気がつくと、俺は知らない建物の中で仰向けに寝ていた。
いや、ここは恐らく体育館だろう。高校時代以来で、少し懐かしい。
上半身を起こして自分の体を見下ろすと、ちゃんと服を着ていた。
ここに至るまでの記憶が無い。
みなみが峰岸に腹を刺されたのは覚えてる。一体あのあと何があったんだ?
それに、この服は? 確か俺は全裸になったはずだが……
「◆6/WWxs9O1s……」
枕元にかがみの首があった。気のせいか、憔悴しきったような顔をしている。
俺は必死に記憶を辿った。
確か俺は目の前で俺の嫁を刺されたことで激昂して、何も考えずに峰岸に後ろから襲い掛かった。
だが、咄嗟に振り返った峰岸に胸を刺されて……そのまま意識が無くなって、
って、俺死んでるじゃん!? 心臓をあんなに深く刺されたんだ。
普通の人間なら生きていられるはずが無い。
「かがみ、俺は、なんで生きてるんだ?」
首は答えない。ただその顔を見る限り、俺に言いにくいことがあるようだった。
「それと俺の嫁、じゃなくてみなみは!?」
「……みなみちゃんなら、そこに……」
かがみの視線の先を辿ると、俺の隣で
岩崎みなみが死んでいた。全裸で。
その後、かがみが嗚咽を混じりながら語ったところによると――
俺が峰岸に刺されたあと、みなみは咄嗟に峰岸を突き飛ばしたらしい。
峰岸は机の角に頭をぶつけて、当たり所が悪かったのか、そのまま動かなくなった。
かがみの話では、死んだのではなくて失神しただけのような印象だったが。
その段階で、みなみの容態はどう見ても絶望的だったそうだ。
刺された腹部から鮮血が止め処なく染み出し、制服が赤く染まり、顔はどんどん青ざめていった。
しかしみなみは
最後の力を振り絞って死んだ俺を担ぎ、かがみの頭を抱えてこの体育館まで逃げてきた。
俺が死んでいることに気付いたあと、俺のポケットに入っていた草を見つけた。
かがみにそれが死者を復活させる効果のある草だと聞いたみなみは、それを――俺に食べさせた。
そして、もう立っていることもやっとといった様子で、服を失った俺のために自分の服を脱いで着させた。
そして、そのまま力尽きた。
「みなみちゃんから伝言よ。よかったら、ゆたかを助けてあげてくださいって。
それと、ありがとうございましたって」
かがみはそう言うと、声を詰まらせて目を落とした。
体育館の入り口からここまで、点々と赤い染みが続いていた。その先にみなみが倒れている。
その顔はいつもの無表情だが、どこか安らかそうに見えた。
俺はそれを、何も考えられない頭でぼんやりと眺めていた。
「馬鹿だ。自分が食べて生き返ることだって出来たのに」
「やめなさいよ!!」
かがみの怒声にも、いつものように言い返すための言葉が思い浮かばない。
バトロワに巻き込まれてから、二次元キャラなら別に死んでもいいやと思ってやってきた。
『俺の嫁』なんて、ただのオタク仲間との挨拶
みたいなもんだと思っていた。
所詮二次元キャラに、本気でのめりこむ奴なんか馬鹿だと思っていた。
確かにみなみのエロ同人をほんの二百冊ほど集めていた。みなみの絵一枚でご飯三杯はいけた。
けど、そんなのはただの、ただの趣味だったはずなのに。
なのに、なんで、なんでこんなに涙が出て来るんだよ!!
「ねえ、あんた。ひょっとして、前からみなみちゃんのこと知ってたの?」
「う、うるせえ!! お前とは関係ないだろ!!」
この期に及んで、酷い言葉が口をついて出てきた。かがみは俺以上にショックを受けているだろうに。
「お前なんかとは……全然、関係ない……」
かがみに背中を向けて、俺は溢れる涙を必死で拭った。拭っても拭っても、涙は止まってくれない。
初めて好きになった女の子にフラれた時だって、第一志望の学校に落ちたときだって、こんなに涙は出なかった。
「……あのさ。私はあんたの顔を絶対に見ないし、あんたの声もなるべく聞かないようにするからさ……
だから、我慢しなくてもいいよ」
その一言で、俺の心にあった最後の堤防が壊れた。俺は膝を抱えて、声を上げて泣いた。
人を好きになるのに二次元も三次元も無いって、マジだったんだな。
俺は本当に、岩崎みなみという女の子が好きだったんだ。
この子が友達と仲良くしてるところを見るのが好きだった。いつも無表情なところが好きだった。
たまにふっと感情を見せるところが好きだった。どう聞いても長門な声が好きだった。
一度でいいから会いたいと思えるくらいに、好きだった。
みなみの制服の袖で涙を拭いた。みなみが俺に遺してくれたもの。
「クソ、俺は……酷い勘違いを」
人間に二次元も三次元も関係無い。
最初からそう思っていれば、みなみだって死なずに済んだかもしれないのに。
どれくらいそうしていただろうか。ようやく涙が止まり、俺はゆっくりとかがみに向き直った。
かがみも酷い顔をしていた。きっと、今の俺と同じ顔だ。
自分だってそれほど辛かったのに、俺を気遣ってくれた。それが静かに嬉しくて、申し訳なかった。
「悪いな。みなみはちょっと俺にとっては、特別な子だったんだ」
「うん。なんとなくわかったわよ」
「お前もひょっとして、好きな人が死んだのか?」
「ちょ、ちょっと何言ってんのよ!! こなたはあくまでも友達よ、友達!!」
「誰もこなたの事だなんて言ってないっすよ柊さん」
「……」
かがみは真っ赤になって黙った。つーか、マジでガチレズだったんすかこの人は。
「気にするな。好きになるのは自由だよ、性別も次元も関係ないさ」
「◆6/WWxs9O1s……」
「かがみ、俺、絶対この殺し合いを止めるからさ。だから、もうちょっと俺に付き合ってくれるか?」
「セーラー服姿じゃ無かったら、もうちょっと締まるシーンなのにね」
「黙ってろよ」
【一日目・正午 埼玉県陵桜高校体育館】
【◆6/WWxs9O1s氏@現実】
[状態]:岩崎みなみのセーラー服を着用
[装備]:
柊かがみの頭部
[道具]:なし
[思考]
1:みなみを埋葬する
2:かがみと、しょうがないから行動を共にする。
3:誤解フラグを解く
4:味方を集め、主催を倒す
5:ま と も な ふ く が ほ し い
※大臣の取引には乗ったふりをしていますが、実際に手を貸すつもりはありません。
※着ているセーラー服にはみなみの血が大量についているため、他人が見たら
またいらぬ誤解を生む可能性が高いです
【柊かがみの頭部@らき☆すた】
[状態]:首から下無し
[装備]:なし
[道具]:なし
[思考]
1:できるなら峰岸を止めたい
2:◆6/WWxs9O1s氏と行動を共にする
3:自分の胴体と友人、家族を探したい
4:出来れば主催を倒す
※
第一回放送を聞いていません
【岩崎みなみ@らき☆すた 死亡確認】
最終更新:2007年12月02日 13:31