———バキリ
骨が折れる音がする。
悲鳴が上がる。
拳を振り上げる。
———ドゴォ
肉を潰す音が鳴る。
びちゃびちゃと汗と血液が零れ落ちる。
足を振り上げる。
———グシャリ
また骨が折れる音がする。
悲鳴の代わりにくぐもった嗚咽が漏れる。
それでも、荒れ狂う暴の猛威は止まらない。
とある廃校の教室で、破壊の権化が殺戮の宴を繰り広げていた。
「やめろマスター!!」
たくましい髭を蓄えた屈強な男が、主の蛮行を止めんと飛び掛かる。
が、男が主に触れた途端。
暴の化身は修羅の如き形相で拳を振り抜き、男の顔面に叩き込む。
「どあぁ!!」
血反吐を吐きながら宙を舞う男を見返ることもなく、暴の化身は再び敵の破壊に勤しむ。
殴り。蹴り。踏みつぶし。投げ飛ばし。噛みつき。引き裂き。
己の身体でできるありとあらゆる破壊行為を対象にぶつけ、その息の根が止まるまで彼は収まらない。
彼の名はグルガ。かつて裏の格闘技世界で『最強』の肩書を欲しいままにしていた至高の闘技者(ファイター)である。
☆
私———ライダーは、電子機器に囲まれた部屋の中にいる。
ジジジ、と無機質な電子音が私の耳元で鳴り響く。
いま、私の腕に着けられているのは科学者の作ったエネルギー変換装置。
これで、私から英霊としての魔力を吸い上げ、別種の力に変換しているのだ。
「もうよろしいですじゃ。気を静めて装置をお外しください」
タコのような姿かたちをした科学者が奥の部屋から恭しくこちらに歩み寄ってくる。
ようやく終わったか。
私は安堵と共に、つい着けられていた装置を放り投げてしまう。
すると、科学者の持っていた首輪が光り輝き科学者を軽く吹き飛ばしてしまう。
彼は「ぅわへへ」と奇声をあげつつもすぐに気を取り直し、情報の羅列された紙を手に読み上げる。
「コンピュータが弾き出したデータによりますと、この首輪があればマスターの制御は可能ですじゃ」
「あぁそうか...」
私は科学者から首輪を受け取り、マスター・グルガのもとへと赴く。
いまの時間帯は深夜。
彼は自室で眠りについていた。
マスターの暴走癖は日に日に凶暴さを増していっている。
サーヴァントであるはずの私がなんの太刀打ちもできないほどに。
私は、科学者にマスターを制御するための装置を作らせた。
この装置・首輪は装着している者の感情中枢に私の魔力を通じて指令を訴えかける代物だ。
だがこんなモノをマスターが大人しく着けるはずもない。
つまり、寝ている今こそが最大のチャンスというわけだぁ。
ゆっくり、ゆっくりと私はマスターに首輪を近づけていく。
パチリ。
あと少し、といったところでマスターの瞼が見開かれる。
なぜ気取られた!?いや、この位置は...しまった!私の影が被さったか!
異変に気が付いたマスターが即座に起き上がろうとする。
だが私はどうにか首輪をつけようと無理やりマスターを抑え込む。
藻掻き。足掻き。抑え込み。
首輪を嵌められた!と達成感を抱いたその刹那、マスターの拳が私の顔面を捉え床を舐めることに。
「オオオオオオオォォォォォォォ———ッッッ!!!」
マスターは雄叫びをあげ、私の頭を掴み握りつぶそうとする。
ミシミシと骨が悲鳴をあげ、激痛が脳髄に襲い来る。
このままでは死んでしまう...!
私は、科学者を信じ、マスターへと掌を翳し魔力を発する。
するとどうだろう。
首輪が発光し始めて、マスターが雄叫びを上げ始めたかと思えば、先ほどまでの剣幕が嘘のように引いていき、身体もみるみるうちにしぼんでいくではないか。
大人しくなったマスターは再びベッドに横たわり穏やかな寝息を立て始める。
どうにかうまくいった...私は尻餅を着いたまま荒い息遣いで呆然と天井を眺める。
全く、私のマスターは扱いが難しいにも程がある。
確かに肉体的な強さは並の英霊では相手にならないほどに優れているが、その長所を踏みつぶすかの如き破壊衝動の持ち主でもある。
まるで我が息子ブロリーのような男だ。
「...ブロリー、か」
私が最後に見たブロリーの姿は、笑みを浮かべながら私の乗る一人用のポッドを持ち上げ握りつぶす悪魔のような姿。
私はブロリーに殺された。
無慈悲に。なにもできず。サイヤ人という戦闘民族の宿命を表すが如く。
その時のことを思い返せば、英霊と化した今でも身震いしてしまう。
「...フンッ、あぁんな最低な結末など、何の未練もない」
まるで強がりのように鼻を鳴らし、未練を断ち切る。
過去は過去。今は今、だ。
私は英霊として聖杯を求めている。
その願いは、やはりかつての悲願『俺を王とする帝国』を築き上げることだ。
かつて王でなかった為に、息子の優秀さを危険視され、排除されそうになった。
王でなかった為、望まぬ意見に対して訴えかけることしかできなかった。
王でなかった為、ごみ溜めで冷たくなっていく瀕死の息子を眺めていることしかできなかった。
王であれば。
理不尽に切り捨てられることはない。
王であれば。
息子を異端視されずに済む。
王であれば。
親子揃ってあんな空しく惨めな思いをせずに済む。
「このままでは上位のサーヴァント相手にはてこずるだろうが...科学者に装置を作らせ、他の主従とこのグルガを使いこなせば...俺の帝国はゑゑ!?い遠に不滅になるというわけだぁ!!ふーっふっふ、あーはぁーはぁーはーっ、うあぁーはぁーはぁーはぁーはぁーはっ、ふぁっはっはっはっはぁーっ!!!!ひぁっはっはっはっ!!!!」
己の野望を抑えきれなくなった私の笑い声が高らかに響き渡り、数秒後、不機嫌な眼差しで起き上がったグルガに殴り飛ばされたのだった。
【クラス】ライダー
【真名】パラガス
【出典作品】劇場版ドラゴンボールZ 燃えつきろ!!熱戦・烈戦・超激戦!!
【ステータス】筋力D 魔力B 耐久B+ 幸運D 敏捷D 宝具D
【属性】
秩序・悪
【クラススキル】
対魔力:D
一工程(シングルアクション)によるものを無効化する。魔力避けのアミュレット程度の対魔力。
騎乗:B
乗り物を乗りこなす能力。
大抵の乗り物なら人並み以上に乗りこなせるが、幻想種あるいは魔獣・聖獣ランクの獣は乗りこなすことが出来ない。
【保有スキル】
サイヤ人:B
戦闘民族サイヤ人。
身体が非常に頑丈であり、気弾を放ったり空を飛ぶことができる。また、満月の夜に大猿に変身できる。
語り手:C
物語や伝説をいかに上手に口で語れるかを示すスキル。
書物に物語を書き記すような技術とはまったく別の、聞き手の気分や精神状態も加味して適切な語り口を選ぶ、即興性に特化した物語伝達能力。
「やぁっと能天気なお前でも呑み込めたようだなぁ」
扇動:B
数多くの大衆・市民を導く言葉と身振りを習得できるスキル。個人に対して使用した場合はある種の精神攻撃として働く。
「あなたの手で、最強の宇宙帝国を築き上げるのです!」
戦闘撤退:B
逃走に躊躇いのないスキル。スキルっていうのだろうかこれ。
「可哀想だがブロリー。お前もこの星と共に死ぬのだ...」
【宝具】
『軍団使役』
ランク:D 種別:対軍宝具 レンジ:不明 最大補足:不明
自動発動宝具。
銀河のならず者たち・タコの姿の科学者・惑星シャモから連れてきた奴隷たち・モアなどかつて従えた者たちを召喚できる。
ただし彼らの戦闘力はほとんど期待できない。得意分野を見極めて仕事はうまく振り分けよう。
『デッドパニッシャー』
ランク:C 種別:対人宝具 レンジ:1 最大補足:1
気弾を放つ。それなりの威力。
『一人用のポッド』
ランク:C 種別:対人宝具 レンジ:1 最大補足:1
一人で乗り込むためのポッド。離陸できれば遠くの距離まで高速で移動できる。
【weapon】
グルガを制御するための制御装置。
【人物背景】
粗暴で凶悪なサイヤ人としては珍しく、物腰柔らかな人物であり、王族であるベジータやその息子のトランクスをはじめ、彼らに同行した地球人の面々に対しても紳士然とした対応をみせる。しかし、その本質はかつて自分たち父子を迫害したベジータ王族への報復と全宇宙の支配を目論む野心家である。そのためなら忠臣を手にかけ、実の息子ですらその戦闘力を利用するためにコントロール装置で操り、挙句惑星の消滅を目前に部下や実子を置き去りに単身逃亡を図るなど、これまでの例に漏れずサイヤ人としての残忍性を内包している。計画通りグモリー彗星が軌道に乗り接近していることを知った際には歪んだ笑みで狂喜する一面もみせている。
【聖杯にかける願い】
俺を裏切らない俺の帝国を築き上げる。
【マスター】
グルガ@職業・殺し屋
【マスターとしての願い】
とにかく戦う。そしてその果てには自分を殺した死条へのリベンジマッチを。
【能力・技能】
身長238cm、体重220kg。鋼の肉体を持つ男...ロシアの超重機神!!
【人物背景】
ロシアの超超超大金持ち、イワノフ・ハシミコフお抱えの最強の闘技者。
イワノフの主催するロシアン・コンバットで最強の名を欲しいがままにした男。
その巨体から放たれる攻撃力とタフネスはまさに規格外。
プライドの高い戦闘狂であり、一度キれると相手を殺すまで暴走が止まらなくなる。
職業・殺し屋の死条誠と血で血を洗う死闘の果てに殺害される。
【参戦時期】
死亡後参戦。
【把握資料】
漫画 職業・殺し屋 7~9巻『ロシアン・コンバット』編
最終更新:2023年10月02日 17:05