「ひょっとしたら私、舐められているんですかね」
多様な気配のある冬木ハイアットホテル……その一室で、眼鏡姿の端正な顔をした青年、ブレンがぼそりと呟いた。
前述の傲岸不遜とも思わせる言葉には理由がある。
こと電脳が絡む世界は、彼にとって専門分野もいいところであるからだ。
彼は人間ではない。
かつてブレンが居た世界には人間の魂、精神をデータ化する技術がありネットの海を自由に行き来でき自在に操作可能な「ネットワークの神」と豪語するある存在が居た。
そのネットワークの神に対し脱出不可能な電脳空間の牢獄を作成し閉じ込めたり、即興で単なる市販品のタブレットの中に移し替え出られなくする程度のことは、
可能とする怪人。それが彼、機械生命体のブレン・ロイミュードである。
その彼が――完全にフルスペックを発揮できるボディの上で、見知らぬとはいえ電脳世界で復旧している。
今のこの男にとって仮想空間や電脳が絡む場所や相手など、カモも良いとこである。
その気になればおそらく自分なら平然とこの世界の支配権を……
(と、考えるのは安易で早計で傲慢か)
霊的な多元宇宙的に多彩な能力が絡むのならば、そう簡単にも行くまい。逆に不思議な力で一蹴されるおそれすらある。
「いや、そもそも」
ブレンは元々、今までどこかの電脳空間でコアのデータがかき集められていたのだ。前に別の不完全なボディに入れられ制限下で半端に復活したこともあるが。
ひょっとしたらこの冬木の聖杯戦争も、かつて戦った秘密結社ムの仕業なのかもしれない。
それは侵攻する「無」そのもの。あらゆる個を否定し時空を超えて怪人をかき集めていた組織。ブレンが一度、データと現実の境界が不確かな世界に迷い込んで撃退した連中。
おかしな電脳世界に突入すること自体が初めてではないのだ。
それらと似通った連中のしわざか。あるいはさらなる未知の相手か……?
『黒い羽』もはたして本当に触れたのやら触れなかったのやら。彼は何もなくてもふらっと迷いこみかねない境遇だった。
「しかし、今回もまたどうやら一人ではないらしい。新しい協力者がここに居るようで。サーヴァント……ですか」
ブレンが後ろを向くと、そこには黒衣を纏う褐色の女性、それも儚い少女と言っていいサーヴァントがひとり居た。
「アサシン、でしたっけ」
「はい……アサシンのサーヴァント、ハサン。失礼ですがお手を……取ってくださいますか?」
召喚されてハサンは少し動揺していた。目の前の主からは、異性としての興味の目線が見えなかった。
召喚されたばかりの彼女が知ることでもないが、これはブレンにとって容姿という要素にあまり意味が無いからである。
彼自身の整った部類に入る顔立ちも、機械の擬態に過ぎないのだから。
気に入った姿でこそあるがその気になれば他の人間の外見にもなれるし、事実目的のために別人に成りすましたこともある。
その挙動にやや奇妙な感覚を抱きつつも、彼に呼ばれたサーヴァント『静謐のハサン』は思わず自らに触れることを懇願した。
彼女が召喚者に望むこともある接吻を要求しなかったのは、そういった欲望が全く見えない相手にいきなり望むのはさすがに唐突かと思ったからだ。
「ええ、それくらいなら」
と聖杯戦争とサーヴァントの情報を脳裏に叩き込まれたことで味方だと理解していたブレンは手を握る。
そして……握られた手には何も起こらなかった。わずかな不調さえ見えない。
強い驚愕と、喜びのような感情に少女の顔が染まる。
主は思わずその表情から、怪しいものを感じ取った。臆病な部分があるからこその、目ざとさだ。
「その顔。まさか、何かの能力ですか!? 私を騙そうと――」
「い、いえ!」
慌ててハサン――静謐のハサンは釈明しながら己の存在を説明する。
自らが毒をその身に溜め込み毒そのものとなった存在に等しいこと、試すようで無礼だが毒が効かない相手を探していたこと。
生前に属した教団の手により毒をその身に宿し。殺し続け――肉を用いて毒を注ぎ続けた。サーヴァントとなり昇華された宝具もまた己自身という毒。
そんな身の上の彼女をブレンが召喚したのはあまり意外ではない。彼もまた、毒とは縁深いから。
話を聞いて少し考え込むようにしてブレンは眼鏡をくいっとさせ。
「なるほど。恐らくそれは私がロイミュードだからでしょうね」
「ロイ、ミュード」
「人に擬態できる機械生命体ですよ。元より対生体攻撃や精神干渉、特殊干渉の類は我々ロイミュードには軒並み効きません。
とは言っても聞いた限りその威力では並のロイミュードにも十二分に効くでしょう。となると……私も毒を宿しているから、と言うのが大きいか」
その言葉に、ハサンと名乗った少女は複雑な感情の乗った表情をする。
同じく毒使いと言う事実と、人どころか動植物とすら言えない存在が主であり、しかし自身の毒に平然としているという複雑な状況。
「あなたの願いはその毒をどうにかすることでしょうか」
「……いえ、それもそうですがなにより、こうして私と触れられる」
「でしたら」
貴方の毒、私ならどうにかできると思いますよ。
「え?」
静謐のハサンは、主の言葉に思わず呆けた声を出した。
●
男の指先からしたたり落ちる、金のしずくを少女はすがるように飲む。
そのしずくが身体に染みわたるたびその身が、何か別の物に統制されていくのを感じる。
彼女の唇は今この時だけ、接吻による毒殺ではなくその渇きを潤すためにあった。
やがてしたたりが止まり、終わる。
少し名残惜しそうに、彼女は身を離して待機の姿勢を取った。
「……これで」
「はい。貴方の毒と私の毒がリンクしました。しかし、殺傷力で私の毒に匹敵しうる物を始めて見ましたよ……」
強化前ですら生身ならば即死、鎧とエネルギーフィールドに包まれた仮面ライダーすら死に至らしめる毒の使い手であり――強化後ならば万能の治癒能力も全く通じない。
されど静謐のハサンが持つ毒もまた、万人を殺し幻想種にすら届く代物。生前ならばいざ知らずサーヴァントとなった今ならばその毒性は負けてはいない。
しかし、しかしだ。
最もブレンの毒が彼女の毒を突き放している側面があるとすれば……
それは、そのコントロール性、便利さである。
超進化したブレンは己の毒を外部からコントロールする力を持つ。発動のタイミングを自在にしたり、明らかに毒としておかしな現象を引き起こすことすら可能なのだ。
そしてブレンは、自身の毒の能力を味方に分け与えることもできた。
パスとして繋がったサーヴァントとマスターと言う間柄ならば、それは決して不可能ではない――と言うより、容易な部類にすら入る行いだった。
黄金の毒をすすった瞬間から、彼女は何か歯車が噛み合うようなものを感じた。
穏やかなものに満たされ、統治されていく。
周囲のものをひたすら殺すだけのものであった自分の中の毒が、より洗練された別のものへと変質していく感覚。
ただ己が存在が否定されるのではなく、より高次のものへと進化していく澄んだ感触。
「さて……私相手だと毒が効かないということは証明できませんからね」
いつの間にやらそこらへんで捕まえた野良猫を出してみる。しかしどうやってホテルの部屋内に持ち込んでいたのだろう?
「撫でてみなさい」
おずおずと、手を出して触れた。
大丈夫だ。触れる。毛並を感じる。律儀に事前に蚤とりでもしておいたようで、やけに手触りが良い。
気が付くと、アサシンの目からぽろぽろと涙がこぼれていた。
どこか気まずそうに見つめるブレンの胸元に、アサシンは思わず飛び込んだ。
猫は驚いて、飛び跳ねるようにベッドの下に入った。
しばらくして、落ち着くのを確認するとブレンは周辺に力のならし運転がてら赴くことを提案する。
主の言葉に同意するも、吸い寄せられるようにハサンはその口元へ釘付けとなっていた。
きっとその気になれば、容易にこの男女はその唇を触れ合うことができるだろう。
共に毒身であり、致死の毒が効かず。
そして彼は毒を統べ操る存在であり、彼女は毒を操られる側であるが故に。
「……アサシン?」
どうしたのですかという呼びかけに、静謐のハサンの意識が戻る。
「い、いえ! なんでもありません!」
気を抜くと熱っぽい目でマスターを見てしまう。既にその身は満たされているというのに……強欲に。
緊張か汗が出ていますよ、とブレンはハンカチで彼女の額や頬を拭いた。元より、その汗すら彼女の場合は激烈な毒なのだからという気遣いもあってだが……
思わずその所作に頬が緩むのを静謐のハサンは必死で押さえていた――
しばし、サーヴァントの様子を見てから――主従は外へと赴いた。
●
結論から言えば、何事もなく名も無きサーヴァントとの接敵と撃破は済んだ。
絵に描いたように好戦的な相手であるそれを、撃退し、倒した。
ただし、手を下したのは静謐のハサン……つまりはサーヴァントがではない。それらの直接戦闘はマスターであるブレンの手によって行われている。
己の拳、己が手から出す鎖のような棘の触手、己の毒、己のもたらす念力と雷。それら機械生命体ロイミュードのトップクラスとして培われた能力を再確認するブレン。
「やはり、アサシン。貴方と毒によってリンクした以上、私もまた神秘を帯びている、ということですね」
これもまた、マスター側の世界であったことだが。
ロイミュードは異なる法則の世界から来た「妖怪」の非科学的な力をコピーすることを可能としていた。
別に神秘だから、魔術だから、サーヴァントだからと言ってロイミュードは使えないと言うわけではない。
純粋科学の産物でありながら、彼らは容易にオカルト的技術や異界法則の力も吸収しうるのだ。
それに切り札はまだある。
どんな種族だろうが「無」だろうが撃滅する切り札が。
今はそれを使う時ではない。というか、ブレン自身にすらあの力の全容は把握しきれていない。
超進化態として呼ばれている以上あの力を使うことはなるべく避けたかった。
(なにより……私はロイミュードとしての全開状態でこの力を使った事が無い。いつも制限された状態だった。もし、素の全力が出せるこの状態で「変身」してしまえば……どれほどの……)
雷撃に焼かれ消えた後の、サーヴァントの攻撃による爪痕を見すえるブレン。
アスファルトは抉れ、広い道路は余すところなく破壊され尽くしている。それらはサーヴァントの力と、ブレンの力が激突したものである。
元々膂力に乏しい自らのアサシンより、どうやら腕っぷしの面ではマスターの方が上のようだ。
確かにサーヴァントとは強力で、不可解で、未知数の敵だったがブレンとして初戦にさほどの恐怖はなかった。
まず聖杯戦争の戦いよりも昔の方がよほどひどい目に合っている。
折角作った自分たちのボディの元となる資源を仲間にまとめて盗まれたり。
10トンの鉄塊で何度も殴打され、下敷きになったり。
超高温火炎で火だるまになったり。
ようやくそれらを跳ねのけられる強さの超進化態になってもボディを破壊され、サーヴァントで言う霊核に等しいコア状態のまま仲間にいたぶられたり。
(……なんだか悲しくなってきました)
ロクな目に合ってないのはなにも自慢にならないのだと気付くと、少し落ち込む。
すると、ハサンが流れるような動きで無音にブレンの元へと参じた。
「御身に不具合などありませんか、マスター?」
まずは己が主体で戦うとサーヴァントとの交戦前に言ってのけたマスターに対し散々おやめくださいと苦言を呈したが……
結局押し切られた彼女は、心配そうにおずおずと聞いた。
「ええ。力を一度試したいからと無茶を言ってすいません。周囲の目撃情報などには対処しましたね」
「はい、ブレン様」
今回だけは譲ったが、決して今後は主を危険にさらすのではなく矢面には自分が立とう。そう静謐のハサンは決意していた。
「毒によって記憶は消しましたか?」
「……はい!」
居合わせたNPCと相手マスターは毒によって記憶を消され、日常へと戻りつつある。
毒による消したい記憶部分の消去。ブレンが使う無数の毒の効果のひとつである。
己の毒が誰かを殺すこと以外に使える、ということ自体が在り得ない奇跡としか言いようが無かった。
聖杯戦争にかけた願い以上のものを、あっと言う間にこのサーヴァントは得てしまったのだ。
「やはり……毒の衝撃波や毒の火炎弾や毒の解析用発信機も使い方を教えればできそうですね、素晴らしい……」
それは毒なのだろうか。静謐のハサンと言えど、そこについては少し疑問を抱かざるを得なかったが。
「結構結構。あなた自身はハッキリ言って頑強と言えるサーヴァントではない。ですが私の能力、存在とあまりにも相性が凄まじい!」
実際この組み合わせ、穴と言える穴が無いのだ。
魔力供給もまた、彼の中枢駆動機関であるコアナンバー……コア・ドライビアの半永久的なエネルギー供給にまかなわれ、全く不具合が無い。
シナジー。そうとしか言いようのない異常な噛み合い方によって、彼女は常に絶好調を超えた状態だった。
「さてアサシン――ハサン。期せずしてこのように貴方の願いはかなったわけです。それも私の存在があってのことですが……この私の願いも――叶えてくれますよね?」
暗に自分が居なくなると困るだろう、という圧力の駆け引きも込めての言葉をブレンはもったいぶってかけた。
まずはサーヴァントへメリットをしめしたぞ。自分が消えたら大変だろうと。その言葉に対して――
「勿論です。ブレン様の同胞を取り戻す、この身の全てをそれに捧げましょう」
そうアサシンは静かに即答した。マスター……ブレンの言葉全てが真理であり正義だと言わんばかりの、迷いのない声だった。
(なんと偉大な存在なのだろう。なんと優しいお方なのだろう。あたかも自分がこの方に仕えるために存在してきたかのように思えてくる)
恍惚に打ち震え、称えるようなサーヴァントのまなざしにマスターはそれほどまでに自分が与えた力が素晴らしかったのかと解釈し。自慢げに眼鏡のフチへ指をあてる。
「まあ、私はブレン――頭脳を冠する者です。これぞ聡明で的確で最高の力と言えるでしょうね!」
「はい! マスターこそ叡智の化身たりえる存在です!」
そう心底からアサシンが同意すると――ブレンは少しうろたえた。
いくらなんでもここまで直球で称賛されたことなど、彼の人生において経験がないからだ。
評価してくれる仲間はいたが、大体はほぼ無茶振りのような状況か自分のことをなんだか残念な存在としてしか見ていなかった。
例外はふたり。相棒と言えるハートは自分を最も信頼してくれるが、どうにも苦労をガンガンかけてくる方だし
フリーズはフリーズで……あれは下手をすれば自分以上に優秀と手放しに言える男だった。
ブレンはこうも素直に己を崇め奉る相手と言う者を生涯見たことがないのだ。困惑が、そこにあった。なんだったら少し引いてすらいた。
(どうすればいいんですか……こういう相手との共闘は?)
その風変りな悩みに回答をくれる存在は誰も居なかった。
世界を敵に回しても構わないと言わんばかりのサーヴァントの忠節。
「例え人類にマスターが反旗を翻すとしても私は願いを――」
「そうそう、そこですがね。私は人間に対してそう悪感情を持っていないと言ったところです」
「え?」
「少し人に親しみすぎました。ですから……この聖杯戦争で、ここが嘘だとしても。電脳の世界で、人々が嘘だとしても。
仲間の復活の前に……精一杯守るために戦ってみようかと思います。今さらですが……もう私も仮面ライダーですし、ね」
身勝手でお調子者で似合わないことに付き合わせてすいませんね。そう言って、ブレンは笑った。
アサシン――静謐のハサンからすると、その様は茶目っ気あれど正に謙虚にして深謀遠慮の産物にしか見えなかった。
ブレンは元々ソリの合わない相手だろうと仲間をしばしば助けたりなど、小物臭いようでいて変に面倒見のいい部分を見せる男である。
アクの強すぎる面々と接してきた彼は、機械生命体たる彼はアサシンの美貌に惑わされることもなく純粋に協力者として真っ直ぐに見ている。
今や静謐のハサンのそれは美化やハッタリなき等身大のブレンそのままを見ているに関わらず、盲信あるいは狂信に近い領域に達しかねない感情に染まっていた。
だがその感情が的外れというわけではない。事実それだけのことをブレンはしてしまったのだ。
なんだかんだ言って、自分自身すら自覚の追いつかない領域で彼は優秀だった。
そう。
静謐のハサンにとって彼は優秀で、誠実で、理想的なマスター過ぎた。
あまりにも。
●
ええ。
無論私とてマスターが本当になんでもできる存在とまでは思っていません。
その御身の毒と一体となった今では、その静かな万能さがありありとわかると共に力の特性も理解できているのだから。
万能であっても全能ではなく。超常ではあっても最強ではない。出し抜かれることも、泥をすするような事態もごく普通にあり得る。
――だとしても明らかに毒として逸脱した、不条理なる力ではあるのですが。
だが、いかに強大なマスターや、世界を思いのままに支配せしめるとするマスターでさえ私にとってこの方に勝るものではない。
私の毒に動じず。死なず。
この毒の業から解放し、殺し以外の価値を与え。
されどアサシンとしての能力や在り様を否定することもなく。
容姿にすら何も惑うことなく私という存在を必要としてくれる。
聖杯などもう私には要らない。この煌めく金色こそ我が主にして偉大なる杯。
二人でひとつの運命。
この方に会うため私は産まれてきたのだとすら、思える。
……しかし。だからこそ、おかしいと思える部分はある。
友と、仲間と呼ばれるあの方の同胞の話を聞くたびに。記憶の欠片を感じるたびに。
なぜ貴方様だけがあそこまで背負われなくてはならないのかと、なにか果てなく理不尽なものを感じてしまうのです。
ブレン様は人ならざる……紛れもなく、人類にとっては悪とされる立場と言えどその中で献策し、奔走し、皆を補われてきた。
それでもただ周囲の仲間は迷惑をかけ続けるか、ぞんざいに頼るだけだったのではありませんか?
最も信じるハートと呼ばれるあの方でさえ、信頼すれどもそれを十全に労ってくれたとは……そもそも、私の方が理解し、認めて……!
いけない。
それはダメだ。
あの方が最も信じ、その……愛された、方を。否定するなどあってはならない。
私とて、ハート様という方が、何か他者を惹きつけるモノを持つ傑物であるということ程度は察せる。まさしく王の器ではあるのだろう。
ですが。
またブレン様の同胞が次々と復活されて。それでまた何事かあれば恋敵をも救おうと、己が身を捧げようなどとされたら私は……それに、耐えられるのでしょうか?
あるいは。
仮面ライダーとして……人のために死を選ばれたとしたら。私は……
私は……?
●
戦闘後に帰還のため、タンデムでバイクの後ろに乗る静謐のハサンの細い腕が、ブレンの胴に強く絡んだ。
サーヴァントの力で全力で抱きしめてもなお、主の肉体は揺るがない。信頼。安心。つかの間の独占。その感触に彼女はただ身を託す。
いつものように彼のすぐそばにいつのまにかどこからともかく走ってきた専用バイク……ライドブレイザーで共に帰るブレンは気付いていない。
静謐のハサンが、毒という共通項だけで召還されたのではないという事実に。
彼の力を頂点まで高め、そしてそれを超え愛に殉じさせたふたつの感情。
すなわち嫉妬と、献身。
しかしかつて他者の嫉妬に共鳴しここまでの位階まで力を高めることに成功したいわば「嫉妬心の申し子」であるブレンがなぜその符合に気付けないのか。
それはつまり……彼自身が、嫉妬によって執着される経験が全く存在しないからに他ならない。
嫉妬に身を焦がす側ではあっても。死を惜しまれ、時にその能力を厄介に思われこそしても。
自らはそこまで執念を抱かれる対象になったことなどない。最愛の相手であるハートとは、むしろ無二の相棒のような立場であったから。
内に秘めたまま静謐のハサンは着々とマスターへの狂信を、理解を、そして……なにかもっとこじれた感情を積み重ねつつあった。
その極大の感情にブレンが気付くことは……果たしてあるのだろうか。
【クラス】
アサシン
【真名】
静謐のハサン@Fate/Prototype 蒼銀のフラグメンツ
【パラメータ】
筋力D 耐久D 敏捷A+ 魔力C+ 幸運A 宝具B+
【クラス別スキル】
気配遮断:A+
サーヴァントとしての気配を断つ。隠密行動に適している。
完全に気配を絶てば発見する事は不可能に近い。
ただし、自らが攻撃行動に移ると気配遮断のランクは大きく落ちる。
単独行動:A
マスターからの魔力供給を絶ってもしばらくは自立できる能力。
ランクAならば、マスターを失っても一週間は現界可能。
【保有スキル】
変化:C
文字通りに変身する能力。自在に姿を変え、暗殺すべき対象に接近する事が可能になる。
ただし、変身できるのは自分と似た背格好の人物のみ。この条件さえ満たしていれば、特定の人物そっくりに変身する事も可能。
多少の体型の違いであれば条件に影響はないため、異性への変身も可能である。
毒を喰らう者:A
対毒および複数の毒関係のスキルが統一されたスキル。
マスターとの親和性により毒によって感覚の鋭敏化とステータスが+にならない程度の恒常的身体能力強化を成し遂げている。
このスキルはマスターを無くした場合消失する。
『万物司る妄想毒脳(ザバーニーヤ・ザ・ブレン)』
ランク:B+ 種別:対人宝具 レンジ:? 最大捕捉:?
その身全てが猛毒と言える彼女自身の肉体……が、マスターの毒によって強化変性したもの。
毒の威力そのものはそこまで変わっていないが、毒へ抵抗可能なスキルや宝具をぶち抜く特性を得たほか、本来制御不可能な致死毒のみであったその存在はパスと同時に
「毒を遠隔操作し性質を書き換える」「毒の能力を他者へ分け与える」マスターの毒と交じりあい溶けあったことにより完全にアサシンの意思で統制、操作が可能となっている。
理論上はマスターと同じく毒の衝撃波や可燃性の毒による火炎弾の放出や毒による記憶の消去、土に染みこませての身代わり人形などの作成を可能とする。
【Weapon】.
ダーク
投擲用短剣。アサシンは毒を塗って扱う。毒が短剣全てに沁み込んでいるため、刃はおろか柄などに触れても毒が発動する。
【人物背景】
聖杯戦争のアサシンとして本来召喚される「ハサン」にして歴代山の翁のひとり。
少女の姿をしているがその身は暗殺教団の手により毒そのものと化している。
生前よりその身体を用いて毒殺を繰り返してきたが、触れ合える存在が無いためサーヴァントと化しても己と触れ合える存在を聖杯戦争に求め続ける。
そのため毒に耐えうるマスターでなければ非常に危険なのだが、今回の召喚は相手が相手であるためむしろ彼女自身の方が毒を含め変質してしまった。
しかし当人はそのことに関して歓喜し悦びを得ている。
【サーヴァントとしての願い】
マスターのために尽くす。最後の一瞬まで傍に……?
【方針】
マスターの指示には基本的に従うが、基本的に前線には自分が出るべき。
【マスター】
ブレン・ロイミュード@仮面ライダードライブ
【マスターとしての願い】
人類の守護。秘密結社ム等の干渉があった場合それらの撃滅。
【能力・技能】
機械生命体ロイミュードとして種族全員が使える能力としては重加速という周囲の空間を不規則に鈍化させる力場を発生させることが可能。
また人間の容姿や感情を必要に応じて学習し擬態、見破ることが不可能なレベルで生体情報を欺瞞できる。
ロイミュードとしては超進化態と呼ばれる頂点のランクに到達しており、毒を生成し自由自在に多彩な効果や強さを操ることができる。雷撃、念動力なども使用。
また機械や電脳空間への干渉に長じており、無理やり機械の能力を収奪したり市販品のタブレットに即興で電脳空間の牢獄を作ったりが可能。
胸元に超強度のコアナンバーという数字型の光情報サーキットが存在し、それが破壊されぬ限りボディが完全破壊されても復旧が可能。またナンバー自体が爆散しても空間下に波長を残し、粒子データをかき集める手段があればまた復旧する。
また専用ベルト「ブレンドライバー」によって仮面ライダーブレンとして変身を可能とする。
【人物背景】
蛮野天十郎の手で108体制作された機械生命体ロイミュード、ナンバーは003。
創造主たる蛮野の身勝手さと邪悪さかロイミュード002のハートをリーダーと仰ぎ反旗をひるがえし蛮野を殺害。
人類の敵として戦っていたが愛したリーダーのハートと恋敵である009、メディックのために自己犠牲で散っていった。死んで以降は、電脳空間で復活しかけたり別の世界に迷い込んだりをしばしば引き起こしてる。
性格はどこか神経質。口うるさいが全体的に身内には世話焼きで心配する面があり、敵には合理的だが卑怯な手段をかえりみない。
自分を優秀と言い放つ自信家な一方で臆病で卑劣なことも自覚している。
だがリーダーであるハートへの愛だけは本物。ハートのために全力を尽くし必至で駆けずり回り、強くなろうとする。
アイデンティティとなってる持ち物は眼鏡とハンカチ。
「なぜこう無秩序で無遠慮で問題の者ばかりが力に覚醒するのかな」「斬新で革新的で素晴らしい発明になりましたね」などと単語や熟語を3つ繋げて表現する癖がある。
【Weapon】.
ブレンドライバー
ブレン専用の変身ベルト。平時は小さくなってポケットにしまわれている。
ライドブレイザー
緑色の高性能バイク。時速470kmで走るほか、前面部に脳を模した走行管理モジュールがついている。なお毒マキビシや毒ミサイルが仕込んである。
ネオバイラルコア
ミニカー型の圧縮金属素材。人の悪意と同調して一体化を促すほか、所有している者を重加速の影響下から防護することができる。
【方針】
電脳世界の調査および主催の目的や構造の把握。
最終更新:2023年10月16日 23:58