メフィラス達に詳しい事情を話す前に、ベイダー達は二人がこの殺し合いで知っているか、どこまで気づいているかを聞いた。
二人はこの殺し合いの目的が人口削減ではなく『
テラカオス』を生み出すための手段であることや、ハラサンが提唱していた『救済の予言』までは耳にしているが、それ以外のことは他の特務機関員と同じであると答えた。
「コーホー、ということは一から話す必要があるようだな。
計画について話す前に先に知ってもらいたいことがいくつかある。
まずはこの世界の成り立ちについてだ。
二人は『TC計測値』という言葉を知っているか?」
「いえ」
「聞いたことありませんが、まさかTCは安直に『テラカオス』の略ってわけはないですよね?」
「よく気づいたな、概ね正解だ」
「合ってんのかい!」
狸組が九州ロボに潜入した時に、見つけたTC計測値。
そのTCがテラカオス(Tera Chaos)の略というのはニャル子が当てずっぽうで言っただけだが、正解だったらしい。
「コーホー。
『TC』、正式名称『テラカオスエナジー』。
この世界を構成する、目に見えない未知のエネルギーで、この世界にはなくてはならないものだ。
別の世界では『蒼』ともいうらしい。
『TC計測値』とは文字通り、そのエネルギーの量を測ったものだ」
「TCがこの世界になくてはならないもの? どのように?」
「TCは創造と破壊を司る根源の力。
仮に使いこなせれば全ての事象干渉を退ける「外周因子」となりうると同時に、世界すべてを変革できるほどの「事象干渉」を行うことが可能となるというらしいが……」
「言ってる事が難しくてわけわかめ、もっと簡単に」
「『とにかく何でもアリで型破りなエネルギー』だと思え。
TCの現実を改変する力によって、本来だったら矛盾する生態系や、現実的に考えて存在できない力や生き物が世界に存在できるのだ。
例えるならグンマーの生物。彼らは大きく巨大な竜や魔物が多いが、科学的に考えると足で自重を支えることすら不可能だ。
TCはその矛盾を『あやふや』にすることで彼らの存在を成り立たせている。
言わば、我々が吸っている『酸素』と同じくらい大事な物だと思ってほしい」
本来なら常識的に考えて生きてはいけない矛盾をはらんだ漫画・アニメ・ゲームキャラの存在も、このカオスロワ10期の世界ではTCによって存在できるのである。
この混沌とした世界はTCのおかげで構成できているのだ。
「我々がこの世界に存在できているのは、そのTCのおかげだったのは理解できました。
しかし、それがこの殺し合いと何の関係が?」
「コーホー、これを見てほしい。
ココ、大災害発生時のTC計測値のモニターを出してくれ」
「はい」
ココは大災害発生時のTC計測値をまとめた映像を映し出した。
それは狸組が九州ロボと、とある民家で見たものとまったく同じものである。
計測値の最も低い日本を除いた、土地という土地が大地震と共に海に沈み、宇宙にあるコロニーや人の住む惑星が目に見えない力で破壊されていく。
「大災害当時の映像ですが……」
ここで違和感に気づいたニャル子が、某少年探偵風に疑問を口にする。
「あれれー? おかしいぞー?
TC計測値が高い土地の方が破壊されてるってどういうことー?」
「TCは我々の世界にとって必要なエネルギーだったのでは?」
二人の疑問に対し、ベイダーは答える。
「TCがこの世界に必要不可欠なのは間違ってないが、それはあくまで適量だった場合だけだ。
多量に浴びすぎた場合は生き物も土地も破壊されて消滅する。
空気を入れすぎて破裂する風船のようにな。
仮に生きていても事象改変能力のあるTCに肉体を汚染されて生態や思考、存在を歪められた者もいる。
歪められ方は様々で、どんなに軽い者でも元の性格では考えられない奇行に走ったり、中にはカオスロワ開始前は死者だった者が生き返った者もいる」
「適量なら恩恵をもたらすも、過量なら毒になる……まさに酸素と同じですね」
「デカオとか分裂して増えまくっているんですが、ひょっとしてTCのせいだったり?」
「ああ、テラカオス候補者でもない以上、間違くなく汚染されている。
大災害発生時に日本以上にTC汚染の酷い海外にいた事実や、カオスロワ開始前からあの様だったのが、それに拍車をかけている」
拳王連合軍にいるデカオの謎の増殖は、存在を歪めるTC汚染に起因するものだった。
またチチもぎマーダーとして猛威を振るった
長門有希の謎の奇行や、ロワ開始前に死亡したハズのニンジャ・フロストバイトが蘇っていた理由もTC汚染が理由である。
「しかし、映像を見る限り、地球より宇宙の方がTC計測値が濃いようですね。
TCは宇宙のどこかから来ているということでしょうか?」
「そうだ。TCはどこからともなく出てくるのではなく、ちゃんとした出所がある。次の資料を見よ」
モニターの映像が切り替わり、宇宙のどこかに開いた大きな『穴』が映された。
「なにこれ、ブラックホール?」
「いや、どちらかと言えばブラックホールの出口であるホワイトホールに似てますね」
「ああ、他のホワイトホールとの違いは対応するブラックホールがこの宇宙になく、吐き出すのはTCだけだがな。
これは『TCホール』と言う」
ちなみにTCホールは今いる地球から何光年も離れているので目の良い参加者でも肉眼で観測することは不可能である。
「さて、このTCホールがまともに運行していれば、我々は何の害もなく過ごすことができた。
……だが、このTCホールは周期的に暴走する時があるそうだ。
そして、その周期に入ったと同時に、宇宙のあらゆる星々に莫大な量のTCを撒き散らした」
「それが此度の『大災害』の起こりというわけですか」
「その通りだメフィラスよ。
大災害が起こった瞬間、余が所属していた絶大な国力と戦力を有していた銀河帝国も為すすべもなく一瞬で吹き飛んでしまった……」
資料映像の中で見えない力で散っていく星々。
「だが余は生き残った。
大災害が起こる寸前に、かつて滅ぼしたジェダイの騎士の図書館……その中にあった古文書に目を通していた余は急いで部下のストーム・トルーパー共を率いて帝国を脱出し、TCホールから最も離れている地球、そして偶然TCが照射された軌道から外れて生き残った日本に流れ着いたというわけだ」
そして、日本へ流れ着く過程でダース・ベイダーは実力者であり信頼できる者達、ジャック・O、ココ・ヘクマティアル、バーダック、風見幽香、美国織莉子、ビアン・ゾルダーク、デウスエクスマキナと出会い、世界を救うために奔走することになる。
余談だが、ベイダーの師匠である銀河帝国の皇帝や、他の配下には報告する時間もなかったので、彼らも死亡したと思われる。
更に余談だが、生き残ったストーム・トルーパーが後の主催モブ兵士だったりする。
「古文書ということは、ジェダイの騎士はTCホールと大災害の件を予見していたということですかね?」
「左様だ。
元ジェダイの騎士である余も知らないところからして、知っているのはごくひと握りだろうが。
しかし、ジェダイを滅ぼしたことでTCホールを知る術を失った帝国が滅び、ジェダイを裏切った余が生かされるとはなんたる皮肉か……まあ、今は関係ないが」
映像資料に解読された古文書の内容が映る。
「余が見つけた古文書にはTCホールやTCについてはもちろん、大災害についてのことも書いてあった。
……それによると、一度目の大災害は余震に過ぎないとな」
「余震!? あの威力で?!」
「恐ろしいことにそうらしい。
そして次の大災害は最初の時とは比べ物にならないくらい破壊力があり、宇宙まるごと滅ぼせるほどの量のTCがばら蒔かれるということだ。
……今度は日本も助からん。
九州ロボのような浮島を作って地震や津波は回避できようとも、TCに満遍なく汚染されるので意味はない。
TCホールをどうにかしない限り、どこにいようとも一人残らず死ぬことになる」
天才の祐一郎が予見した通り、大災害には二度目があった。
しかし、さすがの天才でも、大災害をあくまでただの天変地異だと見ていたため、浮島の機能を持った九州ロボを作れば安泰だと思い込んでいた。
もし大災害が土地を浮島にすることでなんとかなる問題だったのならば、九州ロボが開発された時点で五大幹部はカオスロワなど中止していただろう。
「だが、古のジェダイの騎士達はTCホールもとい大災害に唯一対抗できる術を古文書に遺していた。
TCホールに唯一対抗できる『テラカオス』と、そのテラカオスを作り出すための『ナノマシン』の設計図をな」
そして五大幹部はテラカオスを生み出すために、
混沌の騎士や神樹が感じ取った瘴気の正体――ナノマシンを参加者の支給品の飲み水の中に混入し、テラカオス化を活性するために殺し合いを開いたというわけだ。
「それでどうやってテラカオスで世界を救おうと言うのですか?」
「人喰い歌姫や焼け
野原ひろしを見ていると、ゼンッゼンッ世界を救う要素なんて微塵も感じ取れないんですが」
ベイダーの持ってきた古文書には世界を救う鍵はテラカオスであるらしいが、会場で今も暴れ虐殺を繰り広げるテラカオス・ディーヴァやテラカオス候補者を見る限り、とても世界を救うようには見えない。
果たしてどうやってテラカオスで世界を救おうというのか?
「コーホー。テラカオスは怨念の集合体にして混沌と殺戮の神。
高い戦闘力を誇り、完全体になれば殺し合いで死んだ全ての死者の技まで使える驚異の存在。
スーパーコンピュータである京が観測した平行世界の情報でも、ほぼ全ての世界で破壊者としての顔を見せていた……
しかし、それはあくまでテラカオスの一面に過ぎず、もうひとつの特性があることを古のジェダイは知っていた。
テラカオスは言わば存在自体がバグに近い存在……最初から歪んでいるために、他の者が浴びれば有害になる高密度のTCを……唯一取り込んでエネルギーに変換できる。
ナノマシンには参加者をテラカオス化させる機能とは別に、完全なテラカオス化した者をTCホールに送り込むワープ装置が組み込まれている。
次の大災害の時にテラカオスをTCホールの目の前に送り込んで、放たれるTCを全て吸収させてしまおうというのが、我らの計画だ」
知らないものには、テラカオスのその攻撃性と死者の技を使える能力ばかり目が行くが、混沌そのものであるテラカオスならば混沌のエネルギーであるTCを吸収できる能力を有しているというのだ。
それが他期の世界ではお目見えしなかったテラカオスの隠された能力である……というより他の世界では大災害の元凶であるTCホールもない、もしくはあっても暴走する周期に入ってないので、登場しなかったのである。
そして、TCホールから放たれる有害なTCを、殺し合いで生み出したテラカオスに吸収させて大災害を防いでしまおうというのが、五大幹部の計画である。
「しかし、テラカオスでTCを吸収できるという根拠は?
ジェダイの古文書もどこまであてになるのか……」
ここでメフィラスからの質問である。
古文書がどこまで信用できるかは定かではなく、信憑性を疑問視したのだ。
「ああ、我々も最初は古文書を疑った。
そして真偽を確かめるためにある実験を行うことにした」
「実験?」
「テラカオス化ナノマシンとネズミを使った動物実験だ」
モニターに一つの動画が移される。
そこにはガラスケースに個別に詰められた三匹のネズミがいた。
『ちょっと誰かー!! ここから出してよー!!』
『助けてくださ~い、ハムタロサァン』
『ハハッ』
一匹はテラカオス化が全く進行しない陰性のネズミ、たなチュー。
一匹はナノマシンによってテラカオス候補者になった、こうしくん。
一匹はテラカオス化させたことで耳がなくなり首から下がタコのように異形化した(ただし殺し合いを経て生み出したわけではないので戦闘力は極めて低い)、たこぶえである。
「他の二匹はともかく、最後の一匹はどう見てもD社の」
「コードネームは『たこぶえ』だ」
「しかし、どう見ても浦安市にある遊園地の」
「これはあくまで『たこぶえ』よ」
「……訴えられますよ?」
「コーホー、『たこぶえ』だと言ってるだろ!」
(つか、こうしくんはネズミじゃなくてハムスターだってことはツッコミいれた方が良いのかしら?)
「コーホー。メフィラスのせいで些か脱線したが――
「私のせい!?」
――実験の内容はビアン博士が作った擬似的なTCを発生させる装置を使い、どれだけ耐えられるかを検証したテストだ。
実際に古文書の通りに、テラカオスがTCに対抗できるかどうかを確かめるためにな」
画面の中で実験が開始され、三匹のネズミに擬似TCが照射される。
『助けて、ピカリ――』
開始から僅か数秒で、たなチューの肉体は弾けとんで消滅した。
テラカオス化を全くできなかった陰性のたなチューの肉体は、TCにも全く耐性がなく肉体が耐えられなかったのだ。
【たなチュー@爆チュー問題 カオスロワ開始前に死亡】
『ハムタロサァン……』
続いてたなチューが消滅した一分ほど後に、こうしくんの肉体も粉々に弾けて消滅した。
彼は候補者としてテラカオスに近づいたため、普通のネズミだったたなチューと比べれば少しは持った。
それでもTCに対して完全な耐性を持っていたわけではないので、肉体が耐え切れなかったのだ。
【こうしくん@とっとこハム太郎 カオスロワ開始前に死亡】
『ハハッ♪』
そうして生き残ったただ一匹、テラカオス化したたこぶえだけが生き残った。
それどころか、粉砕した残りの二匹とは違い、明らかに元気になっており、その体はムクムクと大きくなっていた。
「これは……」
「コーホー。我々もこの実験でわかった。
古文書の有用性と、TCホールへのテラカオスの有効性をな」
TCの前にただのネズミは一瞬で、テラカオス候補者のネズミはただのネズミよりかは長く持ち、テラカオス化したネズミは耐えている。
古文書に書かれた通り、テラカオスはTCを吸収し自身のエネルギーにしていた。
この実験で古文書に偽りがないことが証明されたのだ。
「あれ? だったら曲がりなりにもテラカオスになってるこのミ……たこぶえ一匹さえいればいいんじゃ?」
かつて自称黒幕のアガサ博士が光彦をそうしたように殺し合いを介さずにテラカオスを作る裏ワザはある。
たこぶえはまさにそれだったが、ならば殺し合いを開く意味もないのでは?
というのがニャル子に浮上した疑問だった。
「曲がりなり、ではダメな理由があるのだ。
実験はこれで終わりではなく続きがある。少し早送りするぞ」
それから五分、十分とたこぶえはTCを浴び続け、大きくなっていたが……
「ハハッ……ハハハッ……ゴフッ」
唐突にたこぶえは苦しみだし、血を吐き始めた。
「なんだ!?」
「コーホー。強度が限界を迎えたのだ」
「強度、とは?」
「殺し合いという儀式を経ずに産まれたテラカオスは耐久性が低い。
TCを吸収はできるが、一定以上ため込めるだけの強度を持ち合わせていないのだ。
陰性の者や候補者に比べればマシだが、この程度では次の大災害には到底耐えられん」
『ハハッ、細切れにしてや――』
そして映像の中でTCに耐え切れなくなったたこぶえの肉体もとうとう吹き飛んだ。
【ミッキーマウ(ry…たこぶえ@駄菓子 カオスロワ開始前に死亡】
「以上が実験の結果だ。
古文書に嘘はなく、テラカオスはTCに有効であることがわかった。
……しかし、古文書には大災害に耐えられるだけの強度を持つテラカオスを作り出すには、どうしても大規模な殺し合いで参加者を戦わせるしかないともあった。
そこで我々は古文書に従い、大規模な殺し合い『カオスロワ』を開いたのだ」
ただ生み出しただけの「弱い」テラカオスではダメなのだ。
大災害に耐えられるだけの「強い」テラカオスを作り出すのは憎しみと殺意が渦巻く殺し合いしかない。
サウザーの考察通りカオスロワとは、世界を救えるだけの一番強い蟲「テラカオス」を作り出すための「蠱毒」だったのである。
「強いテラカオスではないとダメということは、今、会場で暴れている風鳴翼……テラカオス・ディーヴァでもダメということですか?」
「ああ、あれは未完成のテラカオスだ。
実験映像のネズミよりかは持つだろうが、次の大災害はとても防ぎきれん。
完成の指標である『死者の技が使える』までは我らの目的には程遠い」
テラカオスとして新生した風鳴翼もといテラカオス・ディーヴァも参加者としては圧倒的な実力を持っているが、まだ完全なテラカオスとは言えない。
死者の技が使えるようになって初めて強いテラカオスとして完成するのだ。
「いくつか、疑問とツッコミ所があるんですが、いいですかね?」
「ニャル子よ、なんだ?」
「テラカオスが大災害を防ぐのに有用なのはよ~くわかりやしたよ。
でも疑問その一、テラカオスがTCホールのTCを吸ってエネルギーに代えられるってことは、テラカオスがパワーアップして、こっちに襲いかかってくる可能性もあるんじゃ?
つかバラ撒いたナノマシンもどうするの? そのまま放置したら無限にテラカオスや候補者が増え続けるじゃん。
宇宙滅ぼせるだけのエネルギーを手にした敵が現れたら、どう責任とんの!?
疑問その二、なんでこんな重大な計画にユウキ=テルミとか入れちゃったの?
それから疑問その三、テラカオス以外に大災害をどうにかする方法もあるんじゃないですか?
龍が出てくる七つ玉とか、某ピンク髪の少女を白い淫獣の下に連れ出して願いを叶えてもらうとかさー。
疑問その四、真尋さんをいつ返してくれるんですか?」
ニャル子の疑問ももっともだった。
大災害の時に発せられるTCをテラカオスが吸ってパワーアップしたら、驚異が大災害からテラカオスにすげ変わるだけで意味がない。
仮にテラカオスをどうにかしても、ばら撒いたナノマシンも地上に残り続けて候補者やテラカオスを生み出し続けるだろう。
これだけ重大な計画なのにユウキ=テルミもといハザマのような裏切ることに定評がある者を多く特務機関に入れたのか。
そもそもドラゴンボールで神龍を呼び出して願いを叶えてもらうなど、カオスロワより穏便でより平和な手段は取れなかったのか?
ココの手元に囚われた真尋はいつ戻ってくるのか?
この疑問にはベイダーに代わってジャックが答える。
「それらについては私が答えよう。
とりあえず真尋はココが飽きるまで諦めろ」
「救いはないんですか!」
「最初の質問からだが、テラカオス化ナノマシンは先ほど言ったワープ機能の他に、テラカオスを自滅させる機能もついている」
「自滅? できるんですか?」
「発動条件は次の大災害をテラカオスが防ぎ切った瞬間。
その時を迎えたと同時に、全てのナノマシンにプログラミングされた自殺装置が一斉に作動し、テラカオス、その候補者、そしてナノマシンそのものが自滅することによってテラカオスが大災害以上の驚異になることを防げるんだ」
「なるへそ」
ジャックの言い分が正しければ、テラカオス関連のモノはすべからく死に絶えるので、カオスロワが終わった後までテラカオスやナノマシンに悩まされる心配はなくなるようだ。
「次の質問だがベイダー卿が言った通り、人材を選り好みできる時間がなかった。
本来は多くの拠点を建て、特務機関員も大尉や風魔、黒のようないい男……じゃなくて優秀で任務とあらば非情になれるが、絶対に裏切らない者だけで固めるつもりだった」
「ところが、カオスロワの準備を着々と進めていた我々だったが、スーパーコンピュータ「京」の計算で次の大災害が僅か数日に迫っていることを知ってしまったのだ。
もはや一刻の猶予もなかった我々は、数多く配置する予定だった全ての主催拠点の建設を中止。
特務機関員も選んでいる場合ではなく、人格に問題のあるシックスやベクター、モノクマや後のユウキ=テルミになるハザマなどを徴用するしかなかったのだ。
もうこの時点で無茶な賭けだとわかったが、時間がない以上、拠点なし問題児だらけでカオスロワを開始するしかなかった」
拠点を構えなかったのも、特務機関員に裏切り者が多いのも、全ては時間がなかったゆえの判断だった。
「ただ、裏切者になりそうな者はなるべく最前列に配置し、使い潰すようにしていた。
実際、シックスは殺し合いをある程度かき乱して死に、モノクマは死ぬ間際に興味深いデータを残してくれた。
裏切ったサーシェス、ベクターは今も生き残って存命しているが、前者はテラカオス候補者に、後者は
DMC狂信者に入ったおかげで殺し合いを助長させてくれている」
いずれも裏切ったのは死んでもいい外道ばかりだが、殺し合いにはそれなりに貢献してくれたのだ……ある一人を除いて。
「しかしユウキ=テルミ。こいつだけはイレギュラーだった。
ハザマ時代の時に拳王電車に轢かれてズガンと殺されたところはあまりにも呆気なさすぎると思ったが、裏切る前に死んでくれたのは内心安心していた……
……この時に奴に他者への憑依能力があることに気づいていれば、結果は変わったのだろうがな。
あとは二人が知ってのとおりだ。
まったく、策士が策に溺れさせられたよ……」
リサーチ不足だったのか、ユウキ=テルミに憑依能力があることを見抜けなかったジャック達は油断してしまったようだ。
死んだと思われたユウキ=テルミはストライダー飛竜の体を乗っ取って復活し、主催陣営に多大な損害を与えた。
ユウキ=テルミ一人入れなければ、少なくともデウスエクスマキナは死ななかったかもしれず、グラシエも裏切らなかっただろう。
「ああ~、残念な主催陣営だとは思ってたけど、残念にならざる負えなかった理由もあるんですねー」
「よく上司である我々の前で残念とか言えるな、君は。
まあいい、最後の質問だが……ココ、アレはあるか?」
「ええ、持ってるわよ」
適当なテーブルの上にココはデイパックから謎の物体を取り出した。
欠けた丸い七つの石のようだが……
「なんですか、このクッソ汚い石?」
「……ドラゴンボール、その成れの果てだ」
「ほうほう、ドラゴンボールって言うんですか、へぇー?」
「なんですとーーーーーーーー!?」
思わずノリツッコミをしてしまったニャル子。
ココが取り出した七つのドラゴンボールは、ニャル子の知る神々しいオレンジ色の球体水晶ではなく、力を失った石の塊と化していた。
「我々だってコストもリスクもかかる上に大量の犠牲を強いなければいけないカオスロワを開こうなどとは思わなかった。
カオスロワ自体、当初は織莉子もキリカもビアン博士にデウス、ココや私だって反対だった。
だからカオスロワを開くと決める前に、ドラゴンボールを集めて願いを叶えてもらおうとした。
そして辛くもドラゴンボールを七つ集めた我々は、神龍を呼び出して願いを叶えてもらうことにした」
もしここで、願いが叶っていればカオスロワはもちろん次の大災害の悲劇は回避できただろう。
「神龍に『次の大災害を防いでくれ』と我々は頼んだ……そしてどうなったと思う?」
……しかし、運命はかくも残酷であった。
「願いを叶えようとした神龍の方が、バラバラに消し飛んでしまったよ。
後に残されたのは、力を失った七つ玉だけだった」
「ファッ!?」
「しかもドラゴンボールほど絶大な魔力を含めた物は、タイムふろしきのようなひみつ道具でも復活できないと来た。
こうしてドラゴンボールを使って世界を救う計画は水泡に帰した」
【神龍@ドラゴンボール カオスロワ開始前に死亡確認】
※ドラゴンボールはタイムふろしきでも復活できません
「どうしてそんなことに……」
ドラゴンボールと言えば、屈指のチートアイテムだ。
神様の力を超える力でなければ、ほとんどどんな願いでも叶えられることができる。
「簡単なことだったのだ、大災害は神龍の力……神の力を大幅に上回っていた。
後で京で計算してみたが、恐ろしいことがわかってしまった」
「恐ろしいことってどんなことです?」
「神龍が願いを叶える力、エントロピーが1として、大災害のエントロピーが10」
「10倍!? マジすか」
大災害が全能の力を持つ神龍の10倍の力を誇る、それでもニャル子は十分驚きだったが。
「違う、話は最後まで聞け。
大災害のエントロピーは10の12乗倍、すなわち一兆倍だとわかったんだ」
「いっちょうばい!?」
大災害はドラゴンボールの力の一兆倍を持っている。
力の差はイデオンとジム並。
願いを叶えようとした瞬間、吹き飛んでしまうのも無理はない話だ。
「鹿目まどかを洗脳してインキュベーターに願いを叶えてもらうプラン(まどか魔女化の顛末を知る織莉子は猛反対していた)もあったが、これも神龍と同じくインキュベーターごと吹き飛んでしまうことがわかった」
「概念級になれる魔法少女でもダメとか……」
「それどころか、今生き残っている少女を全員魔法少女にしても足りないぐらいだ。
魔法少女だけでなく、日本に生き残っている者あらゆる力を結集させて、大災害を回避できるか「京」に計算させてみた……が、ダメだった。
大災害には足元にも及ばないと計算が出てしまったんだ」
計算の中にはハクメンや
マーラ様や、フォレスト・セルなどの超理不尽級も含まれている。
それを結集させてもなお足りないことが、「京」の出した答えだった。
「ええーい、だったらこの世界自体諦めて、とっとと別の平行世界にでも逃げた方がお得じゃないですか?
そーいうことができそうなデウス隊長やビアン博士は死んじゃったけど、今生き残っている科学者系参加者や道具をかき集めれば可能じゃないですかね!」
テラカオスに頼らず、他の世界へ逃げるというもの。
この世界に見切りをつけて捨てることになるが、滅びる世界にわざわざ残ってカオスロワを開くよりは遥かに人道的で安全な策に思えた。
「残念だが、それはできない。
この世界から脱出することはできない」
「なして!?」
「TCが汚染するのは生物や物質だけじゃない。
TCは空間すらも侵しているんだ。
大災害が起こったその日から時空間が歪み、この世界からいかなる手段を用いても脱出することはできなくなっている」
「そんな! でも混沌の騎士とか、ディーとか、マーラ様とか……」
「蟻地獄と同じで入ることは簡単にできるようだがな、出ることは例え神の力をもってしても出来はしない。
更に時空が歪んだことに過去や未来へのタイムスリップも不可能になった。
大災害が起こらない過去や、大災害の余熱が覚めた未来に逃げることもできない。
織莉子のように未来予知はできるが精度も高くなく、見れるのはほんの僅か先の出来事だけだ」
「詰んでるってレベルじゃねーぞ!」
よからぬことを考えていたベクターは、世界滅亡の後にカオスの力を使ってこの世界から脱出しようと企てていたが、本人が気づいていないだけで実はそれもできないのである。
時を駆ける魔法少女である暁美ほむらが時間遡行できなくなったのも、TCが原因である。
一度、この世界と時空に入ってしまった以上、誰もこの世界から逃げることはできないのだ。
「それだけじゃない。
あらゆる蘇生呪文が使えなくなったのは二人とも、もう知っているな?」
「ええ」
「ザオリクもサマリカームも使えなくなったアレですね、使えなくなったのは……?」
「お察しの通り、空間がTCに汚染されている結果ではないかと思われる。
古文書には書かれていなかったが、可能性は高い」
今期はサイボーグ化や強い怨念によって魂が冥界にいけなかった草加などの一部例外を除いて、死人が生き返ることは絶対にない。
「それのせいで死者復活祭りもできはしない……まあ、あんまりホイホイ生き返ってもらっても困る時はあるんですがね、せっかくのシリアスが壊れる場合があるし」
「メタ発言は自重しろニャル子。
……正直なところ、死ねるだけだったらまだいい、生き返れないのも本来は自然の摂理だ」
「ジャック、蘇生関連でも何かまだ問題があるんですか?」
ジャックは今までの中でも神妙な顔で答える。
「どうやら例の古文書によると、莫大な量のTCは肉体だけでなく……魂すら消滅させるのだ。
現世界と冥界、生ける者と死んだ者……関係なく、次の大災害で全ての魂が消滅する!」
「なん…だと……!?」
「その結果、何が起こるか?
死んだだけならまだ良かったと言えるようになる。
魂は天国か地獄に行きつき、輪廻転生でまた蘇る。
だが、魂がなくなれば輪廻転生はできず、新しい命は大災害後には芽吹かない。
それすなわち……」
「……行き着く先は世界の死、虚無だけだ」
大災害が起こればTCによって魂が消滅し、後には何も残らない。
他期には死者スレで暮らすという
エンディングがあったが、それすらできないのである。
「これでわかってくれただろうか?
時間は残されていない、逃げ場はどこにもない。
全てを根絶やしにする大災害を回避するには、無茶な賭けと大量の犠牲を覚悟の上で殺し合いを開き、テラカオスを完成させてTCホールに送る以外、世界に道はないのだ」
幹部クラスの者達もやりたくてカオスロワを開いたわけではない。
時間が残されてない故に、人材と拠点に問題を残したまま、カオスロワを開くしかなかった。
どこにも逃げ場がないので、死人が大量に出るカオスロワを開くしかなかった。
他の手段もなく、他の手段を探す時間もないゆえにカオスロワを開くしかなかった。
「しかしジャック、カオスロワで大量の犠牲と損害が出て、無法な殺し合いは社会システム的にも大打撃を受けさせます!」
(私は真尋さんが生きてればなんでもいいけど)
「テラカオスを生み出さねば、どう足掻こうとも世界は滅び、やらねば全滅だ。
人口の99%が犠牲になっても残りの1%が生き残っていれば世界は存続できる、全滅するよりはマシだろう……そう思い、我々は覚悟の上でカオスロワを開いたのだ」
殺し合いは多くの悲しみや怒りを振りまく。
だが、少なくともカオスロワ10期の世界では、その悲しみと怒りこそ必要であった。
仮にカオスロワを開かなくとも、二度目の大災害で結局全ての命を奪い去ってしまうのだから。
「わかりました……必要悪なら仕方ありませんね」
「コーホー、メフィラスよ。わかってくれたか」
「ええ、敬意に値する地球人が犠牲になることは内心快くないですが、全滅を回避するためには多少の犠牲も止むなしというところでしょうか。
もちろん、他に世界を救う穏便な手段があるなら、私は悩まずにそちらに飛びつきますが……それが見つかるまでは命の恩人であるベイダー卿に従いますよ」
迫り来る大災害に対して平和的な解決手段が見つかるまではベイダーに従う。
それがプロジェクト・テラカオスに対してメフィラスが出した結論だった。
「わ、私もココ様達の世界を救う尊き計画に賛同しますです!
……だから真尋さんを返してぇ」
「ダ~メ、あんたは自分と真尋キュンが生き残ることだけしか考えてなさそうだから」
「ギックゥ!! ……て、真尋さんの頬にキスするなあああああ!」
ニャル子は計画については理解したが、自分と真尋優先なのは相変わらずであった。
「しかし、計画については理解できましたが、一つだけ気になることが……」
「コーホー、なんだ?」
「テラカオスに関係するかもしれない話です。
皆様は救済の予言をご存知ありませんか?」
メフィラスが言ったのは、からくりドームで命を落とす前にハラサンが
イチローチームに話した救済の予言のことである。
「それは余達も聞いた」
「内容は確か、
“九人の最良の戦士たちによる儀式の完遂、全てを虜にする歌、
巫女の祈り、器たりえる巨像、不屈の精神を持った勇者。
全てが揃いし時、争いの淀みから生まれた化身は救いの神に転じる”だったな……それがどうした?」
「ええ、この予言の『争いの淀みから生まれた化身』は殺し合いによって我々が生み出そうとしているテラカオスのことではないのでしょうか?」
メフィラスとニャル子は救済の予言にテラカオスとの因果関係があるのではないかと睨んでいた。
しかし……それを聞いたベイダーとジャックは苦い顔をしていた。
「確かに化身の下りはテラカオスで間違ってないように思えるが……余の持ち出したジェダイの古文書にもそんなことは書いてなかったぞ」
「内容に妄言としか取れない不明瞭なことが多すぎる。
ハラサンは九人の最良の戦士たちによる儀式を野球による試合と解釈していたが……野球で世界を救うっていうのは常識的に考えてどうなんだ?」
「それは……」
ベイダー達は予言に関して懐疑的だった。
特に『九人の最良の戦士たちによる儀式の完遂』……つまり野球チームが試合をして優勝することに関しては、意味不明としか思えなかった。
まともな人間のならこの時点で、なぜ野球なんだ? と思うだろう。
いちおう、試合が終わった会場に野球ボール状の呪印が浮かび上がる謎の怪現象が発生しているが、誰かが仕掛けたイタズラかもしれない。
実際、そういうのができそうな参加者は会場にゴマンといるのだから。
だが……
「いや、ベイダー卿、ジャック。
私が調べたところ、その予言は眉唾物じゃなさそうよ?」
ココの意見は違った。
他の四人の顔がココに向く。
「コーホー、どういうことだ? というより、いつ調べた?」
「私も例の予言が引っかかってね。
九州ロボを出て、イチローチームと大正義巨人軍が戦ったからくりドームも調べてきたのよ」
「ただ『ヒャア我慢出来ねぇ本職だ!』だと言って商魂を抑えられずに出て行ったわけではなかったのか、コーホー」
「失礼ね! 私の本当の目的はからくりドームのリサーチよ!
じゃなきゃ、幽香やバーダックが九州ロボから出してくれないし、商売は東京なんて激戦区に出かけた理由の半分くらいしかないわよ!」
「そ、そうか……」(半分くらい……?)
ベイダーの失言(?)にプンスカしたココだったが気を取り直し、モニターを操作して全員に見せる。
「で、からくりドームを調べてみれば、面白いことがわかったのよ」
「からくりドームに何があったのですか?」
「試合が終わった会場の土には、高純度の生体マグネタイトに似たエネルギーが溜まっていたのよ」
「生体マグネタイト? って、真・女神転生の悪魔を呼び出すのにエネルギーじゃないですか」
生体マグネタイトとは悪魔を呼び出すのに必要なエネルギーで、生きとし生ける者の中にも含まれているエネルギーである。
このエネルギーに目をつけたDMC狂信者はクラウザー復活のためにビックサイトを巨大なマグネタイト収集装置に変えているほどである。
それに似たエネルギーとはどういうことだろうか?
「さらに会場を隅々まで調べたら、なんらかの術式があったわ」
「術式? どんな術式だ?」
「正直、オカルト関連は幽香の専門で、私は彼女からちょっとだけ教わった程度だから、詳しい原理とかわからないけど……
術式の形からして野球選手が試合中に放った闘気や生命エネルギーを野球場の土に吸わせて留めさせるようにしているんだと思う。
じゃなきゃ、ただ殺し合っただけではエネルギーは貯まることはありえないわ」
生前のハラサンの言っていた『魂を込めた球を投げ合い、打ち合い、捕球し、マウンドを走り回って大気に汗を振りまき。 そして敗者たち……生贄の血を大地に捧げる』とはこのことだったのか?
「このエネルギー、取り出せるのか?」
「それはダメみたいね。
術式によってエネルギーそのものは野球場から移せないようになっている。
幽香が生きていれば解除もできたかもしれないけど」
もし、術式がなければ、からくりドームのエネルギーはビックサイトもしくはディーの呼び出した龍脈の龍により、全て吸収されつくしてしまっていただろう。
それだけ特殊な術式がからくりドームに施されていた。
「コーホー、他の球場でも試合後に呪印が現れたが、からくりドームと似た術式が使われていると見るべきか?」
「たぶんね」
「しかし、なぜ野球なのだ? これがよくわからん」
ここで疑問出てくる、なぜわざわざ野球なのか?
ただの野球場に、なぜにエネルギーを貯めるような術式を作ったのか?
「その答えは簡単よ。
この世界の野球選手は強い選手が集まり易い……本当なら、野球選手じゃなくて戦士や兵士になるべき尋常じゃない戦闘力を持った者が多い」
イチローやムネリンをはじめとして、この世界の、野球選手は
範馬勇次郎が雑魚に見えるほどの強者揃いである。
つまり実力はトップクラスの戦士達とも言い換えられる。
「そんな彼らが本気の殺し合い……殺人も上等のカオスロワ式野球をやったらどうなるかしらね?」
「コーホー、なるほど。
ちょっとやりあっただけで、闘気などの凄まじいエネルギーが発生しそうだな」
「誰がいつ、この術式を仕掛けたかは定かじゃないけど、そこに目をつけたんでしょうね。
さらに試合で勝ち上がった者同士が戦えば、更に高純度・高密度の生体エネルギーが手に入りそうだわ」
「九人の最良の戦士達による儀式の完遂……べらぼうに強いヤツラ同士を野球させて優勝争いさせて、エネルギーを回収しちゃおうってのが、目的なんですかね?」
「おそらく、ね。
このエネルギーをどんな形で取り出して使うかはわからないけど、争いの淀みから生まれた化身がテラカオスだと前提した場合、テラカオスに使うエネルギーだと思うわ」
救済の予言に関するココの推測は続く。
「次に『全てを虜にする歌』。
これに関しては「京」が観測した平行世界のテラカオスの顛末にヒントらしきものが見つかったわ。
その世界のテラカオスは、私達の目指している完成したテラカオスだった」
そのテラカオスは五期のテラカオスのことである。
今期にも登場した混沌の騎士の前身でもある。
「だけど、そのテラカオスはある理由から参加者達に敗北したわ」
「理由とは?」
「端的に言えば魂の吸い込みすぎ……体内に入った大量の死者の魂を処理できず、制御できなかったのが敗因よ」
某753の言葉を引用すると、一つの肉体に幾つもの数え切れない魂に自我が耐えられるはずがない。
誕生当初は自我を含め、何も持たなかった故に無尽蔵に魂を吸収できたが、終盤にて自我が生まれてしまった故に他の魂を吸収するにはそれらの意識を時間をかけて乗っ取る必要があった。
ゆえに一度に自分の意思に相反した大量の自我が入ることには耐えられなくなったとのこと。
「自我なんてあの貧乳歌姫、バリバリ持ってるんですがそれは……」
「ええ、「京」からこれのことを知ったとき、私もちょっと不安になったわ。
彼女の思想と相反する魂なんていくらでもいるでしょうし」
このままでは今後生まれてくるテラカオスも五期と同じ道をたどるんじゃないか?
そんな不安が四人を不安にさせる。
「でもね、だったらこうすればいいのよ。
体内に入った全ての魂を従うように『虜』にさせるの」
「それで歌なのか?」
「歌の力をなめちゃいけないわ、ジャック。
違う位相の存在を現実世界に強引に引き止めたり、戦争を終わらせたり、調律して平和な世界を生み出す魔力を歌は持ってるわ」
(あ、シンフォギア、マクロス、ラーゼフォンだ)
今期でも、熱気バサラに水木一郎、クラウザー見れば歌にも力があることがわかるだろう。
「実際、DMC
みたいな糞曲でも現在進行形で大量の狂信者を生み出したわ。
私は流石にクラウザーの歌は大っ嫌いだけど、あれを超えられるだけの全てを虜にできる歌があるかもしれないわ」
「歌でテラカオス内部の魂を『洗脳』して制御させてしまおうということか」
「そゆこと」
歌で魂を虜にして、全ての魂を制御下に置いてしまおう。
それがココなりの答えである。
「続いて『巫女の祈り、器たりえる巨像』。巨像については、まずこれを見て」
モニターには、今も東京の新宿にいるフォレスト・セル、今は亡きガメラやオーバーデビルも映し出されている。
どれもその気になれば世界を滅ぼせるほどの力を持った者達だ。
「実力については言わずもがな……まあ、ギャグみたいなノリで死んだ奴もいるけど、こいつらは共通点があってね。
どれもこれも制御や力の発揮には『巫女』を必要としていることね」
ココの言ったとおり、制御や隠された力を解放するには巫女に該当する者が必要なもの達ばかりだ。
「つまり、巨像に該当するものを制御できるのが巫女の祈り。
器たりえる巨像って言うからにはテラカオスをその内部に入れるんでしょうね」
「入れてどうするんだ?」
「内部にいれたテラカオスを更にパワーアップさせるのか、それかテラカオスを閉じ込めて巨像が力をつけるのか……実際にフォレスト・セルとかにそんな力があるのかわからないけど、可能性はあるわね」
巨像はテラカオスのパワードスーツ、もしくは拘束具であるかもしれないというのが、ココの考えである。
「ええと、最後は『不屈の精神を持った勇者』!」
「コーホー、うむ、これはどんなのだ?」
「それはねー……」
「「「それは?」」」
最後に上がった、不屈の精神を持った勇者、それが何を意味するのか?
その答えは……?
「正直、ワカリマセン」
その言葉が出た瞬間、ココ以外の全員が一瞬で呆れ顔になった。
「いや、そんな顔しないでよ。
勇者に該当する参加者は肩書きだけでもゴマンといるし、不屈の精神を持っているヤツなんてけっこういるかもしれないし~」
「まあ、そうだが」
「だいたい考えられる幅が広過ぎて逆に憶測も立てられないわよ、この下りだけ。
まあ、文章の最後にあるし、なんか重要なキーマンなんじゃないの?」
「適当だなオイ」
不屈の精神を持った勇者……これだけはココでも推論が立てられなかった。
「とりあえず、私の推論では
争いの淀みから生まれた化身=テラカオス
九人の最良の戦士たちによる儀式の完遂=野球チーム同士の試合で得た生命エネルギーをテラカオスに使う
全てを虜にする歌=テラカオス内部の魂を鎮め、暴走を防ぐ手段
巫女の祈り=巨像を制御する鍵
器たりえる巨像=テラカオスをパワーアップさせる、もしくは閉じ込めて制御下に置くための器
不屈の精神を持った勇者=ワカンネェ┓(´Д`)┏、たぶんキーマン
……だと思う。
そして『全てが揃いし時、争いの淀みから生まれた化身は救いの神に転じる』とあるわね。
救いの神になったテラカオス……この予言は、テラカオスを私達が完全に制御下に置く、パワーアップさせる、もしくは両方を可能にするための方法なんじゃないかしら」
ココの出した推論に他の者達はうなづく。
「ふむ、テラカオスを完全に制御下に置く。
確かに全てを虜にする歌でテラカオスの中にある魂を制御すればテラカオスも制御しても同然になるな」
「ナノマシンに自滅するプログラムがあっても、万が一作動しなかった場合の保険にもなりますね」
「コーホー、パワーアップについてもそうだ。
古文書にはテラカオスなら世界を救えるとあったが、大災害のパワーが完成したテラカオスをも上回る可能性も十分ある」
「ジェダイも滅びてるし、テラカオス救済論にも100%の信頼はおけませんからね~。
不測の自体に備えて課金アイテムをつけるがごとく、強さには余裕を持たせるってことですかね」
あくまで憶測に過ぎないが、救済の予言がテラカオスに纏わる何かである線は濃厚だろう。
「……ただ、予言に関しては懸念もあるわ」
「なんだ?」
一方、ココには予言には期待とは別の疑問があった。
「この予言の出処がわからないのよ」
「出処?」
「いつの時代の、誰が書いたのかわからないのよ。
仮にジェダイが書いたとしら、何で予言の内容を古文書の方に記してなかったのか理由がわからないもの。
野球場の術式だって、誰が仕掛けたのか不明瞭だし」
「コーホー、確かに」
ココの言った通り、この予言を誰がどこでいつしたのかがわからない。
そこにキナ臭さを感じているのだ。
「そう来ると、この予言の中に救済って言うのも私達の望んでいる救済なのかも怪しいわね……」
「救済と見せかけて人類滅亡!
予言の内容を完遂した瞬間、みんなLCLになって、おめでとうおめでとう……なんてオチもあるということですか?」
「ニャル子の言ってる意味がわからないけど、イメージとしては概ね合ってるんじゃない?
ともかく、予言については調査する必要がありそうね……せめて出処だけでも探らないと、怖くて予言の内容を実行する気が起きないわ」
救済の予言についてはあくまで慎重な体勢であるべきというのがココからの意見であった。
ここまで生き残った主催陣営達は大災害が起きた理由とプロジェクト・テラカオスの全貌、カオスロワを開かねばならなかった理由、救済の予言に対する考察を終えた。
その結果、時刻は11時を過ぎ、今期五回目となる放送が流れたのだった……
最終更新:2016年09月24日 15:32