲間を多く殺されたのだから当然か。
主催の人間である以上は報いを受けさせるために女だろうが、土下座しようが、戦意がなかろうが、我々に大義があろうが、奴らは関係なく殺すつもりだ。
キン肉マンソルジャーやバッファローマンは幾分冷静なようだが、二人を止められるとは思えん。
投降した瞬間、ベジータとアシュラマンに十中八九殺されるだろう」
「そんなぁ!」
「コーホー、投降は諦めろ」
ベイダーから言い渡された言葉に、メフィラスは沈黙し、ニャル子は慌てふためく。
逃げられない、降参できないならば、死への道しかないのだから。
自分達の未来が絶望しかないことを知ったニャル子は額に青筋を貯めた強い怒りを顕にしながらベイダーに迫る。
「九州ロボでも、言いましたけどねぇ……
本拠地をちゃんと用意しましょうと計画開始前から進言してたんですよ!
そもそも世界の命運かけたプロジェクトと言いながら、拠点構えないまま、開始するとか正気ですか?
九州ロボを火事場泥棒的に奪取できたからいいようなものの、祐一郎博士がショック死しなかったら どうするつもりだったんですかねぇ?
しかも拠点構えても警備はガバガバだわデータは奪われるわ傀儡とはいえ主催者の総理がオスプレイで勝手に出撃して返り討ちに会うわテニスボールで大ダメージ受けるわ特務機関員が次々離反するわ殺されるわ挙句の果てに奇襲されるわ、真面目に世界救う気あるんですか? 馬鹿なんですか? 死ぬんですか? 私と真尋さんの命になんかあったら貴方達どう責任とってくれるんですか!?」
機銃掃射のように放たれたニャル子の罵声が、ASO-3のコクピットに響き渡る。
「コーホー……言いたいのはそれだけか?」
だが、ベイダーはニャル子の罵声に臆した様子なく、ドスの効いた声で疑問に答えていく。
その声はさっきまでニンジャを見て失禁と嘔吐していたような奴とは思えないほど冷静であった。
「確かにガバガバな計画だったのは認めよう。
だがな、拠点を構えていられない、特務機関員も裏切る前提の下衆共を多く雇わざるおえない、傀儡も馬鹿過ぎて途中からフォースも効かなくなるような奴を使わざるおえない理由もあったのだ」
「理由?」
「コーホー、『時間』がなかったのだ。
この世界はあと一日……カオスロワ開始から
四日目を迎える前に、消滅するのだからな」
「それは……本当ですか?!」
「冗談でしょ? 嘘だと言ってよバーニィ!」
「君達がなんと思おうが自由だが、事実だ」
ベイダーの言葉にメフィラスとニャル子は更なる焦りを覚える。
この場で冷静なのはベイダーと、彼と世界滅亡に関する情報を共有しているであろうジャックだけであった。
ベイダーが適当な嘘を言っている可能性もあるが、こんな非常時にいちおうの味方であるメフィラス達に嘘をつくメリットはない。
そんな中、コクピットに警報が鳴り響いた。
四人の視線が正面のモニターに向く。
画面を見ると、ASO-3と超人血盟軍との距離が20キロを切っていた。
ベイダーらと会話をしている僅かな内に、超人達はスピードを上げて急接近してきたのだ。
「ヤバッ……!」
「くッ、お喋りに熱中しすぎたようですね」
ベイダーの話が本当ならば、超人達は謝っても許す気はないらしい。
このままでは皆殺しにされるだろう。
焦るメフィラスとニャル子はどうにかして生延びる術を考えようとするが、手持ちの道具や戦力では超人血盟軍相手には望み薄であり、それが焦りをなおさら加速させた。
そんな絶望的な状況下で立つ男がいた。
「コーホー、余が戦いにいこう」
ダース・ベイダーである。
彼が言葉を発すると同時に、彼を縛り付けていた布団とハラリと床に落ち、後部座席から立ち上がっていた。
「ベイダー卿……」
「ってええ!? 拘束を一人でに解いてる?!」
「こんな拘束、余のフォースの力をもってすればどうということはない」
ベイダーのフォースの念動力さえあれば、ニャル子らが縛り付けた布団や縄を解くのは造作もないことであった。
「しかし、戦うなんて無茶です、ベイダー卿!
超人三人にスーパーサイヤ人が相手では、我々四人と飛影でも勝てる見込みがありません!」
「貴公らはついてこなくて良い。戦うのは余だけで十分だ」
「ニンジャを見てNRSを発症して失禁にゲロまで吐いてた上に真っ裸のあなたが絶対に勝てるわけありませんよ!」
「余も奴ら相手に勝てるとは思っておらん。
だが、余が全力で戦えばこのASO-3が逃げられる時間稼ぎくらいはできるだろう。
それとニャル子、サラッと余をディスっているが、後で殺すぞ」
メフィラスとニャル子の制止を押し切って、ベイダーはコクピットから出ようとする。
その前にベイダーが未だに後部座席に括りつけられているジャックに告げる。
「ジャック・O。
余がいなくなる以上、メフィラスとニャル子が知りたがっている計画の全貌はおまえの口から話せ。
そして東京のどこかにいるだろうココと合流し、なんとしても二人でプロジェクト・テラカオスを完遂させるのだ」
「待て、ベイダー卿。
プロジェクトのリーダーは君だ。君ではなく、私がいくべきではないのか?」
ジャックはベイダーを引き止め、彼の代わりに自分が超人達と戦うと言う。
しかし、ベイダーはそれを良しとしなかった。
「悲しきかな、余は貴公やココほど頭が回らん。
この先の計画の完遂や、ユウキ=テルミからの九州ロボ奪還には、力が全盛期より衰えている老いぼれよりは、おまえ達二人がいたほうが良い。
貴公は残るんだ」
「しかし……」
「案ずるな……コーホー。
九州ロボでは散々醜態を曝したが、最期ぐらいは華々しく散るさ。
シスの暗黒卿としての誇りとして、インフレが酷すぎるサイヤ人や、ゆで理論とかいうわけのわからん奴らの内、二人ぐらいは道連れにしてくれるわ」
「待て! ベイダー卿!」
ダース・ベイダーは戦って死ぬ気であった。
ジャックは死地へ向かう盟友を必死に止めようとするが、拘束されていてそれも叶わず。
メフィラスはベイダー卿の意志を尊重して動くことも口を挟むこともできなかった。
ついでにニャル子は「自分が助かるならそれでいいや」と、薄情にも止める気はなかった。
「しかし、最期が全裸というのは頂けん。服がわりに飛影を持って行くぞ」
「ええ? 飛影は貴重な戦りょ……モゴモゴ」
「わかりました。遠慮せず持って行ってください」
確実な戦闘力増強として、パワードスーツに近いロボットニンジャ飛影を装着しようとするベイダー。
ニャル子は止めようとするが、空気を読んだメフィラスが彼女の口を塞ぎ、飛影はベイダーに託された。
ちなみにベイダーとジャックはニンジャである飛影を見てNRSを引き起こす失態を犯してたが「あれはその場のノリ」によるものなので、もうNRSを引き起こす心配はない。
超人血盟軍到達まであと10キロ……
「もう、時間がない。この山が捕捉される前に出撃する!
メフィラス! ハッチを開けろ!」
「ハイ!」
ベイダーの命令を受けて、ハッチを開けるレバーに手をかけるメフィラス。
「コーホー。
あとは任せたぞ、ジャック、ココ。
バーダック、幽香、織莉子、キリカ、デウス、ビアン博士……もうすぐそっちにいくぞ」
決死の覚悟を決めたベイダーが、飛影を駆り、出撃しようとする――
『待って! その必要はないわ!』
――その寸前で聞き覚えのある女の声が、コクピットのスピーカーから聞こえた。
「この声はココ!?」
突然、五大幹部の生き残りの一人、武器商人のココ・ヘクマティアルの声が聞こえたことに四人は驚く。
そして次の瞬間、どこからともなく巨大な白い腕がASO-3を掴み……訂正、カプセルサイズに小さくなっていたASO-3を人間サイズの腕が掴んだのだ。
そして、一瞬後には腕もASO-3もその場から姿を消し、同時に気も消えてしまったため、気を辿っていた超人血盟軍は主催者達を完全に取り逃がしたのであった……
(超人血盟軍のその後の経緯は『光と影』を参照されたし)
「コーホー、なんだなんだ!? いったい何が起きた!」
いきなり、巨大な振動がASO-3を襲ったかと思えば、超人血盟軍から感じ取っていた殺意などの気も一瞬で消えたので混乱するベイダーは、慌てて乗りかけた飛影から飛び出す。
そしてジャック達と同じように、正面モニターを見ると驚きの光景が広がっていた。
「コーホー……」
「ココ?」
「これは……」
「でっか!」
カプセルサイズのASO-3はココの手のひらの上にちょこんと乗っていた。
それはASO-3同様に小さくなっているベイダー達の視点からすると、自分達は釈迦の掌に乗った斉天大聖になった錯覚を覚えさせ、モニターに映っているココの顔はとてつもなく大きく見えた。
ココのASO-3を乗せてないもう片方の腕は、とりよせバックが握られている。
このバックは内部にワームホールがあり、遠くの場所にある物をバッグを通じて手元に取り寄せることができる22世紀の秘密道具であり、強力すぎるため参加者には支給されなかった支給品の一つだ。
ココはこのアイテムを使ってベイダー達を窮地から救ったのだ。
「ベイダー卿、ジャック、メフィラス……良かった、あなた達だけでも生きていて」
ココはASO-3の中にいる仲間達に微笑みかける。
「そして、ようこそ。
カオスロワちゃんねるにも書かれていない、私達以外誰も知らない隠れ家、東京都伊豆大島基地へ!」
伊豆大島。
本州から20キロ以上離れた位置にある孤島だが、いちおう東京都である。
伊豆大島基地とは、その島に築かれた主催の拠点である。
ちなみに先の放送で沖縄含む全ての離島が禁止エリアになったので、離島扱いであるので主催関係者と首輪を外した者以外は立ち寄ることはできない。
その基地の中にある一室、様々なモニターがある会議室にココと助け出されたベイダー、ジャック、メフィラス、ニャル子、飛影の五人と一機は移っていた。
(ちなみにASO-3はカプセルサイズでココのディパックに入っている。
ベイダー達はASO-3から出た瞬間、元のサイズに戻った)
「コーホー、このような基地、なぜ隠してたんだココよ?」
ベイダーの疑問はもっともであった。
元々、主催拠点を作る時間がなかったので、仕方なく祐一郎から九州ロボを簒奪する形になったのだ。
最初から拠点があれば、九州ロボを奪う必要もなかったのである。
「隠してたのは謝るわ。
でも、この基地ができたのはついさっきのことなのよ。
建設計画自体は進めていたけど、完成までにはカオスロワ開始には間に合わず、どのようにスケジュールを切り詰めても一日半はかかり、建設の労力であるモブ兵士に支払う膨大な資金もかかる。
しかも、この基地よりも遥かに巨大で防衛力の優れた九州ロボを手に入れるという誤算があったから、言う必要もないと思っていた」
「コーホー……なるほど」
「でも、建設自体はやめなくて正解だった。
九州ロボが奪われた今、ここを臨時の主催拠点にすることができた。
モブ兵士達のお給料も、抜けている誰かさんのおかげで賄えたしね」
「誰かさん?」
「なんでもないわ」
ちなみにココがN2爆弾を売ることで手に入れた呉島家の財産ほぼ全ては、この伊豆大島基地で働くモブ兵士の給料に全てあてがわれた。
「……できれば織莉子、キリカの二人にも、ここに来て欲しかったな」
「……」
特務機関員であった二人の友の死には、ココは涙を流さずとも、その表情には悲しみが宿っていた。
ベイダーはそんなココにかける言葉が見つからなかった。
「申し訳ありませんがベイダー卿、ココ嬢。
ご友人の死へ悲しみを抱くお気持ちは察しますが……」
横槍を入れるようにメフィラスの言葉が二人の間に割り込んだ。
「そろそろ私達に教えてくれませんかね……真実を、この殺し合いと世界滅亡、プロジェクト・テラカオスの全貌を」
「メフィラス」
「ベイダー卿、あなたがさっき言ったことに嘘がなければ、この世界は四日目を迎える前に消滅する……ならば残された時間はもう丸一日半しかない。
時間がないのなら、すぐにでも教えていただきたい。
適当な嘘も許しませんよ、少なくともこの殺し合いの目的が人口削減ではないのは既に看破しているつもりです」
メフィラスはすぐにでも真実を知りたいと強く思っていた。
そして返答次第では、特務機関ひいては
主催陣を抜けて離反するつもりであった。
口ではそうは言ってなくとも、彼の考えは周囲に伝わるぐらいの雰囲気を醸し出していた
「……賢いあなたやニャル子、ベクター、もう亡くなったけど新城やクルル辺りは、この殺し合いがただの人口削減が目的ではないと気づくと思っていたわ」
「コーホー……ジャック、この二人の『進行度』は?」
「二人共、陰性だ。なんらかの外的要因がない限り二人が『候補者』になることはまずありえない」
「そうか、ならば話してもよかろう……」
センチメンタルな気分を横に置いておき、幹部の三人はメフィラスとニャル子に真実を知らせることにしたようだ。
「あのー……勿体振り過ぎて出てこなかった、たぶん画面の前の多くの読み手と書き手も知りたがってる真実を教えてくれるのはありがたいんですが……
……なんで私、石抱させられてんです?」
ニャル子は幹部の一人、ココによって石抱させられていた。
ちなみに石抱とは三角形の木を並べた洗濯板のような板に正座させ太ももの上に重く大きな四角い石を載せるアレのことである。
つまり、ニャル子は拷問を受けていた。
「……フンッ!」
「ぎゃあああああああああああああ、痛ッ痛ッ痛ッ痛ッ痛ッ痛ッ!!」
そんな石を抱かされて足を痛めていているニャル子に対して、サディストの如く石の上から思いっきり踏みつける、鬼の形相のココ。
「なぜって? まずはあんたがやった所業を思い出して?」
「ええ……私は潔白です……いたたたたたたたッ!
嘘です嘘です!!
倉庫から支給品をくすねて申し込みありませんでした!!」
ニャル子は主催の倉庫から勝手に支給品、ダークスパークとダークザギのスパークドールを勝手に持ち出している。
「あれはね、元々は幽香が使う予定だったの、九州ロボ並の戦闘力を持つダークザギが使えてれば戦力として百人力よね?」
「ええ……」
「当初の予定では、私がなんらかの事情で留守にして九州ロボがまともに動けなくなった時、ダークザギがその分の戦力を補う手はずだったから、私は九州ロボから安心して出かけることができたわけよ」
「そ、そうなんすか……へぇー」
ここで互いにうすら笑いを浮かべるニャル子とココ。
「つ・ま・り!
あんたがダークスパークとダークザギをくすねなければ、九州ロボの防衛線に穴が開かなかったのよ、このバカーーーッ!!」
「ぎにゃああああああああああああああああああ!!
我々の業界でも拷問ですうううううう!!」
額に青筋を蓄えて笑顔のまま、ガンガンメリメリと石ごしにニャル子の足を踏みつけるココ。
もし彼女が支給品をくすねなけらば、幽香がダークザギをダークライブさせることで、多大な戦闘力を誇る超人血盟軍相手でも撃退もしくは殲滅ができたかもしれない。
敗北しても被害は大幅に減らせたハズだ。
それを幽香と事前に打ち合わせていたので、ココは九州ロボを留守にすることができた。
……だが、結果はこの有様。
すなわち九州ロボ防衛失敗の最大の戦犯は、幽香が使う予定だった支給品を盗んだニャル子だったのである。
それを知ったココは、防衛線にヒビを入れたニャル子に対して怒髪天を立て、拷問を与えることにしたのである。
「ひィ……」
その凄惨な(?)拷問の様子に引き気味のメフィラス。
ちなみにベイダーとジャックは。
「え? そういうことだったのか? 余は初耳なんだが」
「すまん、この件は私の口からベイダー卿に教えるつもりだったが、超人血盟軍襲来前後のゴタゴタと君の良い体に見とれてて伝えるのをすっかり忘れてしまった。
幽香もダークザギを使わずにやられていたから何か嫌な予感はしてたんだが、まさかニャル子の手にあったとは……」
「おまえな……」
ベイダーは仮面の下で、ジャックを白目で見ていた。
「……まあ、防衛失敗は何もかもがアンタの責任とは言わないわ。
私の読みも浅かったし、ダークザギがあっても勝てたかどうか怪しい。
本来なら処刑も辞さないところだけど、どんな思惑があろうともメフィラスと一緒にベイダー卿達を助けてくれた功績があるのも事実だし、命だけは取らないであげるわ」
「あ、ありがたき幸せ……」
「でも、アンタのことだから、このダークザギを使ってユウキ=テルミを九州ロボごと吹き飛ばそうとしてたわね」
「ギクギクッ!」
ココの思考を読んでいる言葉にニャル子の顔から滝のような汗が流れる。
誰が見ても、明らかにSAN値が下がっていた。
「図星のようね。
やめてよね、マキナである九州ロボが消滅したらファクターである私も死んじゃうじゃない。
何より、貴重な土地と世界復興の要である九州ロボがなくなったらどうするの。
アンタにコレは預けられないわ。罰として、没収ね」
「わ、私のダークスパークとダークザギ!」
「アンタのじゃないでしょ!」
石抱きで動けないニャル子に対して、ココは彼女のディパックからダークスパークとダークザギを取り出し、自分のディパックにしまいこんだ。
それだけに留まらず。
「ついでにこの子も没収するわ」
「ああ! 真尋さん!」
ココはソフビ化している八坂真尋も没収した。
未来のダーリンである真尋を取られたことに、ニャル子の表情がダークザギとダークスパークを没収された時以上に焦りがにじみ出る。
「それにしても真尋キュンは可愛いわね、フフーフ(はぁと)」
「あ、コラ! 頬ずりするな!
胸に挟むな! ペロペロ(^ω^)するなぁーーーッ!」
ソフビ真尋を見るやいなや、目がハートマークに変わり、愛でまくるココ。
愛でまくられる真尋を目の当たりにしてニャル子はパニックになる。
「こうなれば……シャンタッ君、その女を殺してでも真尋さんを奪い返して!」
「ミー」
もはや形振り構ってられないと言わんばかりに、明らかな幹部への反抗であることを覚悟の上で、ペットであるウマ面のコウモリの生物シャンタク鳥のシャンタッ君に命令して真尋をココの手から奪還しようとするニャル子。
「ミー……」
「あ、あれ?」
しかし、シャンタッ君はニャル子の意に沿わず、ココの足元で仰向けになってお腹を見せた。
服従のポーズである。
そしてココはモフモフとシャンタッ君のお腹を撫でた。
「悪いけど、シャンタッ君は最初からこちら側の味方よ」
「この裏切り者ォッ!」
ココは保険のためにシャンタッ君をあらかじめ手懐けていたのだ。
「ついでに飛影にも私達、五大幹部への明確な裏切りや九州ロボを破壊しようとする行為をした場合は自動で攻撃するようにプログラミングしてあるわ」
「マジすか」
「今さっきまで支給品を横領してたのがバレず、ベイダー卿達を助けていたからグレーゾーン止まりだったけど、間違ってもダークザギで九州ロボを消し飛ばそうとしなくて良かったわねぇ?(ゲス顔)」
『裏切者殺すべし、慈悲はない』
「ちょ、刀が背中に刺さってる! 刺さってる! 痛いんだよぉ!!(マジギレ)」
一歩間違った判断を下せば、ニンジャに首がはねられないかねない状況。
ニャル子は既に、ココに手玉に取られていた。
「さあ、話が脱線しすぎたわね。
茶番はこの辺にして、そろそろ話を進めましょうか」
「「「お、おう…」」」
「ちゃ……茶番て……」
真尋を手に入れたココは意気揚々に、男連中は若干引き気味に、ニャル子はボロボロの状態でいよいよ『プロジェクト・テラカオス』の全貌が明かされることになる。
(ニャル子は先ほど、ココを殺してでも真尋を奪い返そうとしたが、これは背信行為というより恋人を取られて焦ったゆえの失言なのでノーカンになった)
「これを聞いたからには後戻りはできないわ」
「我々のなそうとしていること、破滅へ向かっている世界の事情」
「コーホー、心して聞けよメフィラス、ニャル子よ」
なお、ベイダー卿は未だに全裸で、ニャル子は石抱させられたままであることをここに記しておく。
最終更新:2016年09月23日 21:04