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追憶

「そろそろ時間か?」
私の前の席にいた男が書類を机に置くと同時に問いかけた。
「ああ、先日伝えた通りだ。3日程で戻る。」
男はわかってるよ、と言うような苦笑じみた顔で
「気をつけてな、休暇なんだしゆっくりしてこいよ。」
と、また書類に手をつけ始めた。
看板に上がる通路を歩いて行き昇降機のボタンを押す。
一週間前に4日間の休暇を上に申請した。
上層部は反対したがアレンが何とか上に進言してくれた。お陰で今に至る訳だ。
昇降機が降りてき、ドアが開く。そこにはよく知った顔が一人乗っていた。
腕を組んで少し下を向いた状態で壁にもたれかかった男は私に語りかけた。
「行くのか…?」
「ああ、毎年これだけはどうしても外せない約束だし、な…。」
マスクをつけた男は納得したかのように小さくフッと呟いた。
看板に到着し昇降機を降りた時、ドアの閉まり際に男が呟いた。
「彼等に俺からもよろしく言っておいてくれ。」
そう言うとドアは閉まり昇降機は下に戻って言った。
見送りありがとう、相棒。お前らしいよ
看板にはヘリが到着しており、すぐさま本土へと移送された。
本土に付いたと同時にマスクを取る、久々にマスク無しで外を歩いた…。
空港から、あらかじめチャーターした旅客機に乗り目的地に向かう。
ここから大体半日程のフライトだ。乗り換えも幾つかある。
午前中に出発し、ついたのは夜遅くだった。
季節は秋に近く、雪で一面真っ白だ。
近くのホテルで一夜を過ごし、朝から電車で郊外へと向かう。
窓から見える郊外の街はかつてよりだいぶ変わってしまっている。
娯楽施設、大型飯店、昔じゃ考えられないな
街の更に郊外へと車で移動する。
所々まだ過去の傷跡は残っていた、ここ何年かで大規模な改修工事が
行われたが、やはり全てが治る、という訳にはいかないだろう。
山の麓の小さな空き地に街で買った花束を供える。
昔ここに共にいた人々に…
裏に回り山の道を10分程歩く。この先に私の待ち人はいる。
見晴らしのいい丘の上、二人はそこにいた。
「ただいま…二人共。」
イリーナ オレーシア、アシモフ ロマーノヴィチ ユーリエフ
二人の名前を掘った十字架は少し雪がかぶった状態であった。
雪を払い、二人分の花を手向ける。
「イリーナ、君には百合の花を。アシモフ、お前には紫苑の花だ。」
息は白く、出た小さな白息はすぐに吹いた風によって消えていった。
まるで歓迎してくれたかのような
最終更新:2013年02月04日 14:55