瘦せ我慢ばかりでもう、半年過ぎたが
何が変わったか 誰を愛せたか。
頭のなかで、今。夢が、崩れ出した……。
――何とかなれ。
その男は、煙草を吸っていた。
歓楽街の、喫煙所の前で――特にやる事なんかないさというように、ただ退屈していた。
なぜなら、博打の前は、彼はいつも手ぶらだったからだ。
神域の男。彼はそう呼ばれた。これは、ただの余興にすぎなかった。
雀荘からもう一人、男が出てくる。黒スーツ仕立ての、マスターである男が見繕ったその恰好が、妙にロングヘア―のその出で立ちに似合っていた。
「いやぁ...すまんの」「…どうだった?」
男達は、互いに嗤っていた。まるで始まる前から凡てを出し尽くしたような、笑いだ。
「オレは麻雀とやらは始めてでの。ちいとばかしスってしまったぞ。……しかし、いいのかマスター。」「……ん?何がだ?」
「ほんとうにお主とやら、――この聖杯戦争で、生き残ることを、考えておらんのか?
....その結果、オレばっかり好き勝手してしまっとるではないか」
黒服姿の男。変装こそしているが、ろくに霊体化すらしてないこの男が、サーヴァントだ。
その不安を見て、…尚も銀髪の男は、笑った。それはもう、心地よく。
「……いいさ。俺は既に半死の状態。
寧ろ死ぬことが本命....!…いや、凡ては死ぬことすら初まる僥倖とすら謂える……!」
…説明は訊いていた。目の前の男が、もう助からないであろうことも。
その様子を、目の前の男……サーヴァント、千手柱間は見据える。
その死生観、自身もマジになった時はよく感じる闘気を、一心に肌で感じながら。
そう。そのマスター……、赤木しげるという男。
彼が参戦した時期は、自らの葬儀の数ヶ月前。
例え生き残ったとしても、彼はアルツハイマーに侵されており、いずれ数年で全てが、脳が失われ。
凡てが解らなくなり、死に至る。斯のように在る、運命だった。
「…無礼を承知で訊かせてくれ。その病、治せるとしたなら…聖杯には、願わないのか?」
「…それは、捻じ曲げるだろ?俺の決意を。……俺の命を。
そんな道理にしたがってまだ、俺が生きて居たいと思うか……?」
そうか、と柱間は少し、複雑そうな貌をした。目の前の男が、柱間の眼にも命を散らすには惜しい人間であることを感じ取っていたからだ。
この男がどうやってこの様な意識にあるのかを、柱間は聞かなかった。――とても、自分と同様に、合理の道筋では立ち行かない闘気があったからだ。
赤木も柱間も、感じていた。
間違いない。目の前にいるこの男は、自分と同類だ。…感覚に全てを任せ、時に凡てを切り捨ててでも博打を打てる無頼だと。
闇の王。…或いは、里の長。
互いに王となっていた、男だから感じるものがある。
だからこそ、柱間には、踏みとどまってほしかったのだ。
何だか召喚されたときから赤木には、自身は借りを作っているように思えて仕方がなかったのだ。
「…それでも、これは戦争ぞ。…敗けて死ぬのは、つまらんぞ。」忠言する。それは、忍の神と称えられていた者の発言だった。
…そこに友の影が一瞬過ったことを、柱間は謂わなかった。
「あんたの方こそ、戦争か?いや……失礼だったな。この賭博……召喚されりゃ、人を殺ってないほうがおかしい。
ククッ....そりゃ俺は何も云えんな。俺は平和に退屈してたから」
在りえなくない話ではないが、もし生まれる時代が少しずれてて、徴兵されていたら。
死ぬ先が博打でなかったら、自分は、とても生き残ることはできなかっただろう。…赤木はそう語った。
敢えて死にに行くことで生を浮かび上がらせていたのなら、死が不変の戦場じゃあ何の意味もないだろうさ、と。
「柱間。お前の遊び博打に俺は金を貸した。その分だけ働いてくれりゃあいい。
どうせこんなもん、死人の俺を呼んだ時点で出来レースだろうさ。…なら、その機運を変えてから死ねばいい。」
そう、この聖杯戦争で、赤木は何が勝利か、見据えていた。
自分は助からないのなら、その上で生きようとする者達の為に、機運を変えればいい。
居るかどうかすら分からないのに、赤木はその者を待っていた。
最初に麻雀を始めた時にいた男、南郷や井川ひろゆきのように、自らの手で運命を変えようと藻掻く者の運命を変えてやりたい。
それが見れれば、満足なのかもしれない。…俺は。
「…分かった。しかと分かったぞ、赤木よ」
柱間は目を伏せる。…だが、そして嘆願した。
その上で、謂わせてほしいと。
「マスター、赤木しげるとやら、オレは決めたぞ。
この戦争を――お前を生かす戦争に造り替えると。満足させると。ここに誓おう。
俺がここにいる内は、何人たりともお前には触れさせん。」
ククッ、何を言い出すかと思えば。赤木は、嗤っていた。
そう。その上で、その運命を識った上で、柱間は赤木を生かす方へと賭けるのだ。
「…ありがとうよ。或いは、お前になら」「……うん?何ぞ」
…何でもねぇよ、と赤木しげるは煙草を吸いながら尚も笑った。
鷲巣とは違い、この男は快い風。
成功を積むことに固執せず、しかし王であった男。
この男なら、この戦争が終る頃には、己の、友として成れるかもしれない。
そんなことを、考え、ふっとありえないと、離散していった。
「…よろしくな、柱間」「…応ぞ」
繁華街を、男たちは後にする。
――斯くして、二つの木の葉は舞っていく。どこに流れ着くかも、分からないままに。
【クラス】
キャスター
【真名】
千手柱間@NARUTO
【ステータス】
筋力:B 耐久:A 敏捷:B 魔力:A 幸運:B 宝具:A
【属性】
中立・善
【クラススキル】
陣地作成:B
魔術師として、自らに有利な陣地を作り上げる。彼の場合、木遁忍術や後述の仙人モードと組み合わさり戦場そのものが自身の有利な陣地となる。
仙術(仙人モード):A
湿骨林で体得した(可能性がある)仙術。
この状態になり、数舜待つことで自然からチャクラを取得することができ、大幅に術の出力が上がる。
【保有スキル】
カリスマ:A
永きに渡る戦争を止め、里のシステムを創った改革者。
その器の大きさは、後々に語り継がれる。
柱間細胞:B+
大筒木アシュラのチャクラを基とする、柱間が持つ体細胞。
肉体が常人とは桁違いの治癒力、チャクラ量で構成されており、その生命力は本人が死亡して尚細胞が生き長らえるほど。
また、木遁忍術の行使を行うのにも必要。
戦闘続行:B
瀕死の傷でも戦闘を可能とし、決定的な致命傷を受けない限り生き延びる。
【宝具】
『木遁忍術』
ランク:A+種別:対人~対軍宝具レンジ:1~99 最大捕捉:1000
柱間細胞から成る一連の忍術。
チャクラから成る木を媒体にする分身から、陸から樹海を出現させ薙ぎ払う樹界降誕、仙術と組み合わさり強化された尾獣と張り合うほどの強さを見せる真数千手など、手数は非常に広い。
【人物背景】
「忍の神」と謳われた、隠れ里のシステムを作り上げた創設者。
戦争で親友であったうちはマダラを止められるのは、世界で彼たった一人だけだったと言う。
【サーヴァントとしての願い】
赤木に貸した分を働く。
そして、その上で『赤木が生きる』方へ賭ける。
【マスター】
赤木しげる@天 天和通りの快男児
【マスターとしての願い】
飛散し、闘いのなかで死んでいく。
【能力・技能】
「神域の男」。異能こそないが博打のような不確定要素の絡む勝負、駆け引きにおいて無類の強さを見せる。
また、その打ち手の裏には「一か八かの局面で、わざと死にに行く方を選択する」という希求がある。
現在はアルツハイマーに侵されているが、その言い回しや感覚的な打ち筋までは滅んでいない。
【人物背景】
かつて裏社会の頂点に君臨したが、早い段階で引退した伝説的な人物。
若年性アルツハイマーに侵され葬儀の準備を進めていたが、“黒い羽”に触れて参戦。
最終更新:2023年10月03日 00:10