timers   -TIME IS ……-

狂気の章 3

最終更新:

匿名ユーザー

- view
管理者のみ編集可
「──これは」

小早川は言葉を失った。まるで知能が退化したみたいだ、と思った。
病室にはベッドが一つしかなく、そしてそこには女性が横になっていた。しかし──。

「お嬢様。お医者さまですよ。お嬢様」

希美が呼び掛ける。返事がないのは、小早川はわかっていた。

「申し訳ありません。お嬢様はお眠りになられたようです」
「──そう、ですか」

小早川は額を拭った。雨に濡れていたからだけではない。自分が脂汗をかいていたのを、小早川は気付いていた。

「希美ちゃん」

美貴が言う。

「タオル、持ってきてくれないかな」
「あっ、申し訳ありませんでした。少しお待ちになっていて下さい」

希美が病室から出ていく。小早川も後を追うように出て、待合室のソファに座り込んだ。

「驚いたでしょう?」

そういう美貴を見て、小早川は頷く。少し青ざめている。

「なんで、また……」

美貴は何も言わない。希美に聞こえると考えているのだろうか。

「……目が、無いんだ……?」

横になっていた少女は、確実に死んでいた。両方の眼球は存在していなかった。まるで、無理矢理抉り取られたかのように。
小早川は、無性に煙草が吸いたかった。
記事メニュー
ウィキ募集バナー