人は――羽ばたく鳥を止めることは出来ない
どんなに愛おしくても――
その志を止めることは――
◆
「うっ!はぁ…はぁ…」
冬の寒い日だと言うのに、汗が流れる。
手で払い、辺りを見渡す。
「み、水…」
「――ほらよ、乾いてんだろ」
暗闇の中、コップを渡す音が聞こえる、そのコップは女性の腕の中へ収まる。
「んっ…すまへんな…キャスター」
女性――神尾晴子は飲み終えたコップを置くとキャスターを再び見据える。
――金髪の中年男性と言ったところか、彼女のサーヴァントが座っていた。
「なぁに、気にすんな、ところで…すいぶん寝汗をかいてたようだが…悪夢でも見たのか?」
置かれたコップを片付けながらキャスター――ヴァン・ホーエンハイムは質問を投げかける。
「あー…少し…ここに来る前の話や…」
「…マスターの娘さんの話か…俺も呼ばれる前に夢で見た」
彼女の過去――それは――鳥を羽ばたくのを――止められぬ者のようなもの――
「…観鈴は…あの子は、自分であの道を選んだんや…何も後悔はしてへん」
「そうかい…」
もう一つのコップに手を当て、水を飲み干す。
もう一つ――質問を投げかける。
「そういや…あんた、願いを聞いてなかったな、何があるか…」
ただ一つ、聖杯へとかけられる願い、ここで運命の麓を頒かつサーヴァントも居るだろう。
――憎悪――欲望――慈悲――それに彩られた願いに反し、そのまま座へと変える者も居る――そして――解答は――
「そうやな…観鈴の分まで、しっかり生きてしっかり死ぬ、それだけや」
ただ一人の人間としての生を望む、不老も、不死も、蘇りもいらない。
ただ、人間として生きたいのだ。
「いい…願いじゃねぇか…人として生きる、それだけあんたは立派だ」
「立派だなんてそんな…うちなんて…」
「何、人として生きられる事、それは案外できないことさ」
その言葉には、節々に重みを感じられた。
そして、コップを水場の近くへと置く。
「さて…そろそろ話も切り上げて、寝るとするか」
「わかった…お休みな、キャスター」
「おうよ」
晴子は布団を再び包み、ホーエンハイムは霊体化していく。
再び、静寂と暗闇が部屋を包む。
◆
――これは、虚構の――二人の親鳥の話。
片方は、雛の羽ばたきを見て。
片方は、旅立った二人の雛を見つけて、愛情を伝えて、安らかに眠って――
そして、遠い遠い旅路に、足をつけ始めた。
【クラス】
キャスター
【真名】
ヴァン・ホーエンハイム@鋼の錬金術師
【属性】
善・秩序
【パラメーター】
筋力:C+ 耐久:C 敏捷:B 魔力:A 幸運:D 宝具:A+
【クラススキル】
陣地作成:B
魔術師として、自らに有利な陣地を作り上げる。
“工房”の形成が可能。
道具作成:―
このサーヴァントは道具作成のスキルを持たない。
【固有スキル】
錬金術:EX
物質を理解し、分解し、再構築する、「科学」
無から有を、他属性から他属性を生み出すことは出来ない。
ホーエンハイムの錬金術はトップレベルの物となっており、巨大なドームなどを簡単に構築することができる
直感:C
戦闘時、つねに自身にとって最適な展開を”感じ取る”能力。
敵の攻撃を初見でもある程度は予見することができる。
対魔力:―(C)
第二節以下の詠唱による魔術を無効化する。
大魔術、儀礼呪法など大掛かりな魔術は防げない。
後述の宝具発動時のみ使用可能。
【宝具】
『俺の中の53万6329人分の命』
ランク:A+ 種別:対人宝具 レンジ:- 最大補足:-
かつての存在した国 クルセルク王国の国民全員分の命が入った賢者の石。
ホーエンハイムは全53万6329人全員との対話を終了させており、全員が緊急時にはすべてを掛けて協力する。
発動時のみ使える強力な魔力及び、対魔力スキルを獲得する。
【人物背景】
二匹の雛鳥を追いかけ、共に旅し、散った親鳥
その散ったときの顔は、幸せだという
【マスター】
神尾晴子@AIR
【マスターとしての願い】
観鈴の分まで生きる、それだけでいい
【能力・技能】
バイクの免許持ち、後酒豪
【人物背景】
――雛鳥を看取った、優しい親鳥。
最終更新:2023年11月11日 22:50