「オレは不死身だ」

目の前のアサシンは牙が象られた口元のマスクを下げると、対峙者である白銀の鎧を纏ったセイバーにそう告げた。
深夜の冬木市、薄暗い路地の裏にて二騎のサーヴァントが衝突した。
かたや白銀の鎧を纏ったセイバー、かたや山賊やアウトローを思わせる軽装に身を包んだアサシン。
決着は近い、セイバーは肩で息をしている目の前のアサシンを見てそう判断した。アサシンながら奇襲のみならず、戦場で生き抜いたこともあるだろう身のこなしではあったが、およそ己に届くものではない。

先ほどの発言は虚勢か真実か、それを考える事をセイバーはしない。
なぜならば彼の持つ刃こそ不死殺しの宝具、いかに不死とてかの刃で心臓を貫かれ立つことは叶わないのだ。
アサシンが投げる短刀をその刃で捌き、一息で距離を詰めたセイバーはその刃をアサシンの心臓に突き立てた。
肉を断ち、骨を砕き、その心臓に確かに刃が突き刺る感覚を手にした。刃を抜き取り、
眼の前のサーヴァントの体が光の粒に消えるのを見送ったセイバーは安堵のため息をついた。
体の緊張を解いたその一瞬、首筋に金属の冷たい感覚が滑っていった。熱くなった首元に手を置くと、
血液が大量に流れ落ちるのを確かに感じる。慌てて振り向くと、そこには今目の前で消えたはずのアサシンが立っていた。

「な…ぜ…」

「言ったはずだ、オレは不死身だ」

おかしい。
確かに不死殺したる己の宝具はこのアサシンの命の根源を断ったはずだ。
朦朧とする意識の中、混乱する脳裏に背後から己の後頭部に短刀が突き刺さった。

白銀のセイバーは微動だにしない目の前の暗殺者から目を離すことなく倒れ込み、
意識が途切れるその間際、その『不死身』の真相を悟った。

戦いが終わった路地裏に一人の少年が入ってきた。
アサシンのマスターである彼は、色素の薄い瞳や髪の端正な顔立ちだったが、
その顔に似つかわしくない気色の悪いモノを見るような目で己のサーヴァントを見た。

「一つ聞きたいんだけどさ…お前のドコが不死身なわけ?」

「オレは不死身だ。」

セイバーの背後から短刀を突き刺した『二人目』のアサシンが答えた。
二人のアサシンは、牙が象られたマスクなどの特徴的な衣装、目元に付けられた古傷、背丈や顔に至るまで全てがアサシンと合致している。

その名はアザゼル。
個を尊ぶ悪魔(メギド)の中にて個を捨て、『アザゼル』という全の中にて不死を目指した存在である。
彼らはみな同一の体、思想を持つよう強制され、対外的には一人の存在であるかのように見せかけることでアザゼルを個として存在させていた。
不死殺しの刃に貫かれて尚立ち上がったのも単純な話、貫かれたアザゼルとは異なるアザゼルが現れた。
それだけの話だったのだ。

「死んだだろ、さっきの奴は。」

「『さっきの奴』…?そんな個は所詮遅かれ早かれ死に向かう概念だ。アザゼルは違う。」

それを理解できないという顔をする彼のマスターに、アザゼルは更に説明を重ねた。


「人の命はやがて死という進むことも逃げることもできない袋小路に向かう。?
しかしアザゼルは、そこにアザゼルというたった一つの逃げ場を作り出したのだ。
アザゼルはアザゼルという逃げ場を作り逃げ出し、逃げ込まれたアザゼルもまた、アザゼルという逃げ場を作り逃げる。
そうしてアザゼルは永遠に存在するのだ。」

「もういい、わかった。」

「理解できたか?」

「理解できないってことがわかったよ。」

己が死せども自分と同じ人間が生きているから死んでいない。
そんな価値観は到底彼の理解し得るものではない。少年はアサシン達に背を向けると、そのまま歩き去って行った。

『すまないマスター、混乱させたか?』

「ジャンか。」

少年の頭の中に念話でアザゼルの一人が語り掛ける。
ジャンと呼ばれたその存在は、アザゼルの中から抜ける事を選んだ一人。
唯一アザゼルである事をよしとしないアザゼルだった。

『理解できずとも当然だ。
しかし、アザゼルは忠義に厚く英霊の座に登録された今となっては、マスター殺しのような英霊の座に記録されるような行いは絶対に避ける。
マスターがどう動こうともついてきてくれる連中だ。その…大目に見てやって欲しい。』

「別に怒ってるわけじゃない、オレと違って命を使って戦ってくれるんだ。
感謝してるさ。それに…」

少年は一瞬言葉に詰まったが、気まずさを振り払うようにかぶりを振ると言葉を続けた。

「ま、なんだか寂しくないからさ。 よろしく頼むよ。」

『……承知した。』

ジャンの念話が途絶えたのち、少年は喉を抑えて道路脇のカーブミラーを見つめた。
カーブミラーに映る端正な少年の顔は、彼の顔ではなかった。
淡い色の瞳や髪も、甘い声も、元の世界における身分さえ彼の者ではない。
アスティカシア学園における決闘のために用意された影武者の座に生き残る為に座った者。
エラン・ケレスの替え玉、強化人士5号と呼ばれる人間、それが彼であった。

命を人質にアザゼルとなることを強制された彼らと、生きるためにエランになった自分にどんな違いがあるのか。
そんなことを考えながら彼の姿は夜道に消えていった。


【クラス】
 アサシン
【真名】
 アザゼル@メギド72
【ステータス】
 筋力C 耐久D 敏捷A 魔力C 幸運E(ジャンのみA) 宝具C
【属性】
 秩序・悪

気配遮断:A 自身の気配を消す能力。完全に気配を断てばほぼ発見は不可能となるが、攻撃態勢に移るとランクが大きく下がる。

純正の魔:D+(ジャンのみB+)
宵界メギドラルと呼ばれる異世界に存在する「メギド」と呼ばれる存在である証。
アザゼルは「純正メギド」と呼ばれる存在だが改造手術と個の滅殺によりそのランクを大きく落とし、ジャンと呼ばれる存在以外はメギド体と呼ばれる真の姿になることはできない。
スキルのランクと周囲の魔力状況に応じた確率により魔力回復を行う他、
『発破』と呼ばれるアザゼル特有の自爆能力も周囲の魔力を用いてノーコストで行う。

模倣:A+
『アザゼル』となるため徹底的に己を殺してきた彼らは他者の動作、筆跡などを真似ることに秀でている。
A+ランク以下の観察眼、呪いによるアザゼルの個体識別は困難を極める。

変化の術(偽):B
特殊な改造手術により各々が幻獣への変身能力を備える。

バレットアーツ:Ex
フォトンによる弾丸を形成し、軍団で共有するメギドラルの戦法。
アサシンは各々の幻獣体と呼ばれる体やジャンが持つオーブを用いて様々な効果を持つを持つ暗器を形成し、互いの距離などに関係なく全体で共用することができる。

【宝具】

『全にして個(アザゼル)』
ランク:B 種別:対死宝具 レンジ:- 最大補足:23~99
アザゼルと呼ばれるメギドが本来逃れ得ぬ死から逃れるために行った唯一の活路。
他のメギドを誘拐監禁・洗脳し『アザゼル』とすることで己を不滅の存在へと変える不滅の法。
一種の狂言に近いと言えるが、サーヴァントとして現界した際アザゼルと認められた全てを1つのサーヴァントとして召喚される宝具となった。
本体に当たる存在はなく、最後の一人が消滅するまで現界可能。
総数は不明、ソロモン王との交戦時には総勢22名、過去にオレイと相打ちになった1名が確認されているが過去に死したアザゼルの存在なども考えるとより多いと考えられる。(今回は多くとも100は超えないものとする。)
彼ら一人一人に個性や名前などはなく、外見や仕草から判別は不能であるが唯一『ジャン』と呼ばれるただ一人のみ他のアザゼルとは違う経験・オーブと言った道具の使用や己の個そのものであるメギド体の使用が可能。
また、生前の彼らは対外的に一人の存在であるように見せる掟があったが、英霊の座という上位存在に全にして個の存在として認められたため戦略上の目的以外でこだわる理由はない。

『個にして全(アザゼル)』
ランク:B 種別:対蛆宝具 レンジ:1~10 最大補足:1
アザゼルと認められている中で唯一個を求め、尚且つアザゼルを拒絶せず死したアザゼルたちの想いをも背負う事を選んだ、ジャンと呼ばれるアザゼル、およびそのメギド体。
ベースは他のアザゼルと変わるものは無いが、ソロモン王と呼ばれる人間との冒険の経験やその最中手にしたバレット作成のためのオーブの使用など他のアザゼルとは異なる行動を行える。
最大の強みはメギド体という真の姿を開放可能な点であり、アザゼル(ジャン)は行者のような布の面を付けた巨人の体に変身する。
原作ゲームとは異なり、本聖杯戦争におけるメギド体の能力は仲間が死亡ごとにパワーアップし、察知されていない気配遮断状態から放つことで更に特攻攻撃となるものとする。(変身ごとのレベル低下無し)

【weapon】
 暗器、発破などの暗殺道具一式、ジャンのみオーブを使用

【サーヴァントとしての願い】
英霊の座の不滅化、或いはバックアップ




【マスター】
 エラン・ケレス(強化人士5号)@機動戦士ガンダム 水星の魔女

【マスターとしての願い】
生きて元の世界に帰る、手段を選ぶかは検討中

【備考】
※参戦時期は後続の書き手にお任せします。

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最終更新:2023年10月03日 16:42