【問題】
男は愛する家族に殺された。
しかし男はとても幸せそうな顔をしていた。
いったいなぜ?
【解説】
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年老いた男はもう長くはなかった。
美しい妻を娶り、子宝に恵まれ、全員が無事1人立ちし、孫の顔も見れ、満ち足りた人生だった。
しかし男には心残りがあった。
あるとても寒い日、窓の外で雪が激しく降っているのを見ながら、
男は若い頃に出会った恐ろしくも美しい雪女のことを思い出す。
男はそれを近くにいた妻に語り始めた。
「昔こんな寒い日に、俺は雪女に出会ったことがあるんだ」
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「そうして俺は命拾いして、村に帰って来たんだ」
妻は男の話を黙って聞いていたが、話が終わると一瞬暗い顔をしたかと思えば、突然妻の姿が変わった。
肌は雪のように白くなり、目は氷のように冷たい、まさに人ならざる姿だった。
なんと男の妻の正体は、人間に化けていた雪女だったのだ。
雪女は秘密を破った男を殺そうとした。
しかし、男が恐れもせず、逆に嬉しそうにしているのを見て不思議に思い、問い質した。
「実はお前がここに来た時、すぐにお前の正体には気がついていた。
しかしそれを言えば秘密を破ったことになり、お前と居られなくなると考え、ずっと黙っていた。
だがもう子供も家を出て、俺も老い先短い。だから最期にお前のその美しい姿を見たくなったんだ」
そう言って笑う男に雪女は手を触れた。
するとそこから霜が広がり、男の体は凍り始めた。
「今までありがとう。俺はお前といられて幸せだったよ」
その言葉を最後に、男の全身は冷たく凍ってしまった。
そして雪女は家を出て、どこともしれぬいずこかへ去って行った。
家には幸せそうに笑う氷漬けの男と、数粒の氷が残されていた。
《モチーフ有》《非現実》《死》
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最終更新:2024年04月14日 16:22