「聖杯戦争───英霊をサーヴァントとして使役し、そのマスターとなった魔術師達による、聖杯という願望機の奪い合い。
 分かりやすく言えば殺し合いだな」

私はアーチャー、その名の通り弓兵のサーヴァントだ。

「非常に信じがたいが、あらゆる異世界を巻き込み、そしてこの完全に孤立した異界である偽りの冬木の中で行われる大規模な聖杯戦争、マスターも魔術師に限らず異世界の異能を持つ超越者も居れば、きみのような一般人まで問答無用で争わせる。
 冬木市を完全に再現しかつ支障がないほどに稼働させ、そこの住人を模したNPCすらもほぼ本物に人間に相違ない程に精巧。
 まさしく、あらゆる願いを叶える願望機ならではだ」

真名は……無銘とでも名乗ればいいのだろうか……いささか変わり種の英霊ということになる。

「……少し、話がそれてしまったな。
 酷なことではあるが、マスター、君は選ばねばならない。
 望む望まないに関わらず、いずれ戦火は君の元へも及ぶだろう。
 本来は監督役が存在し、相応には監視され管理されてはいる筈なのだが、どうやらそういった手合いの者は現状では不在らしい以上、リタイアも許されない。
 今の予選を生き残ってから、ノコノコとそれらしき者が現れたとしても、今更聞き入れてくれるとも限らない。
 故に選択肢は戦うか、戦わずに負ける。つまり、死ぬかになるだろう」

そんな変わり種を引き当てたマスターもまた変わり者のようだ。

「……」

体躯は小柄な女性だ。合わせたように顔も幼さが残る童顔だった。
不安なのか、顔をうつ向かせ僅かに震えていた。

「迷っているのか? 
 ……無理もないだろう。良ければ厨房を貸してもらえれば、お茶でも淹れよう。
 少し、落ち着いて考えても罰は当たるまい」

「せい……? はい、せん……そう……? ……そん、な……」

彼女は見たところ、魔術師の類ではない。平穏な日常から、殺伐した血みどろの殺し合いへと放り込まれ、理解が追い付ていないのだろうか。
聖杯を望むのであれば、そのようなマスターは足手纏いでしかない。戦う意思のないマスターなど、聖杯に託す願いを持つサーヴァントからすれば邪魔なだけだ。
だが、私は彼女のその戸惑う姿に、少しの同情と好感を得ていた。
少なくとも、人を殺せと言われて、それを躊躇い迷うことが出来る善なるマスターに召喚されたことに、安堵もしていたのかもしれない。
とはいえ、幸先は不安しかないがね。なんにせよ、苦労する羽目にはなりそうだ。

「……はっ!? 貴方は一体何者!?」

「ん?」

名乗り遅れたか? 召喚された直後、アーチャーのサーヴァントとは名乗った筈だが……。

「アーチャーのサーヴァントと言ったはずだがマスター?」

「ます、たー……?」

何故、そこで首を捻る?
何故、きょとんとした顔をする?

話しただろう。マスターがサーヴァントを召喚して、聖杯を求め戦うと。

「……覚えていないのか? さっきの話を」

「 ? アタシは橙ッス」

「名前は聞いてないが。
 ……いや待て、聖杯から聖杯戦争のルールや知識は教えられたはずだ!?
 私の説明など聞かずとも……」

「せ、い……はい……?」

「忘れた、のか……どうやって……?」



初めて悟ったよ。
願望機にも限界はあるのだな。

───この後、もう一度懇切丁寧に聖杯戦争の説明をした。

そして彼女の身の上もある程度聞き出した。

私のマスター、 篠月橙は裏バイトなるものを行い、生計を立てていたようだ。裏という文字が表す通り、破格の報酬の反面、表には出せないようなリスクの高い仕事をこなしていたらしい。
彼女の話を伺う限り、何かしらの異形や悪霊、怪異に纏わる仕事が大半を占めていた。本人はあまり意識していないというか、気付いていないというか、なんでさ?
人を捕食する怪物など序の口で、見るだけで不可避の死を決定させる怪異など、最早災害に近い。
1日で、数十万から数百万程度のギャラを貰えるようだが、割に合わない。
そういった仲介屋から仕事を斡旋されているらしいが、真っ当に職安に向かい求人を漁るのが1番効率的かつ、安全な金稼ぎの方法だろう。
橙は友人に騙され背負わされた借金の返済の為に、その裏バイトに身を投じているようだが、正気の沙汰ではない。

「ます…た……?」

そして、頭が悪いということが、よくよく分かった。

「……サーヴァント?」

なるほど、ひらがなからカタカナにシフト出来たな。ようやくだ。

「聖杯、マスター、サーヴァント……ここまではいいか?」

「……………せい、はい……?」

おやおや、漢字変換はまだのようだな。

「ああ、それがあると願いが叶う」

「願いが……叶う……? それって、密造してたけど腐ったワインも元に戻せるんスか!?」

「神の子も水をワインに変えたという逸話がある。可能だろう」

まず先に借金を返せ。

「つまり、ワインを元に戻すには……聖杯がいる……?
 サーヴァントは……マスターの奴隷で、アーチャーさんはアタシの下僕? ブヒャヒャヒャ!!」

この笑い、ちょっとムカつぞ。

「誠に遺憾だがね」

「い、かん……? まことさん? いかんのですか?」

皮肉が通じないのは強いな。ここでマスターとサーヴァントの格付けがすんだということか?
これは参ったよ。はっはははは。

「ところでアーチャーさん、この人、友達ッスか?」

「なに」

橙がクローゼットを開けるとハゲの男が頬に痣を作って、気絶していた。
腕を見ると見知った刺青がある。…マスターだよこれ。
こんな奴をクローゼットに仕舞うな。獲物を隠すヒグマかお前は。

「帰ったら部屋に居たんスよ。自分、元ボクサーなんで殺意に反応して、つい……」

ということは、近くにサーヴァントが居るということか!? 

「橙! 警戒しろ! 戦闘になるぞ!!」

「───!!? 待ってください! 非常食のヒマワリの種を持ってくるッス!」」

「携帯(けいたい)ではなく、警戒(けいかい) だ!」

流石の橙もはっとした顔をして、大急ぎでヒマワリの種をボリボリ頬張りながら私の前方へと回る。
そして腕を横に手を添えて、ビシッとくの字に曲げて胸を張っていた。



「……何を、している?」

「先頭ッス」

【クラス】
アーチャー
【真名】
エミヤ@Fateシリーズ
【属性】
中立・中庸
【ステータス】
筋力:D 耐久:C 敏捷:C 魔力:B 幸運:D(橙がマスターのお陰で微妙に上がっている) 宝具:??

【クラススキル】
対魔力:D 
一工程(シングルアクション)によるものを無効化する。
魔力避けのアミュレット程度の対魔力。

単独行動:B
マスターからの魔力供給を断ってもしばらくは自立できる能力。
ランクBならば、マスターを失っても二日間現界可能。

【保有スキル】

千里眼:C
視力の良さ。遠方の標的の捕捉、動体視力の向上。

魔術:C-
オーソドックスな魔術を習得。

心眼(真):B
修行・鍛錬によって培った洞察力。
窮地において自身の状況と敵の能力を冷静に把握し、その場で残された活路を導き出す“戦闘論理”
逆転の可能性が1%でもあるのなら、その作戦を実行に移せるチャンスを手繰り寄せられる。


【宝具】
『無限の剣製(アンリミテッドブレイドワークス)』
ランク:E~A++ 種別:??? レンジ:??? 最大補足:???
アーチャーの固有結界、本来は宝具ではないが、彼の象徴ということで宝具扱いに。
剣に特化した能力で、一部の例外を除けば剣を投影し、その担い手の技量まで再現する。ただし、本物の剣や担い手に比べれば数段劣る。
固有結界を現実に形成することも可能。


【weapon】
『干将・莫耶』
無限の剣製の基本運用として、干将・莫耶を投影し白兵戦を行うのがメイン。

『弓』
弓も投影できる。これが本職。

『偽・螺旋剣』
本家の宝具と違いアーチャーのアレンジの入った投影。
矢にして射る事もある。

『赤原猟犬』
追尾する矢として打ったりする。

『熾天覆う七つの円環』
アーチャーの防御装備。
投擲武器や使い手から離れた武器に対し無敵という概念を持つ。

『その他』
色々投影できる。


【人物背景】
ご存じ、Fateシリーズ最初のアーチャー。
人々を救うために世界と契約した「抑止の守護者」。
全てを救うという理想を求め、そして己の理想にすら裏切られ絶望した衛宮士郎の未来の可能性。

【サーヴァントとしての願い】
マスターの身を守る。あと聖杯戦争も覚えて欲しい。



【マスター】
篠月橙@裏バイト:逃亡禁止

【マスターとしての願い】
コーラとピザポテ欲しいスね。

【能力・技能】
脳みそモンキー、元ボクサー。
ドカコーラを作れる。

【人物背景】
アタシは橙ッス。

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最終更新:2023年09月30日 21:04