――月日はどんどん過ぎていき
――私たちの夏は形作られていく
――練習とティータイムと勉強と、少しのお出かけと
――梓の携帯
――8月2日
to ○○先輩
件名 昨日の
昨日見た映画で使われていたBGMの作曲者って分かりますか?
先輩はパンフレットを買っていたので、そこに載っていると思うのですが。
――8月4日
from 律センパイ
件名 緊急!
今すぐ近くの神社まで出てこーい。夏祭りに行くぞ。
あ、○○も呼んでいいからな。梓が責任を持って面倒見ること!
――8月5日
from ○○先輩
件名 ヨーヨー
昨日の夏祭りは楽しかったね。久々にカキ氷を食べて頭が痛くなったよ。
ところで、昨日の金魚すくいで取った水風船のヨーヨーだけど、帰りに割ってしまった。
けっこうショックで、ネットで水風船の作り方を勉強中です。
できあがったら梓ちゃんにも1個あげるので、派手に割ってストレス発散にでも使ってね。
――8月6日
from 唯センパイ
件名 英語
あずにゃーん、英語教えてー
to 唯センパイ
件名 先輩……
後輩に教えてもらうなんてどこかおかしいですよ。
澪先輩かムギ先輩、○○先輩に教えてもらってください。
to ○○先輩
件名 唯先輩ですが
英語で相当悩んでるようです。
良ければ今日の合同練習で、唯先輩の相談に乗ってあげていただけませんか?
――8月9日
from 唯センパイ
件名 がっしゅく!
あずにゃん、明日は服の下に水着着ていかなきゃだめだよ?
from ○○先輩
件名 明日だけど
明日はついに合宿だけど、本当に男1人混じっていいのかな。
紬さんは『セキュリティは万全だから大丈夫』って言ってたけど……
to ○○先輩
件名 先輩は
問題を起こすつもりなんですか?
from ○○先輩
件名 いやいや
そんなつもりはないんだけど、皆は嫌じゃないのかなと
to ○○先輩
件名 大丈夫です
だったら大丈夫ですよ。皆分かった上で楽しんでますから。
いざとなったら先輩をロープで縛っちゃいますよー
from ○○先輩
件名 おおっ
梓ちゃん、けっこう過激なこと言うね。
to ○○先輩
件名 Re:おおっ
すみません冗談です忘れてくださいお願いします
ノリで言ってしまっただけなんです! どうか先輩たちには言わないでください!
――8月10日
――合宿 海
律「海だー!」
唯「広いなー!」
律唯「大きいなー!」
ダダダダダ
澪「あーあ、2人共走ってったぞ」
紬「ふふ、喜んでもらえてよかったわ」
○○「なんともまあ大きな別荘……」
梓「去年より大きいです」
――別荘の中
○○「中もまた広い……」
紬「部屋は各自1部屋ずつあるのだけど……やっぱりみんな一緒の方が楽しいと思うから、大部屋に荷物を置いてね」」
○○「え゛」
紬「あ、○○さんにはもちろん別の部屋を用意してあるから、安心して」
律「○○ー? 何か良からぬことでも考えたか?」
○○「あー、いや……そんなことはないですよー」
唯「あはは、○○君面白い顔ー」
律「では、田井中隊員、これより海に突貫します!」
唯「幸運を祈る!」
ダダダダ ズバーン!
澪「おい! まずは練習を……って、もう海に入ってるし」
梓「律先輩、服着たままなのにいいんですかね……」
唯「甘いよ、あずにゃん! 私とりっちゃんはこの服の下に水着を着ているのだ!」スパン!
梓「わっ! ここで脱がないでください!」
ダダダダダ ズボーン!
澪「ああ、もう、あの2人は荷物もほったらかして!」
紬「私たちも着替えて行きましょうか~」
○○「……あはは、まずは海で遊ぶってことか」
梓「すいません。去年もこうで……2人とも、遊んでからじゃないと練習してくれなくって」
○○「いやいや、いいよ。楽しそうで何より。梓ちゃんも行ってきたら?」
梓「え、け、けど……」
梓(それはつまり○○先輩の前で水着姿になるということで……)
梓(と、とても恥ずかしいし、それに私は……!)
○○「行っといで。俺はここで晩御飯の食材の整理でもしとくよ」
梓「え? 先輩は行かないんですか?」
○○「日差しの強い場所はちょっとね……それに、水泳も苦手で」
梓(あ……そ、そっか。先輩は)
梓「じゃ、じゃあ私も残ります!」
○○「けど、唯さんがこっちに来るよ? あれは迎えに来たんじゃ」
梓「え?」
ダダダダダ
梓「ゆ、唯先輩!?」
唯「あずにゃん、早くきなよ!」グイ
梓「け、けど私は」
唯「あずにゃんも下に水着着てるでしょ? 昨日、メールで言っといたもんねー」グイグイ
梓「着てません!」
唯「ほらほらー、遊ばないと損だよー? 水鉄砲をくらえー!」
ビュー バシャ
梓「きゃ!」
唯「あり? ほんとに着てこなかったの?」
梓「当たり前です! 私はここに練習をしに!」
澪「あ、梓ー、服が……」
梓「え?」
梓「!」
唯「おー、あずにゃんスケスケだねっ!」
梓「あ、あう」
梓(薄着にしてきたせいで水で透けて……下着が!)
梓(先輩に、先輩に見られて)ワナワナ
梓「にゃああああ!」ダダダダ バタン
唯「あずにゃんが部屋に引っ込んじゃった」
○○「ははは……」
唯「もー。せっかく海にきたのに遊ばないなんて損だよ!」
紬「まあまあ、私は着替えて合流するわ。澪ちゃんは着替えないの?」
澪「え、いや、その……」チラチラ
○○「? 澪さん、どうかしました?」
澪「なななな、なんでもない!」カァ
澪「な、なあムギ、私はここに残るよ。ちょっと体調悪いし、梓も心配だし」
紬「んー、分かったわ。じゃあ、私はお先にー」
澪「ふぅ……」
澪(男の人の前で水着になんてなれない……どうして唯たちは全然気にしてないんだろ)
○○「さてと、俺は荷物の整理でもするかな」
澪「あ、手伝う」
○○「ありがと。だけど、本当に遊びに行かなくていいのかな?」
澪「た、体調悪いし……それに、○○さんも整理が終わったら、練習するんでしょ?」
○○「その通り。よく分かったね」
澪「もう2ヶ月近く一緒に練習してたら、さすがにね」
○○「ははは。じゃ、外で元気に遊んでる女の子たちのために、お食事の下ごしらえでもしようか。澪さん、教えてくれる?」
澪「わ、私でよければ」
――1時間後
○○「まあこのぐらいにして、あとはみんなが帰ってきてからでいっか」
澪「かな。○○さん、本当に料理初めて?」
○○「デザート作りならまだできるけど、本格的な料理は、男の雑な手料理の範疇を超えてないよ」
澪「デザートは作れる……だから手際が良かったんだ」
○○「いやー、照れるな」ぽりぽり
澪「○○さんが照れてる顔って初めて見た」クスクス
澪(さすが梓が好きになる人……なんだか男の人に感じる怖さがないなあ)
澪(って、そういえば私、今男の人と2人きりだったんだ)
澪(あ、あれ? どうして今まで気付かなかったんだ?……気付いても怖くならないし)
○○「澪さん?」
澪「は、はいぃ!」
○○「ど、どうかした?」
澪「なんでもないなんでもない! さっ、練習しようか!」
○○「は、はあ。そうだね」
澪(な、なんで私が○○さんのこと意識してるんだ?)
澪(○○さんは梓と良い仲なんだし……)
澪(……そう考えるとちょっと梓が羨ましくなる)
澪(って、また私変なこと考えてる!)
澪「わ、私ちょっと梓の様子見てくるから!」
○○「あ、どうぞー。元気そうだったら一緒に練習しようって誘ってみてください」
タタタタタ
○○「……」
prrrr
○○「携帯……また母さんか」
ピッ
○○「もしもし?」
○○「今? 海についたところ。旅館にいるよ」
○○「もちろん泳いだりしないって。大丈夫」
○○「友達? 今は泳ぎに行ったり、部屋でくつろいだり色々」
○○「うん……」
○○「いや」
○○「またその話? 分かってる……分かってるって」
○○「もう覚悟は決めてるから……うん、そう。今更行かないなんて言わない」
○○「友達には今日か明日にでも話すよ」
○○「うん……また帰る時に連絡する。それじゃ」
ピッ
○○「……」
○○「せめて梓ちゃんにだけでも、話さなきゃ……」
最終更新:2011年07月30日 16:27