とってもいじわるな人の話をするわ。
ほんとは優しいのに、まるで『ままはは』みたいにふるまう人の話。

 ……と、いってはみたけれど。
いじわるな人だといっても、お部屋の掃除をぜんぶ、あたしにやらせたりだとか。どくのリンゴを食べさせたりだとか。そんなことはしないわ。
むしろ、ぎゃく。とっても、優しい人。お部屋はきちんとそうじしてくれるし、お料理だって、『らーめん』ってものを食べさせてくれたの。すこししか食べられなかったけど、とっても、おいしかったわ!!
……でも、お洗濯はへたね。あたしの服、しんせつで洗おうとしてくれたんだけど、ゴワゴワにしちゃったわ。あたしはレディだから、もちろん、ゆるしてあげたの。

 いじわる、っていうのは、ウソつきなの!! しかもとっても、ひねくれもの!!
「オレは大体の童話の奴らとは顔見知りだぜ」、っていったから、人魚姫とも? って……あたしは聞いてみたのに!!
「王子様に恋した人魚に倣って皆男作って海から出たぜ」、ってひどいウソをつくの!! しかも、そんなひねくれた話、あるものですか!!
その後話した、シンドバッドのふな乗りさんの話なんて、「女好きのドスケベ」だとか、長ぐつをはいた猫は、「キザだけど直ぐフラれる可哀そうな奴」だとか、お話とぜんぜん違うことばかり!!
それにそれに、その人は自分のことを、『ミチルを見捨てた馬鹿なチルチル』だとか、そんなことを言うのよ? そこで、もう、怒っちゃった!!

 だからあたし、言ってやったの!!
「チルチルが、ミチルを捨てるわけないでしょ!! あなたみたいな親切な人が、そんなことする筈がない!!」――って。

 ――そうしたらあの人、ほんの少しだけ、かなしそうな顔をしたわ。

 ――そうだよな。兄貴が、妹を見捨てる訳ねぇよな――

 それだけ言って、いつものお顔にもどったの。
きっと、あの人も、わかってくれたんだと思う。ウソをついちゃったことが、悪いと思ってくれたんだと信じてる。

 だから、今までのいじわるやウソの話は、もう、おしまい。
なかなおりのお茶会、そのじゅんびを、はじめなきゃ!! 熱めの紅茶にサンドイッチ。ブラウン、カーキのクッキーをあたしが持ってきて。
あとは、あの人が『らーめん』を作ってくれれば、かんぺきね!!




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◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 ひねた少年時代と青春とを、送って来た自覚はあるぜ。
オレ自身が、ガキの頃から捻くれた、可愛げのないガキだったんだ。んで、そのまま、図体ばかり育った、デクノボーの出来上がり、ってワケよ。

 なもんだから、ダチも少なかった。
いなかった訳じゃないぜ。いたけど、クセの強い奴らが残ったってだけだ。ガキのオレにも解ったさ、連中らは、ふつーの奴らが連想するみてーな、一般的な感性とは違う奴らだって事位はな。

 オレは今、オレを召喚したマスターの『ままごと』に付き合ってやってる。
ままごと、っつっても、用意されてるのはオモチャの飯じゃねぇぜ? クッキーやらサンドイッチやら紅茶やらが用意された、れっきとした食えるモノだ。
さながら、外人の女の子版のおままごと、って所か? 雰囲気は出てるよな。……「あなたも作ってもちよらないとダメよ」、って言われて、仕方なくオレが作った、ラーメンが全く浮いている。
ランチのメニューの定番ではあるけどな……クッキー、紅茶、サンドイッチと一緒に出すもんじゃあねぇよな、普通は。

「? たべないの? アルターエゴ」

 オレを呼んだこのマスター。名前は、『ありす』って言うらしい。
その名前の響きの通り、誰が見たって外人さんだ。少なくとも、日本人の出で立ちじゃない。

 陳腐な表現だけどよ、本当に、お人形の様な、って言い方が相応しい嬢ちゃんだった。
傘の様な形のスカートが特徴的な、ふんわりとしたドレスを着たその様子は、洋人形そのものじゃないか。色白で、手足も細く、儚げで。
今まで外で、身体を動かすような遊びなんてさせて貰えなかったんじゃないかと思っちまう程、華奢そうな身体つきで、小突けば崩れてしまうんじゃないかと心配になる程だ。
身体の何処かに、それこそ関節の1つ1つに、アタッチメントみたいなもんがついててさ。何かの弾みに、そこからバラバラになってしまいそうな……。

 弱そうだとか、脆そうだとか。
そんな言葉で表現する、それ以前の問題。オレは、目の前のガキを見て、もっと根深い所。根本的な所が、儚いと。初めて見た時、思ったんだ。

「食べないのか、はこっちが聞きたい事だぜ、嬢ちゃん。オレはサーヴァントの身の上だ。飯は食えるが、別に食えなかろうが死ぬ訳じゃない。食べ盛りなんだ、そっちが食いなよ」

 サーヴァントの身体って奴は便利なモノで、飯を食う必要がなくなるんだってよ。
それはそれで味気ないとは思うし、たまには味がして腹持ちの良いモンを食いたくなるのも正直な所よ。
だが、今は。目の前のマスターの方を、優先してやりたかった。歳は、妹……ミチルの奴と殆ど差がない。頬が落ちる程に甘いケーキを、クリスマスに食べる事を夢見ていた、あの妹が見たのなら。
目を輝かせて手を伸ばすだろう、クッキーやサンドイッチの数々に、ありすは、全くと言っていい程手を付けない。

「ううん。ありすはいいの。あたしも……アルターエゴとおなじで、お腹……すかないから」

 オレは、ありすの言葉に、遠慮だとか謙遜だとかの、美徳の空気をこれっぽっちも感じられなかった。多分コイツは……。

「お化けは死なない、病気も何にもない、ってか?」

 いつかどこかで聞いた事のあるフレーズを口にしたら、ありすの奴、目ェ丸くして驚いてたぜ。

「すごい、なんでわかっちゃうの?」

「サーヴァント自体が幽霊みたいなモンなんだ、本職のお化けの目は誤魔化せねぇさ」

 と言っても、オレはオレ自身、自分がサーヴァント……幽霊の豪華版だって言う認識は、薄いんだけどよ。

 折角、マスターが懇親会みてぇなノリで用意してくれた食べ物なんだ。
食わなきゃバチが当たるからよ、クッキーを3枚程摘まんで、それを口の中に放り込む。やはり、甘い。
紅茶にも合う味なんだろうが……オレはどうも、紅茶何て言う『ハイソ』な代物が苦手でな。ベルギーの『サクシャ』が書いた童話の産まれだってのに、笑える話だよな。ま、ベルギーだと紅茶じゃなくてビールが有名なんだけどな。

「マスターはよ、願いって奴はねぇのか?」

「お願いごと?」

「この、『せーはいせんそう』って奴に生き残れれば、オレも嬢ちゃんも、願いが叶えられるんだろ? 何か、あるんじゃねぇのか?」

 人を殺す事によって願いを叶える、って言う、この聖杯戦争の仕組み自体は、オレはクソだと思っている。
だが、願いを叶える、と言う機能については、嘘は恐らくねぇんだろう。呼び出されたサーヴァントによっちゃ、願いを叶えると言うキモになる部分を疑う奴だっているんだろうが、オレは違う。
おとぎ話の世界って奴にゃ、条理をすっ飛ばして願い事を叶えるアイテムって奴ぁ珍しくなかったからな。だがそう言うアイテムって奴は往々にして、七面倒くせぇモンを踏まなくちゃ手に入らない。
それはおとぎ話は勿論、漫画やアニメ、小説にゲームに映画にと。どんな創作の世界でもの、『お約束』だ。それを手に入れる為の過程が、聖杯戦争は疑いようもなく最低のモンだが……それだけの手順を踏むだけの価値は、ある奴にはあるんだろうし、実際凄ぇアイテムだって言うのは、間違いなかった。

 人って奴は見かけによらないからな。
オレを召喚したって言う、虫も殺せない所か、石の下に集まってるダンゴムシを見ただけで悲鳴を上げそうなこの嬢ちゃんが、聖杯の獲得に乗り気の可能性だって、ゼロじゃねぇさ。
下手すりゃ、殺しだって良しとする可能性もある。それを咎めて、叱りつける事は出来るが、拒否する権限が今のオレにはねぇ。令呪って奴を、向こうが持ってるからな。
何にせよ、願いだけは聞いておかなくちゃな。願いがあるって事は、殺しを肯定してる事とほとんど同じ。それによって、オレの立ちまわり方が変わるって訳だ。

「お願いごとなら、ありす、1つあるわ」

「へぇ、なんだいそりゃ」

 クッキー、紅茶、サンドイッチ。そして、不釣り合いなラーメン。どれにも口をつけず、ありすは言った。

「お友達が欲しいの」

 慎ましい願いだった。
大金が欲しいだとか、殺したい程憎い奴がいるだとか、好きな男に振り向いて貰いたいだとか。そんな、俗っぽい願いじゃない。
マジで、子供が願うような、純で、無垢な。そんな、切なる願いであった。

「いねぇのかい?」

「いなかったわ。かわいそうな、アヒルの子だったの」

「そいつはオメェ、最後は白鳥になってめでたしめでたし、って話じゃねぇか」

「ううん。ありすはいつまでも、ひとりぼっちのアヒルの子。小びとたちに見つけられない、眠ったままの白雪姫」

 「――だって、そうでしょう?」

「お話のとちゅうで死んじゃったら、幸せになんて、なれないでしょう?」

「……」

 オレは、ありすの奴を、お化けだと言った。
水木ナントカとか言う〈作者〉が描いたマンガに出て来るみてぇな、不気味なバケモンのようなツラしてるからじゃない。
マスターとサーヴァントと言う繋がり(ライン)から伝わって来る、情報。そして、その目でアリスを見た時に伝わって来る、雰囲気。この2つを統合して判断した事だ。

 多分、この嬢ちゃんは。

「ありす、もう死んでるの」

 この冬木って街に来る前から、身体もクソもないのだろう。

「ありすの『居場所』は、どこにもないの」

 ――居場所、と来やがったか。

「みんなの『これから』は、たぶん、まだ続くわ。おしまいとめでたしは、まだ先なの。でも、あたしはちがう。あたしの本には、もう、先のページなんてないの。あとは、閉じて……ううん。もう閉じられてる」

「……」

「おしまいって言われたら、続いちゃダメ。めでたしって締めくくられたら、さようなら。それはきっと……破っちゃいけない、『お約束』」

「マスターの人生は、それで、満足だったのかい? ……救いのある、人生だったのか?」

「ええ、そうよ」

 屈託のない笑みを浮かべ、微塵の迷いって奴もなく。オレのマスターは答えやがった。

「2回も、見送られちゃったの。ありすの死に、2回も、かなしいお顔を向けてくれる人がいたの。それは素晴らしいことだって……あたし、むねを張って言えるわ」

 ……。
沈黙が、オレ達の間にわだかまった。10秒、オレ達は言葉を発さなかったのかも知れないし、10分だったか、1時間だったのかも知れない。
長い時間が過ぎたような錯覚を覚えたが、ありすの奴が用意してくれた紅茶と、オレが用意したラーメンから、まだ湯気が立ち上っていた所を見て、初めて。
大した時間が経過してない事をオレは理解した。微笑みを、アイツはずっと浮かべている。相も変わらず、クッキーにもサンドイッチにも、俺がこさえた微妙なラーメンにも、手を伸ばさない。

「……男の話をするぜ」

 ありすが、仄かに目を輝かせた。
期待してる所悪いがよ、そんな面白い話でもねぇぜ。馬鹿な男の、馬鹿な半生を語るだけなんだからな。

「貧乏なきこりの家に産まれた兄妹でな、魔法使いの婆さんに『青い鳥』を探してくれって言われてな、色んな国や場所を旅するんだよ。思い出の中だったり、恐ろしい物を閉じ込めて出さないようにしてる国だったり、森の中、墓の中、宮殿、幸せいっぱいの国、これからの国……ってな感じでな」

「見つからなかったのでしょう? その青い鳥は」

「そうさ。気づいたら妹と一緒のベッドの中。起きた時に目に映った鳥かごの中にいたハトが、実は青い鳥だった。モーリス・メーテルリンクとか言う捻くれ者が考えた、『幸せの青い鳥』だ」

「その話、ありすは好きよ。だからあたしは怒ったのよ? ミチルを見捨てた、なんてウソをついたから」

「ところがチルチルは全然自分の話が好きじゃなかったのさ」

 今度は、ありすは怒らなかった。オレが冗談めかして言ってるからじゃない。マジのトーンで、言ってるからだ。

「貧乏な家だし、クリスマスにはケーキも食えないプレゼントもない。空きっ腹でベッドに潜り込んで次の朝を待つだけの、いつも通りの日。チルチルはそう割り切ってんのに、ミチルの奴は毎年のように、来もしないセント・二コラのじいさんのプレゼントを楽しみにしてるのを、悲しい目で眺めるのさ。何処にでも行ける魔法の帽子があるのに、それを使って幸せにもなれない。得体のしれない鳥を探し回って、結局は、貧乏なまま話がおしまい。チルチルはな、自分の幸せをこれっぽっちも、幸福な話だと思っちゃなかったんだぜ?」

 「だけど――ある時、チルチルは気付いたんだよ」

「〈作者〉に頼み込んで、幸せな結末に書き換えてくれってな」

「えぇ!? そ、そんなこと、できるの?」

 驚いた顔のありすに対して、オレは、ニヤリ、よ。

「ダメだった」

 オレは肩を竦める。 

「そいつはな、自分でこさえた話を、そもそも悲しい話だとも思っちゃなかったのさ。オレ達に恨みがあった訳でもなかった。オレの知らない、色んな悲しい話を、たくさん知ってたんだ。それに比べりゃ、青い鳥なんざ悲劇でもねぇんだって。アンデルセン、そんな名前の奴が書いて来た悲劇に比べりゃ、お前達は幸せだ、とよ」

 メーテルリンクの奴はきっと、話の整合性だとか、これからの展開だとか。そんな事を考えて、オレ達を貧しいきこりの子にしたんだろう。
アイツが悪辣だったからだとか、性格や根性がひん曲がってるだとか、そんな理由でじゃない。そうした方が、適切だったから、そうしただけに過ぎない。
だから、オレがどれだけ貧乏は悲劇と言っても、響く訳がねぇんだ。オレは、それを知るのが遅すぎた。

「それを聞いたチルチルはな、何を考えたと思う?」

「ミチルのいる家に、帰った!!」

「ハズレ。聞いて驚くなよ? 他の〈作者〉が考えた悲劇を書き換えて、ハッピーエンドにしてやろう!! って思ったんだぜ」

「えぇー!!」

 全く良いリアクションをしてくれる〈読み手〉様だよ。

「……で、できたの? アルターエゴ?」

「……」

「白雪姫は、『ままはは』と仲良くなりながら、王子様と結ばれたの? 人魚姫は、泡にならなかったの? 赤い靴をはいたカーレンは、足を切られる事はなかったの?」

 ……心が締め付けられる。
誰だって、話したくない事はある。出来なかった、恥ずかしい事ともなれば、尚更さ。だが、話さなくちゃあな。話をするって、言ったんだからな。

「誰も、救えなかったんだよ」

言ってて、馬鹿らしくなってくる。オレは今、笑っていた。自分の馬鹿さ加減に、呆れて物も言えねぇ。自嘲気味な笑みだった。

「メーテルリンクの奴が言った通りだよ。世の中にはな、たっっくさんの、悲劇があったし……、貧乏しか悲劇の要素のない青い鳥が可愛く思えるような話もあったんだ」

 「それに……な」

「馬鹿なチルチルは知らなかったのさ。全ての物語に、<作者>がいるって思ってたんだよ。1人の<作者>じゃない。色んな時代の、色んな土地の奴が紡いで行く昔ばなしがある何て事、これっぽっちも知らなかったんだ」

「何て、お話だったの?」

「病気の娘の為に、茶碗一杯分の小豆と米を盗んだ親父さんが、殺される話さ」

 口やかましい青い鳥と一緒に見た、色んな人間の唇が付いた柱の光景は、今も、忘れない。
1掬いの小豆と米を盗んだだけで、実の父親を生贄にされる娘を救おうと、奔走した時の話。
チルチルは、救えなかった。<作者>がいない話だったからな。漸く出会えたと思ったら、そいつは、スピーカーに過ぎなかった。誰ぞから聞いた話を伝聞系で話す、唇の柱。
何を言っても、暖簾に腕押しって奴で、十人十色の語り口で、1つの話を、何通りもの解釈で話しやがる、<作者>とすら最早言えない<作者>の姿。

「……アンデルセンって<作者>にも、会った事があるんぜ、そのチルチルは」

「本当!?」

「ああ。雪の降るクリスマスイブだってのによ、寒空の下で1人、売れもしねぇマッチを買ってくれねぇかとせがむ女の子の話だ。チルチルも馬鹿なりに必死さ。その女の子をな、幸せにするよう書き直せって、銃まで突き付けてアンデルセンを脅したんだ」

 地獄みたいな話を書き上げたとは思えない程、冴えない男だった。
特別に不細工だった訳でもなく、お世辞にも美男子と褒めたたえられない。どこにでもいそうな、中年の男。それが、オレの見たアンデルセン。数多の不幸な話を書き上げた<作者>だった。

「……話の筋を、死んでも変えないって言ったよ。これを変える位なら、殺してくれても良い、とよ」

「……」

「<作者>が書いたお話って奴は、そいつ自身が言いたい……表現したい事を伴って、産まれて来るって、そいつは言ったよ。それを変えられる位なら……死にたくないけど、死ぬしかない。そんな覚悟を、持ってたんだよ」

「撃ったの?」

「マッチ売りが、許したんだよ。……だから、撃たなかった。……撃てなかった」

「よかった……」

 ほっと、ありすが胸を撫でおろした。

「その人が死んじゃったら、お話を書く人が、ひとり、消えちゃうもの。そんなの、いや」

「……そうだな」

 知らず、オレは笑っていた。

「マッチ売りの子を幸せにしようとして、チルチルは無茶をした。アラビアンナイトの世界に飛んでよ、精霊(ジン)を従えたり、魔法を習得したり、王様になってみたりと、その子が困らないように色んな事をやったんだ」

「まぁ」

「だけどよ……やり過ぎちまったんだよな。そりゃそうさ。元々違う話の奴がさ、別の話の筋を書き換えたり、その話の人物を傷付けるなんて、あっちゃいけない事よ。当然の話のように、チルチルは制裁を受けた。痛めに痛めつけられて、元の青い鳥の話に戻されてよ……」

「……戻されて?」

「……そいつの居場所が、なくなっちまってたんだ。そいつの席にはな、そいつよりもずっと、チルチルを演じるのが上手い奴がいた。古いチルチルがずっと好き勝手やってる間、その上手い奴が、青い鳥を何とか取り持ってた」

 ズズ、と。湯呑に入った緑茶でも啜るような感覚で、オレは紅茶を飲んだ。マナーもへったくれもない飲み方だが、ありすの奴は、それを注意しなかった。

「当たり前の話さ。自分の話の中での役割すらこなせねぇで……。自分自身が、自分のやった事に胸張って幸福です、って言えないような奴が、他人を幸せに出来る筈がねぇ。……これは、そんな当たり前の話。他所で好き勝手やって、母屋を放置してたら、その母屋に居場所がなくなってた、馬鹿な男の笑い話」

「――」

「……お前が呼んだ、『岩崎月光』って言う名前のアルターエゴの、『昔々ある所に』、よ」

 自分で話してて、何ともまぁ、馬鹿げた半生だな、と思う。
救ってみせる、ハッピーエンドにして見せる。そうと息巻いた生意気なクソガキがやった事と言えば、人様のお話に介入して、好き勝手暴れまわって。
じゃあそれで何かを変えられたかと言ったら、とんでもない。結局結末は、一切変えられず。ただ、そこに至るまでの道筋を、ぐっちゃぐちゃにしただけ。
そして、途方に暮れて戻って来てみりゃ、青い鳥にオレの居場所なんてなくなってて。こんな愉快な、因果応報、滅多にねぇよな。

「お話は、本当に、それで終わり?」

 だが、ありすは、オレの話に満足しなかったらしい。
最初の時には膨れっ面で怒ってた、オレがチルチルだって話を、今度と言う今度は、本当に信じ切っているらしかった。

「それじゃあまりにも……あなたが可哀そうだわ」

「業突く張りは、いつの世も、痛い目に合うもんだぜ」

「だれに救われて欲しいかを考えるのは、本を読む人なのよ」

 ありすは、更に言葉を続けた。

「あなたが主役の本をあたしが見たら……あたし、あなたに救われて欲しいって思うの。だってアルターエゴ、がんばってたじゃない」

 ……それは、自分の話が明白に悲劇だと、解っていながら、オレの幸せを願った女の子2人の祈りと、同じ思いだった。
父親を生贄にされ、喉が枯れる程に泣き喚き、これが現実だと悟った女の話は、数年後、死んだ雉を抱いて死んだ目をしながら原っぱを立ち去る所で終わりを迎える。
昼間から呑兵衛のぐうたらオヤジから虐待同然の扱いを受け、幸せの何たるかを知る事もないままにクリスマスを迎えた少女の話は、その翌日、寒さに耐え切れず眠るように死ぬ所で締めくくられる。

 誰が聞いても、悲劇その物。血の通ってない、悪魔が考えたような話の主人公達。
なのにアイツらは、主人公としても、チルチルとしても、幸せにすると誓った男としても。中途半端なデクノボーのこのオレが、幸せである事を願った。
オレが、いつの日かきっと救われて、助かる事を祈った。自分達の幸せなんかよりも、そっちの方が大事だと、言わんばかりによ。

「ねぇ、アルターエゴ。ほんとうに、あなたの話はそれで――」

「おしまいじゃねぇさ」

 そう、それで終わりじゃないから、オレも……オレ自身の人生も、捻くれてんだよ。

「<読み手>の人生って奴ぁ、長ぇなぁ。同じ事が起こる日が1日もなくってさ、繰り返される事もなくってよ。毎日、毎時間、違う事の連続で、同じ事を繰り返してりゃ良い本の中とは偉い違いよ」

 出会って、別れて、飯食って。眠って、起きたら、また、1日が始まる。
自分に課された仕事を毎日こなす。やってる仕事は同じでも、天気は毎日違うし、季節も違う。その時一緒にいる人間も違うので、話す内容も日によって当然変わる。
それは、おとぎ話の世界じゃ、考えられなかった事。人間達の世界じゃ当たり前の事は、本の中の世界での非常識だ。

「オレは、<読み手>……いや、人間としての命を得た」

「楽しかった?」

「おかげさまでな。良い人に出会えたんだよ。頭の良い人でな、文学の才能も物凄かったらしい」

 尤も、あの人の作品の、ぶんがくせい? って奴の凄さは、オレよりも、高勢の奴の方が理解してたんだけどな。

「元は名のある商人の長男坊だってのによ、何を血迷ったか、百姓の真似事してみたり、教師もやってみたりと、随分色々手を広げてたんだよ。生徒や農家からは『センセイ』って言われて慕われる一方で、当の実家からは不良息子と叱られまくりよ」

「でも、好きだったのよね?」

「……器用な人じゃねーんだよ。やっぱ元が良いとこの坊ちゃんだからよ、教師としては良くっても、農家としてはイマイチでな。そこに関しちゃ、オレも、他の皆も、助け舟を出しっぱなしだったな。元々病気がちみてぇだったのに、キツい農業だとか、夜遅くまで起きてなくちゃならねぇ<作者>の仕事だったりもしてたら……そりゃ、身体も壊すよな」

 一度体調を酷く崩して、診療所に運んでやった時に、センセイの親父さんがやって来た事をふと思い出した。
カンカン、って言う表現がこれ以上ない位適切に、怒ってやがったな。まぁそりゃそうだよな、親父さんからして見りゃ、実家の金を勝手に使って道楽して、実にもならねぇ結果にも繋がらねぇ。
作家と百姓と先生の真似事をしてるってーんじゃ、実家に戻って家業を継げ、って怒る他ねぇよな。

「それでもオレも、皆も。愛想尽かせる事はしなかったぜ。身体を大事にして、生きてて欲しいと思ってさ……その絶好の機会が訪れたんだよ」

「?」

「何でも、願いを叶えてくれる道具を使わせてくれる、その機会に1度だけ、恵まれたんだよ」

「えーっ!? そ、それって……」

「聖杯じゃねぇよ。それに、誰も殺したりもしてねぇ。誰に恥じる事もない、誇っても良い、立派なお勤めを果たしたから、そのご褒美だ。どこぞの馬鹿なチルチルみたいに、おかしくなった童話や昔話の世界を救う為に、働いてくれた人間だけが得られる、ご褒美だよ」

「そ、それで……センセイは、助かったの?」

 ……。

「……あの人はよ、オレが童話の青い鳥からやって来たチルチルだって事を全部承知してた。元の話に戻りもしねぇで、他所のお話の主人公達を救おうとして、夢破れて、落ちぶれて。センセイのいる世界にやって来た事も、知ってたのさ」

 お月様と会話が出来る。
そんな事を言ってたよなぁあの人。んで、お月様がオレの事を全部教えてくれたとか……ハハ、何だよそりゃ。

「あの人からも、願われたよ。『オレ』に、今度こそ。誰かを幸せに出来る様な……。おろしたてのシーツみたいに、真っ白い、真新しい人生を用意してやってくれってな」

「……」

「……」

「そ、それで、お話の続きは、どうなるの……?」

「気になるか?」

 水飲み鳥のオモチャみてーに、ありすの奴は、コクコクと首を縦に振るった。
オレはそれに対して、ニヤリ、と笑う。優しい笑みなんかじゃあない。自分でも実感出来る程に、意地の悪い笑みだ。

「お話の続きは、また今度」

「えーっ!! 何それズルい!!」

 今度と言う今度は、流石に、初めの時みてぇな膨れっ面になった。

「馬鹿野郎、面白い話って言うのは引きが重要なんだぜ。それにしゃべくりっぱなしってのは、疲れるんだ」

「む、むぅ……!!」

 オレが、ずっと喋りっぱなしだった事も配慮してか、ありすはそれ以上、何も言わなくなった。

「……な? 気になるだろ?」

「うん」

「だけどよ、オレも。お前の話の続きが気になるんだぜ? 嬢ちゃん」

 自分の事を指さすありす。オレは首を縦に振った。

「でも、ありすの本は、もう閉じられてるわ。ふしぎのくに(ワンダーランド)も、かがみのくに(ルッキング・グラス)も、終わりなのよ」

「じゃあ今いるお前は何だ? マスター」

「今の、あたし……?」

「読み終えられて、閉じられた本だって言うのなら、今お前が此処にいる事、おかしいよな?」

 うんうん唸って、ありすは考える。が、答えが出なさそうだなとオレは判断した。

「読まれた童話は、本を閉じられ、本棚へ。後は思い出されたかのように、また読み返されて、んでまた閉じられて……。本の世界の住民の一生はそんな所だけどよ、人間は違うよな」

「……」

「決まったストーリーもねぇ、登場人物の数もコロコロ変わって、そもそも主役も脇役もエキストラもねぇ。それが人間の世界だ。創作の世界と違う所さ」

 当たり前の話だよな。全員が全員、テメェなりの意思とか考えを持ってて、それに沿って生きられるのが人間なんだからよ。
そんな世界で、我こそ主役、お前は脇役、だなんて意見が通じる訳がねぇ。世界に対して携われる権利は、等しく皆持ってるって事なんだからよ。

「嬢ちゃん。お前は自分の話は終わったって言うけどよ、オレは違うと思ってる。多分、終わる事が認められなかったんだろう。だから、閉じられたのに、また新しい本を用意されたか、ページを増量されたんだ。この分だけ生きてみろ、ってな」

 それは……多分。オレの生き方だ。
幸せの青い鳥のチルチルから大きく外れてしまった俺は、お菊とマッチ売りの少女に祈られ願われ、<読み手>の世界で生きる事になった。
岩手の田舎で農家や木こりの手伝いの凡夫である『サンキチ』としての人生を授かったオレは、余命幾ばくもねぇデクノボーのセンセイに祈られ願われ、記憶を真っ新にして新しい人生を送る事となった。
微妙な味のラーメンを出す頑固オヤジに拾われ、『岩崎月光』と名付けられたオレは――、青い月でねじくれたお話を助けたり、月の軍勢と戦ってみたりの、大立ち回りを送る、何とも波瀾万丈な人生になってしまった。

 オレは、続いて欲しいと願われ続けた不良だった。
ここで終わってはならない、腐ってはならない、諦めてはならない。
そうと思われ続けたオレは、捲るページがもうすぐなくなる事が解ってる傍から、次々と新しい、白紙のページが増えて行って、その増えた分だけの活躍をする事を願われた、行き当たりばったりの本。

 地に足つかねぇ『デクノボー』よ。

「増えたページ分、もう少し、前向きになりな。そうすりゃ、そのページの分だけ、岩崎月光の話の続きをしてやる」

「そのお話は、おもしろい?」

「おうよ。シンデレラも赤ずきんも出て来るぜ? おまけに女も絡んだラブ――」

「女の子!?」

 目をキラキラさせてありすがズズイと身を乗り出して来た。やべぇ言っちまった。

「ラブって言ったわよね!? すてきな恋の話もあるの!?」

 クソ、しまった。言わない方が良かった。
身なりが良いが、少しばかり不思議ちゃんで、歳が全然幼いからって油断してた。海の向こうでも、女ってのは他人の色恋沙汰の話が好きなのかよ、畜生。

「……最後の最後に話してやらぁ」

「ひどい!! いちばん聞きたいことをもったいぶる!! やっぱあなたはいじわるね、アルターエゴ!!」

 ぎゃーすかぎゃーすかうるせぇのが始まった。やっぱ子供って奴は根っこが同じだよ、ったくよぉ……。
女3人集まれば姦しいとはよく言うがよ……センセイ、多分そりゃウソだな。1人だけでも、十分過ぎる程喧しいぜ。




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◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 ヒジョーに迷惑な話をするぜ。
気持ちよく、うとうと眠ってた所を、起こされた話さ。

 チルチル、サンキチ、そして岩崎月光。
そいつらぜーんぶひっくるめて、一番最後の岩崎月光の人生とするんだったら、オレの人生は満足で幸せなものだった筈さ。
そこにたどり着くまでに随分と痛い目を見たし、血も流したし、別れもあったし、よりにもよって一番ブン殴りたかったラスボスに、『答え』を教えられたりよ。
随分長くて遠い回り道をした気もしたが、それでも、オレは、最後の最後で『幸せ』だったよ。

 だから、未練何てモンはなかったんだ。
何でもオレは英霊に召し上げられて座って所にいるらしくてよ、色んな奴からお声が掛かって、座の奴が行けって言うんだけどよ、オレは断った。だって、行く義理もねぇんだからよ。
聖杯戦争とか言う奴についても、これは同じさ。やりたい事やり切った奴が、2度目の生なんて願うかね? オレは御免。だから、ずっとずっと、呼ぶ声がしたけど蹴ったんだ。

 何だけどよ……。
そいつはな、グスングスンって、声を押し殺して泣いてたんだよ。
誰もいねぇところで1人泣いててよ、帰る場所をなくした子供か犬みたいに、しょぼくれた様子でメソメソと。
それだけならともかくよ、そいつ、自分の境遇について、何も怒ってないし不満がないんだよ。仕方がないわ、しょうがないわ。そんな様子で、受け入れてた。

 それが滅茶苦茶腹が立ってよ、オレはそいつの所に向かってやったんだ。
行ってみたら、小せぇ小せぇガキだった。透けて見えそうな程白い肌に、ヒラヒラとしたドレスみたいな服着た、外人の女の子さ。
んで、その姿を見ると同時に、もう、「しまった」って思った。だってオレ、聖杯戦争の舞台に呼ばれちまったんだもんよ。これじゃ、子供の泣き声がうるさいと怒鳴り込んで来たジャリガキじゃねぇかよオレ!!
もっとやっちまったと思ったのはこのガキ、泣き止ませてみたら、以外と神経の図太い、強いガキでよ。言いたいことを結構ズケズケ言ってくるんだよ。これじゃ呼ばれ損さ。

 ……多分、このマスターは、聖杯って奴には興味がないだろう。これを使って蘇生する道を選ばなければ、きっとこいつは死ぬだろう。
そいつの本は閉じられて、後は消えるのを待つだけだったんだろうが、折角増やされたページの分だけを、生きるに違いない。きっと、今回の聖杯戦争で増えた分以上のページを増やす事も、しないだろう。

 なら……それで良いんじゃねぇか?
さっき未練がオレにはないって言ったが、少し、ウソついた。
『人は夢がないと生きられない』、そうと言った爺さんがいてよ、その爺さんのお袋さんは、戦争で焼け野原になった街で、偶然拾った本を読んで、泣いたそうだ。
その本の中の何気ない生活の描写を見て、自分も、そんな暮らしを得られる機会がまだあるかも知れない、ってさ。
その本のタイトルは、『青い鳥』。その爺さんってのは、オレを拾って育ててくれた爺ちゃんの事さ。

 オレは、童話の世界の住民でありながら、チルチルとして、誰かに夢を見させた事が、なかった。
だから……。今だけは。この、いつか終わる女の子の為に。許された命の分だけ、良い夢見させてやるのも、悪くはねぇんじゃねぇか、ってよ……。
馬鹿なチルチルがこなせなかった、兄貴としての仕事を、久しぶりにやってみるかなって、思ったのさ。




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     臨終に際して、私が抹消してしまいたいと思うような作品は一切書かなかった。

     諸君、ごきげんよう。また気分がよくなった。

                     ――サー・ウォルター・スコット。イギリスの詩人。裕福な弁護士の下に産まれるが、幼時の病の影響で生涯右脚の自由がなかった







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【クラス】

アルターエゴ

【真名】

岩崎月光、或いはチルチル@月光条例

【ステータス】

筋力C 耐久B 敏捷B 魔力A 幸運A 宝具A

【属性】

中立・悪

【クラススキル】

騎乗:D+++
本来はセイバー、ライダークラスのクラススキル。
一般的な乗り物であれば器用に乗りこなせる、と言った程度のランクだが、童話ないし天・地属性に由来する乗り物であれば、判定次第で乗りこなせる。

道具作成:A
本来はキャスタークラスのクラススキル。
アラビアンナイトの世界に渡り、多数の魔術を学んだ事による恩恵。時間と材料次第では、アラビアンナイト世界に伝わる不思議の品の作成も可能。

【保有スキル】

魔術(アラビアンナイト):A+
童話、アラビアンナイトの世界に渡り、数多の精霊を従え、その力を会得した事により獲得したスキル。
アブラカタブラと唱える必要こそあるものの、逆に言えばその1節唱えるだけで成立する現象としては、破格その物。
自らの身体を変身させる、道具を作る、分身を作る、巨大化する、炎や氷の奔流を産み出すなど、起こす現象は種々様々。

執行者:A+
捻じれて、おかしくなった御伽噺の住民を、正す者。その役割を担った人物を、執行者と呼ぶ。
ランクA+は最高峰のスキルランク。数多の御伽噺を正し、あるべき形に戻した人物でなければ、会得出来ないランクである。
地属性・天属性、並びに、童話や御伽噺、伝承、伝説上の存在に対する特攻効果が付与される。ランクA+は、最早極限の閾値と言っても良い。ダメージの増大の上で、確定クリティカルである。

月の民:A--
厳密に言えばアルターエゴは月に由来する住民ではない。
月の向こう側に存在する異世界、その住民の中に在って、特に強力な力を持つ1人の女性の体液を、経口摂取で取り込んだ事で力を会得したに過ぎない。
たったそれだけの肉体的接触だが、元となった女性の力が余りにも強大な為、それによって得られたスキルランクも破格。
本来のこのスキルの効果は、ランク分の神秘以下の攻撃を完全無効化した上で、ランク分の神秘以下の防御を貫く攻撃を与えると言う凄まじい物。
また更には、御伽噺や創作の中、と言う、『本来現実世界には存在しない領域に侵入する事が出来る』、と言う副次効果もある。
だがアルターエゴの場合は上述の効果の多くが反映されておらず、『スキルランク以下の神秘を貫く攻撃が可能となる、以外の効果はオミット』されている。

【宝具】

『行こう。身近な幸せを探しに、今(ダイヤハット・メーテルリンク)』
ランク:B++ 種別:対人宝具 レンジ:- 最大補足:-
アルターエゴが有する第一宝具。童話、青い鳥の主人公であるチルチルとしての宝具。
頭にダイヤ飾りのついた不思議の帽子で、このダイヤ飾りを回す事によって、あらゆる場所に移動する事が可能。
つまり宝具としての能力はワープ能力である。過去に最強月打(ムーンストラックエスト)を受けた事によって、ワープ範囲が極めて広範になっている。
距離的な制約は基本的には存在せず、望んだ場所に一切の制限なく行ける宝具だが、サーヴァントとしての制約により、あまりにも遠い距離だと魔力を消費する。
また、ダイヤ飾りを破壊された瞬間、この宝具の使用は不可能になる他、最も大きいデメリットとしては、この宝具の存在そのもの。
青い鳥の主人公であるチルチルの象徴としてあまりにも有名な宝具である為、使った瞬間、自分の真名をバラしているも同然になるからである。

『船呑む鉢(呑舟)』
ランク:A 種別:対人宝具 レンジ:- 最大補足:-
アルターエゴが有する第二宝具。条例執行者、岩崎月光としての宝具。
巨大な鉄の鉢の様なものを被った、和服の成人女性としての姿を持つ。彼女自身は自律行動が可能で、明白に己の意志を持つ。
その正体はお伽草紙に語られる所の、鉢かつぎ姫本人。アルターエゴのいた世界では、伝説とも言える執行者であり、歴代の執行者によって振るわれた伝説の武器として伝えられている。
この宝具はそんな彼女を召喚する宝具とも言える。蹴り技を主体とした戦い方をする事が出来るが、この戦い方はあくまでも余技。その真価は、彼女を文字通り武器として振るう所にある。
後述の第三宝具が彼女の被る鉢の部分に刻まれており、アルターエゴが生来有する執行者スキルも合わさり、天・地を筆頭とした属性や宝具、防具を持つ相手に対して甚大な特攻効果を与える事が出来る。

だが、彼女自身を振るう事すら、真の使い道ではない。
呑舟、ともある様に、鉢かつぎは中国の怪魚の伝説になぞらえた、武器を呑む者としての性質を兼ね備えており、彼女によって呑まれた武器は、『その性能がそのまま10倍』になる。
本来サーヴァントを殺傷する事の出来ない近代武器も、彼女が呑み込めば、威力や速度、対神秘も兼ね備えた恐るべき武器に早変わり。
そしてこの呑み込む武器は、『宝具』や『礼装』であっても問題はなく、寧ろそう言った強力な武器を呑ませる事をこそ想定した宝具となっている。
呑み込んだものが宝具や礼装であれば、本当に性能がそのまま10倍近くに跳ね上がり、低位の宝具ですら、高ランク宝具と遜色がないそれに早変わりする。
極めつけに鉢かつぎが呑み込むものは別に武器に限った話ではなく、『乗り物』や『盾・防具』の類ですらこれを可能とする。当然、これらも呑み込めば、性能が10倍になる。

これだけの性能でありながら、強力な宝具や礼装、巨大な物体を呑み込んだとしても、消費する魔力量は鉢かつぎを召喚した時のものと、彼女の現界を維持するのに必要な魔力のみ。
正しく強力かつ極悪な宝具だが、やはり何でも呑み込める訳ではなく、呑み込もうとしたものその物が、強い意志を秘めたインテリジェンスウェポンであったり、武器そのものが強力な神性を秘めている場合には、おえっ、となる。要するに呑み込めない。

『極印(条例執行)』
ランク:A 種別:対人宝具 レンジ:- 最大補足:-
アルターエゴが有する第三宝具。条例執行者、岩崎月光としての宝具。
アルターエゴの精神が強く昂った時に、彼の顔面ないし、全身まで刻まれる、三日月の形の青白く光る御印。
この宝具を発動させた瞬間、アルターエゴの幸運以外の全ステータスは1ランクアップする他、スキル・執行者の『対象範囲』が更に拡大解釈される。
本来執行者スキルは、サーヴァント自体が天・地・童話・御伽噺・伝承上の存在として伝わっていなければ、発動しない。つまり、完全な『人属性・星属性』には意味がないのである。
だがこの宝具を発動させた瞬間、相手した存在が人・星属性であっても、『振るっている武器や纏う衣服や防具が上述の属性を兼ね備えていた』場合でも、執行者スキルが発動するようになる。
しかもこの上で、当該宝具による特攻と執行者スキルによる特攻は別枠で計算される為、この宝具を発動したアルターエゴにブン殴られた上述の属性持ちは、致命傷級のダメージを負う事となる。
おまけに、これだけの性能でありながら、あくまでも『自分の身体』のみに限定されている為、魔力消費も言う程多くないと言う、至れり尽くせりな宝具。絶対御伽噺の存在ぶっ殺すマンになる。

【weapon】

おとぎ話の道具たち:
生前の最終決戦の際に、アルターエゴの事を信じたおとぎ話の住民達に託された、それぞの物語で使われるキーアイテムの数々。
それは一寸法師の金棒だったり、わらしべ長者の藁たばだったり、桃太郎印のきびだんごだったり、舌切り雀の鋏だったり、ヘルメスの靴だったり、聞き耳長者の頭巾だったりと、種々様々。
本来だったらそれ単体が宝具としてカウントされ得る程の強力な代物の数々。これらを状況によって使い分けたり、呑舟に呑ませて効果をアップさせる事が、アルターエゴの戦い方の基本骨子。

本来であれば、ライダークラスで召喚された時に登録される宝具を介してでなければ使えない。
であるのに使えるのは、今の月光が特別なクラスであるアルターエゴでの召喚である事と、アラビア魔術でインチキをして召喚しているからに他ならない。
そのズルの代償か、魔力消費が少し割高になっており、宝具ですらない道具であるにもかかわらず、呑舟や極印よりも、魔力消費が高いのである。

【人物背景】

青い月の光によって捻じれたおとぎ話、昔ばなし、ナーサリーライム。それを正して来た、執行者。誰も救えなかった青いチルチル。青年散吉。

適正クラスはライダー、キャスター、アルターエゴ、セイヴァー。ライダークラスであればWeapon欄で説明したアイテムの数々をかなり少ない魔力消費で呼び寄せる、いわばおとぎ話版ゲート・オブ・バビロンが使用可能。
キャスタークラスであれば、アラビア魔術の範囲がもっと拡大される他、第一宝具であるダイヤ飾りの帽子の移動範囲が隔絶された異世界内にも及ぶようになり、更には童話・青い鳥由来の宝具と、月打されたミチルを召喚する事が可能。
セイヴァークラスは、月の向こう側の世界に赴き、その世界を救った時の姿で召喚され、このクラスでは呑舟は使えなくなる代わり、オオイミ前王並びにナナツルギを召喚する事が出来る。
今回のアルターエゴクラスはバランス重視であり、呑舟も使え、極印もダイヤ飾りの帽子も特にデメリットはなく、アラビア魔術や執行者スキルも、全盛期の物が適用されている。

【サーヴァントとしての願い】

ない。ありすの余生を少しは彩ってやる。



【マスター】

ありす@Fate/extra

【マスターとしての願い】

ともだちが欲しい。聖杯については、考えてない。

【能力・技能】

空間転移、固有結界級の魔術を複数長期に渡って展開できる規格外の魔力を汲み上げられる。
そのタネは、実体のないネットゴースト、ないしサイバーゴーストであるがゆえに肉体(脳)のリミッターが存在しないため。
だがそれは回路が焼き切れるまでエンジンを回せるといっているようなもの。いずれは魂が燃え尽きる運命である。聖杯戦争の長引く日数によっては、自動的に消滅する。

【人物背景】

居場所がなくなっていた少女。彼女の肉体は、何処にもない。
少なくとも、ザビ達にやられた後の時間軸から参戦。消滅する何処かのタイミングで、黒い羽に、触れたのかも知れない。

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最終更新:2023年11月11日 22:52