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プロローグ-1

 2017年7月29日 14:32:56
 アメリカ合衆国 ニューヨーク

 マンハッタン南端部に位置する細い通りの一つであるウォール街。その一角に存在する世界最大の証券取引所の前に黒いワンボックスカーが停車した。
 車両からマスクをつけた六人の男達が降り、素早く中へと移動する。
 目の前には警備員が三名、その異様な姿を確認した彼らは所持していた拳銃をマスクの男達に向けて構えた。
「止まれ、お前達は一体――」
 警備員が言葉を発した瞬間、マスクをした男達は懐に隠していたサブマシンガンを取り出し、乱射した。
「――幕開けだ」
 ホール内に銃声が響き渡る。
 警備員は血塗れとなって地面へと倒れ込み、証券取引所内は一気に混乱へと陥った。
「静かにしやがれ!」
 天井へと銃口を向け、乱射しまくる赤色のマスクの男。
 彼は続けて、
「これから俺達がお前らの全てを奪ってやる。これは新しい時代の始まりに過ぎない!」
 その行動に周囲は圧倒され、誰一人としてその場から動けないでいた。
「……始めろ」
 黒いマスクの男が、緑色のマスクの男に指示を出す。
 彼は並べられたコンピュータの一つに取り出したコードを繋げ、それを特殊な機械と連動させる。
「10分ほどで完了します」
「いいだろう。計画通りだ」
 そう言うと、黒いマスクの男はサブマシンガンを構え、デスクの上で豪語する赤いマスクの男に向けて発砲した。
 彼の行為に人質たちは驚きを隠せなかった。
「容赦ないですね」
「邪魔になる奴は殺すだけだ」
 黒いマスクの男は他の者に指で指示を送り、近くにあった椅子に腰を掛けた。


 ニューヨーク証券取引所前には警察車両が幾つも到着していた。警察官が車を壁にして犯人達が出てくるのを待ち構えている。
 警官の一人が指揮を取る刑事に聞く。
「なぜ奴らは此処を襲ったのでしょうか? 私なら銀行へと行きますが」
 刑事は答える。
「馬鹿野郎、ここは経済における中心的な役割を持っているんだぞ。奴らは今、故意的に株式や積券の売買を行える……つまり、私達の持つこの紙幣もただの紙切れになる可能性があるんだ」
 警官は焦りの色を見せる。
「奴らは何の目的で……」
「分からない。だがこのままじゃ奴らの思い通りに金が動く……ESUはまだなのか……」


「残り五分です」
「……そろそろか」
 黒いマスクの男は立ち上がり、先ほどと同じように合図を送る。
「――後は任せる」
 緑色のマスクの男は頷き、黒いマスクの男と他の者達は階段を駆け上がり、屋上に出た。そこから見下ろすと何台ものパトカーと、ESUと書かれた車両があり、彼らは証券取引所への突入の準備をしていた。
「やはりあんたの言う通り、屋上には来なかったな」
 青いマスクの男が話す。
「奴らは単純だ。命令に疑問も抱かんからな」
 そこに警察のヘリが屋上へと近づく。
「お、おい。あれは本当に俺達の……」
 不安そうにする黄色マスクの男に、黒いマスクの男が話しかける
「私のことを信じているのだろう? ならば、何も不安になることはない」
 ヘリは屋上に着陸し、中から20代前後に見える若い白人の男が手を伸ばす。
「ったく、俺が来る必要はなかったんじゃねえの?」
 その手を掴み、ヘリへと乗り込んだ黒いマスクの男。
「手間をかけたようだな、オズウェル」
「残りは死体袋行きってことで良いんだよなぁ?」
 オズウェルの頬がゆるんでいた。そして、彼は二丁の拳銃を他のマスクの男達に向けて発砲した。
 悲鳴をあげ、血を流す男達。
 かろうじてまだ意識のあった黄色マスクの男が、問いかける。
「なぜ…だ……、信じろって……」
 その問いに、黒いマスクの男は間を置かずに答えた。
「――信じていいのは、自分だけだ」
 その声は先ほどまでの彼とは違い、冷徹で残忍な姿を解らせるような本当の彼であった。



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最終更新:2013年01月27日 00:56