timers   -TIME IS ……-

終章 2

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匿名ユーザー

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腕時計をちらりと見る。山を歩き始めて、一時間が経った。
雨はずっと霧雨のままで、空気はまとわりつくようだ。
「せん……ぱい……、今、どの辺り……ですか……」
疲れている。真夜中に、雨の中のハイキングである。楽しさは微塵もない。あるのはただ、不快感のみだった。
裕子は振り向きもせずに言った。
「あの橋、見えるか?」
「えっ」
めぐみは顔を上げた。
裕子は立ち止まっていた。
少し先に、木製の橋が見える。
「あの橋を越えたら……霧雨村やよ」
裕子の表情を伺い見る。そして、めぐみは戸惑った。

嬉しそうに、笑っていた。

「めぐみ」
名前を呼ばれ、ドキリとした。
「行こか」

裕子は歩き出す。
めぐみは慌てて後を追った。
声なんか出せない。
ただただ、怖かった。

歩く度にギシッ、ギシッと音が鳴る。
揺れる。揺れる。橋が悲鳴を上げる。
まるでそれは断末魔のようで、めぐみは耳を塞ぎたくなった。

裕子は、橋を渡りきった
めぐみは、これ以上進みたくなかった。
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