『執行官……確か、裁判所の職員だったな』
『マスターの常識ではそうだろうね。でも、俺たちファデュイ執行官……ファトゥスは外交や軍隊の指揮も兼ねていた。銀行運営にも関わったほどの働き者なんだぜ?』
『ああ。君たちファデュイが、テイワット大陸で悪事を働いていたことも、私は知った』
『ハハハハハッ、手厳しい! でも、俺は確かに悪いヤツだからな!』

 口を動かさず、念話で意思疎通をしている。
 私……菓彩あまねの前では、一人の青年が笑みを浮かべていた。
 好男子、と呼ぶにふさわしいほど整った顔つきで、丁寧に手入れされた髪は明るい。どこか影が見える鋭い目つきも、男女問わず多くの人を魅了させかねない。
 気品を漂わせる灰色の軍服を見事に着こなし、上質なグローブとブーツも合わせて、彼の格式を高めている。炎の如くストールは、彼の背でゆらゆらとたなびく。
 背丈も高く、長い年月をかけて鍛え上げた体からはまるで隙が見えない。
 唯一、異質な真っ赤なマスクすらも、彼の魅力を引き立てそうだ。
 『公子』の称号に見合った貴いオーラを放っており、偉人が歴史の教科書から飛び出してきたかのようだ。

『じゃあ、俺を切り捨てるかい? マスターが令呪を使えば、悪いヤツとすぐにサヨナラできるしさ』
『アーチャーがテロリストだろうと、私に命をもてあそぶ権利はない』
『へぇ? ファデュイである俺を気遣ってくれるとは、お優しいマスターだねぇ』

 はは、と不敵な笑みを浮かべる男。
 人々にたたえられた英雄が、亡き後に英霊となり、聖杯の魔力によって召喚されたサーヴァント・アーチャー。
 英霊タルタリヤ。異世界の組織・ファデュイの執行官であり、卓越した武芸を誇る男だ。
 表向きには他国との外交を執り行っているが、実際は卑怯な手段で侵略し、武力または陰謀で多くの人を苦しめている。当然、タルタリヤも悪事に関与した。
 一見すると人当たりが良いが、どうもつかみ所がない。慇懃無礼でどこかのナルシストを連想させるこの男が私は苦手だ。

『ファデュイの最高幹部、ファトゥスの第十一位……『公子』。無数の戦いを乗りこえ、氷国スネージナヤにてその実力を評価された』
『君、俺の武勇伝を知ってるでしょ? なら、俺が何を望むのかだって……逸話を見れば、わかるんじゃないかな?』
『戦い、か』
『正解』

 過去を暴かれたにも関わらず、さも誇らしげに胸を張る。
 彼は私が令呪を使えないと見抜いていた。この段階で3画しかない切り札を使うのは悪手であり、そもそも他者の意志をねじ曲げたくない。
 召喚されたあの日から、ずっと値踏みされている。今でさえ、私がどんな人間かを観察していたはずだ。
 部隊を率いて、兵隊一人一人を幾度となく鍛え上げたからには、人間観察力も養われている。
 誰かを傷つけるのはもちろん、命を奪うことを望まないマスターだと、タルタリヤは気付いている。

『執行官になった俺にとって、最高の娯楽……強い奴と戦い、勝つことさ。そういう意味じゃ、この聖杯戦争は実にいい舞台だ。俺の知らない時代、知らない世界から、数えきれないほどのサーヴァントが集まってくるから、今も胸が踊っているぜ』
『筋金入りだな。そうして、旅人さんも追い詰めたのか』
『あぁ、旅人との戦いは楽しかったさ! 俺が見る限り、マスターもなかなか見込みがありそうだが……なんだったら、俺が直々に稽古をつけてあげようか?』
『遠慮する』

 男の態度に私はため息をつく。
 私を挑発し、手玉に取ろうとしているのか。もしくは、タルタリヤなりの軽口かもしれない。
 彼と出会い、ぶつかって、心を通わせた旅人さんにも、飄々とした態度でいたのだから。

『俺は戦いに躊躇しないサーヴァントだから、マスターが生き残るにはちょうどいいだろ』
『誰かの命を奪ってでもか?』
『おいおい、これは聖杯戦争……誰も死なない戦争なんかあり得ないって、ちゃんと歴史を勉強すればわかるだろ?』

 タルタリヤが話した『戦争』に、私の言葉が詰まる。
 縁が遠いように思えて、ある意味では密接に関わってきた出来事だ。
 世界中のあらゆる料理を奪おうと企んだ怪盗ブンドル団と、私たちデリシャスパーティプリキュアは戦った。
 みんなのおいしい思い出や笑顔を守り続けたが、誰かが悲しみ、涙を流す姿は何度も見てきた。
 最後は世界の命運を賭けた戦いにまで発展した。命こそ奪われなかったが、見方によっては戦争と呼べる。

『悲劇を繰り返さないため、私たちは日々学ばなければいけないはずだ』

 生きる中で悲しい出来事は避けて通れない。
 間違えたり、気持ちが空回りして誰かを傷つけるのは、誰にでもある。
 だが、後世に名を遺した偉大な先人は多くいる。その方々が生きた証から、最善を尽くすのが私たちの使命。

『戦いなんてやめましょうって、みんなに呼びかけるつもりか? そいつはずいぶんとご立派だが……時には妥協が必要だ。子どもだって、嫌いなメニューを食べる時があるだろ?』
『忠告は受け取る。君の言葉が間違っていると言うつもりはないが、思考停止して全てを諦めたくない……私の志す正義に誓って』
『おやおや? マスターの正義とやらは結構だが……この前、俺が他の主従に手をかけたって、忘れてないよね?』

 忘れ物はないかきちんと確認したのか、と聞くようなかるい口調で。
 タルタリヤは懐からスマートフォンを取り出し、私に見せつける。
 そのスマートフォンは戦利品にして、彼がこの世界で命を奪った確かな証だった。
 戸籍を持たないサーヴァントである彼が、店舗でスマートフォンの購入や契約などできるはずがない。
 数日前、他の主従を撃退し、奪い取ったのだ。その時は深夜だったため、私は就寝していたが、関係ないと言い訳するつもりはない。
 サーヴァントの罪は、マスターたる私が向き合うべき責任だ。

『アーチャーの行いだって流さないし、それはマスターの私が向き合う責任だってわかっている。だからこそ、もう一度言おう……無闇に誰かを傷つけないと、約束してくれ』
『約束? 命令じゃないの』
『命をもてあそぶ権利がないと言ったはずだ。君の意志をねじ曲げて、道具にするのも違う……その手の行いが、私は苦手だ』

 かつて、怪盗ブンドル団のナルシストルーによって意志を奪われ、私は怪盗ジェントルーとして多くの悲劇を生んだ。
 レシピッピを悲しませ、料理の味を変えて、多くの飲食店を追い込んでいる。らんの大切なラーメン屋・ぱんだ軒のメニューだって例外ではない。
 ブンドル団やナルシストルーが悪い? だが、私の過ちは永遠に消えない。
 操り人形にされる痛みや悲しみを知っているのに、どうして他の誰かに背負わせられるのか。

『…………悪いけど、それは約束できないな』

 少し間を開けた後、タルタリヤは真摯なまなざしで告げる。

『この聖杯戦争に呼ばれた連中は只者じゃない。俺が仕留めたセイバーだけでなく、マスターも油断できなかった。あそこで見逃したら、君に火の粉が降りかかると断言できる。俺の娯楽なんて関係ない、本気の忠告だ』
『そうだろうな。君ほどのサーヴァントが召喚された聖杯戦争だ……他のマスターも、相応の実力を持つサーヴァントと共に戦っているだろう』

 あるいは、タルタリヤを上回る強者がいてもおかしくない。
 百戦錬磨の猛者はもちろん、多数の罠を仕掛ける海千山千の策士もどこかに潜んでいる。
 私とて遅れを取るつもりはないが、今は共に戦ってくれたみんなはいない。プリキュアに変身しても、サーヴァントが相手ではどこまで通用するか?
 例え、私が一撃を与えたとしても、サーヴァントによっては蚊に刺される程度の痛みすらない。タルタリヤがいなければ、そもそも生存すら不可能だろう。

『それでも、正義を捨てるつもりはない』
『実にご立派だ。俺よりも、君の方がサーヴァントに向いてるんじゃないかな』
『私は立派な人間じゃない。生徒会長を務めさせて頂いたが、それだけだ……君のように、母国の為に戦った男こそがサーヴァントにふさわしいだろう』
『母国? 君、まさか俺が……』
『ああ。タルタリヤ……君は、スネージナヤで一番人気のおもちゃ販売員も兼ねていたじゃないか?』

 あえて、私はタルタリヤの泣き所を突いた。
 うっ、と男の声が聞こえる。

『私の記憶に間違いがなければ……君はおもちゃ売りになって、宝盗団の取り立てを穏便に済ませたはずだが?』
『あー……あれは不可抗力だ。俺は執行官として、穏便に交渉しなきゃいけない時がくるからさ……』
『そうか? 君は最愛の家族のため、よき兄でいたじゃないか……私には、その姿が暖かく見えた』

 タルタリヤは祖国に自慢の家族がいた。
 ファデュイの『公子』として戦いを楽しみ、数多の戦場に自ら飛び込んだ。それは決して揺らがない彼の価値観だろう。
 しかし、弟のテウセルくんや妹のトーニャちゃんには理想の兄で居続けた。手紙でのやり取りはもちろん、お土産だって送っている。どれだけ傷つこうとも、ファデュイの執行官である黒き面は隠していた。
 タルタリヤの悪行は決して認めないし、許してもいけない。彼は紛れもないテロリストだ。
 だが、過去を糾弾したら、かつてジェントルーだった私にも返ってくる。

 ーー約束したら守る。悪い事したら謝る。
 ーー与えた夢はちゃんと最後まで守る…
 ーーあいつは俺の大事な弟だからね。

 弟を守るため、痛む体に鞭を打ってでも彼は戦った。
 深くないであろう傷を最後まで見せず、テウセルくんの帰国を見送ったタルタリヤ。
 その姿は、冷酷非道なファデュイ執行官でなく、家族を想う優しい兄だ。
 光を帯びない淡い瞳が、確かに暖かかった。

『だから、君は私の元に召喚されたのかもしれない』
『……おや。何か思い当たることでもあるのかな』
『私にも大切な家族がいる。尊敬する兄が二人もいると、君も知っているだろう』
『もちろん。とても幸せそうに見えた』
『ああ、君にもシェアしてあげたいくらいだ』

 フルーツパーラーKASAIはこの世界でも再現されている。
 老舗にして、私が帰るべき家だ。
 フルーツデザートに対する愛情を込め、見た目と味の美しさを追求したレシピを提供し、今日も進化している。
 再現されたのは私の家族も同じ。父と母、ゆあん兄さんとみつき兄さんが、NPCとして生きている。元の世界にいるみんなから再現されたコピーだが、れっきとした一つの命だ。
 いつものみんなと変わらない笑顔で、私とおいしい時間を過ごしている。

「ピー! ピピピピピピー!」

 この世界に連れてこられたのは私だけではない。
 私たちの間を飛ぶ小さな妖精、パフェのレシピッピもいる。私を見守ってくれた大切なパートナーだ。
 彼女がいなければ、私はプリキュアに変身できない。だから、共に連れてこられたのだろう。

「ピピピピピー!」
「ごめんね、内緒話をしちゃって! 俺とマスターで今後のことを話し合ってたのさ、敵はどこに潜んでいるかわからないからね」
「ピピピピピピー! ピー!」
「ふむふむ。
『わたくしを話に加えないなんて、失礼千万! あまねがあなたのマスターなら、わたくしだってマスターですわ! デザートの頂点に立つわたくしを、もっと敬うべき……あなたがサーヴァントだろうと、譲るつもりはありませんからね!』
 ……確かに、君たちは金蘭の友だからね。今後、気をつけるよ」
「ピピピー!」

 当然ですわ! と言うように、パフェのレシピッピは誇らしげに体を張っている。
 コメコメたちエナジー妖精でなければ翻訳できないはずだが、タルタリヤは彼女の言葉がわかるのだろう。

「……本当にわかるんだな、パフェのレシピッピの言葉が」

 念話から口頭での会話に切り替える。

「そのような逸話が君にあったのか?」
「いいや? きっと、サーヴァントとして召喚された都合かもしれないよ? レシピッピは普通の人間じゃ見れないとマスターは言ってたが……それじゃあ聖杯戦争のバランスが崩れる。だから、サーヴァントなら目視や会話ができるはずだ」

 あるいは、同じことができるマスターもいるかもね、とタルタリヤは付け加える。
 少なくとも、嘘を言っているようには見えない。
 タルタリヤと意思疎通できるのはありがたいが……反面、敵対人物からパフェのレシピッピが狙われる危険もあった。
 ちなみに、今は私の部屋に集まっている。念話を行っていたのも、家にいるみんなに聞かれないためだ。
 無論、誰かが近づく気配があれば、すぐにタルタリヤは霊体化で隠れられる。音読をしていたと言い訳するため、机の上に英語の教材を多数用意した。
 聖杯戦争の秘匿もあるが、それ以前に見知らぬ成人男性が家にいたら大パニックだ。家族会議は避けられない。

「さて……俺から君たちに改めて忠告しておこう。生きて本当の家に帰りたいなら、腹をくくった方がいい。できない約束をするのは、無責任だろう?」

 タルタリヤは本気だ。
 私たちを元の世界に帰すため、聖杯戦争に勝ち抜くつもりだ。その過程で、どれだけ血と罪に濡れようとも止まらない。
 彼の鋭さに、私とは違う世界で生きてきたのだと否応なく思い知らされる。

「私はとっくに決めているとも。アーチャーの罪を共に背負い、理不尽な聖杯戦争と戦う……その為に、君の力を借りたい」

 だからこそ、私は真っ直ぐに向き合った。
 この世界では、タルタリヤの方が圧倒的に正しいかもしれない。万能の願望器を求めて、最後の一人になるまで戦わなければ元の世界に戻れないのだから。
 それに、聖杯を求める主従にだって、切実な理由があるはず。譲れない大義や信念か、聖杯にすがらなければならないほどに追い詰められているか、または邪知暴虐のためか。
 そしてかりそめの世界に生きる命……NPCに気遣うことも、愚かと笑う者もいるだろう。

「俺がどんなサーヴァントなのか、マスターは知っているよね?」
「当然だ。ファトゥスの座に上り詰めた君は、とても強いサーヴァントだろう……なら、私にとって心強い味方だ」
「まさか、俺が誰かを殺さないって本気で思ってるの?」
「私だって、守りたい約束はある。何があっても……それを破るわけにはいかないんだ」

 タルタリヤからすれば、甘い理想論のはずだ。
 しかし、タルタリヤが家族を国の闇から遠ざけようとしたように、私にも裏切れない人がいる。
 私の心を信じて、必死に呼びかけてくれたゆいたちの気持ちを踏みにじれる訳がない。
 もし、タルタリヤを召喚したマスターが、私の知るみんなだったとしても、同じ選択をするはずだ。

「大言壮語と笑いたければ笑え。しかし、私はみんなに約束した……たくさんの人を笑顔にできる、パフェのような人になると」
「子供の夢だね、とても壊れやすそうだ」
「だからこそ、私はそれを大切にしたい。嘘をついて、氷づけにされたくないからな」

 私とタルタリヤは決して相容れない主従だ。
 彼は戦いを望み、他者を傷つける己に誇りすら抱いている。私が何を言おうと、タルタリヤが変わるなどあり得ない。

「……君も、旅人と同じように、テウセルのいい遊び相手になっただろうなぁ」
「当たり前だ。私だけじゃない、私の大切な友人もみんな、テウセルくんやトーニャちゃんと一緒に、遊んでくれるさ」

 だが、家族の夢を守ろうとした優しい兄であることも事実だ。
 ファデュイ執行官のタルタリヤと、家族想いの兄であるタルタリヤ……アヤックスと呼ぶべきだろうか?
 どちらも、欠けてはならない大事な一面だ。

「君の考えはわかった。聖杯はいらないし、元の世界に戻りたいって」
「だが、アーチャーは戦うのだろう」
「当たり前さ。召喚されたからには、契約を守らないとね? こればかりは、マスターの運が悪かったってことで、受け入れてくれよ」

 じゃあ、俺はこれから見回りをしてくるから、と言い残して、タルタリヤは煙のように消える。
 他者からの束縛を嫌う彼だ。それこそ、私が令呪で行動に制限をかけない限り、戦いをやめないだろう。
 …………しかし、それがどうしたのか?
 たった一度で諦めてたまるか。
 どんな困難があろうとも、私や…………そしてブンドル団のゴーダッツにも想いをぶつけたゆいがいるじゃないか。
 何よりも、かつて私を操り人形にしたナルシストルーだって、私はわかり合うきっかけを作った。
 ここねやらん、マリちゃんたちだって私の過ちを受けとめ、仲間として認めてくれている。
 ゆいの在り方を認めた品田も、どれだけ傷つこうとも立ち上がった。
 今、私のやるべきことは、タルタリヤと心を通わせる。私たちがいかに力を持とうとも、話をしなければ何も成せないし、身近にいる人間とわかり合えなければ、どうやって聖杯戦争に立ち向かうのか?

「ピピー……」

 パフェのレシピッピは、心配そうな顔で私を見つめている。

「大丈夫だ、時間はある。私は、彼との縁も大事にするとも」

 彼が約束を貫くのなら、私もそれに応えるだけ。
 あぁ、だから私の元に彼が召喚されたのかもしれないな、と納得した。
 彼が二つの顔を持っていたように、私も二つの顔を持っている。
 手段や理念こそ違えど、お互いに守りたい人がいた。
 …………ならば、私たちはわかり合えるはずだ。そんな小さな希望が胸の中に芽生えた。


 がんばれ、あまねちゃん!
 タルタリヤさんはただ者じゃないけど、きっとあまねちゃんの味方になってくれるわ。
 遠くからになるけど、私も応援してるからね!




「テウセルの件を持ち出したって無駄だ、って言おうとしたけどなぁ……やれやれ、これからマスターの子守りもしないといけなくなったか」

 ずいぶんと甘いマスターに巡り合ったと、俺はため息をつく。
 だが、ようやく答えを出した。
 闘争を史上の喜びとし、執行官(ファトゥス)の第十一位『公子』にして、一度は璃月を壊滅の危機に追いやった大悪党。
 マスターの言葉を借りれば紛れもないテロリストだ。そんな狂戦士(バーサーカー)が、何故弓兵(アーチャー)のクラスで、殺人はおろか喧嘩の経験があるかも疑わしい少女の元に導かれたのか。
 そう。戦いを望まない平穏な少女だからこそ、だ。

「マスターも戦いはできるみたいだけど、サーヴァントを前にしたらどれだけやれるか…………そこそこ渡り合えても、いつか限界は来る」

 この俺を従えるマスター・菓彩あまね。
 一見するとただの少女だが、俺の目は誤魔化せない。精霊レシピッピと共にし、こんな俺と毅然に向き合う胆力を持っている。しかも、当人曰くプリキュアという戦士だそうだ。
 ヒルチャールやアビス教団、ファデュイの兵を相手にしても遅れを取らない程度の実力は持っていると見ていい。流石に執行官(ファトゥス)や七神を相手に戦えるかはわからないが、自衛程度なら期待できそうだ。
 それに、無策で戦場に飛び込むようなリスクも侵さないはず。俺だけに任せれば、マスターが聖杯戦争で生き残るのは夢物語ではない。

「まぁ、マスターを元の世界に帰してあげる契約だけは、ちゃんと守るよ。罪だって、俺一人で背負う……君は、俺に付き合わされただけの被害者だ」

 だが、俺とマスターの理想は決して一つにならない。
 この世に産声をあげた日から、武芸と殺戮の技術を磨き続け、深淵にて才を開花させた。数え切れない闘争はもちろん、恐るべき魔獣を屠った逸話すらある。
 ましてや、俺はファデュイにいようとも束縛を嫌い、我を通し続けた執行官だ。可能性に満ち、最も危険な執行官とも恐れられたっけ?
 冷酷非道かつ傲慢な俺が、純真無垢な少女が望むように、誰一人の犠牲を出さずに事を進めるなどあり得ない。
 テイワット大陸と違って、ここは聖杯戦争の舞台となった狭き箱庭。だから、己の戦果を包み隠さず話した。
 だが、過酷な運命を前にしても、理想をつらぬくと菓彩あまねは言い放っている。

「それに、君との約束だって忘れない。こんな世界じゃなくて、君が帰るべき本当のお家に送り届けてあげるからさ」

 悪意や陰謀とは無縁の世界で、マスターは生きなければいけない。
 仮初めの家族を前にしても、マスターは微笑んでいた。
 一方、仲よさげに歩くとある家族を、どこか寂しげな表情で見つめていた。
 強がってこそいるが、本当は寂しくて堪らない。

「強い奴らと戦えれば俺は満足だ。聖杯の奇跡とやらは、マスターに全部譲ってやるとも」

 聖杯の願いなど何一つとしてない。
 受肉し、世界に君臨しようと思わなくもないが、約束の前では霞んでしまう。
 『神の目』を手に入れる? 奇跡で女皇陛下の忠義を果たす?
 もしくは、愛する家族とまた幸せな日々を過ごす……それも悪くないし、その口実ならばマスターも協力するかもしれない。
 だが、果たすべき約束ができたから、心の中で家族に謝罪する。
 何の躊躇もなく、たった一つだけで妥協できた。
 彼女の未来のため、サーヴァントとして聖杯戦争に勝ち残る。

「マスターにあげられる俺からのプレゼントは、それくらいしかないけど」

 サーヴァントになっても、子供と縁があるみたいだな。
 苦笑しながら、英霊になった俺は決意する。
 心優しい少女が愛する家族と巡り会えるよう、この戦いに勝利することを。


【クラス】

アーチャー

【真名】

タルタリヤ、或いはアヤックス@原神

【ステータス】

筋力B+ 耐久B 敏捷A 魔力C 幸運C 宝具A+

【属性】

混沌・悪

【クラススキル】

対魔力:C
第二節以下の詠唱による魔術を無効化する。
大魔術、儀礼呪法など大掛かりな魔術は防げない。

単独行動:B
マスターからの魔力供給を断ってもしばらくは自立できる能力。
ランクBならば、マスターを失っても二日間現界可能。

【保有スキル】

カリスマ:D
軍団を指揮する天性の才能。団体戦闘において、自軍の能力を向上させる。
カリスマは稀有な才能で、一軍のリーダーとしては破格の人望である。

無窮の武練:B
幼い頃、辿り着いた深淵にて謎の剣客と出会ったことをきっかけに得たスキル。
闘争の才に目覚め、数多の戦を乗り越えた彼はいつ如何なる状態でも十全の戦闘能力を発揮できる。

邪眼:B
タルタリヤが持つ「神の目」にして、氷の女皇から与えられた力の勲章。
テイワット大陸では「神の目」を持つ人間が特定の元素を操り、操作する超常の能力が与えられる。
ファデュイはその「神の目」を複製する技術を持ち、「邪眼」はその産物。「邪眼」の力は「神の目」を上回るとされるが、使用者の命すらも脅かす危険な代物なため、執行官(ファトゥス)以外に渡されることは滅多にない。
第十一位『公子』であるタルタリヤはこの「神の目」を得て水の元素を操り、更に「邪眼」を使えば雷の元素も思いのまま。
「邪眼」を与えた「氷の女皇」は神に等しく、『公子』も絶対の忠誠を誓っている。
故に、同レベル以下の精神攻撃を無効化できる。


魔王の武装・荒波:B+
タルタリヤの元素スキルにして、水元素の双剣を顕現できる。
双剣でダメージを与えた敵には水の元素を付着させ、扱い方次第では元素爆発を起こせる。
なお、タルタリヤは弱点克服のために弓で戦うことを選んでいるため、こちらの方がより実力を発揮できる。勿論、弓のスキルも並の弓兵を遥かに凌ぐが。

【宝具】

『魔王武装』
ランク:A 種別:対人宝具 レンジ:1 最大補足:1
かつて深淵にたどり着き、暗闇の国にて得た武装を身につけたタルタリヤの姿。
神の目と邪眼、双方の力を全て引き出したことで水と雷の元素を自由に操り、タルタリヤの戦闘力を限界以上に引き上げる。
堅牢たる武装は並大抵の宝具を容易く弾き、魔王の力を発揮したことで広範囲の攻撃も可能なため、半端な英霊では接近すら困難。
ただし、邪眼の力の反動として、長時間の使用は不可能。令呪によるブーストをかけなければ、タルタリヤの霊基は加速度的に崩壊し、良くて三度しか発動できない宝具となる。
何のブーストもない状態で魔王武装を強引に纏っても、最大で5分程度しか維持できず、また霊核に致命的な傷を負ってしまい、タルタリヤは消滅を免れない。

『禁忌滅却の札』
ランク:A+ 種別:対城宝具 レンジ:- 最大補足:-
魔神戦争にて岩の魔神モラクスに敗れ、封印された渦の魔神オセルを呼び覚ますために使われた札。
厳密にはファデュイによる複製だが、タルタリヤはこの札を使って海からオセルを復活させ、一度は瑠月を壊滅の危機に追い込んだ。
また、この宝具を発動した場合、オセルのみならずファデュイの兵たちも顕現し、敵を殲滅させようと動く。
ただし、生前のタルタリヤは札の使用自体は不本意だったため、当人が自発的に発動させることはほぼないだろう。

【weapon】
弓及び双剣

【人物背景】

氷国スネージナヤの組織であるファデュイ執行官(ファトゥス)にして、第十一位『公子』の称号を与えられた青年。
人当たりのよい態度を取りながら、自らの戦績と名を広く知らしめていて、修練を重ねた戦士の一面を秘めている。
強者との戦いを何よりも好む戦闘狂で、同じ執行官(ファトゥス)からも危険視されるほど。戦いのためなら、執行官(ファトゥス)の地位すらも何の躊躇もなく使う。
そして、彼は家族想いの優しい兄でもあり、幼い家族に自分の闇をひたすらに隠し続け、自らの傷を顧みずに子供の夢を守り通す責任感を持つ。
行く先々で出会う子供とはすぐに仲良くなれる。
料理や掃除、釣りも得意。

【サーヴァントとしての願い】

敵対主従との戦いを楽しむが、それ以上にマスターであるあまねを元の世界に帰すことが重要。


【マスター】

菓彩あまね@デリシャスパーティ♡プリキュア

【マスターとしての願い】

聖杯はいらない。
みんなの期待を裏切らないよう、この世界でタルタリヤと共に戦う。

【能力・技能】

文武両道。
勉強や料理が得意で、空手をたしなんでいる。
ハートフルーツペンダントを使って、食後のデザートであるパフェのプリキュア・キュアフィナーレに変身可能。
キュアフィナーレに変身すればサーヴァントとも戦える。

【weapon】

パフェのレシピッピ。
あまねと心を通わせたレシピッピ。レシピッピとは料理の妖精で、料理を愛する人から生まれるほかほかハートに集まる場所に現れる。
あまねたちプリキュアや、クッキングダムの住民及び無垢な子供しか姿がその姿を見られない。また、基本的にエナジー妖精が言葉を翻訳しているが、聖杯戦争中ではサーヴァントも視認及び会話ができる。

ハートフルーツペンダント。
パフェのレシピッピと出会ったあまねの願いとほかほかハートから生まれた奇跡のアイテム。
ハートキュアウォッチの所有者との通話、そしてインターネットとの接続ができ、またレシピッピを格納する機能がある。
パフェのレシピッピがペンダントの中にいる状態で、二人の心が一つになった時、あまねはキュアフィナーレに変身できる。

クリーミーフルーレ。
キュアフィナーレの使用する武器で、モチーフは絞り袋。
エネルギーを絞り出すことで決め技、プリキュア・フィナーレ・ブーケを使って敵を浄化できる。
更にエネルギーを絞ることで、上位技のプリキュア・デリシャスフィナーレ・ファンファーレを使用可能。

【人物背景】

私立しんせん中学校で生徒会長をつとめ、おはぎとパフェが大好きな女の子。
正義感が強く、真面目で面倒見がいいため人望も高い。双子の兄のゆあんとみつきを尊敬している。
かつてはブンドル団のナルシストルーに操り人形にされ、怪盗ジェントルーとしてレシピッピを悲しませていたが、ゆいたちとのふれ合いで自分を取り戻した。
自らの罪に葛藤しながらも、過去と将来の自分に目を向けて、菓彩あまねはキュアフィナーレに変身し、ブンドル団と戦う決意を固める。

ある時、ナルシストルーから煽られて、あまねの心は大きく揺らいでしまう。
ナルシストルーを許せず、彼に大きな恨みを抱いてしまうが、ローズマリーからのアドバイスを受け、自分の感情と真っ直ぐに向き合う。
心を強く保ち、自らの正義を貫けるようになった彼女は、ナルシストルーの心を救うきっかけを作った。

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最終更新:2023年09月20日 23:54