妖怪・忘れ傘

  • 来歴
妖怪忘れ傘は、人の傘を拝借した人間が感じる、
『元の持ち主が現れるかもしれない』という恐怖と罪悪感から生まれた妖怪である。
世紀末の事件以降すぐに誕生した比較的新しい妖怪で、
コンビニ等の傘立てを見張り、盗人を叩きのめそうとしている所をネットワークに保護された。
バロウズなどの支援を受け、社会的常識や生計を立てる術を学んだ彼は、
現在、妖怪商店街にてオーダーメイドの傘屋を営んでいる。

  • 妖怪としての顔
黒い大き目の傘を差し、全身濡れ鼠で長髪の男の姿をしている。
傘の内を見通したり、傘の中に人を入れて庇ったり、傘から水滴を発射したりと
手に持った傘を使った妖力・妖術を多く持つ。
天候を操作して雨を降らせたり、傘の来歴を探知するなど小技も使えるが、
基本的に武器ともなる傘が無ければ殆どの妖術が使えないという弱点を持つ。
負の感情から生まれた為か寺社仏閣や聖なるものに弱く、本体の傘を封印されてしまえば復活できない。
また、傘を盗んだ人間を衝動的に攻撃してしまう悪癖を持つ。

  • 人間としての顔
笠井・道具(かさい・みちよし)
性別:男
外見:長髪を首の後ろでくくったやせっぽちの男。20代後半程度の外見をしている。
職業:オーダーメイドの傘屋『レイニーデイ』の職人兼オーナー
特徴+:戦闘即応、言語能力Lv1
  -:やせっぽち、誠実、お祭り好き、平和愛好:無垢な相手を害せない
癖  :捨てビニール傘を拾う、営業日が不定期、ネーミングが安直
    銃規制推進派、助手席に人を乗せたくない

  • 設定
妖怪商店街でオーダーメイド傘屋『レイニーデイ』を営む若き傘職人。
ヨーロッパで修行して得た感性と、日本の伝統技術を融合した彼の傘は
馬車道あたりの目の肥えた客にも一定の評価を得ている。
しかし、インスピレーションを得る、と称しすぐにバイクで何処かへ出かけてしまう為、
店の営業日は定かでない。

裏の顔は傘や武器の手専門の修理屋であり、唐傘お化けや妖狐に顧客が多い。

(別に構うことはないだろう)そう考えて、男は傘立てから一本の傘を手に取った。
今朝の天気予報ではこのあたり一帯、晴れの予報だった。しかし、雨はもう随分長く降り続いている。
じめじめした夏の雨は傘を差していてもスーツの中にまで染み込んでくるようだ。
(所詮、コンビニに置かれている傘に所有権など無いのだ)
自分勝手な理屈を並べ立て自己正当化を始める。先ほどから感じる悪寒を忘れようと。
(自分の傘とて盗られた事は幾度もあった、傘は天下の回り物という奴だ)
歩を進めるごとに雨は強くなり、気付けば男は傘を目の前に翳していた。
(あの予報を出したテレビ局には苦情を入れてやろう)
そんな面倒なことは絶対に家に帰り着けば忘れるだろうが、男は暫しその暗い妄想に浸った。
ふと気がつくと、傘の下から足が見える。どうやら傘の向こうに誰か立っているようだ。
(邪魔くさい奴だな)男は足を避けようとしてふと気がついた。
(こいつ、傘を差さずに持ってやがる。)
この雨の中、どんな面をして傘も差さずに立っているのだろう。
好奇心と優越感が入り混じった感情が渦を巻き、男はゆっくりと傘と視線を上げた。
そこにいたのは奇怪な長髪の男だった。
風雨の中、濡れそぼった身体を護るでもなく、亡羊とつっ立っている。
寒気がいよいよ増してきた。何故、こいつはこんなに濡れたまま立っているのか。
―傘を差しているのに
差していた巨大な傘が振りかられる。殴り倒される刹那、男は悪寒の正体に気付く。

(罪悪感だ)

奇しくもこの妖怪の正体に辿り着いた男は、駆けつけたネットワークの妖怪により、
無事に一命を取り留めた。
最終更新:2015年05月18日 01:17