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5121の再結成 - (2011/05/31 (火) 21:27:05) の編集履歴(バックアップ)


5121の再結成

「―――またせたな」
騎士王の地での再結成



L:5121の再結成 = {
 t:名称 = 5121の再結成(イベント)
 t:要点 = ひょっこり,でてくる,5121
 t:周辺環境 = 騎士王の国


 かつて第五世界においてその名を大いに轟かせた部隊があった。
青地に黒猫のイグニシア。それは幻獣の天敵の代名詞でもある。

その名も『5121小隊』。

第五世界においてこの名を知らぬ者はないだろう。
その彼ら、彼女らがこのニューワールドに於いて再度集まることになろうとは誰が想像しただろうか。


5121小隊

 それ単体では第106師団隷下の第5連隊第1大隊第2中隊第1小隊を意味するこの言葉は特別な意味を持つ。
そのままでは単語の羅列に過ぎない。だが5121といえばどうだ。
彼ら、彼女らの姿がそのまま想起されるだろう。その勇姿はまさに今なお語り継がれる伝説であった。

第五世界、熊本。尚絅校前のプレハブ校舎にその本拠を構え、各地を転戦して幻獣を狩る部隊。
そのメンバーは以下の通りである。

 速水厚志。
 芝村舞。
 善行忠孝。
 原素子。
 瀬戸口隆之。
 壬生屋未央。
 滝川陽平。
 田代香織。
 若宮康光。
 新井木勇美。
 来須銀河。
 石津萌。
 狩谷夏樹。
 加藤祭。
 茜大介。
 森精華。
 中村光宏。
 ヨーコ・小杉。
 遠坂圭吾。
 田辺真紀。
 岩田裕。
 東原ののみ。

そして、23番目のクラスメイト。
そのいずれも一言では表せない人物ばかりである。それぞれがそれぞれの思いを持ってこの名を呼ぶことだろう。
この回りには先生もいた。坂上先生。本田先生。芳野先生。
それにブータもいた。

取り巻く人々も様々だ。直属の上司であった準竜師、芝村勝吏。そしてその副官。ウイチタ更紗。
その後日本各地に行くようになってからはその範囲は加速度的に広がっていった。
青森のヒロイン天国小隊。広島のシュークリームナイト中隊。小笠原の211天文観測部班。

これからも分かるようにその影響力は計り知れないものがある。
そんな彼らが、ひょっこりと騎士王の国、暁の円卓藩国に顔を出したのは偶然か。はたまた必然か。

始まりの朝

 山際より夜の濃紺が溶け出して青が生まれた。
それは次第に金色となり、さらには燃えるような赤に染まる。
光の神々が祝福する、闇の神々が惜しむ、朝がやってきたのだ。

『正義最後の砦』

再び掲げられたこの看板は射ぬくような光に照らされてまるで輝いているようであった。


再結成の日


 再び歴史に刻まれた記念すべき日。

少しずつ準備を進めていたこともあるが、初めに来たのはかつての委員長、善行忠孝だった。
表向きはすっかりと落ち着いたかのようにも見えるが、その眼鏡の下に隠した鋭さは隠せる物でもない。

「もちろん、あの時とはずいぶんと違いますが。さてと、僕の部下は?」
と前置きをして新たなる司令室を見回した。

「先に見えていたのですね」
不意にガラリと扉が開け放たれた。そこに立っていたのは若宮康光である。
そして善行の姿を認めそれが当たり前のように最敬礼をする。
水を打ったように静まり返る世界。その一瞬、二人は共に戦場を駆けた日々を思い出していた。

助けられた者よりも助けられなかった者の方が心に刻まれる。
そうやって無念の死を遂げた者の分まで背負って前に進むのである。

「何二人で辛気くさくしてるのよ」
ふふんといった感じで原素子が入ってくる。多少息が乱れているのだがそれすら優雅な動作で隠し通していた。
その後ろからトレードマークだったバンダナを外し、ソバージュのかかった髪の印象的な森精華が入ってきた。

「先輩、早すぎます。いくら……」
瞬間、ふり返った原の視線に射すくめられ、森の言葉は紡がれず苦笑いに変わる。
まあ、それにお互い相手がいますもんね、と声には出さずに心の中で呟いた。

「たまには羽を伸ばさなきゃ、でしょ?」
同意を求められ、その上そういう貴女はどうなの?という眼で再び見られて、にやにやとされる。

「ほんだら……」
抗議しようと声を上げたら指で制された。森はどんな顔をしていればいいのか、まだ分からない。
傍から見たら、拗ねてるようにも見えるかも知れない。ふっと力が抜けた森は自嘲気味にため息を一つつくと窓の外に視線を移した。

集合時間まではまだ十分時間がある。

/*/

窓の外には道が見える。暁の円卓では珍しくきちんと舗装された道はこの日のために作られたものだ。その道には瀧川陽平が誇らしげに石津萌とチビとともに並んで歩いている。三人が一緒なのはどうしても離れたくないという要望からだろう。この三人ともかつてはとある国に招聘されていたのである。
「萌りん、大将も来るって話、聞いた?」
「……うん……」
瀧川はここまで生き抜いてきた誇りを胸にここに立っていた。その横に並ぶ萌は小雷電を抱えながらその顔を上げている。あの頃よりも雰囲気は柔らかくなり、どこか誇らしげだ。

「にぁ」
その足下にはブータもついてきていた。チビになでられ眼を細める。
森の国よりブータもまたこの懐かしい集いに顔を出しているのである。

「……」
「先輩ー!」
少し離れて帽子を押さえながら来須銀河が歩いている。アポロニアの最後の精霊戦士は再びこの集いに駆けつけていた。様々なところで危険を渡り歩いていたが、それもまた彼の宿命なのかもしれない。
そして新井木由美は息を弾ませ先輩の背中を追いながら駆けてきた。騒々しいところは相変わらずだが、経験した様々な事柄は新井木を大きく変えていた。恋する乙女、恐るべしというところか。

「こんな時まで、あいつは騒々しいな。」
「なっちゃんも、そんなこと言わんと」
その後方には狩谷夏樹を乗せた車椅子を加藤祭が押していた。狩谷は愚痴っぽいところは相変わらずあるものの、かつての刺々しさはない。二人の時間を何より大切にしているのだろう。一方加藤も背中を押してくれた友人の相変わらずさに苦笑いと懐かしさが綯い交ぜになったような表情をしている。

「ヨーコちゃんはしあわせそうなのよ。」
「そうデスか?」
次いでお日様みたいな笑顔を振りまきながら悠然と褐色の女と背の小さな少女がこちらに向かって歩いてくる。
それはさながら太陽のような、落ち着いた感じの褐色の女性、ヨーコ小杉。
その傍らには小首を傾げながら満面の笑みを浮かべる東原ののみが少し伸びた背を精一杯伸ばし歩く。その光景は誰もが暖かな気持ちになれるものであった。

「まあ、たまにはこういうのもいいんじゃないか?」
瀬戸口貴之はその姿を見守っていた。その姿はさながら我が子を見守る親だ。
「そうですね、あの方が帰ってくるというのです。それを祝うには相応しい光景でしょう。」
遠坂圭吾がそれに答える。その視線の先には別の二人もいる。

相変わらずの胴着姿なのは壬生屋未央。ちょうどそこに大海のような蒼い髪の女性が行きあった。
「壬生屋さんもお元気そうで」
「田辺さんもお元気そうで」
同時に挨拶をしようとしてぶつかる。

パキッ……

空気が凍った。

『あ……』

さらに声がハモる。珍しい組合せだがお約束の光景であった。

さらに外れを見れば岩田裕が入ってくるところだった。

皆それぞれの過ごした日々を胸にここまで来ている。誰一人として止まっている訳ではないだろう。その証拠に顔つきにどこか違ったものが混じっているようだ。

/*/

「懐かしい顔が揃ってるね、あの人がいなくて残念なんじゃない? 姉さん」
意地の悪い笑みを浮かべながら、後ろから背の伸びた茜大介が入ってくる。どこを
キッと茜を睨みつける森。
 そんな姉弟喧嘩は横に置いておいて中村光弘が入ってくる。

「久しぶりバイ、委員長」
「久しぶりです、中村君。青は?」

善行は入ってきた中村と挨拶をかわす。

「青ならもうすぐ来ると、お姫様も一緒にな」

善行はトレードマークの顎髭を撫でるとその言葉に頷いた。

「それは何よりです。こうして再度集まれるのも嬉しいものですね」
「すみません、遅くなりました」

優雅な身のこなしはそのままだが、傍らに青い髪の女性を伴って総髪で長身の男が入ってくる。総髪の男、遠坂圭吾は雰囲気こそ穏やかであるが、青の腹心として各地を飛び回る程である。その力推して知るべしだ。
 その隣に身を置くのは田辺真紀。端からは不幸だと言われる。だが、それは一面的な物の見方でしかないことを嫌と言うほど知らしめてくれる。何故そんなに不幸に見舞われて猶笑っていられるのか。それは、不幸を引き受けることで周りの人が幸福になるからに他ならないだろう。

「まだ、時間ではないですよ。遠坂君」
「そうでしたか、委員長」

穏やかな時が流れている。

些細な喧嘩は止め森は茜と共に並んで外を見ている。
今度はこちらに向かって悠然と歩いてくる姿が一つ。あのシルエットは、田代香織に他ならないだろう。あの事件の後姿を消した人の一人だ。
その奥に見えるのは二人、忘れもしない胴着姿。そして、もう一つの影。
それは壬生谷未央と瀬戸口貴之の二人であった。いがみ合っていた過去の姿とは違い。うまくいってそうだ。

あとは、真打ちを待つだけだ。


物語の再開


 いつか来た道。
幾度となく運命の糸が絡まり、ついに破綻したように見えた。そこから延びる最後の希望。

「それ」が、この呼び出しだった。

愛の女神が先頭に立ち、白石が指揮をして摂理の神に立ち向かったあのバレンタイン。

それは運命にすら打ち勝つ、愛の形。
好きなものを好きということすらできなければ、今ここにいることすら嘘っぽく感じるだろう。
だから、力一杯叫ぶのだ。

 世界とか時間犯罪とか難しい理屈はどうでもいい!
 ただ君達と会って話しがしたい。それはきっと楽しいことだと思う!

それは歌ですらない、ただの叫び。
人が人をそれぞれの愛の形で伝えるための純粋な祈り。
消えゆくものすら繋ぎ止め、抗い難きに抗うための純粋な感情。

そのいずれもが、全てを以て愛を奏でていた。

――かくして物語は始まる。


スタッフ

イラスト:まさきち
設定文:風杜神奈、白石裕
その他:白石裕
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