ひデブ@みくるたんと愉快な仲間たち

短編4

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夏陽

「さすがにこれは死ぬだろう」
「いや、死にはしないだろー」
私のうんざりしたような呟きに、横を歩いている友人が苦笑する。

どういう因果か分からないが、友人と街中をふらふら歩き回っている。
俗に言うウィンドウショッピングと言うヤツだろうか。


病院に行く為に隣街に出て来るのはもはや恒例行事だが、
私は大抵、病院からは何処にも寄らずに帰宅するので、
この街で友人に捕まるのはかなり珍しい出来事だった。

大都市でもないこの近隣では、この駅前ぐらいしか遊ぶ場所がない上に、
そこに更に週末と言う条件も加わって、イヤになるほど人が多い。

しかもこの日差しだ。

人ごみはまだ我慢出来るが、暑すぎて、冗談抜きで気分が悪くなってくる。
そして機嫌も悪くなってくる。


会って少し話して、特にあてもなく二人で歩いていたのだが。

「何処か入る?」
「そうしてくれ…」
10分もしない内に友人が心配したかのように声をかけてくれた。


「…夏は嫌いだ」

適当な喫茶店に入るなり一言。
禁煙の店だったので、手持ち無沙汰に手元でタバコの箱をいじる。
諦めて鞄に仕舞うと、アイスコーヒーの氷をストローでクルクルかき回す。
「暑いしなぁ」
私の真似をするようにストローを回しながら、友人は涼しそうな顔でそう返す。

「暑いのもそうだが、日差しが苦手なんだ」
「俺もだ」
「あれ、そうだったんだ?」

彼の健康的な風貌には予想外の返事に、私にしては珍しく少し驚いてしまった。

「夏の日焼け止めは必須だよな」
「必須だね」

でもさすがに、日差しを浴びて吐き気と眩暈がするような、
吸血鬼体質ではないだろうな、などと心の中でこっそり突っ込む。

昔から変わらぬ体質に。
昔から変わらぬ性格に。

変わったのは外見だけ。


懐かしい友人と話している目の前で、
ふと、私の身体機能の故障っぷりを自覚する。

気が付くとタバコの箱を取り出していた。
何事もなかったかのように鞄に戻す。

「そろそろ行く? タバコも吸いたいだろ」
「…そうだな」

そんな私の動作に気付いたのかどうかは分からない。
でも、気を使ってくれる友人がいるというのは、
とてもありがたいことなのだろう。


早く元気になぁれ、とは誰が誰に言った言葉だったか。


外に出て、痛いぐらいの日差しの下、
友人と並んでタバコを咥えた。



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