―――脹相
 ―――呪いとしての君はここで死んだ

 ―――生きろ 今度は “人”として

 割れていく
 落ちていく

 ここで使い果たす以外意味が無いと思った命が
 呪いを振りまく元凶を刺し違えても殺そうと足掻いた命が

 生きろと言われ。落ちていく。

 結界の中、見えないはずの空から

 黒い羽が 降ってきた。


 ◆◇◆

 相当数の人を無作為に、一つの箱に放り込んだとする。

「お前たちには今から殺し合いをしてもらう。」
 箱の上で誰かがそんなことを言い、従う者が何人いるだろう。
 殺戮を楽しむ極悪人か、極めて精神の脆弱な臆病者だけだ。

 だが、ここに幾つかの仕込みをすれば。従う人間の数は夥しいほど増えていく。
 例えば、脹相の知る死滅回游では「呪術という超常の力」「結界からの脱出というモチベーション」「殺人を犯すことで点を得なければ命を失うという事実」「好戦的かつ狡猾な過去の術師」等々、仕掛けた者の悪意が剥き出しになったような環境で多くの参加者が死亡している。

 この聖杯戦争も、核としては似たものだろう。
『世界も経歴も実力も大きく差がある、無作為かつ不平等な参加者たち』
『絶命どころかサーヴァントの消滅も敗退に繋がる事実(6時間のインターバルも生存のために動くマスターが状況を動かすと考えれば都合がいい』』
『敗退=消滅 という残酷な事実』
『万能の願望機という破格の報酬』
 あらゆる要素が聖杯戦争という殺し合いを助長させる、運営の仕込みに他ならない。

「反吐が出る。」
 黒い羽に触れルールを理解した脹相の口から、苦虫を噛み潰したような言葉が零れた。

 ◆

「....続けるか?」

 静かに、そして研がれた刃物のように冷たい声が、冬木の路地裏に響いた。

 壁には無数の破壊痕と血痕が残る、虐殺が起きたとしても違和感のない破壊の痕。
 聖杯戦争の舞台となった冬木の街のそこかしこで起こる、超常の戦いの傷跡の一つ。
 その破壊の一因たる脹相の冷たい言葉は、同じく破壊の一因である剣士の英霊に向けられていた。

 金色の髪と黄金の武具が目立つセイバーのサーヴァント。
 ランサーを引き連れた脹相に戦いを挑んだ青年は、砕けたアスファルトの上に膝をつき、立ち上がることさえおぼつかない。
 後ろに居る年端も無い少女...一画だけ令呪を残したマスターをかばうように、向かい合う呪いに敵意と闘志を向け続けている。

 既に、勝敗は決していた。

 神の力(セイバーはそう表現していた)を込めたセイバー渾身の攻撃は、脹相のランサーが生み出した巨大な十字架のような盾にすべて防がれ。
 合間を縫うように放たれた赤血操術が、セイバーを襲い体の自由を奪う。

 セイバー自慢の黄金色の鎧は脹相の血に侵食され、端正な顔は色を失ったように真っ青で、額には無数の汗が浮かんでいる。
 無傷な脹相とは対照的に、毒を帯びた血を浴び続けたセイバーは、すでに限界を超えていた。

 三つの流星のような形の令呪を残した呪いの手が、英雄を指さす。
 そこに、嘲笑も憐憫も無い。
 死人のように冷たい脹相の眼が、青年を見つめている。

「お前は弱くはないのだろう。だがランサーはお前より強く、何より俺との相性が悪すぎた。」
「だ、だがお前のような存在を見逃していては、マスターのような無垢な命が危険にさらされる。」

 正義の味方は口から血を吐き、ふらふらと立ち上がり剣を構える。
 剣士の心は折れず、勝ち目がないことは彼にとって引き下がる理由にならない。
 呪いを祓うために。壊れた体を動かし悪を断たんと英雄は構える。

 セイバーは、どこまでも正義にあふれ。悪を許せない男だった。
 だから、数多の人を殺した呪いである脹相を見逃すことなど出来ない。

 その姿に、冷めたような、愛しい誰かを思い出すような。
 呪いらしくない貌を向け、脹相は自身の気づきを語る。

「お前、死因は毒だろう。」
「!?」
「そうで無ければ俺の術式がここまで有効とは思えんからな。」

 脹相の操る血液には、呪霊の血液という性質上高い毒性がある。
 人はもとより、純粋な呪いに属するその毒は英霊にさえ効果があるだろう。致命傷を与えるほどの物ではない。
 目の前のセイバーが喀血を繰り返しているのは、彼自身が毒に弱い性質を得ているからに他ならない。

「分かったようなことを言われるのは不本意だろうが、お前は“人”であった頃も、そうだったのだろうな。」

 きっとこの男は、生前も同じように純粋な正義を秘めて正しい道を進み続けてきたのだろう。
 その正義で多くの人々を救い、多くの勝利を重ね。

 そして、それを忌み嫌う何者かに疎まれて死んだのだろう。
 恐らく、騙された形で毒殺されて。
 悪を祓った英雄は、人の悪意によって命を落とす。

 真人が聞けば、これ以上なく愉快そうに嗤っただろう。
 脹相の表情は変わらない。
 笑わないし、嗤わない。

「...お前の言葉を否定はしない。お前の言う通り、俺は多くの人を信念も無く殺してきた。災いしか呼び込めないような男だ」
「そうだ!お前は“悪”だ!だからこの俺が....」

 その言葉は、最後まで言い切られることは無かった。
 堰を切ったかのように、喉が裂けんばかりに英雄はせき込み、宣誓が途切れる。
 勇気ある言葉の代わりに、黒く染まった血が青年の口からまき散らされた。
「セイバー!!」
 こらえきれなくなった少女が、涙で顔をぐしゃぐしゃにして叫んだ。

 敵意と、不安と、悲哀。
 澱んだ空気を変えたのは、一人の漢の言葉だった。

「異邦の英雄よ。どうか引いてはくれまいか。」

 脹相の隣から発せられたランサーの言葉。
 穏やかな圧と重みを持った声が、空気を変えた。
 隣に立つマスターも、対峙するセイバーも。
 その男に引き寄せられるように、顔を上げた。

「私もマスターも、これ以上の戦いは本意ではない。」
「黙れ!“悪”に従うサーヴァントの言葉など...」
「貴公が消えてしまえば、その少女はどうなる。」

 はっとした顔で、ぼろぼろの剣士は振り返る。
 色あせた黄金の鎧に、縋りつくように女の子が泣いていた。
 そこにセイバーが消えたら自身も消えるからといった打算や欲望は、少なくとも脹相の眼には見えない。
 ただ、自分を守る剣士のことが心配な。一人の少女がそこにいた。

「貴公が剣士の英霊となるまで抱え続けた矜持。同じ英霊として、簡単に唾棄できないものであることは理解する。」
「.....」
「だがそれは、貴公の身を案じる少女を、死地に置き去りにしてでもなすべきものか?」

 はっきりと響く、よく通る声。
 優しく、重く、熱く、強い。偉大なる英霊の、芯の通った言葉。

 セイバーが消えれば、マスターである少女は半日と経たずに消える。
 そんな停命を待たずとも、英霊・マスターともに危険人物に溢れた殺戮の坩堝たる今の冬木で、サーヴァントを持たない少女がどれだけ生きていけるのか。

「.......、礼は言わんぞ。」
「構わない。」

 思いつめた表情の剣士の英霊は、泣き疲れ黙り込んだ少女を抱えて立ち去る。
 彼の体から、既に毒は消えていた。

「マスター。黙って了承してくれたこと感謝する。君にとっては益の無い話だったはず。」

 残されたランサーが、脹相に対してきっちり45度に傾けて礼をする。
 見下ろす脹相の顔は、相も変わらず死体のように青白く固い。

「いや、いい。お前の言うとおり、俺も同じ気持ちだった。」

 嘘ではない。
 脹相も既に、戦う気力を無くしていた。
 それは無気力か、憐憫か、怠惰か、侮辱か。
 そのどれでもない。

 なぜ、相性最悪の脹相に死の間際まで戦い続けたのか。
 なぜ、敗北が確定していても剣士の闘志は揺るがなかったのか。
 なぜ、剣士の英霊を心から思い少女は泣いたのか。

 脹相はそれを知っている。
 知っているがゆえに、悩む。

「...だが、詫びというのならランサー。いや、クラウス・V・ラインヘルツ。俺の質問に答えてくれ」
「私が答えらえれるものならば、喜んで。」

「“人間”とは、なんだ。」

 ◆◇◆

「人に、心なんてないよ」

 人から生まれた呪いが、いつだったかそんなことを言っていた。
 あるのは魂だけで、感情はその代謝にすぎないと。

 嘘だとは思わない。
 魂を理解し魂に干渉する術式を持つ呪いの言葉だ。
 彼なりに得た答えなのだろう。

 だが、もしそれが正しいとして。
 俺が弟たちを思う心も。
“人”ではなく“呪い”として生きたことに対する悔悟も。
 機械的な代謝か?

「悪いな真人。それは違うと断言できる。」

 ◆◇◆

 ―――光に向かって一歩でも進もうとしている限り
   人間の魂が真に敗北する事など断じて無い

 英霊とつながったマスターは、英霊の記憶を見ることがあるという。
 脹相の夢の中のランサーは、無数の装甲兵を前に一歩も引かず。
 泣いていた青年に。立ち止まっていた男を鼓舞し、前に進む勇気を示した。

 ―――行け!手始めに、世界を救うのだ!

 その後の顛末を、脹相は知らないが。
 少なくとも、クラウスの死因があの装甲兵たちでないことは想像に難くなく。
 あの止まっていた青年が、世界を救ったのだろうことも。
 理由も無く、確信できた。

 ◆◇◆

 路地裏からそう遠くない喫茶店のテラス席。
 筋骨隆々な紳士と和装の青年という異色の組み合わせは周囲の人々の注目を否応なく浴びる。
 視線の先の当人達は、そんな視線には微塵も気を向けない。
 出されたコーヒーを強張った表情のまま飲み、戦場と変わらぬ重さで主従は顔を合わせていた。

 脹相は、クラウスに自身の過去を語る。

 最悪の呪術師、加茂憲倫の非道な所業により生み出された生い立ちを。
 真人達の手により、弟達とともに受肉を果たした覚醒を。
 弟を失い、その上で最後の弟である虎杖悠二を守るために戦うと決めた決意を。
 生みの親にして、その弟を中心に呪いを振りまいた元凶に対する敵意を。
 その最悪の相手に敗北を喫したうえ、一人生き延びさせられた、現実を。

「九十九は、俺に人として生きろと言った。」

 共に天元の護衛を務めた特急術師。
 彼女にも、脹相は自身の思いのたけを語ったことがある。

 真人のように、人から呪(う)まれた呪霊ではなく。
 言葉通りに、人間である母から産まれた脹相。
 人と呪いの狭間である彼と弟たちは、覚醒に際し“呪霊”として生きる道を選んだ。
 弟たちには言わなかったが、脹相にはその道を選んだ理由があった。

 人は。弟たちを受け入れない。
 異形の背を持つ壊相(おとうと)を
 異形の体を持つ血塗(おとうと)を。
 そう思ったから、呪霊として生きる。

 岐路に立った脹相は、楽な道を選び。
 結果として、壊相と血塗は死に。
 代わりに現れたのは、呪いの王をその身に宿し、人として苦悩する虎杖悠二(おとうと)。
 脹相の選択は、弟を一人置き去りにしただけだった。

『俺はなんで、楽な道を選んだ。』

 壊相と血塗は、人に受け入れられないだけでくじけるほど弱いのか?
 違う。
 脹相が“人”として苦しむ弟を見たくなかっただけだ。

 脹相は、その選択を悔やみ続ける。
 どうしようもないと知っていても。
 取り返しなどつかないと分かっていても。
 悔やまずには居られない。

 兄として。弟を苦しめた自分を罰し続ける。
 呪いとして、人の道を選ばなかった自分を呪い続ける。

 俺があのセイバーなら、あの場で立ち上がれただろうか。
 俺があの少女なら、負けの決まった英霊のために泣けただろうか。
 俺がクラウスのような人物だったのなら。立ち止まった青年を前に進ませられただろうか。

 俺が“人”ならば、弟たちを苦しめずに済んだのか。

 人として生きろと言った九十九由基の言葉の意味が分からない脹相ではない。
 彼女は、止まっていた脹相に前に進むよう言ったのだ。
 夢の中、クラウス・V・ラインヘルツが青年にそうしたように。

 そこまでして“人”として進めるのかと、脹相は未だに信じられずにいる。
 人としての自分も。
 兄としての自分も。



「私は、君によく似た男を知っている。」

 空になったコーヒーカップを、クラウス・V・ラインヘルツは静かに置いた。
 カランと小気味いい音を響かせ、何の気なしに男は空を見上げる。
 電脳の世界とは思えぬ曇り一つない青空が、クラウスの頭上で晴れ渡っていた。

「その男は、単身私たちの住む街にやってきた。」
「以前聞いたな。ヘルサレムズ・ロットといったか。異界と現世の交わる境の異常都市。」

 生前のクラウスが活動していた、異常なる都市。
 異界の存在が闊歩し、超常の異能者が徒党を組んでバーで騒ぐ。
 交通事故のように世界崩壊の危機が迫り。
 クラウス達“ライブラ”は、この傾き崩れた世界の均衡を守るために戦い続けた。

「“ライブラ”の一員。名をレオナルド・ウォッチ。初めて会った時の彼は、己の選択を...
 否、選択をしなかった自分を悔やみ続けていた。」

 前触れもなく、妹とともに超常の存在に契約を迫られた一人の青年。
 見届けるのはどちらかと。
 見届けぬのであれば、その眼は不要だと。

『奪うのなら、私から奪いなさい。』

 足の動かない妹が、勇敢にも超常存在に向き合い。
 その眼を犠牲にするまで、動ける足を動かせなかった男がいた。
 対価として、妹から光を奪った男には、あらゆる眼を支配できる超常の眼球が与えられた。

「確かに、俺と似ているな。」
 以前の脹相なら、妹を犠牲にした情けない兄に、憤慨しただろうか。
 己の過ちで弟たちを苦しめた今の脹相は、足を止めたその男を笑えない。

 一人自嘲する脹相に、対面に座るランサーは気まずそうに腕を突き出し、静止を促さんと脹相に掌を向けた。

「待ってくれマスター。本題はここからだ。」
「...すまない。続けてくれ。」

 ランサーが空気を切り替えるように、コホンと大きく咳ばらいをする。
 近くの席に座る高校生たちが、音を立てた巨漢に視線を向けた。

「その男は、私たちの仲間となり、幾度となく窮地を乗り越え、戦い抜いた。」

 ライブラに加入したレオナルド・ウォッチは、日常の狭間で大きな活躍を上げた。

 人々を奪う未発見の幻術を見破り。
 人界の天敵である吸血鬼の名を見抜き。
 最悪の王に囚われた兄妹を、坩堝に食われた子どもたちを。彼は救う。
 自分以外は知覚さえできない戦いに一人挑み。妹を救った。

「確かに、彼は一度挫折した。
 自らを卑怯者だと罵り、悔恨とともに生き続けた。
 だが、その挫折を前に折れなかった彼の強さが。
 その後悔とともに進み続けた彼の心が。
 幾度となく私たちを、世界を救った。
 私は彼の事を、誇りに思う。
 超常の眼にではない。レオナルド・ウォッチという“人”を。誇りに思う。」


 クラウス・V・ラインヘルツの言葉で立ち上がった青年は
 誰かに手を差し伸べ、守り、救う。そんな人間になっていた。

 仲間の事を話す時が、ランサーは一番うれしそうだな。
 ふとそんなことを男は思い。
 高揚しているランサーとは対照的に、陰ったような言葉が零れる。

「俺は、そんな立派な男ではない。それほどまでに強い男ではない。」

 言葉からは、吐瀉物を拭いた雑巾のような味がした。

 クラウスが自身と似ていると言ったレオナルド・ウォッチなる人物に対し。脹相が抱いたのは敬意と断絶。
 一人の人として。超常の力に驕らず進み続ける男への敬意を。
 一人の兄として、妹を救った勇気と力に対しての断絶を。

「俺は、弱い。お前よりも。レオナルドとかいう男よりも。
 あの黄金のセイバーよりも、そのマスターだったあの少女よりも。俺は弱い」

 対峙したセイバーのように、守るべきもののために立ち上がるのが“人”なのか。
 セイバーに縋り泣いた少女のように、大切な相手を思えるのが“人”なのか。
 クラウスやレオナルドのように、誰かのために前を向いて進めるのが“人”なのか。

 ならばそんな勇気も慈愛も決意も持たない俺は。“呪い”でしかないのではないか。

「脹相。我がマスター。聞いてくれ。」
 陰りを続ける脹相の心に光を指すような。
 そんな言葉が、クラウスの口から紡がれた。

「君は今悩んでいる。人と呪いの狭間で。“人”でありたい心と、“呪い”に縛る過去の境界に居る。」

 簡潔に、きっぱりと。ランサーによって脹相の心が言語化された。
 呪いを祓うではなく、心の惑いを晴らすように。英雄は続ける。

「人は強い。困難を、挫折を、絶望を。己を支える礎とし、なおも未来へ進む。
 だが、同じくらい人は弱い。時として間違い、矜持を失い、光無い霧の中で惑い。取り返せない傷を負う。」
「ランサー...。」
「人とは何かと問うのなら、脹相。私はこう答えよう。“今の君”だと。」

 英霊の言葉には、一切の陰りも揺らぎも無く。
 真っすぐに、ひたむきに。強く光る瞳で。
 脹相という呪いを見るではなく。
 脹相というマスターを見るではなく。

 脹相という、人間を見据えていた。

「過去から目を逸らさず。弟を思い。託された言葉を標とし。多くの挫折と後悔に足を囚われてもなお、君は“兄”であることをやめない。進むことを諦めない。」

“兄”であること。
 唯一にして、最大の。脹相が進み続ける理由。
 脹相が悩む理由であり。
 脹相を縛る呪いであり。
 脹相が進む根源であり。
 脹相の願いそのものであり。

「それが、俺が”人”である理由だと?」
「それが、君が”人”である理由だ。」

 クラウス・V・ラインヘルツにしてみれば。
 脹相が“人”である、何よりの証明であった。

「お前の言う人とは、“進む者”か?」
「ある意味では。....レオナルドの妹君と話した時、彼女は自らの兄を“トータスナイト”だと称した」
「......亀の騎士か。」
「亀は、決して後ろに下がらないのだそうだ。
 どれだけ足がすくんでも、どれだけ思い悩んでも。いつか必ず前に進むのだと。」
「......立派なものだ。同じ兄として、心から尊敬する。」

 レオナルド・ウォッチという“兄”を完璧なまでに形容したその言葉は。
 脹相にとって、“人”としての理想の形をしていた。

 弟のため/妹のため。
 どれだけ止まっても、どれだけ悩んでも。
 振り返ることも、後退することも無く。

 後に続く者達の手本として、前を進む“人”の姿。

「....俺も、そんな男のようになれるだろうか」

 英雄を夢見る子どものように。
 未来に希望を抱く人のように。
 澄んだ胸から、そんな言葉が零れた。

 その言葉から、苦い味はしなかった。

「なれるとも。君は悔やみ、背負い、それでも前を向き、立ちあがり、進もうとしている。」

 クラウス・V・ラインヘルツが立ち上がる。
 陽の光を浴び、屈強な精神を持った強き人が。
 惑い悩む、一人の人間に手を伸ばす。

「それが、人間の強さだ。」

 英霊の言葉に。人として生き続けた者の言葉に。
 脹相は、かつてないほど熱いものを胸に憶える。
 今初めて、心臓の鼓動を感じたように。
 自分という人間が、今この時に生まれたかのように。

「感謝する。ランサー。俺にも、光が見えた。」

 一人の人は、英霊の手を取る。
 自分が求める願いに向け、彼は前を向き、進み続ける。

 血の満たされた呪いではなく。
 血の通った人間として。

【クラス】
ランサー
【真名】
クラウス・フォン・ラインヘルツ@血界戦線
【ステータス】
筋力A+耐久A+敏捷B魔力B幸運C宝具B
【属性】
秩序・善・地
【クラススキル】
対魔力:B 魔術発動における詠唱が三節以下のものを無効化する。大魔術、儀礼呪法等を以ってしても、傷つけるのは難しい
【固有スキル】
ブレングリード流血闘術 A+ 血液を媒体にして行う格闘術であり、血液を武器や盾に変化させて戦う。吸血鬼の類に特効を持つ技巧の一つ。
その中でも他の技巧とは『段階』が異なるとされる。
ある能力者曰く「時に手を掛ける」らしく、この能力で生み出したものは時間属性に耐性を持つ。
天秤の長 A 異常と超常が跋扈する世界で『世界の均衡を保つ』為に戦う秘密結社の長であったことを示すスキル。 カリスマスキルの亜種。
強者や曲者から信頼を寄せられる、強い精神と胆力のある傑物
勇猛:A+ 威圧・混乱・幻惑といった精神干渉を無効化する能力。また、格闘ダメージを向上させる効果もある。
【宝具】
『久遠棺封縛獄(エーヴィヒカイトゲフェングニス)』
ランク:EX 種別;対人宝具 レンジ:1 最大補足:1
ブレングリード流血闘術 999式
対象の心臓に拳をあて『諱名』(サーヴァントの場合は真名)を唱えることで、対象を手のひらサイズの十字架に「密封」する。
因果に干渉する技であり、受けてしまうと抜け出すことは不可能に近い。
サーヴァントに使用された場合、そのタイミングでマスターとのパスが切断される

ただし彼は滅多なことではこの宝具を使わない

【weapon】
十字架型のナックルガード
【人物背景】
秘密結社 ライブラのトップに立つ漢
威圧感さえ感じさせる体格とは裏腹にお人好しの正義漢で、どこか子供っぽい。
ブレングリード流血闘術を用い、血界の眷属(ブラッドブリード)に唯一対抗できる人類
趣味はボードゲームと園芸
獣の生命力と鋼の精神力で武装した人界の守護者
人を助けることに理由は要らない。そんな人
【聖杯への願い】
聖杯にかける類の望みはない 脹相の願いに応えること

【マスター】
脹相@呪術廻戦
【マスターとしての願い】
虎杖悠二の幸せな未来
弟たちの蘇生と受肉(他者に被害が出ない形で)
【能力・技能】
術式、赤血操術を高い練度でこなす。
呪力を血液に変換できる特異体質であり、操る血液に限りがあるという術式の弱点をカバーしている
【人物背景】
呪霊と人間のハーフ。
人ではなく呪いとして生き
そのことを悔やむ十人兄弟のお兄ちゃん
令呪は、流星のような形の3本の矢
【備考】
※参戦時期は原作23巻/208話『星と油④』終了後

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最終更新:2023年10月06日 23:49