第1条.犯人は物語当初の登場人物以外を禁ず。

第2条.探偵方法に超自然能力の使用を禁ず。

第3条.秘密の通路の存在を禁ず。

第4条.未知の薬物、及び、難解な科学装置の使用を禁ず。

第5条.(欠番)

第6条.探偵方法に偶然と第六感の使用を禁ず。

第7条.探偵が犯人であることを禁ず。

第8条.提示されない手掛かりでの解決を禁ず。

第9条.観測者は自分の判断・解釈を主張することが許される。

第10条.手掛かりなき他の登場人物への変装を禁ず。


                        ノックス十戒


 ◆ ◆ ◆


どこまでも続くと思われるような白亜の壁に、大きさも形も年代も異なる無数の扉。
そんな空間に少女は一人立っていた。

彼女は魔術師の操るサーヴァントによって創られた工房に閉じ込められていた。
工房自体は無害なようだが、この空間中に存在するたった一つの『正解の扉』。
それを探し当てることができなければ、彼女は永久にここを彷徨うことになる。

完全に外界とは隔絶された工房だ。
仮に令呪を使用したとしてもサーヴァントを喚び出すことは困難だろう。

飢えて死ぬか、狂って死ぬか。
好きな方を選ぶといい。

少女を襲撃した魔術師はそう言って彼女をここに閉じ込めた。

実際、工房内を覗ける水晶玉で彼女を監視している魔術師は勝利を確信していた。
魔術の心得も無い、ただの小娘など簡単なものだ。
この魔術で閉じ込め、サーヴァントの贄にしたマスターは数知れず。

トリック。錯誤。誘導。
ここは蛇の胃の中だ。
丸呑みにし、そのまま溶かす。

閉じ込められてから十数分。
少女はあまりの恐怖に気が触れたのか身じろぎ一つしようとしない。

やはり。
他人が閉鎖空間で徐々に壊れていくのは堪らない。

魔術師の口元が嬉色に滲む。

――――だが。

「グッド」

少女は嗤っていた。
それも正気を失って出たような笑い方ではない。

悪魔が魂を奪う契約で人を騙す時のような、とんでもない錯誤に気づいていない愚か者を小馬鹿にするような笑みだ。

少女はおもむろに歩き始めた。
そして、一つの扉の前で立ち止まる。

水晶玉の前で魔術師は息を呑む。
『それ』はこの蛇の胃から出るための、ただ一つの扉だったのだ。

「ここが正解の扉、ですよね?」

少女はあろうことか、監視している水晶玉の方に向き直ってそう言った。

慌てて魔力の流れを確認する。
少女が魔術の類を使ったような痕跡はない。
いや、仮に魔術を使ったとしてもこちらに気づくなんてことはできるはずがない。
それよりもどうする、あの扉を開かれれば彼女は即座に令呪でサーヴァントを喚び出すだろう。
こちらもサーヴァントを……いや、先ほど魂喰いのために外へ遣ってしまった。
もったいないが令呪を切るか? いやあの少女が令呪を使う前に魔術で止めを刺せば――――

魔術師の思考が錯綜する。

しかし、彼女はそんな彼の様子をまるで隣で見ているかのように嘲笑い、もったいぶった仕草で扉を開いた。

「こんにちは、ごきげんよう。16分と39秒ぶりですね」

少女はフリルの付いたドレスの裾を摘んで優雅にお辞儀をすると、ニッコリと嗤う。

「な、なぜ――――」

「『なぜその扉が正解だと分かった』かって? 答えを隠そうとし過ぎなんですよ、あんた。あの扉は統計上最も開かれにくい位置に、最も開かれにくい角度で、最も開かれにくい形状で存在していました。
 まあ、該当する扉はざっと見る限り他に五箇所ありましたが。あんたら魔術師になって考えるなら、初期位置から一番近いここがベストポジションってやつです。16分もかけた謎にしてはしょっぱい結末でガッカリしましたよ」

狼狽する魔術師を他所に、自身の『推理』を語る少女。
そう、『探偵』は謎を解いた後にその推理を語るものなのだ。

「ただ扉が存在するだけで。古戸ヱリカにはこの程度の推理が可能です……如何でしょうか?」

「く、クソッ! 令呪をもって命じ――――」

芝居がかった様子の少女に激高し、思わず令呪を使おうとする魔術師。
だがそんな彼の首になにか鋭い物が当たる感覚があった。

見ると、赤く丸い小さなモノが魔術師の首筋にナイフを突き立てていた。

「グッド! 予め位置さえ伝えておけば家具(サーヴァント)とはいえなかなか使えるものですね。推理のお披露目も含めてジャスト20分で終いです。……なにか言い残すことは?」

暗殺者(アサシン)のサーヴァントだ。こんな矮小な存在が彼女の従者なのか。
自分のサーヴァントがいればこんなモノ、一瞬で消し飛ばせるのに。敗けるはずがないのに――――

「ゆ、許してくれ……」

先ほどの威勢はどこにやら、命乞いをする魔術師。

自身を蛇だと思っていた。全てを欺き、騙す最悪の蛇だと。
だが、彼女の――――毒蜘蛛の方が最悪だった。

魔術師の必死の命乞いに探偵は一瞬、目を細める。

――――そして、一呼吸おいて。

「許すワケねェえぇええええぇええだらァあああぁアぁああああぁ!!」

鮮血が工房に舞った。


 ◆ ◆ ◆



「しかし、つまんねえですね。……ああ、駄目だ。全然駄目です!」

多くのマスターを屠ってきた魔術師の根城を抜け出した少女は一人呟いた。

探偵の足元をチョコチョコと可愛らしい様子で暗殺者(アサシン)のサーヴァントが跳ね回る。
彼女はそれを一瞥し、興味なさげに視線を外した。

「あんた、詐欺師(インポスター)なんですってね。詐欺師と探偵が組むなんて可笑しな話ですが、あんたにも協力してもらいますよ」

探偵、古戸ヱリカは空を見上げた。

「この『黒い羽』とやら……現状、特に動きがないですが――――」

探偵は次なる推理を進めている。

英雄を召喚するシステム。怪しげな奇術を使う魔術師たち。黒い羽と聖杯大戦。

彼女の暴くべき真実はそこここに転がっている。
それらを全て暴き立て、白日の下に晒す。
『知的強姦者』を自称する彼女の生き甲斐であり、使命であった。

――――探し、暴く。
古戸ヱリカは探偵だ。
彼女の心にはぽっかりと穴が空いている。

――――侵し、晒す。
古戸ヱリカは魔女だ。
真実のみを求め、ただ彷徨う。
主を喪い、好敵手を亡くし、ただ幽鬼のように。

探偵と魔女。

そして、詐欺師。

そこに真実がある限り。
彼女たちが繰り返す『推理(はんこう)』は、終わらない。





【クラス】
アサシン

【真名】
インポスター@Among Us

【ステータス】
筋力:D 耐久:D 敏捷:B 魔力:E 幸運:A+ 宝具:C

【属性】
混沌・中庸

【クラススキル】
気配遮断:C++
自身の気配を消すスキル。
攻撃態勢に移るとランクが下がる特性がある。
アサシンの場合は、第一宝具使用時に効果が跳ね上がる特性を持つ。

【保有スキル】
でたらめプランニング:B
無謀極まりない殺人計画でも、あらゆる幸運が彼を味方する。
敏捷か幸運、または宝具のステータスランクをランダムに1段階上昇させる。

破壊工作:A
戦闘の準備段階で相手の戦力を削ぎ落とす能力。
ただし、このスキルの高さに比例して、英雄としての霊格が低下する。

【宝具】
『妨害(サボタージュ)』
ランク:D 種別:対人宝具 レンジ:1~99 最大捕捉:∞
屋内でのみ使用可能。停電を発生させ、対象の視界を極度に狭めたり、ドアを閉鎖して密室を作り出したり、インターネット通信を阻害したりと様々な妨害が可能。
ただし、この効果で殺害を行うことは不可能。あくまで混乱を引き起こすことが主目的の宝具である。

『変身(シフト)』
ランク:E+ 種別:対人宝具 レンジ:- 最大捕捉:-
全くの別人に変身するアサシンの第二宝具。変身することによってステータスが上昇するなどはない。
変身には制限時間があり、それが切れると元に戻ってしまう。

『殺害(キル)』
ランク:B 種別:対人宝具 レンジ:1~3 最大捕捉:1
レンジ内に存在する対象一人を殺害する、アサシンの第三宝具。
この宝具はサーヴァントに使用することはできない。専ら魂喰いやマスターへの攻撃に使用されるものである。
また、『クールタイム』と呼ばれるインターバルが適宜必要なため、連続使用は不可能。

【weapon】
基本的に素手だが、たまに刃物やビームが身体から出る。

【人物背景】
宇宙空間に存在する宇宙船の乗組員。
動機は不明だが、普通の乗組員(クルー)を皆殺しにすることを企んでいる。
YES/NO程度の意思疎通は可能だが、基本的に喋れない。

【サーヴァントとしての願い】
不明。


【マスター】
古戸ヱリカ@うみねこのなく頃に

【マスターとしての願い】
この世界の“真実”を全て暴き立てる。

【能力・技能】
「ゲロカス」と評されるほどの漆黒の執念、および推理力。

【人物背景】
真実に殉じた、最悪の魔女にして最高の探偵。

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最終更新:2023年10月16日 23:59