主よ あなたは 何故―――
黙ったままなのですか
遠藤周作 『沈黙』

☆彡 ☆彡 ☆彡

34:主よ 憐れみたまえ ◆s5tC4j7VZY:2023/11/21(火) 00:27:46 ID:fcKCRNpU0
「……返却だ」
「あ、はい。ありがとうございます」

ここは、冬木市で一番大きい中央図書館。
小さい赤ん坊を連れた母親から学生にお年寄りと日々、多くの利用客で賑わっている。
そんな変わらぬ日常風景を送る図書館に、一人の利用客が本を返却しに来た。
それだけなら、特に気にすることはない。
しかし、その利用客はいかにもな風体に目が死んでいるようにも漆黒の炎に燃えているかのようにも見える男であるのだから無視するわけにもいかない。

「今日は、何を借りたいのですか?」
「ああ……神(デウス)に関する本を借りたい」
「えーと、聖書関連ですね。はい、当館にも置いてありますよ。」

貸出の受付担当の司書は、男に親しげに話しかけると、案内をはじめる。
日々平穏な館内。

「……くす」
司書はそんな周りの様子に微笑みながら案内する。
そして、後ろからついてくる利用客との初対面を想起するのであった……

☆彡 ☆彡 ☆彡

35:主よ 憐れみたまえ ◆s5tC4j7VZY:2023/11/21(火) 00:28:14 ID:fcKCRNpU0
―――時は少し遡る

夢が叶い、念願の図書館司書で働くことが決まった私。
勤務先は冬木市。
かつては、『冬木大災害』と呼ばれる大火事が起きたことで有名だけど、今は、そのような面影もなく発展を果たした地方都市。
最近は、図書館の司書なんて”やりがい搾取”と呼ばれる職業の話題でよく上がるけど、そんなこと私は気にしない。
不満なんてあるはずがない。
だって、この仕事は小さいころからの夢だったんだから。
でも、ごめんなさい。ちょっぴり嘘をつきました。
正規と非正規で給与面の待遇が大きく違うのは勘弁してください。
私、さっそく非正規のお局様に嫌味をいわれました。
はぁ……なんだか、幸先怪しくなったけど、気にしない、気にしない。
……と、まぁ、小学校の図書室にいる司書さんに憧れ、目指して叶ったこの仕事。
精一杯働きますよ!

さぁ!私の図書館司書ライフが始まるわ!

「利用したいんだが、何処にどんな本があるのか、よくわからねぇ……教えろ」

はい、図書館に時々来訪する変な客来た―――!!!
なんでよりによって私の勤務初日に来るのかしら!?
ていうか、その見た目何!?
ボロボロの落ち武者じゃん!?
コスプレなら、新選組とか幸村とか正宗とかあるでしょ!?
なんでよりによって、山崎の戦い後の光秀方の落ち武者みたいなのをチョイスしたの!?
まさか、これが普段着です。なんて、いわないわよね!?
むしろ、これがコスプレじゃないなら、違う意味で大問題よ!?
布を顔に幾重にも巻いて。これが本物なら、貴方の行く場所は、ここ図書館ではなく病院よ!?
ほら!周りの利用客もひそひそ話している~~~

「それで……お客様は、どのような本を探しているのですか?」
「……今日に至るまでの歴史だ」

はい!重度の歴史マニアでした―――!!!
けど、まぁ……これなら非常ボタンの出番はないのかな?

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36:主よ 憐れみたまえ ◆s5tC4j7VZY:2023/11/21(火) 00:28:45 ID:fcKCRNpU0
「こんにち……あ!」
「……返却しにきた」

まさかの2回目の対面。
というか、きちんと律儀に返却するのね……
ふむ……どうやら、ただの変質者ではなそうね。
まぁ、貸し出しには名前や住所といった個人情報の登録も必要だから。借りたままドロンと消息を絶つなんてそうそうできないけどね。
案の定、名前も風防通りの”いかにも”な人。
始めは警戒度MAXな危険人物に見えたけど、返却期日を守るようだから常識そうで一安心。

「……徳川の世が終わっただと……ふざけるな……俺がこの手で裁く……」

はい、前言撤回。やっぱりヤバイ人だわ。
何々?ブツブツと!?
この人、徳川に恨みでもあるのかしら?
そういえば、江戸時代を中心の歴史に特に興味津々だったわね。
もしかして先祖が改易とかされた西軍関係の人なのかしら?
だったら幕府は終わったけど、徳川宗家は今も健在ですよ。とか余計な事言わない方がいいわよね……

「おい」
「!?はい、な、なんでしょう……」
「次は、ここの土地についての本を借りたい」
「わ……わかりました。こちらについてきてください」

いけない。いけない。うっかり考えすぎるのは私の悪い癖。
ゆっくり、深呼吸、深呼吸。
スー……ハー……スー……ハー……
よし、精神統一完了!これで一安心。
だけど、土地の本。……土地って、この冬木市の地理について……よね?
はっ!?まさか維新志士みたいにテロでも起こすきかしら!?
……まさかね

そんなこんなで、あわただしくも平和な日々が幾度と続くと、いつの間にか、他の職員や利用客から不審な視線が消えていったのであった……まる。

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37:主よ 憐れみたまえ ◆s5tC4j7VZY:2023/11/21(火) 00:29:28 ID:fcKCRNpU0
「それじゃあ、借りる」
「はい、返却日は、○日です。またのご利用をお待ちしております」
「……ああ。じゃあな」

男はお目当ての本を何冊か借りると、図書館を後にする。
男は歩く。歩く。歩く。
そして歩きながら、男はぼそりと話し始める。

「どうした?」
「いえ、マスターへの周りの人達の視線が変わったなと」
「……ふん。くだらねぇ」

男の真横に少女が歩いている。
少女は男の傍を離れずにいた。
そう、”最初から”
なぜなら少女は、この儀式・聖杯戦争の参加者の相棒……サーヴァントであるのだから。
かつて、地右衛門が参加した聖杯戦争を参考にしたであろう盈月の儀では、ランサーが相棒であったが、此度はライダー。
生前、若女将として数多の人を接客したライダーは、人の表情の変化に人一倍敏感。
それゆえに、図書館の人間たちの変化に気づくことができたのだ。
しかし、そんなライダーの言葉に、男は心底興味がなさそうな態度。
男にとって、そんなものはどうでもいい。
差別・奇異の視線には慣れているからだ。

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「神は言った……『復讐するは我にあり』と」

手のひらにある参加者の資格である黒い羽根を強く握りしめる。
爪が皮膚に深く食い込み、血がタラリと流れ落ちる。
その血は、神への『祈り』か徳川への『怒り』か。

「俺は、必ず願いを手にする。いくぞ、ライダー」
「……はい」

男とライダーが進む道は正に修羅の道。

38:主よ 憐れみたまえ ◆s5tC4j7VZY:2023/11/21(火) 00:30:05 ID:fcKCRNpU0

【クラス】
ライダー

【真名】
関織子@若おかみは小学生(映画版)

【パラメーター】
筋力E 耐久D 敏捷A 魔力B 幸運A+ 宝具EX

【属性】
混沌・悪

【クラススキル】
対魔力:B
ライダーのクラススキル。魔術に対する抵抗力。Bランクでは、魔術詠唱が三節以下のものを無効化する。大魔術・儀礼呪法などを以ってしても、傷付けるのは難しい。

騎乗:EX
 騎乗の才能。乗り物を乗りこなす能力。EXランクであれば、竜種にすら騎乗が可能となるレベル。規格外の能力であり、超大型の神獣すら乗りこなす。 難題を抱える客から幽霊(ウリ坊・美代)に魔界の子鬼(鈴鬼)をも良好な関係を築いた若女将に乗りこなせないものはない。その騎乗は相手マスターである人間(お馬さんごっこ)をも乗りこなす

【保有スキル】

春の屋の若女将:A 
小学生ながら旅館の『若女将』として生を駆け抜けた事による恩恵。
数多の宿泊客への真心込めた接客の経験により、あらゆる状態に対応することが可能。

霊界通信力:C
臨死体験をしたことにより身に着けた能力。
幽霊や魔物など、この世のものではない存在を認識し・会話することができる。

【宝具】
『安居楽業 花の湯のお湯は全てを受け入れる』
ランク:B 種別:対軍宝具 レンジ:10~40 最大補足:500
生前、若女将として働いた旅館『春の屋』を模した結界。訪れるものを癒し、対象の能力発動を阻害する。

『獅子奮迅  私は春の屋の若女将です』
ランク:EX 種別:対軍宝具 レンジ:2~50 最大補足:300
ライダーとしての宝具。それは若女将として生涯を駆け抜けたライダーの生き様。騎乗対象に手を添えることで発動する。戦闘向きでない若女将の戦闘手段。高い騎乗スキルと強力な乗り物があることで真価を発揮する。 制御できる対象は普通の乗り物だけでなく、幻想種であっても、相手マスターであっても、この宝具でいうことを聞かせられるようになる。 操られたはリミッターをカットされ、流星のごとき光を放った突貫となる。その威力は巨大な城壁が高速で突撃してくるようなもの。最高レベルとされる物理攻撃。 (騎英の手綱(ベルレフォーン )の亜種。違いがあるとすれば、鞭や手綱ではなく自身の手で発動と血の魔法陣からペガサスを召喚しないこと) だが、この宝具の真の真価は、相手マスターを騎乗し、そのサーヴァントに自害の令呪を使用させることにこそある。

【weapon】
『竹箒』

【人物背景】
祖母が経営している旅館がある町の祭りの帰り途中に起きた交通事故により両親を失った女児小学生。悲しい思いを持ちながらも元の明るい生活小学生ながら旅館『春の屋』の若女将として働き始める。
多種多様な癖の強い宿泊客の要望や悩みを解決すべく奔走し、立派な旅館の若女将として大成する。
本来なら心優しい若女将であり、積極的に聖杯戦争を争うことはないが、今回においては、相手マスターを騎乗し、相手サーヴァントを自害させるといった外道の行動を躊躇なく行使するなど、陰鬱かつ悲観的である。その理由は、召喚者の憎悪による精神汚染を受けた『関織子』その人であるため。一方、自分のマスターを救いあらんとする思う様子は、本来の若女将のようでもある。

【サーヴァントとしての願い】
若女将として、彼を癒す。そのため、かつて地右衛門のサーヴァントであったランサーと同様に共に地獄へ堕ちる覚悟を心に抱く。

39:主よ 憐れみたまえ ◆s5tC4j7VZY:2023/11/21(火) 00:30:54 ID:fcKCRNpU0
【マスター】
地右衛門@Fate/Samurai Remnant

【マスターとしての願い】
故郷を焼いた徳川への復讐……というのは表向き。
真の願いは、『家族と再会すること』

【能力・技能】
魔術師としての素質はあり、地獄の業火を思わせる炎を操ることができる。
また、槍を武器とする技能は持ち合わせている。ただし、武芸者としての腕前ではなく、あくまで一揆を起こす武装農民。

【weapon】
『旗槍』

【人物背景】
かつて天草島原で起きた泰平を揺るがす大乱(島原の乱)を生き抜き、宿願が為に進んで修羅へと堕ちた男。
己を外道と自己認識している。故に己と同じ外道にも拘わらず、まるで善人のように振る舞う宮本伊織のような人間は、憎悪の対象である。
地獄を生き抜いた経験から、基本的には冷静に行動する。また、なんだかんだで江戸八百八町を守るために一時的に伊織達に手を貸したり、あるルートでの死の間際に見た母親の幻影に『おっかあ』と呼んだり、とあるルートで、伊織が覗かせた鬼気、剣鬼の表情に気圧され、逃げ去るなど、非常になり切れない人間臭い一面を持っている。
両親を眼の前で喪った過去から、誰かが自分を庇う状況を嫌悪する。
終章「可惜夜に希う」にてキャスターと相打ちし、絶命する瞬間の間際、黒い羽根に触れてこの世界へと招かれた。

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最終更新:2023年11月21日 01:14