冬の陽は落ちるのが早い。 つい先程まで明るかったのが、まるで冗談の様に薄暗くなっていた。
 低かった気温は、陽が沈むにつれて下がっていく、上着を着ないで歩いていれば、イヤでも注目される温度だ。風が吹いていれば尚更だろうが、深山町の町並みを、海へと向かって並んで歩く二人の少女には、全く気にならないらしかった。

 「これが本来の日本という訳か」

 「日本…か。何処か懐かしい響きだな」

 人目を引く、二人だった。
 可愛らしい、可憐、そういった類の顔立ちでは無く、凛とした、凛々しい、そういった形容が似合う顔立ちの少女が、それぞれ異なる学生服を着て歩いていれば、イヤでも人目を引く。
 両者とも、男よりも同性の方からの人気が高そうだった。所謂、王子様系女子というべきか。
 この二人の容貌を問われれば、男女を問わず、10人中10人が美少女と答えるだろう。10人が100人に、1000人になっても、同じ事だろう。

 「それにしても大したものだ。此処まで仮想現実として街並みを構成できるなんて、最初は総旗艦の差し金かと思ったが」

 「前にも言ったけれど、私はセイレーンが関わっていると思っているよ。奴等の鏡面海域は何でも有りだからな。『霧の』キリシマ」

 「お前に呼ばれると何だか妙な気分にさせられるな。サーヴァントなんて身の上になったかと思ったら、『霧島』に召喚されるなんて思わなかったよ。重桜の」

 飄々と、言葉を交わしながら、二人は海へと向かって歩く。

 「総旗艦っていうのはやっぱり『大和』か」

 「『ヤマト』さ、何を考えているのか解らない艦だよ」

 奇妙な関係だと、二人は思う。
 二人は共に、大日本李国海軍の戦艦「霧島』に由来する名を持つが、共通するのは精々がそれ位だ。
 霧島は地球の海で戦い、地球の海に没した軍艦の記憶と力を有する、並行世界の存在であり。
 キリシマは、膨大にして悠久なる知の集積の果てに、あらゆる事象をその手に収めた存在が、“自身のルーツを知る為に行った実験の査定を行うモノ“に行使されるマシンの一つ。

 「戦争をしろって言われたから、こんな形で戦争させられているんじゃ無いかと思っていたんだがな」

 闘争本能を制御し、闘争の果てに何を成し、何を手に入れるのか、世界でどう生き抜くのか。その可能性を“霧”に与えられた試練。
 地球という星で誕生した、有機無機を問わず知的生命体に与えられた、未来を賭けた試練。
 それがこの聖杯大戦かと、キリシマは最初は思っていた。

 「何で私達はこうしているんだろうな」

 キリシマの疑問も尤もで、本来の両者の立ち位置で有れば、殺し合う中でもおかしくはばいのだから。

 セイレーンから人類を護るのが、私達KAN–SENの使命で、お前達“霧の艦隊”は、人類を海から駆逐したんだものなl

 両者の立ち位置は両極。海ヒトの手にを取り戻すKAN–SENと、ヒトを海から追った“霧の艦隊”。

 「あの時は只、命令を実行するだけのプログラムの様なものだったからな、人間と戦っているという認識なんて無かったが」

 あの時は、人間の知的活動をシミュレートする為のメンタルモデルを形成していなかった為に、キリシマは記録としては認識しているが、記憶としては覚えていない。

 「今は人間とは戦いたく無いんだよな」

 キリシマは天を仰いで溜息を吐く。随分と人間らしい風情だった。

 「サーヴァントとだけ戦えば良い。と言っても、サーヴァントを失えばマスターも死ぬのがな」

 二人ともに人間と戦う意思は存在しない。だが、この聖杯大戦は、サーヴァントを失えばマスターも死ぬ事となる。
 それを思うと、二人は陰鬱な気分になるのだった。
 思い気分を忘れようとするかの様に、二人は言葉を交わしながら、海へと歩いて行く。

 「随分と平和なもんだ。ズイカクやショウカクなら喜んだだろうな」

 街の様子を眺めて、キリシマはしみじみと呟く。“霧”による海上封鎖により、国家崩壊寸前にまで陥った日本しか知らないキリシマには、電脳冬木市は新鮮なものに映るのだった。

 「五航戦の二人か。そんなに此処に馴染むのか」

 「多分メンタルモデルを捨てろって言われたらキレて反乱起こす程度には、ニンゲンの娯楽や文化を愉しんでるよ」

 「コスプレをしている私と似た様なものじゃない」

 「ニンジャの真似事もやってたなぁ。そういえば」

 聖杯大戦の舞台となっているだけに、血生臭く物騒な事件屋、怪異な話が急増している冬木市で、日暮れ直後とはいえ、周囲を興味深げに見回しながら美少女が二人並んで歩くのは、嫌でも人目を引いたが、二人の凛然とした雰囲気に押されたのか、声をかけてくる男など居なかった。

【キリシマ。サーヴァントの気配は】

 【近くには無いな】

 海へと向かって歩きながら、サーヴァントの気配を探るも、近くには無く。この分では何事も無く海に着きそうだった。

 「海から一番遠いところに拠点を宛てがわれるとは思わなかったよ。身体を使って戦うのも一苦労だ。

 キリシマがボヤく。が、一苦労と言った割には、大した面倒事とも思っていないようでもあった。

 「私達は海でこそ本領を発揮するからなぁ。ハンデと言えばハンデかな」

 「まぁ潜行させておいて、必要な時に浮上させるという手もあるさ。そこ辺の運用は、任せたぞ。マスター」

 にっ、と笑うキリシマに、やれやれと呟いて、霧島は天を仰ぐ。

 「そんな事をすれば、魔力が尽きるだろ?リュウコツの生み出せるエネルギーでも、アレを維持するのは大変なんだぞ」

 ハァ。と『重桜』の、と呼ばれた霧島が溜息を吐いた。

 「機関を稼働させていれば魔力を生み出せるけれど、停止させていれば私の魔力を使うんだからな」

 冬木大橋を過ぎて、海が近くなってくると、心なしか風に潮の香りが混じりだす。
 心なしか、浮かれだした様に見える霧島に、キリシマは訊いてみた。

 「私達はそうでも無いけれど、やっぱりマスター達は海の近くの方が落ち着くのかい」

 「私達は艦(フネ)だからなぁ。海に惹かれるんだよ」

 「艦(フネ)か。まぁ私達も、艦体があった方が落ち着くからなぁ」

 という訳で宝具を作成させろと、言外に要求してくるキリシマをスルーして、霧島は浜辺へと降りて行く。
 冬の日が沈んだ後の海辺など、人っ子一人居はしない。人気の無い砂浜を真っ直ぐ海へと歩く桐島の姿は、どう見ても入水自殺をしようとしている様にしか見えなかった。
 足元の砂が湿り気を帯び、靴を波が濡らしても構わず歩き続け、海に足を踏み入れると同時に、霧島の身体が鋼の威容を纏っていた。

 「それがマスター達の艤装か」

 水の上を平然と歩いて行く霧島に、キリシマはどうやって浮いているのかを考えたが、全く分からないので考えることをやめた。

 「機関は…問題無いな。砲弾が無いし、リュウコツのエネルギーをキリシマに取られているから、火力は大分落ちるだろうが」

 軽い掛け声と共に、霧島のが宙に舞う。軽く見積もっても半トンは有る鋼鉄の艤装を纏いながら、身体は軽やかに五メートルもの高みに達して一回転。再度海面に降り立った。

 「身体能力は艤装を展開したときのものだな。コレならサーヴァントと戦う事になっても何とかなりそうだ」

 「明らかに超常現象の類だから、サーヴァントととも普通に戦えそうでは有るんだよな」

 「私達はヒトの想念が形を為した存在でも有るのさ。だからサーヴァントとも戦えるさ」

 「そりゃ頼もしい」

 キリシマはパチパチと手を叩いた。



 「なぁマスター」

 「何だライダー」

 艤装の試しを行った後、二人は並んで帰路につき、何事も無く拠点に帰った。
 教会の近くにある住居は海から遠い事この上ないが、二人には大して問題には成りはしない。
 拠点として設定された一軒家の中で、二人は炬燵に足を突っ込んで向かい合う。
 KAN–SEN中には、異様に露出の高い格好で北の海で戦う者もいるし、“霧”に至っては寒さや暑さを感じる機能を任意でオン/オフ出来るのだが、それはそれである

 「艤装って陸(おか)でも出せるんだろ。何で海まで行ったんだ」

 「気分だよ。艦船にはやはり海だろう」

 茶目っ気たっぷりに笑った霧島の返事に、キリシマは妙な表情で固まった。


【名前】
キリシマ@蒼き鋼のアルペジオ(原作漫画版)

【CLASS】
ライダー

【属性】中立・中庸

【ステータス】筋力;C 耐久:A 敏捷:B 魔力:E 幸運:C 宝具;A++


【クラス別スキル】
騎乗:C
 騎乗の才能。大抵の乗り物、動物なら人並み以上に乗りこなせるが、
 野獣ランクの獣は乗りこなせない。


対魔力:A+
 A+以下の魔術は全てキャンセル。
 事実上、魔術ではキリシマに傷をつけられない。
 41億年の歳月を経たキリシマの神秘は破格である


【固有スキル】

ナノマテリアル:A
“霧の艦隊”に属するものの艦体や艤装、メンタルモデルを形成する万能物質をどの程度のレベルで操ることができるかを示したスキル。霧の大戦艦であるキリシマは最高ランク。
ナノマテリアルを用いての、自己修復に武器や艤装の形成、メンタルモデルの分子組成を変える事により、打撃に用いる部分を金属に変えて、文字通りに“鉄拳”を撃ち込むことが可能となる。
組成すら明らかになれば、サーヴァントの宝具を形成することも可能。ただし模倣でしか無く、威力や武器としての性能のみを再現しただけで、帯びた神秘や概念は再現できないが。
果ては人体を精製し、素になった人間とそっくりそのままの挙動すら行わせられる。
このスキルで使用されるナノマテリアルは、魔力を消費して精製する。



クラインフィールド:A
任意発動でエネルギー経路を生成し、加えられたエネルギーを任意の方向へ放出する。
コアの演算能力により、フィールドの強度が決定される。大戦艦であるキリシマは最高ランク。
応用で物体を運んだり投げたりできるほか、空気抵抗や慣性を打ち消しての高速変態機動や、重力を打ち消して浮遊する事ができる




ユニオンコア:A
霧の艦の本体とも言える『ユニオンコア』の演算能力を表すスキル。
この能力により、火器管制や動力制御、クラインフィールドの強度、更には扱えるナノマテリアルの量が決定される為、このスキルランクがそのままサーヴァントとしての戦力に直結すると言って良い。
高速思考及び分割思考の効果を発揮する。


千里眼:B
視力の良さ。遠方の標的の捕捉、動体視力の向上。また、赤外線や紫外線を視る事により透視を可能とする

【宝具】

ヨタロウ(キリクマ)
ランク:D 種別:対人宝具 レンジ:ー 最大捕捉:自分自身

大きめのクマのぬいぐるみ。嘗てメンタルモデルの形成すら出来なくなったキリシマが、仮初の身体として使用したもの。
クマのぬいぐるみの姿になる宝具
多少の強化は施されているが、所詮ぬいぐるみでしか無い為に簡単に破壊される。
この宝具を使用している間は、サーヴァントとしての気配を完全に断って行動する事ができる。


霧の大戦艦“キリシマ”
ランク:A ++ 種別:対国宝具 レンジ:1~99 最大捕捉:10000人

大日本帝国海軍金剛型四番艦霧島を模した、“霧の大戦艦”キリシマを召喚する。

主砲や副砲から撃たれる光学兵器や、重力により空間に作用して原子運動を止め、物質を崩壊させる浸食弾頭や、超重力の渦により原子間の電磁結合が破壊する超重砲といった強力な兵装を有する。
戦艦それ自体が海に浮かぶ“鉄の城”と呼べるものである為に、この宝具は対人宝具では傷付かず、対軍宝具でも効果を半減させる。
強大な機関出力より齎されるエネルギーにより、この宝具を発動させると魔力消費は無くなるが、発動時には、ナノマテリアルスキルを用いて艦体を艤装ごと形成するという方法を取る為に、膨大な魔力を消費する


ユニオンコア
ランク:A ++ 種別:対人宝具 レンジ:ー 最大捕捉:自分自身

キリシマの本体ともいうべき存在。霧の艦の中枢ユニット。要は超高性能CPU
この宝具が無事である限り、キリシマは艦体やメンタルモデルを失っても消滅せず、再度メンタルモデルや艦体を形成して復活できる。


【Weapon】
スキルにより作り出した武器や艤装。


【解説】
突如として霧の中より現れ、人類を海から駆逐した、第二次大戦時の軍艦の姿を模した人類の敵の一体。
戦闘狂というか猪突猛進する嫌いがあり、伊401との戦闘では、狭い横須賀湾内にハルナ共々突っ込んで、高速戦艦の持ち味を活かせず、ハルナと合体して動けなくなったところを纏めて撃破されて、アカギにバカにされた。
更に後続のマヤ率いる水雷戦隊が戦闘に参加できなくなったりしてコンゴウに突っ込まれた。
いつの間にか乙女心を習得していて、タカオを撃破できる絶好の機会を、メンタルモデルの形成を優先して不意にし、タカオとハルナを呆れさせた。
なお顔が良い。非常に良い。

聖杯大戦には、バーディクトによる宣告を受けた直後から参戦している


【聖杯への願い】
無い

【把握資料】
参戦時期の都合上蒼き鋼のアルペジオ21巻まで

【マスター】
霧島@アズールレーン

【能力・技能】
KAN–SEN
KAN-SENは"Kinetic Artifactual Navy Self-regulative En-lore Node"の略であり、直訳すると「動力学人工海上作戦機構・自律行動型伝承接続端子」となる。いわゆるバクロニムである。
軍艦としての過去を持ち、人としての未来を有する。

動力学人工海上作戦機構の名の通り、海上での行動及び戦闘を目的として製造された兵器であるが、陸上でも戦えない事は無い

伝承接続端子の名の通り、素体となった艦が持つ戦歴や逸話、艦名の元になった存在、果ては後世の与太話に由来する特殊な能力を行使する事が可能であり、無辜の怪物スキルや、可能性の光スキルにも似た性質を持つ。

KAN-SENに共通する能力として、自身の元になった素体。霧島の場合は金剛型四番艦霧島に姿と能力を有する量産艦を出す事ができる。それなりに広い場所でないと出せないが。
この電脳冬木ではそもそも出せない




【解説】

好きなもの・こと:比叡の作った会席料理、カラーレンズ
苦手なもの・こと:乾パン、素手ケンカ
一人称     :私
趣味      :カラオケ
特技      :ニンジャ奥義(偽)

金剛型の末っ子。だが榛名とは双子の様なもの。
トモダチ力が高過ぎると言われ、マスクで素顔を隠している
忍者の格好をしているがコスプレである。
顔が良い。非常に良い。


【聖杯への願い】
帰還

【方針】
ヒトとは戦いたく無い。

タグ:

+ タグ編集
  • タグ:
最終更新:2023年11月21日 01:07