【問題】
リサとのクリスマスデートにワクワクドキドキで、張り切って身なりを整える貴史。
そして待ち合わせ場所に向かったが、そこにリサの姿はなかった。
代わりに彼女の置き土産ともいえるメッセージが残されていた。
貴史はリサに騙されていたのだろうか?
【解説】
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ある年のクリスマス、貴史は長年交際を続けていたリサとのデートを予定していた。
これまでは仕事の都合でなかなかクリスマス当日のデートができなかったが、今回はようやく念願叶い、クリスマスデートが実現できそうだと安堵の表情を浮かべる。
そして密かに、けじめのプロポーズのシチュエーションも考えていた。
「へへっ…リサのやつ、きっと泣いて喜ぶぞ」
リサの赤らんだ顔を思い浮かべながら、小さな箱をテーブルにそっと置いた。
そして張り切って髪を整え、オシャレなリサと並んでもおかしくない服を探しながら、あーでもない、こーでもないと唸りながら選んでいると、約束の時間に遅れそうな時間になっていた。
「やっべ…もうこんな時間か、急がねーと!」
貴史は大事な物をポケットに無造作に入れ、慌てて家を出て待ち合わせ場所へと走った。
やがて、やけに冷たい汗が貴史の全身を覆う。
その場所は遠くから見てもわかるほど、人だかりや救急車が嫌というほど目立っていたのだから。
――そして月日が流れた、ある日の午後。
貴史はリサに会えないことを知りつつ、あの待ち合わせ場所へと出向いた。
そこには、あの日の惨状を忘れないための注意喚起の看板が立てられていた。
看板の周りには、リサ以外にも犠牲になった人たちのために、多くの花やお菓子が供えられている。
「リサ…俺はお前を…一生忘れてなんかやらないからな」
小さく呟いた声は風とともに、持っている花束を微かに揺らしていった。
《死》
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最終更新:2025年01月06日 17:29